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7章 DT包囲網!?

186話 腐れ縁らしいです

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 レンの思わぬ切り返しにズゴズゴと逃げを打った雄一は、巴を担いで嫌々ではあるが仕方がない、と言いながら冒険者ギルドを目指して歩いていた。

「クッフフ、ご主人もレンが本気でいっとらん事は分かっておったろ?」

 巴が可視化して雄一の肩に座る。

 だが、市場を歩いているのに誰も巴の姿が見えていない。市場の人から見たら普通に肩に青竜刀を担いでいるようにしか見えない為である。

 雄一と巴は魂と深い結び付きがあるからできる精神体のようなものである。

「まあな」

 頭をガシガシと掻く雄一をいたぶるネコのような目で巴は見つめる。

「ご主人があれだけ男気を見せた返事をされたら、女として本懐……」
「そんなんじゃないだろ? あんな情けない言い訳みたいなのはな……」

 巴の言葉を遮り、叫びたかったがさすがにここで叫ぶ訳にも行かずに、代わりに深い溜息を吐く。

 納得がいってない顔をしてる雄一の頬に手を添える巴は、

「まあ、周りでどれだけピーチク囀ろうとも、ご主人に一番に寄り添うのは、わっちじゃがな」
「結局、言いたかったのはそれかよ?」

 呆れる雄一を細めた目で見つめる巴が添えた手を動かしながら撫でる。

「当然じゃろ? 雌だろうが女だろうが縄張り争い、棲み分けに大忙しじゃ」

 クッフフ、と笑う声を最後に巴は可視化を解く。

 雄一はどうして自分の周りにいる女はこんなにも強いのだろうと苦悩する。正直、良くて半数、下手したら全員が離れると思っていたら、誰一人も離れず、待つ選択をするとは思ってもいなかった。

 そして、この結果から、それが成された瞬間、雄一には逃げ道も何もなく、人生の墓場へと直行が決まっている。

 勿論、嫌な訳はない。

 だが、

「多すぎるだろ? さすがによぉ」

 心の片隅で一時避難、そうあくまで一時避難できる場所は確保しておいたほうがいいかもしれないと切実に雄一は検討に入りながら、冒険者ギルドへと歩いていった。

 ボンクラの雄一は気付いていなかった。

 何故、巴が出てきて、話を雄一に振り、悪戯をするような目で見つめたのかを……

 4年経っても雄一は女心とデリカシーは赤点のままであった。







 冒険者ギルドに行くと受付嬢がカウンター業務をしており、声をかける。

「悪いんだが、産廃エルフを呼んでくれるか?」
「はい、少々お待ち下さいね?」

 そう言うと胸もお尻も素晴らしいモノを揺らす受付嬢の後ろ姿を見つめて思う。

 どうして、出会いを諦めたら受付嬢との接点が増えているのだろう、と苦悩する。

 ここのところ、冒険者ギルドに来ても受付にミラーがいた事がない気がする。奥に引っ込んだのかと思えば、単純にサイクルが噛み合ってないだけだとリホウに証言された。

「理不尽だ……」

 世の摂理に恨み事を垂れていると、奥から瞳が死んでるヘラヘラ笑うエルフが現れる。

 どことなく嬉しそうにしながら、席に着くミラーが雄一を見つめてくる。

貴方専属・・・・のミラーでございます。お呼び立てして申し訳ありません」
「一々、強調するな。なるべく忘れるようにしてる」

 雄一の物言いにも嬉しそうにするミラ―に顔を顰める。

 ミラーは今、思い出した、と言いたげな顔をすると雄一に顔を寄せて話し始める。

「そういえば、ユウイチ様、王都から早馬が来ましてね?」
「別件の新しい話か?」

 確認する雄一は、聞く体勢になり、ミラーに向き直る。

 神妙そうな顔をしたミラーが話し始める。

「実は、ポプリ女王がダンガ入り……」
「2日前の夜から家にいるわっ!」

 カウンターをゴン、と叩く雄一に驚いた顔をしたミラーが眉間を揉む。

 雄一に、「そんな遅い情報をわざわざ早馬を使う馬鹿は誰だ?」と問われたミラーは、やっちゃった……という顔をして言ってくる。

「実は3日前に届いてたんですが、書類に埋もれてたようで……」

 手遅れでしたか、とテヘペロするミラーの胸倉を掴んで持ち上げる。

「3日前と言ったな? そんなタイミングでお前に送ってきそうな人物といえば、エイビス以外いないだろ?……お前がエイビスの手紙を後廻しになんかしないだろ!」
「さ、さすがユウイチ様、お見事な慧眼ですね……」

 そう騒ぐ雄一達であるが、周りは一切視線を寄こさない。

 隣のカウンターの受付嬢、冒険者すらこちらに気にした様子を見せない。

 この2人がこうしてる事など、水に入ったら濡れる、ぐらいという認識が広がっている。
 雄一にとっては不名誉であるが、じゃれ合ってるという認識であった。

「俺もさすがにお前とエイビスと縁を切る為に手を汚す時かと、覚悟を決めそうなんだが?」

 剣呑な視線を向ける雄一に胸倉を掴まれて持ち上げられているミラーは、達観した笑みを浮かべる。

「良いでしょう。ユウイチ様に殺されるなら本望っ……! ですが、覚えておいてください。私を殺しても、第二のミラー、第三のミラーがきっと現れます」
「うあっ! お前って死ぬと増殖するのか!?」

 まるで汚いモノを手放すようにミラーを床に降ろす。

 ドヤ顔したミラーが乱れた服を整える。

「このツンデレさん、安心してください。私はエルダ―エルフ。貴方と共に悠久の時間を共にしていきますから」
「激しく嫌過ぎるっ!」

 身悶えするレベルで嫌だと叫ぶ雄一は、カウンターに突っ伏す。

 隣にいた受付嬢が、ミラーにOKサインを出す。

 それを見て頷いたミラーは掌を叩いてみせる。

「さて、追跡者・・・盗聴・・もないと調べがつきましたので、ユウイチ様との楽しいコミニケーションはこれぐらいにしまして……」
「お前の前振りは長いんだよ」

 ウンザリする雄一は、そんなヤツがいたら、すぐに取り押さえるとぼやく。

 笑みを浮かべるミラーは、「念の為ですよ」と告げると本題を口にする。

「ポプリ女王からはどの程度聞かれてます? ペーシア王国と予言だけですか?」

 そう言ってくるミラーに雄一は目を細めて、声のトーンを落として聞き返す。

「その言い方だと、それだけじゃないのか?」

 そう言う雄一の言葉にミラーは頷いてくる。

 顰めっ面する雄一は歯軋りする。

「想像以上に厄介な事になっているようだな」
「ええ、有史、いえ、私が知る限り、最悪の歴史が刻まれるかもしれません」

 ミラーが、雄一に「場所を変えましょう」と言って立ち上がると難しい顔をした雄一はミラーの後を追ってカウンターから離れた。



 着いて行った先は、以前、ミュウの一件の話を聞く為に連れてこられた部屋であった。

 あれ以来、ここに来ずに済んだのは平和だったという事か、と溜息が洩れる。

 ミラーに勧められて席に着く。

「一応、先にペーシア王国と予言についての擦り合わせさせてください」

 そう言ってくるミラーにポプリとリホウに聞いた事を説明すると頷かれる。

「その2件に関しては私の持ってる情報とズレはありませんね。それでこれが今朝の早馬で送られてきた手紙です」

 取り出した手紙を雄一に手渡す。

 受け取った雄一が手紙の文字に目を走らせると眉間に皺が寄って行き、最後には手紙を持つ手に力が入り、紙がクシャとさせる。

「おいおい、これはどんな冗談だ?」
「冗談ではないようです、友、エイビスが掴んだ情報ですから」

 そこにはこう書かれていた。

 ペーシア王国とパラメキ国と隣接するシキル共和国もパラメキ国に侵攻の動きあり、と書かれていた。
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