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1章 DT、父親になる
24話 大トリを務めるのは、この方です!
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いつも通りの目を覚ます時間に目を覚ました雄一であったが、目を開けても目の前が真っ暗である事に少しびっくりする。
落ち着いてよく見ると肌色に覆われている事に気付き、上のほうから、寝息が聞こえる。
視線を右にずらすとアリアが、雄一の服の袖を握りながら寝ているところから推測するに、どうやら、ミュウに抱き締められているようである。
首に巻き付くように足でされているようで、ガッチリとホールドされているようだ。
雄一が起きた事に気付いたのか、ミュウが目を擦りながら体を離す。
「おう、おはよう、ミュウ」
起きたと思った雄一はミュウに挨拶するが、ピントが合ってない目で雄一を見つめながら涎を垂らしてる姿を見て、雄一の嫌な予感がする。
「ご飯、ミュウ、お腹ペコペコ」
あーん、と口を開けると雄一の顔に近づいてくるのを見つめ、
「ミュウ! 起きろ。俺は、ご飯じゃないぞっ!!」
必死の雄一の訴えも寝惚けて腹を空かせるミュウには届かず、無情にもガブリと顔を噛まれて雄一の悲鳴が響き渡った。
▼
雄一の悲鳴が、ニワトリの代わりになり、今日の北川家では、みんな早起きになり、眠そうなレイアに雄一は蹴られる事になった。
女の子のお着替えをしている間に雄一は、朝食の準備をしていた。
今日は、フレンチトーストを作る事にする。
ボールに卵と牛乳、砂糖にバニラエッセンスを入れ、それをしっかりかき混ぜる。食パンの耳を切り取り、それをボールで浸し、吸い込むのを確認すると、数が多いので、パエリアを作るものを竈のとろ火で熱するというより、温めるようにして、バターを入れる。
温まったのを確認したら浸したパンを敷いて、蓋をして5分ほど蒸すように焼く。
その待ってる時間を利用して、パンの耳をラスクにする。
隣の竈で熱したフライパンにバターを多めに入れ、半分ぐらい溶けるのを確認すると投入する。
軽く焦げ目がつくのを確認して、砂糖を塗し綺麗に絡めて、皿に盛れば完成である。
そうこうしてると、5分経ち、フレンチトーストを引っ繰り返し、再び、5分、同じ事をすれば完成である。
雄一は、できたフワフワのフレンチトーストを人数分の皿に盛り、テキパキと食堂のテーブルに運び、ラスクをテーブルの中央に置いた。
ナイフやフォーク、コップなどを配膳すると各自のコップに牛乳を入れて歩いていると後ろから人がくる気配に気付く。
振り返ってみて雄一は最初にびっくりするが、徐々に驚きから立ち直り、頬笑みを浮かべて現れた4人の子達に近寄る。
「みんな、とても良く似合ってるぞ」
手始めと言わんばかりに、雄一に近づいてきたアリアとミュウを両手で抱き締める。
アリアは、雄一が買ってきたヘアーバンドをリボンのように使い、白いセーターにネズミ色のスカートを着ているが、肩からスカートと同じ生地が見えるので、アリアに問いかける。
「セーターの下の服もスカートと同じ色にしたのか?」
そう言うと、アリアは首を横に振り、雄一から離れるとセーターを脱ぎ出す。
脱いだアリアを見て、納得する。どうやらノースリーブのワンピースの上に着ているようだ。
雄一は、アリアにバンザイと言い、バンザイしたアリアにセーターを着せる。
ミュウに視線を向けると、スポーツブラに羽織ってるだけの茶色のベストに白の短パンを履いている。
履いている短パンのお尻のところから、豆柴のような可愛らしい尻尾が覗いていた。
そして、首元に着けた鈴が激しく自己主張しているのに雄一の頬が緩む。
「ミュウも可愛いぞ? でも、寒くないのか?」
腰蓑しか着けてなかったミュウなら、そんな事はないだろうとは思ったが一応確認する。
「大丈夫。ミュウ、平気」
ガゥと力強く頷く姿に、癒されるような、呆れるような気持ちにされながら、2人の後ろにいるレイアとホーラに見つめる。
レイアは、アリアと違って、髪の上から巻くように、そう鉢巻を着けるような巻き方をしてオレンジの長袖のシャツを着て、デニムの短パンを履き、黒タイツを着用している。
「アリアも可愛いが、レイアも可愛いぞぉ!!」
跳びかかるようにレイアに迫るが、レイアは前蹴りを雄一の顔に入れる。
「レイアの蹴りのキレが上がってる……」
「当たり前さ、今まではワンピースだったから、躊躇してたとこがあるのに、短パンになれば、躊躇しなくなるのは道理さ」
蹴りを入れられた雄一は、「痛くないっ!」と雄一の顔を押し退けるように蹴っているレイアの足から逃れて抱き締めると頬ずりを幸せそうにする。
嫌がるレイアがホーラに助けを求め、呆れるホーラが「あんまりしつこいと嫌われるさ?」と言われた雄一が青い顔をしてシュバッという音が聞こえそうな動きで離れる。
解放されたレイアがホーラの後ろに隠れるようにするのを目で追うとホーラの姿も変わっている事に気付き、感心するように上から下へと眺める。
雄一に買って貰ったカチューシャを着けて、白のシャツに黒のミリタリーベストをしっかり着こなし、黒のミニスカートに黒のロングブーツ姿を見つめて、雄一は苦笑する。
「似合っているが、もう少し実用性から離れても良かったんだぞ?」
「アタイは、冒険者なんだ。これぐらいが丁度いいさ」
ベストに色々仕込めると雄一に熱弁するホーラ。
ホーラが満足してるなら、細かい事を言うのは止めておこうと、嘆息して、シホーヌとアクアを見るが、2人は昨日と同じ格好であった。
「シホーヌは、着替えないのか?」
「私は、好きに衣装は変えれるのです」
はいっ! という掛け声を上げるとシホーヌはヒラヒラのメイド服に着替える。
雄一が、おおっ! と驚くのに気分を良くしたシホーヌは、再び、掛け声を上げると、白い水着のビキニ姿になる。
最初は、どうだ! とばかりに胸を張っていたが、徐々に震え出し、顔を青くする様を見て雄一は溜息を吐き、呆れながらシホーヌに口を開く。
「寒いんだろ? 早く、いつもの格好になれよ」
「しょ、しょうがないのですぅ。ユウイチの目のやり場に困るという要望を聞いて、いつもの格好になるのですぅ」
いつもの白のワンピース姿になるのを、横で見ていたアクアが、わざとらしい笑い方をして馬鹿にする。
「プークスクス。女神とはもっとまともなイメージを持っていましたけど、馬鹿ばかりなのでしょうか?」
「いや、さすがにコイツを基準に言われると神々から訴えられる気がするぞ?」
雄一とアクアのやり取りを見ていたシホーヌは、プンプンと拳を天に上げて怒る。
「今日は、ユウイチと口をきいてやらないのですぅ!!」
白けた目をした雄一が、フレンチトーストをシホーヌの眼前に持っていき、左右に揺らすように動かす。
涎を垂らし……口許から青春の汗が垂れるシホーヌはネコがネコじゃらしを追いかけるように忙しなく目を動かしていた。
「じゃ、シホーヌの分のこれは俺が食うけど、いいか?」
「仕方がないので口をきかないのは、今度にするのですぅ~」
雄一が持つ、フレンチトーストを奪い、自分の席に座るシホーヌを見つめ、周りを見渡す。
「さあ、朝食にしようか」
各自、自分の席に着き、いただきます、をして食べ始めた。
やはり、シホーヌはチョロかった。
▼
朝食が済み、後片付けが済ませた雄一はホーラを呼ぶ。
「今日は、マッチョの社交場へ行った後、冒険者ギルドに行って、仕事を見てこようと思うんだが、いけるか?」
「勿論さ、生活魔法の火と水は使えるようになったし、後、ユウ、お願いがあるんだけど?」
モジモジするホーラが雄一に上目遣いをしながら、頬を染める。
「ん、なんだ?」
「そのぉ……新しい飛び道具が欲しいさ。弓とかボウガンは今度でいいから、えっと……ベストに仕込めそうな飛び道具が……欲しいさ!」
買って貰ったミリタリーベストに入れるべき何かを入れたくてしょうがない気持ちが先行してしまい、少し恥ずかしそうにするホーラが可愛くてしょうがないとばかりに優しく髪を撫でる。
「冒険で必要なものは遠慮せずに、相談してくれと言う言葉を実践して偉いぞ? 行ったら、何か良い物ないか聞いてみるか」
雄一は、ホーラに出かける準備ができたら声をかけてくれ、と伝え、自分も出かける準備をする為に部屋へと戻っていった。
部屋に戻り出かける準備をしているとドアをノックする音がするので、「はーい」と返事して扉を開けると、シホーヌとアリアがドアの向こうにいた。
「ユウイチに買ってきた服を渡してなかったのですぅ。どうぞなのですぅ」
黒い布でできた物を手渡され、その場で広げて自分にあててみる。
「何故に、カンフー服?」
「なんとなく、ユウイチに似合いそうだと思ったのですぅ!」
フーンと呟きながら、ブレザーを脱ぎ、シャツを脱ぎ、上半身裸になると、シホーヌが顔を赤くして騒ぎ出す。
「乙女の前で裸になろうとしないで欲しいのですぅ! ユウイチはやっぱりデリカシーがなさ過ぎなのです!!」
雄一は、パンツを脱ぐならともかく、上半身だけで卑猥物扱いされた事にショックを隠せず自分の体を見る。
痩せマッチョとは、とても言えないが筋肉が良く締まり、格闘家のように均整がとれた体つきをしてると思っている。
それを、シホーヌにあそこまで言われるのは心外であった。
シホーヌも顔を手で覆ってますとアピールしているが、指の隙間から瞳がバッチリ出ており、瞳が先程から上下左右と忙しそうに動いているのを見て呆れる。
「分かった、分かった。着替えるから出ていってくれないか?」
「せっかく持って来てあげたのに、さっさと追い出そうとか酷過ぎなのです!」
プンプンと怒りながら、アリアの手を掴んで後ろを向いて、後ろ手でドアを閉めようとしているシホーヌに雄一は声をかける。
「ありがとうな、こういう服は一回着てみたいと思ってたんでな」
「ユウイチのアホっ!」
バタンと力強くドアを閉める隙間から、見えたシホーヌの耳が、赤くなっているのに気付いてしまった雄一は微笑む。
もう一度、ドアに向かって、ありがとう、と告げるとズボンも脱いで、カンフー服に着替える。
着替えると雄一のサイズにピッタリで、体のラインがはっきり出てしまってるから、動きにくいかと思えば、まったく動きを阻害しない服に雄一の顔に笑みが漏れる。
縛った髪が前に来てるのを、嬉しそうに後ろに指で弾くようにする。
再び、ドアをノックする音に振りむくと、
「ユウ、用意はできた?」
「おう、後、少しだ。ちょっと待ってくれ」
雄一は慌てて、森で採ってきたリンゴを風呂敷に入れ、財布を内側に仕舞い、左手に逆刃刀を持ち、肩にはミュウを完備……!?
「ミュウも行くのか?」
「がぅ、ミュウ、今日はユーイと遊ぶ」
遊びに行くんじゃないんだがなと、ぼやくように呟くがミュウの好きにさせることにした。
ドアを出ると、ホーラ以外にも何故かアクアまで一緒にいるので、不思議そうに見つめるが、ホーラとアクアにそれ以上に視線を上下する瞳に力を込めて見られる。
「ユウ、少し奇抜な感じがするけど、凄く似合ってるさ」
「本当に、とても似合ってます、主様。これが、あの馬鹿女神が選んでなかったらもっと賛美できたのですけど……」
ホーラが少し呆けたような顔をした後、頬を染めながら言ってくる。
アクアは、シホーヌをディスるが、あの2人は結構、気が合うのか、楽しそうに喧嘩する姿を見かけるので好きに言わせる。
「ありがとうな、俺も動き易いから気に入ってたとこだったんだ」
ホーラの頭を撫でてやると頭の上のミュウが、「ミュウも!」と体を揺すってアピールしてくるので苦笑しながら撫でてやる。
「主様、私も撫でていいのですよ?」
頭を差し出して、ワクワクしてるアクアの頭をポンポンとおざなりに撫でる。
「今の撫で方は、2人に比べて愛が足りてません!」
と言ってくるアクアであるが、口許がムニムニさせているところからすると結構嬉しそうである。
雄一は、はいはい、と取り合わず、アクアを放置してホーラに出発しようと伝えて玄関から出発した。
やはり、アクアも着いてくる気だったようで一緒にマッチョの社交場へと向かって歩いた。
アクアとミュウからすると、見るモノ見るモノ全てが物珍しい物のようで、あれ見て、これ何? で騒がしく、雄一は、袖を引っ張られたり、髪を引っ張られたりして大忙しであった。
「ユウも大変さぁ~」
苦笑混じりにホーラに言われるが、助けてくれる気がないようで、目的地のマッチョの社交場に着くまで、雄一は引っ張られ続けた。
やっと、目的地に着いた雄一達は、会うのが気が重いと項垂れながらドアを開けると目に優しくない光景が目に飛び込んでくる。
「待ってたわっ! プリティボーイ!! 美しくなった私を見てぇ!!!」
真っ赤なモッコリパンツをラメを強化素材として使ったようで、真っ赤なラメ入りモッコリパンツに進化させたミチルダが出迎える。
エビぞりで見せつけるようにして……
雄一は、何もなかったかのように、ドアを閉じると、震えるホーラとアクアに向き直り、
「やっぱり、冒険者ギルドに行こうか?」
そう言うとミュウが、ガゥと応え、雄一は、マッチョの社交場に背を向けた。
落ち着いてよく見ると肌色に覆われている事に気付き、上のほうから、寝息が聞こえる。
視線を右にずらすとアリアが、雄一の服の袖を握りながら寝ているところから推測するに、どうやら、ミュウに抱き締められているようである。
首に巻き付くように足でされているようで、ガッチリとホールドされているようだ。
雄一が起きた事に気付いたのか、ミュウが目を擦りながら体を離す。
「おう、おはよう、ミュウ」
起きたと思った雄一はミュウに挨拶するが、ピントが合ってない目で雄一を見つめながら涎を垂らしてる姿を見て、雄一の嫌な予感がする。
「ご飯、ミュウ、お腹ペコペコ」
あーん、と口を開けると雄一の顔に近づいてくるのを見つめ、
「ミュウ! 起きろ。俺は、ご飯じゃないぞっ!!」
必死の雄一の訴えも寝惚けて腹を空かせるミュウには届かず、無情にもガブリと顔を噛まれて雄一の悲鳴が響き渡った。
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雄一の悲鳴が、ニワトリの代わりになり、今日の北川家では、みんな早起きになり、眠そうなレイアに雄一は蹴られる事になった。
女の子のお着替えをしている間に雄一は、朝食の準備をしていた。
今日は、フレンチトーストを作る事にする。
ボールに卵と牛乳、砂糖にバニラエッセンスを入れ、それをしっかりかき混ぜる。食パンの耳を切り取り、それをボールで浸し、吸い込むのを確認すると、数が多いので、パエリアを作るものを竈のとろ火で熱するというより、温めるようにして、バターを入れる。
温まったのを確認したら浸したパンを敷いて、蓋をして5分ほど蒸すように焼く。
その待ってる時間を利用して、パンの耳をラスクにする。
隣の竈で熱したフライパンにバターを多めに入れ、半分ぐらい溶けるのを確認すると投入する。
軽く焦げ目がつくのを確認して、砂糖を塗し綺麗に絡めて、皿に盛れば完成である。
そうこうしてると、5分経ち、フレンチトーストを引っ繰り返し、再び、5分、同じ事をすれば完成である。
雄一は、できたフワフワのフレンチトーストを人数分の皿に盛り、テキパキと食堂のテーブルに運び、ラスクをテーブルの中央に置いた。
ナイフやフォーク、コップなどを配膳すると各自のコップに牛乳を入れて歩いていると後ろから人がくる気配に気付く。
振り返ってみて雄一は最初にびっくりするが、徐々に驚きから立ち直り、頬笑みを浮かべて現れた4人の子達に近寄る。
「みんな、とても良く似合ってるぞ」
手始めと言わんばかりに、雄一に近づいてきたアリアとミュウを両手で抱き締める。
アリアは、雄一が買ってきたヘアーバンドをリボンのように使い、白いセーターにネズミ色のスカートを着ているが、肩からスカートと同じ生地が見えるので、アリアに問いかける。
「セーターの下の服もスカートと同じ色にしたのか?」
そう言うと、アリアは首を横に振り、雄一から離れるとセーターを脱ぎ出す。
脱いだアリアを見て、納得する。どうやらノースリーブのワンピースの上に着ているようだ。
雄一は、アリアにバンザイと言い、バンザイしたアリアにセーターを着せる。
ミュウに視線を向けると、スポーツブラに羽織ってるだけの茶色のベストに白の短パンを履いている。
履いている短パンのお尻のところから、豆柴のような可愛らしい尻尾が覗いていた。
そして、首元に着けた鈴が激しく自己主張しているのに雄一の頬が緩む。
「ミュウも可愛いぞ? でも、寒くないのか?」
腰蓑しか着けてなかったミュウなら、そんな事はないだろうとは思ったが一応確認する。
「大丈夫。ミュウ、平気」
ガゥと力強く頷く姿に、癒されるような、呆れるような気持ちにされながら、2人の後ろにいるレイアとホーラに見つめる。
レイアは、アリアと違って、髪の上から巻くように、そう鉢巻を着けるような巻き方をしてオレンジの長袖のシャツを着て、デニムの短パンを履き、黒タイツを着用している。
「アリアも可愛いが、レイアも可愛いぞぉ!!」
跳びかかるようにレイアに迫るが、レイアは前蹴りを雄一の顔に入れる。
「レイアの蹴りのキレが上がってる……」
「当たり前さ、今まではワンピースだったから、躊躇してたとこがあるのに、短パンになれば、躊躇しなくなるのは道理さ」
蹴りを入れられた雄一は、「痛くないっ!」と雄一の顔を押し退けるように蹴っているレイアの足から逃れて抱き締めると頬ずりを幸せそうにする。
嫌がるレイアがホーラに助けを求め、呆れるホーラが「あんまりしつこいと嫌われるさ?」と言われた雄一が青い顔をしてシュバッという音が聞こえそうな動きで離れる。
解放されたレイアがホーラの後ろに隠れるようにするのを目で追うとホーラの姿も変わっている事に気付き、感心するように上から下へと眺める。
雄一に買って貰ったカチューシャを着けて、白のシャツに黒のミリタリーベストをしっかり着こなし、黒のミニスカートに黒のロングブーツ姿を見つめて、雄一は苦笑する。
「似合っているが、もう少し実用性から離れても良かったんだぞ?」
「アタイは、冒険者なんだ。これぐらいが丁度いいさ」
ベストに色々仕込めると雄一に熱弁するホーラ。
ホーラが満足してるなら、細かい事を言うのは止めておこうと、嘆息して、シホーヌとアクアを見るが、2人は昨日と同じ格好であった。
「シホーヌは、着替えないのか?」
「私は、好きに衣装は変えれるのです」
はいっ! という掛け声を上げるとシホーヌはヒラヒラのメイド服に着替える。
雄一が、おおっ! と驚くのに気分を良くしたシホーヌは、再び、掛け声を上げると、白い水着のビキニ姿になる。
最初は、どうだ! とばかりに胸を張っていたが、徐々に震え出し、顔を青くする様を見て雄一は溜息を吐き、呆れながらシホーヌに口を開く。
「寒いんだろ? 早く、いつもの格好になれよ」
「しょ、しょうがないのですぅ。ユウイチの目のやり場に困るという要望を聞いて、いつもの格好になるのですぅ」
いつもの白のワンピース姿になるのを、横で見ていたアクアが、わざとらしい笑い方をして馬鹿にする。
「プークスクス。女神とはもっとまともなイメージを持っていましたけど、馬鹿ばかりなのでしょうか?」
「いや、さすがにコイツを基準に言われると神々から訴えられる気がするぞ?」
雄一とアクアのやり取りを見ていたシホーヌは、プンプンと拳を天に上げて怒る。
「今日は、ユウイチと口をきいてやらないのですぅ!!」
白けた目をした雄一が、フレンチトーストをシホーヌの眼前に持っていき、左右に揺らすように動かす。
涎を垂らし……口許から青春の汗が垂れるシホーヌはネコがネコじゃらしを追いかけるように忙しなく目を動かしていた。
「じゃ、シホーヌの分のこれは俺が食うけど、いいか?」
「仕方がないので口をきかないのは、今度にするのですぅ~」
雄一が持つ、フレンチトーストを奪い、自分の席に座るシホーヌを見つめ、周りを見渡す。
「さあ、朝食にしようか」
各自、自分の席に着き、いただきます、をして食べ始めた。
やはり、シホーヌはチョロかった。
▼
朝食が済み、後片付けが済ませた雄一はホーラを呼ぶ。
「今日は、マッチョの社交場へ行った後、冒険者ギルドに行って、仕事を見てこようと思うんだが、いけるか?」
「勿論さ、生活魔法の火と水は使えるようになったし、後、ユウ、お願いがあるんだけど?」
モジモジするホーラが雄一に上目遣いをしながら、頬を染める。
「ん、なんだ?」
「そのぉ……新しい飛び道具が欲しいさ。弓とかボウガンは今度でいいから、えっと……ベストに仕込めそうな飛び道具が……欲しいさ!」
買って貰ったミリタリーベストに入れるべき何かを入れたくてしょうがない気持ちが先行してしまい、少し恥ずかしそうにするホーラが可愛くてしょうがないとばかりに優しく髪を撫でる。
「冒険で必要なものは遠慮せずに、相談してくれと言う言葉を実践して偉いぞ? 行ったら、何か良い物ないか聞いてみるか」
雄一は、ホーラに出かける準備ができたら声をかけてくれ、と伝え、自分も出かける準備をする為に部屋へと戻っていった。
部屋に戻り出かける準備をしているとドアをノックする音がするので、「はーい」と返事して扉を開けると、シホーヌとアリアがドアの向こうにいた。
「ユウイチに買ってきた服を渡してなかったのですぅ。どうぞなのですぅ」
黒い布でできた物を手渡され、その場で広げて自分にあててみる。
「何故に、カンフー服?」
「なんとなく、ユウイチに似合いそうだと思ったのですぅ!」
フーンと呟きながら、ブレザーを脱ぎ、シャツを脱ぎ、上半身裸になると、シホーヌが顔を赤くして騒ぎ出す。
「乙女の前で裸になろうとしないで欲しいのですぅ! ユウイチはやっぱりデリカシーがなさ過ぎなのです!!」
雄一は、パンツを脱ぐならともかく、上半身だけで卑猥物扱いされた事にショックを隠せず自分の体を見る。
痩せマッチョとは、とても言えないが筋肉が良く締まり、格闘家のように均整がとれた体つきをしてると思っている。
それを、シホーヌにあそこまで言われるのは心外であった。
シホーヌも顔を手で覆ってますとアピールしているが、指の隙間から瞳がバッチリ出ており、瞳が先程から上下左右と忙しそうに動いているのを見て呆れる。
「分かった、分かった。着替えるから出ていってくれないか?」
「せっかく持って来てあげたのに、さっさと追い出そうとか酷過ぎなのです!」
プンプンと怒りながら、アリアの手を掴んで後ろを向いて、後ろ手でドアを閉めようとしているシホーヌに雄一は声をかける。
「ありがとうな、こういう服は一回着てみたいと思ってたんでな」
「ユウイチのアホっ!」
バタンと力強くドアを閉める隙間から、見えたシホーヌの耳が、赤くなっているのに気付いてしまった雄一は微笑む。
もう一度、ドアに向かって、ありがとう、と告げるとズボンも脱いで、カンフー服に着替える。
着替えると雄一のサイズにピッタリで、体のラインがはっきり出てしまってるから、動きにくいかと思えば、まったく動きを阻害しない服に雄一の顔に笑みが漏れる。
縛った髪が前に来てるのを、嬉しそうに後ろに指で弾くようにする。
再び、ドアをノックする音に振りむくと、
「ユウ、用意はできた?」
「おう、後、少しだ。ちょっと待ってくれ」
雄一は慌てて、森で採ってきたリンゴを風呂敷に入れ、財布を内側に仕舞い、左手に逆刃刀を持ち、肩にはミュウを完備……!?
「ミュウも行くのか?」
「がぅ、ミュウ、今日はユーイと遊ぶ」
遊びに行くんじゃないんだがなと、ぼやくように呟くがミュウの好きにさせることにした。
ドアを出ると、ホーラ以外にも何故かアクアまで一緒にいるので、不思議そうに見つめるが、ホーラとアクアにそれ以上に視線を上下する瞳に力を込めて見られる。
「ユウ、少し奇抜な感じがするけど、凄く似合ってるさ」
「本当に、とても似合ってます、主様。これが、あの馬鹿女神が選んでなかったらもっと賛美できたのですけど……」
ホーラが少し呆けたような顔をした後、頬を染めながら言ってくる。
アクアは、シホーヌをディスるが、あの2人は結構、気が合うのか、楽しそうに喧嘩する姿を見かけるので好きに言わせる。
「ありがとうな、俺も動き易いから気に入ってたとこだったんだ」
ホーラの頭を撫でてやると頭の上のミュウが、「ミュウも!」と体を揺すってアピールしてくるので苦笑しながら撫でてやる。
「主様、私も撫でていいのですよ?」
頭を差し出して、ワクワクしてるアクアの頭をポンポンとおざなりに撫でる。
「今の撫で方は、2人に比べて愛が足りてません!」
と言ってくるアクアであるが、口許がムニムニさせているところからすると結構嬉しそうである。
雄一は、はいはい、と取り合わず、アクアを放置してホーラに出発しようと伝えて玄関から出発した。
やはり、アクアも着いてくる気だったようで一緒にマッチョの社交場へと向かって歩いた。
アクアとミュウからすると、見るモノ見るモノ全てが物珍しい物のようで、あれ見て、これ何? で騒がしく、雄一は、袖を引っ張られたり、髪を引っ張られたりして大忙しであった。
「ユウも大変さぁ~」
苦笑混じりにホーラに言われるが、助けてくれる気がないようで、目的地のマッチョの社交場に着くまで、雄一は引っ張られ続けた。
やっと、目的地に着いた雄一達は、会うのが気が重いと項垂れながらドアを開けると目に優しくない光景が目に飛び込んでくる。
「待ってたわっ! プリティボーイ!! 美しくなった私を見てぇ!!!」
真っ赤なモッコリパンツをラメを強化素材として使ったようで、真っ赤なラメ入りモッコリパンツに進化させたミチルダが出迎える。
エビぞりで見せつけるようにして……
雄一は、何もなかったかのように、ドアを閉じると、震えるホーラとアクアに向き直り、
「やっぱり、冒険者ギルドに行こうか?」
そう言うとミュウが、ガゥと応え、雄一は、マッチョの社交場に背を向けた。
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かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
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