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旅立った僕達
うるさいスライム
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海辺の町に来てしばらく経った。
こちらには大きな港が無いが、海に面した海岸に小さな砂浜と船着き場はある。
その小さな砂浜に、この季節にやって来るという海のスライム達の退治が、今回の僕らの選んだギルドクエストになる。
それにしてもクエストはなかなか減らずに、いつになったら旅立てるのか見通しがまだ立たない、しかし港町と言う事もあって少しだけ狐の里についてわかった事があった。
どうやらフィーナが去っただろう年の次の春あたりから、狐の里の狐達の一部がこちらの世界の人間界へと移り住んでいるようなのだ。
魔界へ渡る前に、まず彼らに狐の里について事情を知らなければならない。
それについて気になる事は、フィーナにこの事を伝えたら、彼女は静かに「そうですか……」と、呟いた。もしかしたら彼女は人間界へとはわからずとも、狐の里の人間が一部、里から出てしまった事自体については知っていて、ただ気に病む事しか出来なかったのかもしれない。
話は少しそれてしまったが、そろそろその海岸線と着きそうだ。だが、いつもちょうっとお話の多いウンデーネは今回の攻略メンバーに居ない。
彼女が言うにはだが……。
「ここの海辺のスライム討伐が、今回のクエスト目標なんだけど何か知っている?」
「赤いの?」彼女は首をかしげる。
「うん、赤いの」僕は彼女の反対に首をかしげた。
「情熱の赤いスライムは、ちょっと好きじゃない。うるさいし、うるさいし、うるさいから」
「なるほど……、じゃ今回はウンデーネはパスで」
「主様もパスした方がいいよ。うるさいし、うるさいし、うるさいから」
「まぁ、うるさいから退治しなければならないって事で、うるさいのは仕方ないよ」
「ウンデーネは、伝えたからね」
と言う具合に、なんか赤いスライムと聞いただけでウンデーネの機嫌が悪くなったのだ。
なので、今回のパーティーは、フィーナとぬいぬい、オリエラだ。一緒に来た、シルエットは凄いバカンスルックでパラソルの下で座って居る。
まず、水辺で体を水につけるか、魔法を使うと来るらしい。
砂浜は、物理攻撃はやりやすいのだが、ぬいぬいの精霊系の魔法では狭すぎるって事で桟橋を中心としてまずやろうって事になった。
「うんだば、行くぜよ!!」
「真面目にやれ――!」速攻、ぬいぬいに怒られた!?
仕切り直しで、「では、行きます!」
「「はい!」」
雷の魔法を作り、投げるモーションをする間に海から飛び出したスライムに抱え込まれた形で、出て来た方とは逆の水面に落とされる。
――は!?
と、思っている間に、僕を中心として海面がどんどん赤くなるのだ。見えるすべてが赤く染まり、めちょねちょばりばり音がうるさい。
上に見える太陽が、どんどん赤く染まり湾曲して歪む、なんとか片腕を上げるが精一杯だ。
息が出来ない……。
右手の薬指が、熱を持っている様に感じ痛い。
今わの際に見た風景……。
「本当にうるさ――い!!」 「もう黙って! 静かに!」
ウンデーネのガチギレ…………。
彼女は僕を羽交い絞めにし、僕らの周りに空気が出来ていた、海の世界はもの凄く赤くグルグルまわっている。
どれくらい回っていたかわからない世界は、今や青く染まり、そしてゆっくりと僕を足元から水につけていく。
「ウンデーネありがとう……」
「だから言ったでしょう! うるさいって、もう! 主様は、私が居ないと何も出来ないんだから」
ウンデーネは、最初僕に怒るが、自分の言葉で機嫌が良くなり、僕を砂浜へと連れて行ってくれた。
しかし彼女は、「私が居ないと何も出来ないんだから」と言う自分の言葉を、大変気に入ったらしく。
思い出しては言う様になってしまったのだった……。
つづく
こちらには大きな港が無いが、海に面した海岸に小さな砂浜と船着き場はある。
その小さな砂浜に、この季節にやって来るという海のスライム達の退治が、今回の僕らの選んだギルドクエストになる。
それにしてもクエストはなかなか減らずに、いつになったら旅立てるのか見通しがまだ立たない、しかし港町と言う事もあって少しだけ狐の里についてわかった事があった。
どうやらフィーナが去っただろう年の次の春あたりから、狐の里の狐達の一部がこちらの世界の人間界へと移り住んでいるようなのだ。
魔界へ渡る前に、まず彼らに狐の里について事情を知らなければならない。
それについて気になる事は、フィーナにこの事を伝えたら、彼女は静かに「そうですか……」と、呟いた。もしかしたら彼女は人間界へとはわからずとも、狐の里の人間が一部、里から出てしまった事自体については知っていて、ただ気に病む事しか出来なかったのかもしれない。
話は少しそれてしまったが、そろそろその海岸線と着きそうだ。だが、いつもちょうっとお話の多いウンデーネは今回の攻略メンバーに居ない。
彼女が言うにはだが……。
「ここの海辺のスライム討伐が、今回のクエスト目標なんだけど何か知っている?」
「赤いの?」彼女は首をかしげる。
「うん、赤いの」僕は彼女の反対に首をかしげた。
「情熱の赤いスライムは、ちょっと好きじゃない。うるさいし、うるさいし、うるさいから」
「なるほど……、じゃ今回はウンデーネはパスで」
「主様もパスした方がいいよ。うるさいし、うるさいし、うるさいから」
「まぁ、うるさいから退治しなければならないって事で、うるさいのは仕方ないよ」
「ウンデーネは、伝えたからね」
と言う具合に、なんか赤いスライムと聞いただけでウンデーネの機嫌が悪くなったのだ。
なので、今回のパーティーは、フィーナとぬいぬい、オリエラだ。一緒に来た、シルエットは凄いバカンスルックでパラソルの下で座って居る。
まず、水辺で体を水につけるか、魔法を使うと来るらしい。
砂浜は、物理攻撃はやりやすいのだが、ぬいぬいの精霊系の魔法では狭すぎるって事で桟橋を中心としてまずやろうって事になった。
「うんだば、行くぜよ!!」
「真面目にやれ――!」速攻、ぬいぬいに怒られた!?
仕切り直しで、「では、行きます!」
「「はい!」」
雷の魔法を作り、投げるモーションをする間に海から飛び出したスライムに抱え込まれた形で、出て来た方とは逆の水面に落とされる。
――は!?
と、思っている間に、僕を中心として海面がどんどん赤くなるのだ。見えるすべてが赤く染まり、めちょねちょばりばり音がうるさい。
上に見える太陽が、どんどん赤く染まり湾曲して歪む、なんとか片腕を上げるが精一杯だ。
息が出来ない……。
右手の薬指が、熱を持っている様に感じ痛い。
今わの際に見た風景……。
「本当にうるさ――い!!」 「もう黙って! 静かに!」
ウンデーネのガチギレ…………。
彼女は僕を羽交い絞めにし、僕らの周りに空気が出来ていた、海の世界はもの凄く赤くグルグルまわっている。
どれくらい回っていたかわからない世界は、今や青く染まり、そしてゆっくりと僕を足元から水につけていく。
「ウンデーネありがとう……」
「だから言ったでしょう! うるさいって、もう! 主様は、私が居ないと何も出来ないんだから」
ウンデーネは、最初僕に怒るが、自分の言葉で機嫌が良くなり、僕を砂浜へと連れて行ってくれた。
しかし彼女は、「私が居ないと何も出来ないんだから」と言う自分の言葉を、大変気に入ったらしく。
思い出しては言う様になってしまったのだった……。
つづく
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