26 / 37
夏休み
8月20日の満月の日の出来事
しおりを挟む
その日、猫の僕は、おもちゃの前で悩んでいた。
ねずみの形のおもちゃか、それかねこじゃらしのおもちゃかどっちを、みずほちゃんの前に持って行って遊んでもらうか、それは大問題で、僕の頭を悩ませた。
みずほちゃんは、今、ソファーに寝っ転がってクッションを上に投げては、キャッチをする遊びをしている。あそこへ飛び込んでいくのも捨てがたい……。
その時、不意なお客さんがやって来た。
茶トラの猫さんが、テラス窓を叩いている。僕が行っても猫は、僕に威嚇するだけで、フゥ――フゥ――!言ってるだけだ。
その様子を見てソファーに座り直したみずほちゃんが、キャトタワーの方に歩いて向かった。
「あずき、猫が来てるけど……」
そうすると、あずき先輩が、ゆっくりキャットタワー顔を覗かせる。ミャァーあずき先輩は、そう鳴くと両手を上げる。
「えぇ……、あずき、ちょっと重いし、そこからの高さじゃ……抱っこ出来ないよ。」
少し後ずさるみずほちゃんに、不服そうにしながらあずき先輩はキャトタワーの下へと飛び移る。やがて下まで来ると……のっしのっし歩きながら、テラス窓の確認する。
茶トラの猫は、口にくわえていた、松の枝をあずき先輩に差し出すように見せると、さっさとどこかへ行ってしまった。
「みずほ、今日は猫の集会へ行ってくる――」
横を見ると、あずき先輩は人間になっていた。そしてちょっとめんどうそうに話している。
「稲穂も行くの?」ソファーに座り直しブラブラと足をバタつかせてるみずほちゃんの横に、あずき先輩が座り、その間に僕は飛び乗った。
「いく。俺達に猫は、近寄らないし大丈夫だろう。それに神社の境内でやるし……」
「わかった。お母さんに伝えとく。あずき頑張ってね」
みずほちゃんに、言われて……見知らぬ猫の集会を僕は、頑張る事にした。
三☆★☆★☆★ 三☆
日が沈むのを窓から見ていた、巫女姿のみずほちゃんが……。
「行こうか………」と言って歩み始める。本殿につくといつもの様に儀式を済ませる。
儀式が終わった僕達を、外で待つのは、まんまるな月。
月の光を浴びると制服のシルエットがゆっくり歪む。
僕の制服は、黒いスーツに変わった。境内で待っていたあずき先輩の制服も黒のスーツになっていて、いつもより怖い雰囲気だ。
「七五三だな、まあ、いいや……。稲穂、怖い顔を今日はしてろよ。今日呼ばれた事について詳しくはわからないが、俺たちが呼ばれる時は厄介事のある時だ。漢字のカードは、胸ポケットに入れておけ」
あずき先輩から渡されたカードには、『止』と、書いてあった。
「止まれって念じれば、止まるからな、後、俺の横で黙って立っておけばいいから」
僕達が、向かったのは神代神社のもう1つの社で、境内の外れの方にひっそりたたずんでいる。その横にベンチが、置かれていて、その上に尾が2つに分かれた猫が座ってるその前に大勢の猫達が集まつている。
あずき先輩が、ずかずか、と近づいて行くと、猫達の声が聞こえだした。
「何故、神代の猫達が!?」
「怖いにゃ~」
「お腹すいたにゃ!」
「もう、扇は来ないのか……」
あずき先輩は、ベンチの猫の隣に座った。僕も、怖い顔でベンチの横に立つ。猫の声がこんなにも聞こえるのは不思議だけど僕は、怖い顔を頑張った。
「久しいのう、猫達よ。新参者は、よく聞くがいい、我はたま蔵だ。今日、集まって貰ったのは他でもない。我々の中に山の猫が紛れていると言う話を、聞いて来たのじゃ」
そうベンチに立った2つのしっぽを持つ、猫又は、威厳を持ってそう言う。
「山の猫の末裔ならそこにいるじゃないですか?」
「だから、こわいにゃ――」
「宴会まだ始まらないの?」
「神代の猫なら、ちゃろちゃん達が良かったのに……」
猫達は、口々に言うがあずき先輩は、何も言わずただ座って居る。猫達は次々に話すのでもう収拾がつかない。そしてかわいい。
(一人一人並べ!抱っこしてあげますね~ってしたい……)
「皆さん、聞いてください」そう言ったのは、松を持って来たあの茶トラだった。茶トラが、前へ進み出てベンチの上に飛び乗った。
「皆さんを呼んで貰ったのは、僕です。公園に住む僕には、毎日話しかけてくれた少年が居たのですが……つい先日、山の猫に襲われて、助けが入って無事に済んだのですが……きっと山猫は、みなさんの近くに潜んでいるはずです。その事をみんなさんに伝えたかったのと……」
茶トラの彼が話している時、あずき先輩は、胸の所のポケットから2枚のカードを出して使った。
「あずきさんあの猫です!」茶トラの猫が、そういうと猫達は一斉に居なくなっていた。ただ1匹の黒色の猫だけが、その場に釘付けられている様に動けない。
「どうしてわかった!? 負け犬になり下がった神代の猫よ!!」
残った黒い猫が、怖い声でそう怒鳴る。怖い、とっても怖い。
あずき先輩は、ふたたび捕『縛』の綱を山猫につないでいる。
「稲穂早く、お父さんを呼んこい! 本殿に待機しているから!」
あずき先輩が、そう言っている間に捕縛の網が、ギリギリ、パチーンパチーンと音を立てて糸が千切れている。僕は、下へくだる坂を草をかき分け走る。拝殿の横まで来ると僕は大きな声でお父さんを呼んだ。
「お父さ――ん」
僕の声を切っ掛けとしてすぱーんと扉が開き、飛び出してきたお父さんは、僕の横を風の様に駆け抜ける。僕は、その背中をただぽかーんと見つめていたが、慌ててお父さんの後を追った。僕が、追いついた時、さっきまで無かった、白い箱を悲しそうに、大事そうに拾い上げ懐にいれるお父さんの姿が見えた。
茶トラの言葉が続いている内から、凄い早さで隠れた、たま蔵のおじいちゃんと茶トラの猫さんが、僕達にお礼をいい頭を下げ帰って行った。
「稲穂満月が、近づくとこういう事が起こる事がある。でも、お前はまだ何もしなくていいから、子猫の内は大丈夫だから本当に……」
いつの間にか僕に寄り添うように立っていたあずき先輩が、そう言って僕の頭を撫でる。
「さぁ、二人とも僕達の家に帰ろうか……」お父さんの声が優しく響くから、僕もあずき先輩もお父さんと手をつないだ。
僕達3人は、境内の道を家まで歩いた。僕らの背中には、まあるい満月が僕らを見下ろしていたが、家に帰ればそんな事は見えない事だった。
おわり
ねずみの形のおもちゃか、それかねこじゃらしのおもちゃかどっちを、みずほちゃんの前に持って行って遊んでもらうか、それは大問題で、僕の頭を悩ませた。
みずほちゃんは、今、ソファーに寝っ転がってクッションを上に投げては、キャッチをする遊びをしている。あそこへ飛び込んでいくのも捨てがたい……。
その時、不意なお客さんがやって来た。
茶トラの猫さんが、テラス窓を叩いている。僕が行っても猫は、僕に威嚇するだけで、フゥ――フゥ――!言ってるだけだ。
その様子を見てソファーに座り直したみずほちゃんが、キャトタワーの方に歩いて向かった。
「あずき、猫が来てるけど……」
そうすると、あずき先輩が、ゆっくりキャットタワー顔を覗かせる。ミャァーあずき先輩は、そう鳴くと両手を上げる。
「えぇ……、あずき、ちょっと重いし、そこからの高さじゃ……抱っこ出来ないよ。」
少し後ずさるみずほちゃんに、不服そうにしながらあずき先輩はキャトタワーの下へと飛び移る。やがて下まで来ると……のっしのっし歩きながら、テラス窓の確認する。
茶トラの猫は、口にくわえていた、松の枝をあずき先輩に差し出すように見せると、さっさとどこかへ行ってしまった。
「みずほ、今日は猫の集会へ行ってくる――」
横を見ると、あずき先輩は人間になっていた。そしてちょっとめんどうそうに話している。
「稲穂も行くの?」ソファーに座り直しブラブラと足をバタつかせてるみずほちゃんの横に、あずき先輩が座り、その間に僕は飛び乗った。
「いく。俺達に猫は、近寄らないし大丈夫だろう。それに神社の境内でやるし……」
「わかった。お母さんに伝えとく。あずき頑張ってね」
みずほちゃんに、言われて……見知らぬ猫の集会を僕は、頑張る事にした。
三☆★☆★☆★ 三☆
日が沈むのを窓から見ていた、巫女姿のみずほちゃんが……。
「行こうか………」と言って歩み始める。本殿につくといつもの様に儀式を済ませる。
儀式が終わった僕達を、外で待つのは、まんまるな月。
月の光を浴びると制服のシルエットがゆっくり歪む。
僕の制服は、黒いスーツに変わった。境内で待っていたあずき先輩の制服も黒のスーツになっていて、いつもより怖い雰囲気だ。
「七五三だな、まあ、いいや……。稲穂、怖い顔を今日はしてろよ。今日呼ばれた事について詳しくはわからないが、俺たちが呼ばれる時は厄介事のある時だ。漢字のカードは、胸ポケットに入れておけ」
あずき先輩から渡されたカードには、『止』と、書いてあった。
「止まれって念じれば、止まるからな、後、俺の横で黙って立っておけばいいから」
僕達が、向かったのは神代神社のもう1つの社で、境内の外れの方にひっそりたたずんでいる。その横にベンチが、置かれていて、その上に尾が2つに分かれた猫が座ってるその前に大勢の猫達が集まつている。
あずき先輩が、ずかずか、と近づいて行くと、猫達の声が聞こえだした。
「何故、神代の猫達が!?」
「怖いにゃ~」
「お腹すいたにゃ!」
「もう、扇は来ないのか……」
あずき先輩は、ベンチの猫の隣に座った。僕も、怖い顔でベンチの横に立つ。猫の声がこんなにも聞こえるのは不思議だけど僕は、怖い顔を頑張った。
「久しいのう、猫達よ。新参者は、よく聞くがいい、我はたま蔵だ。今日、集まって貰ったのは他でもない。我々の中に山の猫が紛れていると言う話を、聞いて来たのじゃ」
そうベンチに立った2つのしっぽを持つ、猫又は、威厳を持ってそう言う。
「山の猫の末裔ならそこにいるじゃないですか?」
「だから、こわいにゃ――」
「宴会まだ始まらないの?」
「神代の猫なら、ちゃろちゃん達が良かったのに……」
猫達は、口々に言うがあずき先輩は、何も言わずただ座って居る。猫達は次々に話すのでもう収拾がつかない。そしてかわいい。
(一人一人並べ!抱っこしてあげますね~ってしたい……)
「皆さん、聞いてください」そう言ったのは、松を持って来たあの茶トラだった。茶トラが、前へ進み出てベンチの上に飛び乗った。
「皆さんを呼んで貰ったのは、僕です。公園に住む僕には、毎日話しかけてくれた少年が居たのですが……つい先日、山の猫に襲われて、助けが入って無事に済んだのですが……きっと山猫は、みなさんの近くに潜んでいるはずです。その事をみんなさんに伝えたかったのと……」
茶トラの彼が話している時、あずき先輩は、胸の所のポケットから2枚のカードを出して使った。
「あずきさんあの猫です!」茶トラの猫が、そういうと猫達は一斉に居なくなっていた。ただ1匹の黒色の猫だけが、その場に釘付けられている様に動けない。
「どうしてわかった!? 負け犬になり下がった神代の猫よ!!」
残った黒い猫が、怖い声でそう怒鳴る。怖い、とっても怖い。
あずき先輩は、ふたたび捕『縛』の綱を山猫につないでいる。
「稲穂早く、お父さんを呼んこい! 本殿に待機しているから!」
あずき先輩が、そう言っている間に捕縛の網が、ギリギリ、パチーンパチーンと音を立てて糸が千切れている。僕は、下へくだる坂を草をかき分け走る。拝殿の横まで来ると僕は大きな声でお父さんを呼んだ。
「お父さ――ん」
僕の声を切っ掛けとしてすぱーんと扉が開き、飛び出してきたお父さんは、僕の横を風の様に駆け抜ける。僕は、その背中をただぽかーんと見つめていたが、慌ててお父さんの後を追った。僕が、追いついた時、さっきまで無かった、白い箱を悲しそうに、大事そうに拾い上げ懐にいれるお父さんの姿が見えた。
茶トラの言葉が続いている内から、凄い早さで隠れた、たま蔵のおじいちゃんと茶トラの猫さんが、僕達にお礼をいい頭を下げ帰って行った。
「稲穂満月が、近づくとこういう事が起こる事がある。でも、お前はまだ何もしなくていいから、子猫の内は大丈夫だから本当に……」
いつの間にか僕に寄り添うように立っていたあずき先輩が、そう言って僕の頭を撫でる。
「さぁ、二人とも僕達の家に帰ろうか……」お父さんの声が優しく響くから、僕もあずき先輩もお父さんと手をつないだ。
僕達3人は、境内の道を家まで歩いた。僕らの背中には、まあるい満月が僕らを見下ろしていたが、家に帰ればそんな事は見えない事だった。
おわり
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
コボンとニャンコ
魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。
その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。
放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。
「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」
三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。
そばにはいつも、夜空と暦十二神。
『コボンの愛称以外のなにかを探して……』
眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。
残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。
※縦書き推奨
アルファポリス、ノベルデイズにて掲載
【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23)
【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24)
【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25)
【描写を追加、変更。整えました】(2/26)
筆者の体調を破壊()3/
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
魔法使いアルル
かのん
児童書・童話
今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。
これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。
だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。
孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。
ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。
閉じられた図書館
関谷俊博
児童書・童話
ぼくの心には閉じられた図書館がある…。「あんたの母親は、適当な男と街を出ていったんだよ」祖母にそう聴かされたとき、ぼくは心の図書館の扉を閉めた…。(1/4完結。有難うございました)。
シンクの卵
名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。
メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。
ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。
手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。
その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。
とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。
廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。
そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。
エポックメイキング。
その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。
その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる