魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
152 / 213
旅立った僕達

朝飯!

しおりを挟む
 ゲーストハウスの朝は眩しい。

 正確に言うと、僕の部屋の朝は直射日光で、きつい。

 あまりに起きない僕にルイスの一言がはっせられる。

「そんなに起きられないのなら、夜にカーテンをしないで寝てみてはどうですか?」

 優し気な笑顔と物言いだった……。

 昨日のデートでは、晩御飯前に帰ったが、それまでは近くの港に寄って砂浜の見える道の上から、僕達は水平線に沈む太陽を眺めていた。

 フィーナは占いの結果を聞いたからから、遠い空の下の魔王の城の魔王とよしのさんと言う人に思いをはせている様に夕焼けのもっと向こうを見ているようだった。

 そんな彼女は神秘的で、手に入れてはいけない月の姫を思い起こさせる。

 僕に気付いた彼女は、「元気ではない私を見られると少し苦手ですかね。だから今はちょっとだけ見ないで貰えると嬉しいです。後、ちょっとだけ……そうすればまた元気で笑えると思うのです」

 そう言った彼女は僕の顔を手で覆い、横を向いてしまう。僕はその手を両手で、掴んで手の裏を少し舐めてしまう。

「なんでこんな事するんですか? 人の手をとかを勝手に舐めちゃだめです。私は怒っているんですよ!」

「ごめんなさい」

「まず、どうしてこんな事をしたのか言ってください」

「君の気持ちはわかるから、だから君がとる僕との距離を、踏む込むキスや抱きしめる事は今の僕には出来ない。手の裏にキスもがらじゃない。だから犬や猫みたいな原始的な接触方法を僕はとってしまいました。元気じゃない君はほっとけないからね」

「う……ん」
 彼女は、口もとに手をやり少し考えるポーズをすると……、いきなり僕に視線を向ける。

「ハヤト、手を広げてください」

「あぁ……はい」
 僕は深呼吸の息を吐く様な恰好になった。そうすると、彼女が僕の腕の中に飛び込んできて僕達は抱き合う形になる。

「こうすれば、二人の希望がクリアーできます。だから勝手に手を舐めてはいけません」

「わかった。これからは舐めると時はフィーナの許可を取るね」

「そうしてください」

 ――僕達は少しエッチな会話をしているのを、彼女がわかって言っているのか疑問だけど、その後フィーナが僕から離れて……「帰りましょうか」と言って二人で一緒に手をつないで帰って来た。

 そんな事を思い出している僕はまだ布団の上、それでも起きなければならないので、その準備にかかった。

            ☆

 すべての準備が、出来たらキッチンではオリエラが待っていた。

 彼女の朝の挨拶をし、すぐさまジャンケンをする。見事グーで勝利!。

「オリエラ監督よろしくお願いします」

「あ……はい」

 と言うわけで、オリエラ監督と朝ごはんを作る。

 キッチンは、レストランの厨房ぐらいの広さで、ここには魔法のコンロがある。魔法の冷蔵庫まである。べらぼうに異世界魔法技術向上都市なのである。

「えっと……、さっき冷蔵庫の中をみたらだいたい材料揃っていたので、今日はオーソドックスに、スクランブルエッグに付け合わせは、缶詰のコーンを塩コショウで炒めて、ほうれん草もかな?後は、コッペパン付ければいいでしょう。美味しいものばかり食べてると、旅に、出た時辛いし」

「じゃーオリエラ監督は、スクランブルエッグとその他どっちやる?」

「私はねーもちろんスクランブルエッグだよー。この前は、少し焦げて失敗したからその屈辱を絶対晴らしたい。もー師匠は、舌があるるさんのご飯でこえてるから難しいだろうけど、師匠が思わず褒めるくらいには料理を極めたいんですよー」

「オリエラ頑張ろう! 打倒ぬいぬい!」

「師匠を打倒しちゃーだめだよー美味しいって言わせなきゃ。でも、ハヤトありがとう! 頑張る」

 そうして僕達姉弟コンビは、メシウマのあるるさんの手料理で、舌が肥えてしまっているぬいぬいを唸らせる事をご飯作りの活動の源としていた。

 まず、お皿の重ねて用意して、ほうれん草を切りザルでざっと洗う、沸騰したお湯に入れて茹で、またざるにあげるとコーンをぶち込む。

 その間に、パンの皿をダイニングテーブルに持って行ってパンを乗せて置いておく。

 そこまでしたらオリエラの手伝いに少し入る。

 一人分の卵と塩コショウと牛乳入れて、スクランブルエッグを焼いて今日は2枚焼いたら、ほうれん草とコーンをバターと塩コショウで混ぜて焼けば出来上がりだけど……。

 まぁ味はほぼ一緒だけど、スクランブルエッグには、トマトケチャップの瓶でも置いとけばいいか机に。

 とりあえずキッチンの料理器具を洗ってれば、来た人から勝手にコップとか持って行ってくれるので、フライパン類以外、片付けも一通り済んだところで。

「ハヤト、こっちも出来たから食べるよ!」と、オリエラ監督が呼んだので僕達は朝ごはんを食べる。

「卵に関しては、焼き加減も丁寧でよく出来てる。とても美味しい。腕をあげたな」

 僕達に聞かれて、師匠のぬいぬいがスクランブルエッグを食べてそう言った。

「やったー!」オリエラが声を歓喜の声をあげる。

「ほうれん草とコーンも美味しいけど、一緒にしたのか……」

 僕の担当の方の感想は、いまいちだったようだ。

「別の味にするのはいろいろ大変だんですよ……」

 僕はそう言って返す。「まぁそれはそうだが……」と言う返事だった。

 肝心のぬいぬいの料理も実は、結構おいしい……。そして彼は、分けて作る派なのだ。
 
 しかし彼は料理は、彼の魔法に対する向き合い方と同じように、料理に対しても繊細で素晴らしいものを作りだしてしまう。そうするとみんな腹ペコになってしまうので、だいたいは手際の良いルイスか、フィーナ達と料理を組んで作らねばならなくなってしまうのだ。

 でも、たまに食べたくなる味なんだよね――困ったことに。

  つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...