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経世済民は夢か
経世済民は夢か 後編・植民地の経営には、莫大なコストがかかる。
しおりを挟む毛沢東は、ウランバートルで開催された大クリルタイの翌日には、モスクワに赴きスターリンと会談していて大会の様子を報告している。各地域のコミンテルン組織は、両方に参加する者も多く、二重スパイの温床にもなっていた。また、欧米列強の圧力から、極東ロシアの協力を必要とするソビエトは、対立しつつ共存を図るという状況となっていた。
日本は、ソビエトと敵対関係を築き、極東ロシアとの協力関係を築くような行動を開始する。これは、極東ロシアおよび蒙古共和国を独立国家として支援して、緩衝地域として、満洲および沿海州の安定を図るためであった。
山東省の利権を、アメリカに売却することで、日本は、満洲の開発資金を得て、ウラジオストク-哈爾濱および満洲里-チタの鉄道敷設を開始する。満洲鉄道都市警備局は、後方支援基地の維持管理と、後方支援体制の確立にある。大日本帝国護衛総隊を確立して、各地域で国営による護衛隊として組織していくとする。満洲鉄道都市警備局を含め、日本の海運各社に業務委託することで、国際郵便物流事業として確立していくこととなる。
内務省郵政局を郵政省に格上げして、国際郵便物流事業を主業務として、大日本帝国護衛総体の運用費を稼ぎ出すこととなる。安定した国際物流事業を確立し、タイを中心として、東南アジア地域の活性化も図っていく。
山東省から河北省にかけて、ドイツと共同で開発を開始したアメリカは、大陸における南京政府との衝突、中国共産党との小競り合いを始めることとなる。
日本は上海や南京で、旧ロシア帝国を含めて、ロシアおよび日本人による租界を確立して、大陸南方の物流事業を開始していた。
アメリカ・ドイツと中華民国の対立は、徐々に悪化していて、日本を巻き込むようになっていく。国際連盟に中華民国を加えたアメリカは、国際連盟で中華民国と対立し、ドイツの加盟を薦めるようになる。欧州におけるボリシェビキの行動を制約するためにも、ドイツ経済を安定させたい、英仏が賛同するすることで、ドイツの国際連盟加盟が成立する。これは、国際連盟参加国によって、唯一の駐独ソビエト大使館が存在する国の傘下になる。
列強の駐露大使館は、ロマノフ帝室大使館となっていて、旧ロシア帝国臣民への便宜を図る組織として確立していた。フランスは、ドイツとの賠償金削減に応じたものの、ドイツの権益を抑えるため、日本と一緒になって、大陸南方の物流事業の支援を開始していた。これは、大陸から出荷される、鉄鋼や石炭の交易ルートの保全を図るためでもあった。
日本からの支援を受けて、皇泰島の租借を実施し、香港に権益を持つイギリスにとっても、恐慌経済で疲弊した国内経済をカバーするには重要であった。
イタリアとイギリスの発掘調査チームが、満洲で油田を発見したことで、一気に大陸開発に資本が投下されることとなる。アメリカは、北京郊外に油田を発見し、開発が開始された。
イタリアが発見した、大慶油田。
イギリスが発見した、満洲里油田。
アメリカが発見した、承徳油田。
油田の発見と開発は、日本やフランスも資本を投下することで、大慶、満洲里は共同開発事業となった。承徳油田は、ドイツとアメリカの共同開発となった。
「特区」内で発見された、大慶油田、満洲里油田は、列強諸国の資本投下による開発がすすめられた。しかしながら河北省と熱河省は、「特区」ではなかったため、アメリカから「特区」として熱河省と河北省が「特区」申請され、中華民国やイギリスにフランスの反対を受けている。河北省を除いて、熱河省を申請して「特区」申請が通ったことで、承徳油田は、アメリカとドイツの共同開発が開始された。皇泰島の港湾をイギリスが確保し、山海関から天津までの鉄道の敷設を、満洲鉄道都市警備局が請け負った。
油田の発見と開発開始は、不況が続く欧州から、膨大なコストがかかる開発費用を、欧州列強が大陸に資本投下する形で実現した。
イギリス、アメリカ、日本、イタリア、フランスといった列強諸国家は、安定していた「特区」の政治状況から、投資が開始され、移民の増加がみられたのである。国際連盟の主導で、直接委任統治領となっている「特区」は、市民の投票で市長が選出され、市長が市民権を発行する権限がある。市長選挙を巡って、殺し合いを含めて抗争が発生することも多いが、満洲鉄道の駅を中心とした都市は、選ばれた市長によって、長期安定政権が構築されつつあった。奉天から長春は、張作霖を中心とする軍閥が市長となり、斉斉哈爾からシベリア鉄道の沿海州にかけては、愛新覚羅一族を中心として市長が選出されていた。満洲里から興安省一帯は、小白竜や張宗援が市長となっていた。
ソビエトとの抗争が、カザフスタンで生じた蒙露国境紛争から始まり、蒙古共和国軍がロシア白軍と合流し、カザフスタンへの侵攻を開始した。ソビエト赤軍の猛攻に、カザフスタンへ侵攻したロシア白軍は壊滅、蒙古西部にソビエト軍が侵攻してくる結果となった。日本は、極東ロシア西鉄道都市警備局を立ち上げ、イルクーツクからハトガルまで鉄道の敷設および防衛に対して、シナ派遣軍から義勇兵が送られた。新鋭の水上戦闘機および四発水上攻撃機もフプスブル湖へ送られ、水上機基地の整備も開始された。
モンゴル西部国境を侵犯したソビエト軍とフプスブル湖畔に展開した日本義勇軍と戦闘になり、両軍は双方甚大な被害が生じて、ソビエト軍は撤退を余儀なくされた。蒙古共和国との軍事協約締結から、日本軍も損害が多く、蒙古共和国軍およびシナ派遣軍から増援を受け、フプスブル湖畔ハトガルに防衛拠点の構築を図ったのである。
一部のソビエト軍が、新疆方面から、中国共産党の八路軍と合流して、東進を開始したことで、中華民国軍が打ち破られ、アメリカ・ドイツ軍と戦闘に入っていた。アメリカ・ドイツ連合軍は、損害を受けて、河北省へ後退し、追撃してきた八路軍の撃滅に成功した。
新彊、フプスブル湖畔、バイカル湖畔で、ソビエト軍との睨み合いが始まったのである。
油田の発見や大陸経済の活性化は、大陸での自由経済の活性化でもあった。日本が、遼東半島で治水土木事業と共に、水田の開発が進められた。鉄道都市警備局が進めていた、治水土木事業は、山海関を超えて西でも開発が進められた。また、興安省や満洲里の牧畜を含めた畜産事業が拡大され、アムール川流域の土木治水事業と共に、小麦の生産が開始された。
食料生産量の向上は、「特区」に人口増を齎し、石油生産設備を含め、鉄鋼等を含め重工業地帯が、奉天、長春、哈爾濱に誘致されて、拡大していった。「特区」では、旧ロシア帝国からの亡命者を含め、漢人やユダヤ人など多くの亡命者が増加していった。
日本からの移住者は、遼東半島を中心に、水田の開発等が進み、居住地域を徐々に拡大していたが、「特区」への一般からの移住は見送られていた。「特区」へは、満洲鉄道都市警備局職員を中心として、鉄道運営から都市インフラの構築と維持管理を推進していた。
一つの駅につき5000名を定員として工兵隊が派遣され、郵政省と鉄道院を中心として、物流、金融、通信を運用していた。工兵隊の治水による、農場の開発だけでなく、水上機発着場の建設も進められ、発電所の建設や上下水道の建設など、インフラ整備が積極的に推進された。満洲鉄道都市警備局の範囲では、都市官僚機構を警備局の担当で推進されていた。市民は、国際連盟への分担金や上下水道や電気を含めた税金の徴収は、満洲鉄道都市警備局が代行していた。国際連盟への分担金支払いは、日本からの分担金支払いを含め、満洲鉄道都市警備局が多くを占めていた。
運営の安定から、満洲特区の工兵隊は、定数割れが多く、シベリア鉄道から支線となる、イルクーツクからハトガルまでの露蒙鉄道都市警備局に、支援隊として派遣されていた。
国際連盟の事務局は、日本人が多く占めるようになり、日本が議長国になることが多かった。一般的には、欧州での紛争解決は、日本とアメリカを中心に調整され、「特区」での紛争解決はフランスとイギリスを中心に調整されていた。
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問題となったのは、黄河流域から長江流域の利権を巡る争いであった。
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ベルリンでのオリンピック後であったが、国家をあげたプロパガンダであったオリンピック後、皇紀2600年(if昭和17年)、東京でのオリンピック開催は、世界の「和」を呼びかける形で開催された。
オリンピックに亡命者等の参加を設定し、国際連盟枠を設置することとした。フェンシング等で旧ロシア帝国の代表が参加し、南米やアジア諸地域から参加の道を開いた。フェンシング競技で、旧ロシア帝国が国際連盟枠で優勝し、射撃競技に参加した、上海に亡命していたユダヤ人が優勝した。
サッカーは、ブラジルが国際連盟枠で参加し、ブラジルが銅メダルとなった。優勝は、決勝でオーストリアを破ったイタリアとなり、オリンピック2連覇を達成した。日本は、ベルリンの奇蹟再現を求めたが、予選でイギリスに敗れて、本選参加とはならなかった。
タイから水泳とボクシングに参加すると共に、国際連盟枠で、オランダ領インドネシアやフランス領インドシナも参加したのである。
皇紀2600年の記念式典でもあった、日本でのオリンピック開催は、今上陛下の開催宣言に始まり、世界72の地域から4017人の参加者が集まり、史上最大規模に開催されたのであった。
内地を含めて、経済振興が進み、東京でのオリンピック開催を受けて、日本が一等国としての地位確立を達成することができたのである。
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