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第20話

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昼休みが終わり、屋上でみんなと解散して金本と教室に戻った。

そして遠足の班を決める地獄の5時間目が始まろうとしていた。 

昼休みが終わるギリギリまでクラスの女子から声をかけられてた俺は予鈴のチャイムが鳴ってホッとしたと同時にドッと疲れて机に突っ伏してた。 

「班決め俺らが中心になって決めるんやろ、いっそ公平にくじ引きにでもしよか?」 

「…うーん」 

後ろから金本にそう声をかけられたが、周りの様子を見ているとやっと少しづつクラスにみんなが馴染んできてグループができ始めてきてる。 

最初の学校行事は大切な青春の思い出の始まりになるだろうし好きな人同士で行ってほしいと思う気持ちがある。 

だけどこのままでは金本をめぐってクラス内の女子達で戦争が起こるかもしれない。てか金本をめぐって戦争が起きるってなんだよ、漫画やゲームの世界かよ。あ、そういう世界だった。 

「…少しだけ考えがある」


本鈴が鳴って先生が教室にやってきた。 

「それじゃあ今から学級委員を中心に班決めをしてもらうぞ」 

先生の班決めの説明としてはこのクラスは36人いて男子が20人、女子が16人いる。6人でひとつの班を作るとして全部で6班、男女3:3になるように組むのが基本らしい。 

男女の人数の関係でひとつだけ男子4、女子2の班が出来上がるとのこと。 

「それじゃ、ここから学級委員の2人に任せるぞ」 

俺は重々しい足取りで金本と前に出た。 

「ほな、今日は俺が書記やるわ。なんか考えがあるんやろ?」 

「おう」 

一番安全且つ公平なやり方を俺は考えた。 

「えー、まず男女に分かれて3人ずつで組んでもらってその後全部のグループに番号をふるから代表1人がくじを引いて同じ番号のところで班を組むって形にしようと思うんだけど…」 

女子達の反応を恐る恐る見ると少し不服そうな表情をしてる人もいたがまあこれが平等だと思ってくれたらしい。金本の方を見れば「ええと思う」と小さい声で言ってくれた。 

「あ、でも男子4人と女子2人で組んだところは必然と班決定するからくじ引きからは除外するぞ。それじゃまずは男女分かれて3人組になってくれ」 

そう言うとみんなが立ち上がり一斉に動き始める。 

金本と同じ班になれるかはくじの運次第とわかった今、びっくりするくらい俺のところには誰も来なかった。今日一日の俺の災難はなんだったのだろう。 

教室を見渡してると窓際の後ろの方にちょこんと座ってる女子が一人いた。名前は確か… 

「薬師寺さん」 

自己紹介の時にかっこいい苗字だと思っていたので印象に残っている。

猫背気味の姿勢に大きい眼鏡とおさげヘアー、常に顔が下を向いていておどおどしている暗めな雰囲気が典型的な陰キャに部類されてしまいそうな感じだった。 

俺が声をかけると彼女は肩がビクッとした。 

「あ、あ、えっと小田さん、でしたよね」 

「うん。薬師寺さんは誰かと組まないの?」 

「私…風邪で入学式の日お休みしてしまって、次の日から来たらみなさんすでにお友達ができていて…」 

なるほど、友達を作るタイミングを逃したタイプか。 

「気にすることないって、俺なんて初日からいたのに友達ゼロ!見てたらわかると思うけどもはや女子達からは嫌われてるし、薬師寺さんならこれからまだまだクラスに馴染めるよ」 

そう言うと照れたような困ったような顔をして下を向いてしまった。 

「あの…もし薬師寺さんさえよければ一緒に班組んでもらえないかな…なんて」 

俺と組むなんて嫌だよなと思いつつ薬師寺さんを見るとパッと明るい顔になった。 

「ぎゃ、逆に私なんかで良いんですか…?」 

「勿論!楽しい思い出作ろうな!」 

無事に俺も組めたことで安心して黒板前に戻った。 

周りをみるとすでにみんな組み終わっていて雑談をしており、俺が戻ってきたのを察して金本もこちらに戻ってきた。 

「大丈夫やったん?」 

「おう、ばっちりよ!」 

次は男女の班同士を組み合わせるために急いで金本とくじを作った。 

「ほな、代表の人引きに来ぃや」 

そういってそれぞれの代表がくじを引きにくるが女子達は心做しか顔が強ばって見える。多分全ての運を自分の手に込めてるのだろう。 

そして今くじを引いた代表者の名前と番号を黒板に書いてグループになってもらった。俺は薬師寺さんのところに向かった。男子側の人がわからないため俺は辺りをキョロキョロした。 

「おーい、男子の方の4人組誰だー?」 

「おー、こっちこっち」 

「え?」 

めちゃくちゃ聞き覚えのある声の主を見ると金本がこちらに手を振っていた。は? 

「奇遇やな、このクラス俺含めてバスケ部4人おんねん。それで組んだ」 

「…」 

変な汗がだらだら出てきた。薬師寺さんの方を見ると口元を手で抑えて俺と同じく世界の終わりのような顔をしていた。 

「ほな、この6人で最初の楽しい思い出でも作ろか」


俺はもう怖くて周りの女子達を見ることはしなかった。





    
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