魔王がやって来たので

もち雪

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それでも少しずつ歩む日々

会議室の辺りをうろうろ

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 ギルド長のレンに会う為にホイルトツェリオ城の会議室をノックする。

「どうぞ」と、言う声と共に入ると、会議室の面々がこちらを見ている。

 見知った顔もあれば、知らない顔もあり。この時間、午前8時。

 いくら何でも会議をする時間には、早いだろうと思うが、電気と言うものが一般的な物ではないこの世界において、普通の事なのかよくわからず困惑する。

「勇者殿が、来たという事で一度休憩と言う事のしよう」

 そう言ったのはアニス王で、彼は後ろ髪引かれるオリエラと共に朝食に行ってしまった。

 会議室では、残って仕事をする者も居れば僕達の様子を伺う者もいる。レンさんは、いつものミニスカートにざっくりしたファンタジーによくある上着を着ているが、前髪は少し長めな感じになっていた。

 僕達は上座に座るギルド長レンの机の前に椅子を置いて座る。四角に置かれた、机の間から入って内側に、4人座って居る状態だ。

 僕はフィーナを、彼女に紹介すると、「副長の紫龍しりゅうに聞いているよ、是非ギルドに欲しい人材だと彼は言っていたよ」そうレンさんは言う。

 絶対魔王の城より、ブラックな仕事時間を提示してきて、会う時間のすれ違いで二人の仲がすれ違う状態になりそうなので勘弁で! と、思っているとそれが表情に出ていたのか、彼女は机の上の組んだ腕の人差し指同士を当たらない様にクルクルしつつ。

「君が心配する事もわかるが、ギルドでは人種などではなく、能力で人を見る場所だから、彼女の事を色眼鏡で見る者はいないよ」

 そう言ってにこりと笑う。いや、そう言う話ではないが?

「こいつは気にしているのは、お前達が、フィーナを馬車馬の様に働かせやしないかと言う事だよ」

 ぬいぬいの言葉に、レンの人差し指のクルクルが止まった。彼女は組んだ手に額を乗せて「その事については、ギルドの一番の課題なんだ。素晴らしい事をやろうとすると、どうしてもリスクが伴うものなんだよ」

 否定しないところが怖い。

「この馬鹿が、そんな組織はもう、そこの時点で素晴らしくないんだよ」

「あいかわずぬいぬいは、言う事が手厳しいな。まぁそこら辺も考慮するようにするよ」

「おう、頑張れよ」
 と、ぬいぬいは、気軽に応援するがそんなに簡単な問題ではないだろう……。

 レンさんは、下に置かれた大き目の鞄から、大きめの封筒を取り出した。それをルイスの前に置くと、ルイスが次々確認していく。

「みんなも知っての通り、魔界に行くには2つの道しかない。火山帯をつっきる道と雪山を越えて行く道。その2つの道に対応した道の地図だ。そしてそこへ行くまでに君たちに倒して貰いたい魔物住処が、記入されている。それに対応した資料。そしてこの国を立ち去すまでにこなさなければならない、祝賀パーティー、パレード、教会の催しを行う事の出来る日時だ。最後が、パレードでまぁ三日居ないにすべて終わるようにしてくれたらそれでいい」

 ………………。

 「「そう言うとこだぞ(ですよ)」」

 僕、とぬいぬいが、同時に突っ込む。

「なんで別々になるように、盛大なイベントにしてしまったんですか?」

「まぁいろいろな利権とか絡んでいるしなぁ」
 レンさんが、周りを見て話す。すると何故か不思議な事に、周りの人たちは次々退席していく不思議……。

「最後にこれはギルド長として、個人的なお願いなのだが、ギルドが機能しているような街中での人々のお願いは、出来るだけギルドを通して受ける様にしてくれ。ギルドがある分それだけ困難な土地柄と言う事で君たちに依頼が集中する恐れもあるし、それだけギルドで儲けられない人々が出るって事だからね」

「心にとめておきます」

「では、連絡を待っている」そう言ってレンとは、会議室で別れた。

 昨日の夜中に深夜のギルドクエストがあり、家に帰っても朝食がないので珍しく城のレストランをうろついていたら、王様とオリエラが居た。きっと王宮での食事はオリエラが遠慮したのだろう。

 オリエラの前には沢山の料理が並んでいる。

 あれだ……久しぶりに会った子どもに、沢山食べさせてあげたい王様バージョン。

「アニス王もう、本当にたべられないのです」

「そうなのか……」アニス王凄く寂しそう。

「じゃ……このプリンだけ……いただきます」

「そうなのか? ならもっとそのプリンにフルーツを――」

 これは、あかんやつだった……。僕達はいっせいにアニス王を止めるべく二人の元へ向かうのだった。

         つづく
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