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神官ミリアは神の言うことしか聞きません 12
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早朝、というよりまだ黎明。
陽ものぼっていない早い時間に、俺は教会に向かっていた。
ちなみに今の俺は『ミラー』によってユータロウの姿になっている。
俺は教会の扉をドンドンとノックする。
「おーいミリアー! 俺だ! ユータロウだ! 開けてくれー!」
しばらくノックすると、教会の中からドタバタと足音がした。
扉があいて、金髪に寝癖をつけたミリアが顔を出す。
「あらあら……ユータロウ様……遠征に行っていたのでは? どうしてこんなに早くお帰りに……?」
「いやー遠征してたんだけどさ、夢の中で聖人さんにお告げ? みたいなの受けてな、だから急いで帰ってきたんだ!」
「お告げ……ユータロウ様、それはいったいどんなお告げなの……?」
ミリアはおそるおそる、といった様子で聞いてくる。
「ああーそれはな――ところでミリア、このところ教会でうろちょろしていたあの子供はどこだ?」
「こ、ここ、子供……? ユータロウ様、それはいったいなんのことなの? か、皆目検討もつかないわ……」
「いやいただろ、子供。聖人さんが教えてくれたんだけどな、あいつ人に見えるけどトロルの王子らしいぞ!」
ユータロウに化けている俺は、手のひらに火球を浮かべた。
「今のうちに殺っちまおうと思ってな! トロルの丸焼きにしてやる。なあミリア、あいつの家知ってるか?」
「知らない知らない知らないわ……! そんな子供知らないし、もちろん家の場所も知るわけないわ。ええ、えぇ……ユータロウ様、だからその火の球を引っ込めて……そんなものを子供に向けるなんて言わないでぇ!!」
「子供? なに言ってるんだミリア、あいつはトロルだぞ?」
わけがわからない、といった仕草で俺は首を傾げた。
ミリアはユータロウのそんな仕草に愕然とした表情を浮かべた。
自分とユータロウの価値観に、決定的な隔たりを感じているのだろう。
「ユータロウさん……思い出しました、あの子はたしか、街の東の外れに住んでいたはず……ですからそちらに向かっては?」
ミリアは口からでまかせを語る。
ユータロウを教会から遠ざけようとしているのだろう。
ユータロウの呼び方が『様』から『さん』に変わっているのは、彼女がユータロウに失望した証拠だ。
「おおそうか! サンキューなミリア! じゃあちょっとトロルの王子殺ってくるよ!」
ユータロウに化けている俺は、騙されているふりをして教会を離れた。
そして路地裏まできた俺は変身をとき、「ふぅ……」と一息ついた。
しばらくここで時間をつぶすことになる。
「おーやおやモトキさんってばユータロウさんの評判落としに余念がないですねえ。人の評判落としてる時だけあなたとっても輝いてますよ! 人生のお先は真っ暗ですけど!」
先に路地で待っていたリューは、朝からテンション高めに俺を罵倒。
この安定の嫌味、たまに聞くと落ち着く。
「ところでモトキさん、わたしはこれからなにをすればいいんです? このところえっらい長く放置プレイされてまじ暇だったんで、たまにゃーやる気だしちゃいますよわたし。ええ、年2ぐらいで本気出すんです。腕の重りもはずしてきたんでフルパワーです!」
「腕に重りとかつけてなかっただろお前……。そして今回お前にしてもらうことはとくにない」
「いやいやないってこたぁーないでしょう? え、ちょっと待って下さい。じゃあなんでわたしここ呼ばれたんです?」
「いや、俺の暇つぶしのために」
「はっはー! この有能才女リューちゃんを暇つぶしに呼び出すたぁーあなた舐め腐ったことしてくれるじゃありませんか! ――じゃ、新作芸でも披露しますね。刮目して見るがいいですよ」
「……本当ノリいいよな、お前」
リューが次々披露してくれる一発芸を鑑賞しながら時間をつぶしているうちに、空には陽がのぼった。
「お、そろそろか」
俺はこのところいつも使っている子供の姿に化けた。
「んじゃリュー、ちょっと行ってくるよ」
「はいはーい、本妻はどっしりかまえて待ってますよ指輪買って下さい。あなたがサード作ろうが嫉妬とかしませんし指輪買って下さい。あなたが他の女とやってる時も一人宿で寂しく待ってますよ指輪買って下さい」
「……わかった、戻ったら指輪買ってやるから」
俺はげんなりと嘆息した。
「まじですか! いやーどうしてモトキさんはわたしの考えてることがわかるんでしようねぇ、不思議ですねえ、ところでわたし今左手の薬指以外のすべての指を粉砕骨折してまして、ちょっと左手の薬指以外に指輪をはめられそうにないんですが、ええ、左手の薬指にしか」
「それじゃ、また後でな」
「はーい逃げましたーヘタレ男の本領発揮でーす。まあ、今回は中指くらいで手をうってあげましょう。――行ってらっしゃいモトキさん!」
リューに手をふり、俺は子供の姿で教会へと向かった。
教会の扉を開け、「お姉さーん、来たよー!」といつものように礼拝堂へと入る。
すると奥の部屋からあわただしくミリアが飛び出してきた。
ミリアは鞄を背負っていた
「子羊さん! 急いで出発の準備を整えるのよ!」
「え、出発ってどこに……?」
「いいから! 急いで逃げないとあなた殺されてしまうのよ!!」
ミリアは俺の手を引き、教会を飛び出した。
さあて、総仕上げだ。
陽ものぼっていない早い時間に、俺は教会に向かっていた。
ちなみに今の俺は『ミラー』によってユータロウの姿になっている。
俺は教会の扉をドンドンとノックする。
「おーいミリアー! 俺だ! ユータロウだ! 開けてくれー!」
しばらくノックすると、教会の中からドタバタと足音がした。
扉があいて、金髪に寝癖をつけたミリアが顔を出す。
「あらあら……ユータロウ様……遠征に行っていたのでは? どうしてこんなに早くお帰りに……?」
「いやー遠征してたんだけどさ、夢の中で聖人さんにお告げ? みたいなの受けてな、だから急いで帰ってきたんだ!」
「お告げ……ユータロウ様、それはいったいどんなお告げなの……?」
ミリアはおそるおそる、といった様子で聞いてくる。
「ああーそれはな――ところでミリア、このところ教会でうろちょろしていたあの子供はどこだ?」
「こ、ここ、子供……? ユータロウ様、それはいったいなんのことなの? か、皆目検討もつかないわ……」
「いやいただろ、子供。聖人さんが教えてくれたんだけどな、あいつ人に見えるけどトロルの王子らしいぞ!」
ユータロウに化けている俺は、手のひらに火球を浮かべた。
「今のうちに殺っちまおうと思ってな! トロルの丸焼きにしてやる。なあミリア、あいつの家知ってるか?」
「知らない知らない知らないわ……! そんな子供知らないし、もちろん家の場所も知るわけないわ。ええ、えぇ……ユータロウ様、だからその火の球を引っ込めて……そんなものを子供に向けるなんて言わないでぇ!!」
「子供? なに言ってるんだミリア、あいつはトロルだぞ?」
わけがわからない、といった仕草で俺は首を傾げた。
ミリアはユータロウのそんな仕草に愕然とした表情を浮かべた。
自分とユータロウの価値観に、決定的な隔たりを感じているのだろう。
「ユータロウさん……思い出しました、あの子はたしか、街の東の外れに住んでいたはず……ですからそちらに向かっては?」
ミリアは口からでまかせを語る。
ユータロウを教会から遠ざけようとしているのだろう。
ユータロウの呼び方が『様』から『さん』に変わっているのは、彼女がユータロウに失望した証拠だ。
「おおそうか! サンキューなミリア! じゃあちょっとトロルの王子殺ってくるよ!」
ユータロウに化けている俺は、騙されているふりをして教会を離れた。
そして路地裏まできた俺は変身をとき、「ふぅ……」と一息ついた。
しばらくここで時間をつぶすことになる。
「おーやおやモトキさんってばユータロウさんの評判落としに余念がないですねえ。人の評判落としてる時だけあなたとっても輝いてますよ! 人生のお先は真っ暗ですけど!」
先に路地で待っていたリューは、朝からテンション高めに俺を罵倒。
この安定の嫌味、たまに聞くと落ち着く。
「ところでモトキさん、わたしはこれからなにをすればいいんです? このところえっらい長く放置プレイされてまじ暇だったんで、たまにゃーやる気だしちゃいますよわたし。ええ、年2ぐらいで本気出すんです。腕の重りもはずしてきたんでフルパワーです!」
「腕に重りとかつけてなかっただろお前……。そして今回お前にしてもらうことはとくにない」
「いやいやないってこたぁーないでしょう? え、ちょっと待って下さい。じゃあなんでわたしここ呼ばれたんです?」
「いや、俺の暇つぶしのために」
「はっはー! この有能才女リューちゃんを暇つぶしに呼び出すたぁーあなた舐め腐ったことしてくれるじゃありませんか! ――じゃ、新作芸でも披露しますね。刮目して見るがいいですよ」
「……本当ノリいいよな、お前」
リューが次々披露してくれる一発芸を鑑賞しながら時間をつぶしているうちに、空には陽がのぼった。
「お、そろそろか」
俺はこのところいつも使っている子供の姿に化けた。
「んじゃリュー、ちょっと行ってくるよ」
「はいはーい、本妻はどっしりかまえて待ってますよ指輪買って下さい。あなたがサード作ろうが嫉妬とかしませんし指輪買って下さい。あなたが他の女とやってる時も一人宿で寂しく待ってますよ指輪買って下さい」
「……わかった、戻ったら指輪買ってやるから」
俺はげんなりと嘆息した。
「まじですか! いやーどうしてモトキさんはわたしの考えてることがわかるんでしようねぇ、不思議ですねえ、ところでわたし今左手の薬指以外のすべての指を粉砕骨折してまして、ちょっと左手の薬指以外に指輪をはめられそうにないんですが、ええ、左手の薬指にしか」
「それじゃ、また後でな」
「はーい逃げましたーヘタレ男の本領発揮でーす。まあ、今回は中指くらいで手をうってあげましょう。――行ってらっしゃいモトキさん!」
リューに手をふり、俺は子供の姿で教会へと向かった。
教会の扉を開け、「お姉さーん、来たよー!」といつものように礼拝堂へと入る。
すると奥の部屋からあわただしくミリアが飛び出してきた。
ミリアは鞄を背負っていた
「子羊さん! 急いで出発の準備を整えるのよ!」
「え、出発ってどこに……?」
「いいから! 急いで逃げないとあなた殺されてしまうのよ!!」
ミリアは俺の手を引き、教会を飛び出した。
さあて、総仕上げだ。
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