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もち雪

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夏休み

台風の日

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 今日は、もうすぐ台風が来るらしい。雨も風もまだまだだけど、どんどん強くなるらしい。

 だから、今日の奉納の舞の稽古は、休み。まぁ……朝は、時々強い雨にになったりしたけど、そんなに強くなかった。でも、朝、起きたあずき先輩が――。

「これは、無理」と言ってふたたび寝てしまったからだ。

「お母さん、あずき先輩ねちゃったんだけど、僕、一人じゃやれないんだけど」と玉ねぎを切っているお母さんに遠くから言う。何て言うか、玉ねぎ近いと人間でも目が痛くなるよね。……なんかいや。

「そうなの? あっ、そう言えば台風来ているわね。お稽古のお休みの事は、おとうさんに伝えておくから……稲穂いなほは、どうする? カリカリ食べる? また寝る?」
 お母さんは、包丁の手を止め僕に振り返る。

「うーん、鞄の中のおにぎりを食べて少し『消』えるの漢字の練習しょうかな……あれあるとみずほちゃんの学校に、お母さんと一緒にいけるんだよね……」

 僕は、帽子を持ってもみもみする。みずほちゃんは、いやがるかもだけど行きたい。

「お勉強頑張るのは、えらいけど……学校は、みずほがいいって言わないかもよ?」

「わかってる。でも、いいよって言ってくれるかも? 2回に1回とか……」

「それじゃ……お母さんとも一度遊びに行きましょう。図書館へ行って絵本を借りるの。素敵でしょう」

 お母さんが、僕の目の前であひるさん座りでそう話してくれた。

「行く! 絵本たくさん読むよ。大好きお母さん」

 あずき先輩にいっぱい怒られたので、とびつかないで、お母さんの袖をちょこんとつまんだ。お母さんが、笑ってくれると僕もうれしい。

「私のお母さんなんですけど……」

 みずほちゃんが、階段の所から降りてこっちにやって来る。

「みずほちゃんの猫なんですけど……」

 僕はみずほちゃんのまねをした。

「あれ? あずきは?」

「寝てる、猫は寝る生き物だんだよ。みずほちゃん」

 僕は、腰に手を当てあずき先輩のまねもしてみた。

「それはいつもあずきが、言ってるけど……天気が悪いとすごく寝るよね、あずきは」

「人間でも、気圧が合わないとそうなる人がいるけど、あずきはそう言う体質なのかも? 今日はゆっくり寝かせあげるといいわ」

 お母さんがそう言ったので、あずき先輩をそのまま寝かせておいた。と言うか、台風が来るからお母さんも、みずほちゃんも家にいてくれた。僕はあずき先輩のいる猫用のタワーへ行くたび、みずほちゃんに手を掴まれ机に連れ戻された。

 ☆★☆★☆

 もうお昼近く、僕は、きれいに書けた『消』のカードを持ち、テレビの前に立つ。

「いきます……」

 僕は、カードを頭の所で両手に持ち、目をつぶる。

「えい!」カードを、右手に持ちおもいっきり上へと上げる。
(消えろ!)

 カードは、消えた。お母さんとみずほちゃんは、拍手してくれた。

「「すごい、稲穂いなほ消えたねぇ」」

 ふたりは、同じ事言っている。ぷぷぷっ 僕は、みずほちゃんとお母さんにの手をさわると、僕の事がみえるようになったみたい 。

 ふたりして「「すごいね、稲穂いなほ」」って言ってくれたから、今日は、あずき先輩が寝ていてもちょっとしか寂しくなくなかった。『消』って漢字も書けるようなったからこのカードは、ちゃんととっておこう……。

 僕は自分の手を見た。

「カード使ったら無くなっちゃた」って、ちょっとだけ泣いた。

「無くなっちゃうものなの? 」

「うん」

「それじゃ……仕方ないかもしれないわね」

 その時、人間の姿で、あずき先輩が起きて来た。

「稲穂は、何でまたべそかいてるんだ」

「カード使ったら無くなったの……」

「無くなったら、また書けばいいだろう?」

「それは、違うの! 記念にとって置きたかったの!」

「ほら、稲穂、このカードを見ろ」

『早』と、書かれたカードを僕に見せて、あずき先輩は言った。

「このカードは、少し動きが早くなるぞぉ」

「うそっ! あずき先輩、すごい……頂戴!頂戴!」

 むにゃむにゃ寝ててもあずき先輩は、いろいろな漢字を使えて凄くて、びっくりした台風の日だった。


         おわり
 
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