魔王がやって来たので

王の命

階級 エクストラ

　湿地帯のアウトロー捕獲参戦からしばらくして、僕はそのままギルド本部陣営に、連れて行かれ聞き取り調査をされた。

　やっと終わった頃には、もうお昼は過ぎていて、みんなが居るテーブルを探す。僕を見つけたウンディーネが「主様おかえりなさーい」と、両手をあげてやってくるので、とっさにお互いの指と指を絡めて、恋人つなぎって言うのして、ラジオ体操の様に両手で円を描いて振り子の様にブラーン、ブラーンってした。抱きしめられるのは、プロレスの力の測り合いの様だったかもしれない。

「主様、せっかくのおかえりなさいのハグだったのに！」

「ただいま！ウンディーネ」

「ハヤトさん、これハヤトさんの分です。明細控えは一番上のに入れておいたので無くさないようにしてくださいね」

　ウンディーネの後ろから現れた、ミッシェルは、鞄いっぱいにの魔石を僕にくれる。僕は、「ちょっとこごめん」と言って片手を、ウンディーネから離しそれを受け取る。

「ありがとう、助かったよ」

「どういたしまして」ミッシェルは、なんか短時間で少し変わった様で、そうだね。とてもいい事だと思う。

「ウンディーネ、僕は本部陣営に逆戻りをするけど……どうする？　待つことになるだろうけどここで待つ？」

「規制がない場合に、主様と私が、離れる事などありません♪」そう言って彼女は、僕と腕を組む。

「ルイスが、いない時は、私がお守りしないとですし」

　なるほど……しかし僕は、ルイスと腕を組んで歩いた事などないのだが……。

「じゃ――行こうか……」と進むとき、みんなのテーブルの後ろに、ルイスを見たような……彼の顔は、「へぇ――（ギルドの検定試験でいいご身分ですね）」って顔だった様な？……。

　人々をかき分け進む、結構な数のパーティがもう、本部陣営に帰って来ているようだ。中には仲間の安否を心配し、必死に救助を願い出ている人間もいたりする、悲嬉交交ひきこもごもが、そこにはあった。

　検定の集計には、多くの人が駆り出され、待ち時間はあまりない様だ。1つのテントの下に３つくらいの長机が横に並べられている。１人目の受付に、カードを読み取って貰っている間に、魔石を２０個を用意して渡しランク欄を消して貰う、２人目の受付に筆を貰い自動で記入する仕組みになっているらしい。

　僕も、１人目の受付で、魔石２０個を用意して待つ。彼が名簿の中で僕の場所にチェックさせすれば、１つ目のチェックリストが出来る仕組みなんだろう。しかし、僕にチェック欄らしき場所には、斜め線がひかれており、彼の指先は備考欄にすすむ。

「おめでとうございます。ハヤト様、中央テントのレンギルド長がお待ちです」
　
　彼は、そういいにっこりと笑う、隣の受付の彼は、僕に拍手をする。僕には、もう進むしか選択肢は無い。

「あの……ウンディーネも、一緒で構いませんか？」

　はい、もちろんです。進む僕の腕へ、ウンディーネの緊張が伝わる。

「ウンディーネこれは、僕の望んだ事だから、たぶん」

　そうって彼女の青い目を覗き込むと、不信感がまだ広がっている様に僕は思った。でも、彼女は何も言わず僕の横を歩く。

　テントの天幕の余った布が深く重なり合うようにある入り口を通ると、先ほどよりだいぶ減った書類の山と彼女が待っていた。

「随分可愛らしく、怖いお供を連れて来たねぇ今度は。さっきの事件は片付いたかい？」

　その言葉を、聞いてウンディーネは、頬を触る照れている様だ。

「おかげ様で、良い経験をさせていただきました」

「うんうん、経験はお金じゃ変えないからね、じゃ――ギルドの身分証明書を出して」

　彼女は、机の向こうから、片手を差し出す。僕は、胸ポケットの奥のボタンを外し、カードを取り出すと名詞の様に彼女に差し出す。

　彼女は、それを読み取りと階級部分は、消る。

　「これを使って」

　彼女は今度、仰々しく今までにない上等な筆を差し出し、僕は受け取った。僕は、筆を使うと書かれた文字を確認する為に、カードを手に取る。

「extra,エクストラですか？」

「そうだよ、で、こっちが巻物。まぁ今回は、渡す順番がいつもとは、逆になっちゃったけどね。じゃ――祝杯をあげよう！」

　彼女は、ワインのコップを３つ用意し、濃い紫色のワインボトルを開け1つ1つコップに注ぐ。

「あの……まだ、未成年でまだお酒を飲めないのですが……、私もギルドに帰れば今日の事務処理もあるから飲めないよ。これは、ぶどうジュース」

　そう言って、彼女は、ジュースを飲む。僕と、ウンディーネも、それに続いた。

　レンさんは、僕達にジュース残ったのボトルを僕達にくれ、ウンディーネは、目を輝かせて受け取った。

　「じゃ……本当におめでとう、しかし私を含めて、君をエクストラに押し上げた者達の願いは王の復活だ。猶予はもうないと思って出来る限りの事をしてくれないか？　頼む」

　彼女は、ワインのコップを先を指でなぞりながら、そう言うと。「今日はおめでてとう。ではね」と、言って仕事に戻った。

　ウンディーネは、何やら聞きたそうにしている。だが、僕は彼女と腕を組む、反対の手で彼女の腕を軽く握りそれを制していた。


　　　　　　　　　　　　　　　　つづく