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5章 風の物語

92話 私の初めての友達はホルンなのですぅ……と、友達に1番も2番もないから泣かないで欲しいですぅ

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 アリア達一行はリアナに大敗したレイアの回復後、すぐに風の精霊のミンの案内で再び、地上へと戻ってきた。

 戻ってきた訳だが、転移装置があった小さい島ではなくミンが言うにはダンガがスッポリ2つは収まるぐらいの大きさの島らしい。ついでに言うなら島の大半を占める森の中に村規模のエルフの集落があるようだ。

 風の訓練所もそこから近いという事もあり、そこに立ち寄って補充などをして行こうという話に落ち着いた。

 集落を目指して歩くホーラが機嫌悪そうに頭を掻きながらポプリが持っていた世界地図を眺めていたのを止めてるとあらかさまに肩を竦めて溜息を零す。

「この場所って、転移装置で空に行かなくても船で来れたさ? 多少の時間ロスがあったかもしれないけど……マサムネめ、適当な事を言いやがったさ」

 覚えてろよ? と顔に書いているホーラを見て、近くにいたミンと手を繋いでいるテツとダンテは本当に何かをやりそうなホーラをその時に止められるかと戦慄を感じ乾いた笑みを浮かべる。

 確かにその時間ロスも最悪、クロに飛んで貰えばないのと同じである。

 怒れるホーラとそれを恐れるテツとダンテを見て微笑を浮かべるポプリがどこか幼い頃のアリアを思わせるボーとして何を考えているか分からないミンに話しかける。

「ミンちゃん、ホーラはああ言ってるけど本当のところ……どうなのかしら?」
「マサムネは嘘も真実もない。ちゃんと言ってないだけ。行くだけなら行ける。でも入れない」

 ミュウ程ではないが長文を口にするのが苦手なのか、短文を多用するのでイマイチ意味が伝わり難くホーラ達は眉を寄せる。

 ホーラとポプリの視線がテツに集まり、色々と諦めた顔をしたテツが嘆息するとミンに根気良く話を聞き出しにかかる。

 そうして聞き出した内容は、ホーラが言うようにこの島には通常の方法でやってこれるというのは間違いなく、転移装置を使って風の精霊神殿を経由してこの島にやってくるのは時間の短縮になるぐらいしかないそうだ。

 しかし、重要なのは時間ではなく、ミンと出会い、同行して貰える事に意味があるようだ。

 通常、訓練所は邪精霊獣と戦う為に作られた施設。

 その副産物で使った者の眠っている才能を覚醒を促すというモノがあり、本来、人の子の成長を見守る神や精霊としてはホイホイと使わせる事は良い事ではないようだ。

 だから、それを使えないように封印がされているらしい。

 それを聞かされたポプリは惚けた表情をしながら頬に指を当てながら首を傾げる。

「土の訓練所は誰でも入れましたよね?」
「……そ、それはアレじゃないですか? ティリティアさんだったからで……」

 ダンテはすぐにティリティアが面倒だったからだとアタリを付けるとポプリがダンテを見つめてニコニコしているのを見て表情に出ていたらしい自分の迂闊さを呪う。

 ポプリに言わされてると気付いているが言わないと絡めてで無理やり言わされると悟ったダンテが渋々、答えを口にした。

 そんなダンテを同情するように見つめるテツを余所にホーラは鼻を鳴らす。

「なら、両方シメれば問題解決さ」
「ホーラ姉さん、それでは解決には……」

 困った顔をして言ってくるテツにホーラは姉としての愛ある鉄拳制裁を加えて最後まで言わせずに口を閉ざさせる。

 そんな2人を背後で見ていたヒースは自分の師匠から逃げたい時用に命懸けで修行中である気配を断つワザを駆使して空気に溶け込もうとしている。
 ヒースは師匠から教わる事は何よりも死なない事である事という理だと信じて疑ってない。それほどにヒースの修行は死と隣り合わせである。

 しかし、まだまだ中途半端なせいかホーラ達ぐらいになると逆にアピールされているのと変わらないらしく2人の視線が集まる結果になった。

「なんだい? そんなにアタイ等が怖いさ?」
「いえ、そんな事はありません! ちょっとテレてるだけです!」
「あのさ……もうそんな大きな図体してたら僕の後ろに隠れるのは無理だと思うよ?」

 ヒースは表情だけキリリとしてゆっくりとダンテの背後に隠れようとするがどんなに頑張っても隠れるのは不可能であった。

 急成長したヒースの体では無理だと今頃気付くほど焦ってたらしいヒースはソッと隣のテツの背後に隠れようとする。

「ヒース、俺の経験則として開き直って前に出た方が被害が小さいよ」

 テツがそう忠告したがどうやら手遅れのようでテツの姉2人にヒースは洗礼を受けた。



 ヒースの洗礼が済んだのを見計らったようにホーラとポプリにアリアとスゥが困った顔をして話しかけてくる。

「ホーラさん、レイアが変なの!」
「そう、ポプリ姉さん、ポーションじゃなくて変な薬を使ってない?」
「はぁ?」

 呆れた声を上げたホーラがヒースの顔にアイアンクロ―していて掴んでいたのを放ると2人が指を指す方向にホーラとポプリが目を向ける。

 2人が見つめた先をテツと白目を剥いているヒースを看病するダンテも見つめて苦笑いを浮かべる。

「なぁ、なぁ、リアナは訓練所行った事あるのか? ないよな? ああ、いい、アタシが教えてやるよ。えーと、その前に土の訓練所にも行かないとな?」

 どうやら言いたい事が一杯で纏められずに片っ端から言うものだから何を言いたいのかが分からない。しかも、言ってる本人がそれに気付けてないから始末が悪い。

 馴れ馴れしくリアナの肩に腕を廻してアレコレと世話を焼くようにしているレイアに俯き加減で肩を震わせるリアナが限界が来たように頭を弾けるように上げる。

「貴方はどんな神経をしてるんですか? バカなんですね? ああ、バカとは知ってますけどぉ! 数時間前にコテンパンにされたのを忘れたのですか?」
「ん? おお、勿論、覚えてるって! そこまで記憶力がないってバカにし過ぎだろう? なぁ、リアナ」

 ニコニコ笑うレイアが顔を寄せてきて歯を見せて嬉しそうにするのにゲンナリしたリアナが実力行使とばかりに両手でレイアの顔を両手で突っ撥ねてどかそうと奮闘するがまったく堪えた様子を見せずに声を上げて笑うレイア。

 片手で顔を覆うようにするホーラとクスクスと笑うポプリ。

「うふふ、浮かれてる時のユウイチさんみたい」
「はぁ……初めて王都に行く時、貸し馬車で浮かれて止められないユウを思い出すさ」

 溜息を吐くがどこか懐かしいものを見るようなホーラは雄一に閂が折れる勢いで殴っても正気に戻らなかった事を思い出し、ほっとく事を決断する。
 ポプリはほっといた方が面白そうだと判断して放置する事を選んだようだ。

 アリアとスゥは姉2人が役に立たないと判断してテツとダンテの下に行くがテツにゆっくりと被り振られる。

「俺も放っておいていいと思う。だって……」

 テツが隣に目を向けると苦笑い継続中のダンテが頷いて繋げる。

「アリア、スゥ。レイアにとって初めて向き合った他人がリアナなんだ。一緒に住んでた僕達を除く一緒に住んでた同世代の子でもあそこまで本気をぶつけてくれた相手はリアナが初めてだったんだよ」

 そう言われて振り返るアリアとスゥは逃げたいから必死にレイアを引き剥がそうとする間にミュウが乱入して繋ぎ役をするようにレイアとリアナを抱くようにして楽しそうに遠吠えするのを2人を見つめる。

 確かにそう見るとレイアは本当に嬉しそうにしているし、アリアも改めて見るとレイアの心の色が浮かれているのが分かる。
 しかも、2人の様子を見て懐かしい想いが過る。

「小さい頃のレイアとユウさんみたい……」

 嫌がるレイアに抱きつこうとする雄一に肩車されてガゥガゥと騒ぐミュウを投影する。

 少し寂しそうにする2人の肩にテツが手を置く。

「レイアにとって初めて出来た友達、ヒースは別件のようだからね?」

 そう言うテツは背後で白目を剥いて気絶するヒースを見て微笑する。

 テツに笑みを浮かべられて少し考える素振りを見せるが同じように笑みを浮かべて頷いてくる。

 2人が納得したのを見て、そろそろあの騒ぎを収めようと動こうとしたテツのズボンを引っ張るミンがいた。

「どうしたの?」
「テツ、あれ」

 そう言ったミンが指差す方向、テツ達が向かっている集落があると思われる場所から煙が上がっていた。

 テツとのやり取りに気付いたホーラ達も驚きを隠せずに見つめる。

 すぐに我を取り戻したテツとダンテが頷き合うとダンテはアリア達をテツはホーラ達を促して煙の発生源を目指して走り出した。
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