21 / 213
ふたたび動き出す世界
なにか
しおりを挟む
「ふぅ――お茶もご馳走になったし、そろそろ本題の話でもするか?」
魔王は、椅子に座り背筋を伸ばして、両ひざの上に手を置く。まるでCMで、見たドラマの戦国武将の様だ。
「こちらこそ、ご馳走様でした。 本題と言うとフィーナさんの話ですね」
面接に来た就活の学生の気分になりながら、魔王へ挑む。
「で、フィーナについては、どうだ? 最近の若者の意見を率直に聞きたい」
魔王の3つの目がこちらを向いている。彼は、常に何かを警戒しているのか、額の目は2つの目とは違うどこかを見ている事が多いが今回は全ての目がこちらを向いているのだ。
(少し、緊張して手が自然に震えるなぁ……。でも、ここは腹を割って話さなければいけないだろう……)
「はい! とても良い娘さんで交際をしたいと考えております」
(魔王の目が今までにないほど泳いでいる……でも、すぐに殺されないくて良かった……)
魔王は、目の前の静かに飲み干し、体制を整えなおす。
「そうか……」
魔王の心情を立て直したのちに、発した『そうか……』の一言は彼女の上司として、父親役として深みが増している様だった。
(むしろ、そうであって欲しかった。)
「最初に、貴様にあった日の夜の、あの子の様子を思い返して見れば無理からぬ事よ」
(うーん、どんな様子だったのか聞いてもいいものだろうか?)
「あの実際どんな様子だったのでしょうか?」
様子を見ながら聞くと、魔王は珍しく机に肘を、つきそこに顔を乗せ、遠い昔を思い出すように語りだした。
「あの時のあの子は、まるで昔なくした宝箱をみつけたかの様にこっそりと……そして少しの笑みを絶やさずに、いくつもの仕事をしておったぞ」
「ここから我の昔話であるが、フィーナにも関係のある事なのでよく聞くように」
僕に聞かせるように、夢物語を語るように魔王の話は始まった。
「魔界では、それぞれの魔族が独立して小さな国家を気付いておる。その中に彼女の種族、狐の種族がおった」
「ここの昔話でも、多くの狐が登場するか?」
魔王は、ふと僕の顔を見て問いかける。
「そうですね……、化け狐に、九尾の狐に、大国の妃になってその国を滅ぼしかけたものまで、いろいろいますね」
「ふむ、魔界でもだいたい狐は化け、策を講じる」
魔王は静かにうなづく。そしてまた思い出すように窓の外を見ながら話しだすのだった。
「どの狐もだいたい人間に近い生活をしているように、書かれていると我は記憶しているが……。彼女の種族もそうだった、人間に近いため、人間界近くに住み魔界にはない、素晴らしいものを狐達は集めてる。だから我は、興味を持ちある男に近づいた、名前は白煙といい。狐と言うよりは、古狸という風貌だったが目の奥底だけはとてもギラギラとさせた奴だった」
「その男は、権力に強い関心を持つようだったが、そんなものは魔界のどこにでもおる。だからその男に話をつけてもらい、狐の中で一番の力を持つ、白銀狐当主に顔をつないで貰った」
(白銀狐の当主……)
「もしかしてその人はフィーナの親戚筋では? 」
「フィーナの父親だ」
魔王は、今度は僕の顔を見ずに答えた……。
「フィーナの父親の両親は既に亡く、身体の弱い弟と住んでいた。我は、そこにその男と父親に似て隙の無い娘、白雪と共に向かった」
「その日にはフィーナの母親となる許嫁も来ていて、これからよろしくお願いしますと丁寧に頭を下げていたよ。だが、帰り間際、娘の白雪が席を帰ってきたら――何故かは、その時はわからなかったが全てが変わっていた。」
「そうお前と会った時の、あの子の様に」
魔王は、そこまで言うとまた席を、正しく座り直し静かにお茶を飲む。僕の知らない何かがあって、僕には魔王をいつもの魔王とは認識出来ない。それは、魔王の思い出なのか、強い思いなのか、それともその両方なのか?
今、若いフィーナが里を離れ、魔王のもとで暮し、働いている。その暮らしを思い浮かべると、魔王をいつもと違う雰囲気する何かは……悲しみや後悔からくるものだと言う事はたやすく想像出来た。
つづく
魔王は、椅子に座り背筋を伸ばして、両ひざの上に手を置く。まるでCMで、見たドラマの戦国武将の様だ。
「こちらこそ、ご馳走様でした。 本題と言うとフィーナさんの話ですね」
面接に来た就活の学生の気分になりながら、魔王へ挑む。
「で、フィーナについては、どうだ? 最近の若者の意見を率直に聞きたい」
魔王の3つの目がこちらを向いている。彼は、常に何かを警戒しているのか、額の目は2つの目とは違うどこかを見ている事が多いが今回は全ての目がこちらを向いているのだ。
(少し、緊張して手が自然に震えるなぁ……。でも、ここは腹を割って話さなければいけないだろう……)
「はい! とても良い娘さんで交際をしたいと考えております」
(魔王の目が今までにないほど泳いでいる……でも、すぐに殺されないくて良かった……)
魔王は、目の前の静かに飲み干し、体制を整えなおす。
「そうか……」
魔王の心情を立て直したのちに、発した『そうか……』の一言は彼女の上司として、父親役として深みが増している様だった。
(むしろ、そうであって欲しかった。)
「最初に、貴様にあった日の夜の、あの子の様子を思い返して見れば無理からぬ事よ」
(うーん、どんな様子だったのか聞いてもいいものだろうか?)
「あの実際どんな様子だったのでしょうか?」
様子を見ながら聞くと、魔王は珍しく机に肘を、つきそこに顔を乗せ、遠い昔を思い出すように語りだした。
「あの時のあの子は、まるで昔なくした宝箱をみつけたかの様にこっそりと……そして少しの笑みを絶やさずに、いくつもの仕事をしておったぞ」
「ここから我の昔話であるが、フィーナにも関係のある事なのでよく聞くように」
僕に聞かせるように、夢物語を語るように魔王の話は始まった。
「魔界では、それぞれの魔族が独立して小さな国家を気付いておる。その中に彼女の種族、狐の種族がおった」
「ここの昔話でも、多くの狐が登場するか?」
魔王は、ふと僕の顔を見て問いかける。
「そうですね……、化け狐に、九尾の狐に、大国の妃になってその国を滅ぼしかけたものまで、いろいろいますね」
「ふむ、魔界でもだいたい狐は化け、策を講じる」
魔王は静かにうなづく。そしてまた思い出すように窓の外を見ながら話しだすのだった。
「どの狐もだいたい人間に近い生活をしているように、書かれていると我は記憶しているが……。彼女の種族もそうだった、人間に近いため、人間界近くに住み魔界にはない、素晴らしいものを狐達は集めてる。だから我は、興味を持ちある男に近づいた、名前は白煙といい。狐と言うよりは、古狸という風貌だったが目の奥底だけはとてもギラギラとさせた奴だった」
「その男は、権力に強い関心を持つようだったが、そんなものは魔界のどこにでもおる。だからその男に話をつけてもらい、狐の中で一番の力を持つ、白銀狐当主に顔をつないで貰った」
(白銀狐の当主……)
「もしかしてその人はフィーナの親戚筋では? 」
「フィーナの父親だ」
魔王は、今度は僕の顔を見ずに答えた……。
「フィーナの父親の両親は既に亡く、身体の弱い弟と住んでいた。我は、そこにその男と父親に似て隙の無い娘、白雪と共に向かった」
「その日にはフィーナの母親となる許嫁も来ていて、これからよろしくお願いしますと丁寧に頭を下げていたよ。だが、帰り間際、娘の白雪が席を帰ってきたら――何故かは、その時はわからなかったが全てが変わっていた。」
「そうお前と会った時の、あの子の様に」
魔王は、そこまで言うとまた席を、正しく座り直し静かにお茶を飲む。僕の知らない何かがあって、僕には魔王をいつもの魔王とは認識出来ない。それは、魔王の思い出なのか、強い思いなのか、それともその両方なのか?
今、若いフィーナが里を離れ、魔王のもとで暮し、働いている。その暮らしを思い浮かべると、魔王をいつもと違う雰囲気する何かは……悲しみや後悔からくるものだと言う事はたやすく想像出来た。
つづく
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる