魔王がやって来たので

もち雪

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それでも少しずつ歩む日々

雑談の痛手

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 ギルドクエストが、始まって、3匹の葡萄が倒れていた時、僕は慌てていた。

 突然のフィーナの笑顔が、可愛くてもう少しで「結婚しよう」と言ってしまうところだった。

「ギルドクエストの時に、お母さん、葡萄って魔物を倒したら……お父さんからプロポーズされたの……」

「お父さんロマンチック」

「素敵!」

 とは、さすがにならないだろう。もしなるようになれば、魔王の教育の成果に震えあがるしかない。
 そんな事をしている間に先頭集団は、先に進み。ルイスの矢が、僕の頬を僅かに外を飛んで行く。

「ハヤト、大丈夫ですか!?」

「ルイスは、心配症なので……先頭集団が、心配なので知らせる為の矢でしょう」
 
 リーダー矢を放つ執事と、執事に心配症属性を付けてそれですます、リーダー。

 どっこいどっこいだな。それ急げ――!と、草木をわけで進むと葡萄ばかりで割愛するが、蔦の距離が、湿地帯の植物系の魔物より短く、アリと比べ移動距離が、ほぼ0なのも楽だったようだ。
 
 林を抜けるとそこは開けた平野に小さな村が出来ており、そのすぐ横を大人の広げた両手2つ分の川が流れていた。

 宿泊所や飲み物や食堂、雑貨屋、そして小さい畑しかないこの村は、ホーエンツォレルン城と他の村をつなぐ為の宿泊しゅくばやどの様だった。

 先頭行く紫龍さんが、北だろう方角を指さし、「あっちの方角が、魔界だ」そう言うと。
 オリエラ、僕、フィーナに緊張が走る。

「あっちが、ホーエンツォレルン城だ」
 
 紫龍さんがそう言う、僕達三人は顔を見合わせる。

「あの紫龍さん確認なんですが、魔界に逃げるた方がいいとか言うのを、オブラートに包んで言ってるのではないですよね?」

「それはない、でも、何か? お前はそう言われる様な事しているのか?」

(僕達のパーティーは、今……魔族、魔王幹部の白銀狐、おとしごの王女、立場不安定な人間に勇者、英雄の子孫、兵士練習場のリストラ元事務員、精霊のウンデーネ……。)

「そんなことは――ないで――す!」

「そうだろう」

 運よく物分かりのいい人間ばかり残っていたので、三人でうなづき示し合わせる。フィーナに、小声で「フィーナ、今、魔法で、耳やしっぽとか見えなくしてるって事ないよね?」って聞くとふるふると首を振った。かわいい。

「じゃ――これからどうするんですか?」

「集まったら、飯食って帰る」
 
 なるほど!この人わりかし天然だ!

「じゃ、私は、8人座る事が出来るか聞いてきますね」

「じゃー私も行こう」
 そう言って、紫龍さん、とフィーナは、行ってしまった。

「いいんですか? 一緒に行かなくて私は大丈夫ですよ」
 オリエラは、そう僕の顔色をうかがう様に言う。

「オリエラ、仲間だからそこら辺気にしなくてもいいから」
 
 僕は、オリエラの顔を見る。
「やっぱり気にした方がいい時もあるかもしれないけれど……どう思う、オリエラ?」

「うんー学校でも、他の女の子と、付き合ってる人には話しかけるの気がひけますよね」

「やっぱり気になるよね」

「でも、別にハヤトがとかじゃなくて」
 彼女は慌てた様に訂正する。

「うん、僕とかじゃなくてね、一般的にそうぽいからさ。やっぱーオンオフって大事だよね」

「はぁ……」

 だめだ。ついこの間まで中学生だったはずなのに……。何話していいか全然わからない! 共感する話しかたってどうやるんだ……。


          つづく
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