魔王がやって来たので

もち雪

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さよなら海の見える街

出発前の団欒の時

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 今日の夕食はシチューみたいなものを作った。

 いろいろな野菜とウィンナーをコトコトと煮込み、バターで小麦粉を伸ばしたものや、いろいろ香辛料を入れる。

「ハヤトさん……」

「どうしたの? ミッシェル」

「なぜ、料理になると時々、眉間にシワが寄っているのですか?」

「僕の世界には、入れただけで美味しくなる魔法みたいな固形のだしやパラパラって入れるだけで、僕の国の人も『良い味ですね』ってなる粒のだしなどあったんだ。 でも、魔法の国で魔法みたいなだしを使えないのは……なんか納得出来ない」

「ハヤトの世界って、凄くそういう料理の面では便利そうですよね。タコは、いまだに納得が出来ませんが……」

「僕らの国は、料理に対してはうるさい国だったしね。タコは、食材だよ?」
 
 なんて事やっている内に、料理は出来る。僕らがキッチンの後片付けをしてる間に、どんどん料理は運ばれ机の上は整えられた。

 そして僕らも呼ばれ、晩御飯の時間だ。

 みんな祈る中、僕とフィーナは「「いただきます」」と両手を合わせる。

 そしてみんなを待つのが僕の日課。別に好きでしているだけの日課だ。
 
 みんなが食べだすと、今後の事について会話に登るが、会議ではないので思い思いにただ話す。
 
「今後の予定としては、今、冬なので内海沿いを東に進み、春を待ち北上する事にしました」

「では、当分の間は街で、食材がない心配はしなくていいですね」

「ですが、ギルドクエストについて更新情報を調べて来たのですが、やはりホイルトツェリオ城の記録からまったくと言っていいほど更新されておらず、もうすぐ国境を越えますが……増える見込みさえあります」

 僕は思わず食べる手を止めた。王家が病に倒れたホイルトツェリオ城以上の、非常事態について検討がつかない。

「これから先はギルドの仕組みとしては、共通しているが、小規模魔法学校しかない場合、ランクとともに戦闘技術を少しずつ蓄積している状態で、やみくもに戦っている場合もあるからな……」

「では、階級試験の時以上に、他のパーティーを見捨てる決断をしなければならない時は、少なからず来そうですね……」

 僕は怖々、ルナを見た。彼女は聖女であり命の選択をして来ただろうが、それは教会が致命傷の患者を覆い隠してない場合にだ。
 
 蘇生が出来る彼女には、絶対に蘇生不可の遺体のロスト以外は、そこさえ通過すれば全て美談となる。

 だからあえて命の選択という過酷な場面に、ルナを立ち合わせない可能性が拭いきれない。

 しかしルナは、信念のやどる目で頷く。

 ――見捨てる事も承知してます。って意味にとっていいのだろうか? うーんどうだろう?
 
「保存食について、安い時を見計らって買い足しているのでおおむね問題なしです」

「ルイス……、さすが有能執事……ありがとう」

「いえ、仕事ですので……」
 彼は、表情を変えず言う。かっこいい。

「僕は相談なんですが、神秘の力、大精霊達の力を手に入れたいのですがどうすれば?」

 僕の話はなんか子供ぽくある。

「俺も大精霊の力さえ借りられればと、思った時もあるが……。しかし一般的な魔法を、上手く使いこなせてないのも事実だからなぁ。特に槍による攻撃では、どっちも中途半端な感じは否めない」

 それを言われると弱い。ギルドクエストをこなすしかないのだろうか?
 
 いっその事、シルエットに指南を受けるべきか…いや、性格上面倒がるだろう。無理だな。

 ミッシェルと切磋琢磨していくのが1番の早道な気がする。ちなみに剣のオリエラとでは、槍が不利であり勝負にならない様に記憶していた。
 
 なので、次々の朝、そうそうに手合わせをミッシェルに頼んだら、ぬいぬいに教えを受ける事にしたから駄目って言われてしまった。

 しかし僕の槍の未熟さを指摘した、ぬいぬいがそれを許すわけもなく。練習相手としてミッシェルと頑張っていこうと思う。

  つづく











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