琉球お爺いの綺談

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if昭和史を描く理由

時代が変わっても、官僚機構は変わらない ~「プロジェクトX」のXは|×《ばつ》なのです~

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 国家予算は、単年度収支で動きます。

 つまり、単年度で、予算を策定して、予算を決定して、予算を執行して、決算報告をおこなう。これが、国家予算の流れと、仕組みになります。

 さて、単年度の収支決算では、複数年度におよぶ契約は、基本的にできません。出来るのは、三年間必要であれば、三年分を1回で払う、そういう契約をおこなう必要があります。国がおこなうリース契約の基本は、単年度で、リース期間分を支払うというモノです。つまりは、単年度の枠組みから外れることはできないから、リース契約で毎年払えばいいモノを、まとめて払わされるのです。

 また、単年度予算であるため、維持管理費用は、毎年確保しなければなりませんが、毎年維持管理費用が認められるかどうかは別だったりします。つまり、購入は一回なので、予算が通れば買えますが、維持管理は別なので、毎年予算を必要とします。

 軍隊で言えば、大砲を開発するのは、最初に予算が認められれば可能ですが、大砲を製造するのには別に、予算を通す必要があります。さらに言えば、大砲が製造できても、弾薬を生産するには別に予算が必要となります。

 つまり大砲の場合、開発、製造、弾薬開発、弾薬製造、それぞれに予算の確保が必要になるということです。これは、艦船や軍用機でも同じで、開発、製造、備品開発、備品製造は、すべて別の予算なのです。

 官僚機構というのは、困ったことに、基本として杓子定規に判断します。

 企業にお願いするのに、企業に対して、「○○を購入してやるから、○○を期日までにもってこい」というおバカな文章を作成するのが、事務官僚というものです。エリート程、官僚特有の感覚に毒されていて、御上の定型文がまかり通ります。

 こういった商売の在り方は、「大名商売」という言い方をされますが、お爺ぃとしては、「官僚売買」という方が、正しいように思います。官僚がおこなうのは、物品の売買であって、商売ではありません。

 そして、軍の事務官僚も、官僚なのです。開発予算が通りました、さて、開発がなんとかできて、試作製品が軍からの要望通りの性能を発揮しました。ですが、生産に入るためには、購入する予算を、申請して確保しなければなりません。ここでも、予算折衝と交渉を、余儀なくされます。購入予算が確保されて、軍への納品ができました、これで終わりではありません。銃であれば、弾が必要ですし、重砲ともなれば、装薬も必要になります。維持管理する人も必要ですし、整備のための備品を揃える必要もあります。こういった維持運営にかかる費用も、予算が必要です。

 官僚機構の中では、事務書類が基本であり、書類に不備があれば、事務手続きは止まります。また、申請の決定権は、軍にはなく、官僚にも無く、議会だったりします。議会が、予算を削減した場合、削減した影響がでます。議会が予算削減した場合、軍の予算は、新規開発や購入が優先され、弾薬や備品、整備コストというモノは、見なかったことにされます。つまり、既存の一般的な予算の中から、抽出する必要があるのです。

 予算が潤沢にあるのであれば、一般的な予算から抽出するのは、さほど難しくはありませんが、日本の陸海軍は、潤沢に予算があったことがありません。いつでもカツカツの予算で、必死に対応をすることが求められていたのです。

 また、官僚は、書類の内容について、精査しません。というより、内容を精査するヒマもないので、書類通りに事務を遂行します。

 南洋の島嶼防衛に、戦闘機を必要として、戦闘機の手配をおこないました。ですが、戦闘機の弾薬が記載されていなかったので、弾薬は輸送されませんでした。さて、送られた戦闘機は、稼働できるでしょうか。

 これは、国内のように、距離が近ければ、事務書類のミス程度で済むこともありますが、距離が離れれば離れる程に、事務書類のミスは、致命的になります。現場からの要望と事務手続きの食い違いは、そのまま実質的な、戦闘能力の低下となります。

 日本の兵站機能は、官僚機構が整備されるにつれて向上していって、国土が拡大するにつれて、官僚機構の拡充が限界に達し、処理能力が崩壊するようになります。

 日本は、兵站を軽視したのではなく、拡大する戦線を維持管理するために、必要な官僚機構の拡充は間に合わず、事務処理能力が限界に達したのです。関東軍は、満洲鉄道という独自の会社組織があり、鉱山や炭鉱を持ち、収益を上げる機構を有していました。

 満洲という広大な領域を守備するために、日本中央の官僚機構は、あまりにも不十分な状態であり、とてつもない不自由を強いられていました。結果的に、満洲鉄道という国有財産を使って、現地の官僚機構を構築したのです。

 一度、新たな官僚機構を構築すると、新設された官僚機構は、独自の利害関係に基づいて動き始めます。関東軍が、シナ派遣軍と仲が悪いと記録されているのは、統括する組織機構そのものが異なり、互いに異なる論理で動くため、相手を信頼していないからです。
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