上 下
29 / 44

神官ミリアは神の言うことしか聞きません 7

しおりを挟む
「この寂れた教会を信者でいっぱいにするには……うーん、じゃあまずはお姉さんのこれまでの布教方法の見直しから始めよう。ここが寂れてるのって、結局ミリアさんの布教が下手なのが原因だしね」

 子供に化けた俺は、ミリアと作戦会議をしていた。

 クィーラ教の信者を増やし、この教会を人でいっぱいにするにはどうすればいいのか。
 それを二人で考えていた。

「あらあら子羊さんたら手厳しいのね……それで、わたしはどうすれば?」
 ミリアは真剣に俺の話を聞いている。

「じゃあ、これから僕が教会をふらりと訪れた人の役やるから、お姉さんはいつも通りにクィーラ教に勧誘してみてくれる?」

「ええ、わかったわ!」

 俺はいったん教会の外に出て、再び中へ入る。

 初めて教会を訪れた人をイメージし、俺はキョロキョロとあたりを見回す。

 そんな俺に笑顔で歩みよってくるミリア。

「あらあらどうもこんにちは。迷える羊よ、今日はどんなご用なの? いいえ、答えなくてもいいの。私にはちゃぁーんとわかっているから。悩めるあなたは女神クィーラに救いを求めてやってきたのね。そうに違いない! さあ、こっちにいらっしゃい。私が女神クィーラの尊い教えをちゃーんとあなたに伝えてあげますからね」

 息継ぎもせずにまくし立て、俺を説法室へと引っ張っていこうとするミリア。

「ストップ……! お姉さんストップ! 全然だめだよ!!」
 俺は演技を止めた。

「あら……私なにか失敗してしまったかしら? 私なりに一生懸命布教しようと……」

「布教っていうか通報案件だけどね今のは……」
 俺は深く息を吐いた。
「……お姉さん、とりあえず一気にしゃべるのやめようか。怖いよ」

「あらあらそんな……だって、私伝えたい事がいっぱいあるの。クィーラ様の教えを一つでも多く、迷える羊たちの耳に入れてあげたくて……」

「相手が聞いてくれなきゃ意味ないでしょ。――お姉さんは人の話をもっと聞くようにしようよ。自分から話すんじゃなく、話しかけられた時だけ答える感じにしよう? 自分から話すの禁止!」

「そうね……たしかにそうするべきね。そういうところをシルヴァ様にも昨夜怒られたのだし。でも……どうしたら私、人に話しかけてもらえるかしら……小さい頃からなぜか人には遠巻きにされてばかりなの、私」

荘厳そうごんな感じがダメなのかもね。もっと話しかけやすい雰囲気をつくろうよ。お姉さんもっとバカっぽく笑ってみたら? にこー! って」

「バカっぽく笑う……? こうかしら……に、にこー……」
 ミリアの笑顔は堅かった。
 育ちの良さがじゃましているようだ。

「違うよ! もっと屈託ない感じで、にこー! って」

「に、にこー……!」

「全然だめだよ、もう一回!」

「うぅ……今日の子羊さんたら、なんだかとっても厳しいわ……」 
 
 ミリアは泣き言を吐いたりもしたが、笑顔の練習を続けた。

 まじめな上に忍耐力の強いミリアは決してへこたれなかった。 


 ――そして三日後。

「どうかしら子羊さん、わたしの笑顔は!」
 
 ミリアの顔には、とても感じの良い笑顔があった。

「うん、すっごくいいと思う!」

 これまでの慈愛溢れる笑みも悪くはなかったのだが、なんというか、神聖な感じがしすぎて近寄り難かったのだ。

 今は、話しかけたくなるような暖かさがある。

「ねえ子羊さん、私この笑顔を浮かべていれば人に話しかけてもらえるかしら? クィーラ教を布教しやすくなるかしら?」

「うーん……」
 俺は改めてミリアの全身を眺めてみる。
 
 まだ、いまいち話しかけにくい。 

 なんかキッチリしすぎてるのだ。

 神官服がいけないのだろう。

 ずいぶんと質のいい生地でつくられた純白の聖衣。
 上下一体のそれは、ミリアの肌を全身隙なく隠している。

 所々に入った刺繍もいかめしい。

「そうだ! ねえお姉さん、ちバサミ持ってる?」

「? ええ、あるけど……」

 俺はミリアにハサミを持ってこさせた。

「じゃあ切るね。危ないから動かないでよ」

「え……!? ちょっと子羊さん、あなた一体なにを!?」

 戸惑うミリアにかまわず、俺はミリアの神官服のスカート部分にハサミを入れた。

 裾から足の付け根にむかって立てに切り裂き、神官服に深いスリットをつくる。

「し、神聖な神官服になんてことを……! 子羊さん、あなたはなんて悪い子なの……そこにお直りなさいな! お説教ですからね!」

 俺を叱りつけながらも、スリットをもじもじと手で押さえるミリア。
 その顔は真っ赤に染まっていた。

 俺は得意げに笑って言う。
「そうやってスリット入れると、お姉さん恥ずかしくてもじもじするでしょ。かわいくて話しかけやすいよ。それに、その格好だとお姉さん恥ずかしくてあんまり自分から話せなくなるでしょ? 一石二鳥じゃない」

「で、でも……こんな、伝統を汚すようなこと……」

「でも昨日光臨した聖人さんには、柔軟に色々変えてもいいって言われたんだよね? だったら神官服のデザインだって変えてもいいはずじゃない」

「そ、そうだけど……でも、これは……」

「そうだお姉さん、いっそパンツも脱ぎなよ!」
 俺は思い立って言った。

「パ、パンツ……? ど、どうして私がパンツを脱がなくてはいけないの!」

「だってパンツ脱げば、お姉さんもっと恥ずかしくなってもっともじもじするでしょ? そしたら相手はお姉さんに話しかけやすいし、お姉さんは自分が話すどころじゃなくなるし――うん、布教にうってつけだよ」

「い、いくら布教のためとはいえ、パンツもはかずにお外を出歩くなんて……! できないわ、そんな! 私はそんなはしたない女ではないの!」

「へえ。お姉さんの布教に対する思いってその程度なんだ。がっかりだよ」
 俺は冷たい口調で言った。

「そ、そういうわけじゃ……だって、パンツを脱ぐのはいくらなんでも……」

「ううん、やりすぎなんてことはないよ。恥ずかしいから脱げないだなんて、お姉さんのクィーラ様への愛はそんなものなの? 本当にクィーラ様を愛しているならお姉さんはパンツを脱ぐべきだ!!」

 俺が問いつめると、ミリアはハッと目を見開いた。
「あぁ……たしかにそうだわ。クィーラ様への愛より自分の羞恥心を優先するなんて間違っている。子羊さんの言うとおり。――私脱ぐわ!!」

「あ、じゃあ僕が脱がせてあげるね」
 俺はミリアのスリットに両手を手を差し込んだ。

「え……ちょ、ちょっと子羊さん……やぁんッ! ……ど、どこ触ってるの……!」

 どさくさに紛れてミリアの大事な部分を触ったりしながら、俺はパンツの縁をつかんだ。

 あえてゆっくりゆっくり、ミリアのパンツをずり下げていく。

 股間が露わになっていく。

 おお、ミリア……この歳でツルツルだ。

「うぅ……恥ずかしいけど、これは布教のため……クィーラ様のためなの……」
 ミリアはぎゅっと目をつむり、パンツを脱がされる羞恥心に耐えていた。

 もはや布教がどうとか全然関係なくなっていることには気づいていないようである。

 ついにパンツを脚から抜いたミリアは、スリットから大事な場所が見えないか不安でたまらないようで、もじもじしていた。

 最初の頃の、あのオーラに満ちた感じはすっかりなくなっていた。

「ねえ子羊さん……私、……変われているかしら……?」

「うん! お姉さんはやっぱりすごいよ!!」

「そ、そうかしら? ありがとう子羊さん。あなたのおかげよ!」


 ああ、バカな女の子で遊ぶのって楽しい。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...