魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
87 / 196
王の命

アリの大群

しおりを挟む
 試験会場のルルデコの湿地帯には、湿地帯特有の植物の他に、緑の蔓に小さな葉、時に紫色の花咲かせる植物の様な物が棲息している。そんな湿地帯の植物の間に、1メートル位の木の板が連なって置かれ、道の役目をはたしている。

 「ああぇえなんだこれ――――!?」

 慎重に進む僕らの耳に、彼の声は混乱と戸惑いの色を含んで聞こえてた。叫んだ彼の足元には、木の板は存在せず、彼は足元からどんどん緑の蔓が重なりあうように彼を覆いつくす、そしてそのまま彼はどこへか引っぱらていってしまった。緑の大地の中で彼の姿を捉えているのはすぐ難しくなる。

「いいんですか? ハヤトさん!?」

 ミッシェルが大声で騒ぐ。蔓の本体は、この湿地帯のどこかにいる。しかし1体なのか2体なのかそれとも、もっと多いか見当もつかない。ただ言えるのは、彼を助ける事で、確実に時ロスと僕達のパーティーの命の危険が増えると言う事だ。

「決して良くない。良くないが……、本体の位置も掴めていない今、パーティーメンバーを無駄に危険にする事だできないです」

 僕はそのままずんずん先へ進む事にし、実際進む。本当に不愉快だが仕方ない、誰も僕の意見逆らうものが居ない事にとてもほっとする。僕は仲間のあんな姿は、正直みたくないからだ。……はぁ僕は誰に、言い訳してるんだ。自分で、決めた事だろう……。


 
 進むうち、木の道の上に待ち受けるモンスターもいた。後ろに『攻撃』のハンドサインを送り。槍を使い倒す。魔石は湿地の水の中深くに落ちたがそのまま拾わず進み先を急いだ。湿地帯を抜ける少し前に、魚を槍で貫き連れて行く。木の道は終わりやっと乾いた地面が見える場所にでて、草地を避け先へ進むと標的のアリ姿を現す。  普通でも、きもいアリが、人間大の大きさだときもいを通り越してグロイ。僕達は、少し開けた地面のある場所を陣取ると、僕達の目の前の地面に魚をおいた。

「じゃ……これから、アリを引き寄せますが、3匹目のアリが引きかえすまで、手出しはしないでください」

「もしアリが私達に気付いた時は?」オリエラが確認する。彼女は、魔法学校での戦闘訓練を受けているの為か落ち着いていた。

「その場合、僕が、魔法を使うのでその後を追って、巣に向かってください」

「そうしたら、おいどん達は、みんなアリに巣へ引っ張りこまれてしまわんとですか?」

「ハヤトさん、本当に大丈夫ですか? 僕はまた、死にたくありませんからね」

 ミッシェルとスドウは、はらはらした顔で僕を見つめている。

「僕が、アリの巣の中で炎と水魔法を組み立て熱波の霧を作ります。初めての挑戦であるので、アリの生命力の方がまさる可能性があるので、その時はミシェル僕の魔法のアシストお願いします」

「オリエラ、スドウは、巣に戻って来る敵をメインにお願いします」

 僕達は、強化魔法をそれぞれかける。全員がかかった事を確認したのち……。

「じゃ――行きますよ?」
 
「「はい」」

 計画通りやはり一匹目のアリが、やって来て魚の一部を持って行くと、ゆっくりであるが次々に魚をもって行くアリが現れる。3匹目のアリが、引き返すのを見送ったのち、次々とアリのフェロモンたよりにやって来るアリを倒すのだが、アリ見た目以上タフで強い。魔法で、攻撃がどこまで効くのかわからないがいまの所順調だ。

 だいたい外へ出ているアリが、こっちへ一列に列をなしてやって来ている。巣を出ていたアリもすべて戻って来た様だ。

 その時を見計らって、すべてのアリを魔法の水の魔法で外側から囲い込んでいるまに、先頭のアリをオリエラに倒して貰いつつ前に進む。僕の魔法がアリの巣をも囲んだ時

「オリエラ、ミッシェル水の魔法でアリ達を巣に向かって押し流せ!」

 ふたりは水の速度を合わせて、アリを巣の中に押し流す。器用なふたりなので、なんなくこなしてしまう。

 僕達は、巣の入り口まで走り込み、そのまま巣の後ろの水流から巣へ滝の様に落とし込んで行く。そこに炎の魔法を組み立てる為、炎の魔法を流し螺旋を作り出し流し込むが……。

「ウンディーネの効果か、水の勢いが強すぎてうまく行かない、まずはミッシェル、炎の魔法を僕に合わせて!」

 ミッシェルの魔法のおかげで、炎と水を隔離させてたまま、速度を調節しつつ回転させ。大量に灼熱のミストを作り出す事に成功しつつある。

 しかしそれによって大量のアリが次々とアリの巣から湧いて出くる。それを絡めとるように、炎と水が踊り舞うがそれを越えて上がって来るアリをオリエラが、魔法の剣の力を行使、地底深くへと叩き落す。

「これさ――!」
 僕が世間話を始める。三人は、ぎょっとした顔でこっちを見る。

「アリの王いや……女王って……出ないよね?!」

「そもそも王自体、そんなに出るものではないでごわすよ?」

「いや……そうだよね……気にし過ぎだよね?」

 僕とスドウの話に沈黙を貫くふたり。なんか話して――! 下の音がめちゃくちゃ気になる。リズム刻んでるから!!

       つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

十字架のソフィア

カズッキオ
ファンタジー
 魔王が六人の英雄によって討伐されてから一年後エルザーク帝国とイルミア王国はそれまでの同盟関係を破棄、戦争状態に突入した。 魔王を倒した英雄達は内二人がエルザーク帝国に、もう二人はイルミア王国に協力していた。 また残りの一人は行方不明とされていた。 そして戦争状態が更に二年経過していたアールシア大陸で一人の紅衣を纏った傭兵の少年と、とある農村にある教会のシスターの少女がめぐり合う。 これはその二人が世界を変える物語である。 ※この作品はグロテスクなシーンや不適切な表現が一部ございます、苦手な方は閲覧をご控え下さい。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

ツムギ ツナグ

みーな
ファンタジー
遥か気も遠くなるような昔、とある創始者の手によって、人と竜と神が共存するこの世界は創られた。  穏やかな平和な世界で、ある時起こった小さな事件を発端として、1人の少女が、紡がれた人生と絆を繋いでゆく。 ※1年半ぶりに更新しました記憶ないです

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...