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第383話
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そんな事だろうと思った。
ヨシナリは撃ち落とされたリングを視界の端に捉えつつも目の前のタヂカラオに意識を向ける。
武装と推進装置を兼ねている上、ジェネレーターまで内蔵しているのだ。
これで自立飛行できない方が不自然だった。 恐らくは最後の最後で使って来るはずだ。
普通にやればまず喰らう。 躱すだけならどうにでもなるが、勝つとなると文字通りの死線を潜る必要があった。 敵の攻撃をそのままスルーして蹴り抜くのは中々に勇気の要る事ではあるが、それ以上にヨシナリは信じていたのだ。 グロウモスの腕を。
ちょうど敵機を仕留めた所だったのも運が良かった。
ヨシナリの状況をいち早く察知して援護に入ってくれたのは感謝しかない。
連携訓練の際、彼女には上を意識するようにそれとなくアドバイスした甲斐があったと内心でほっと胸を撫で下ろす。 リングを失い、両腕を使ったタヂカラオの選択肢は蹴りしかない。
ホロスコープとタヂカラオの足が交差。 接触と同時に足に仕込んだクレイモアを起爆する。
爆発が発生。 僅かに遅れてエラーメッセージがポップアップ。
足の推力偏向ノズルにダメージ。 レガースのお陰で足自体は残ったが、どうやら衝撃を殺しきれなかったようだ。
だが、タヂカラオの方も無傷では済まず、足が完全に破壊されていた。
『クッ、足が――』
爆発の影響で機体が離れ、それに合わせてタヂカラオが両腕を向ける。
四つになったリングにエネルギー充填されるが、下からの狙撃によって回避。
グロウモスだ。 僅かに遅れて、無数の銃弾が飛んでくる。
今度はマルメルだ。 タヂカラオに集中していたお陰で地上をよく見ていなかったのだが、気が付いたら下の敵機が残り一機――だったが、見ている間に最後の一機の反応が消えた。
こちらはホーコート以外は健在。 正直、五分ぐらいの勝負になると思ったが、想像以上にマルメル達が頑張ってくれたようだ。 仲間の頼もしさに嬉しさを感じ、そろそろ勝負を決めに行こうと機体を加速させる。
『ここまで追い込まれるとは思わなかったよ。 だが、そう簡単に勝てるとは思わない事だね!』
タヂカラオはまだ勝負を捨てていないのか片足と両腕のリングの全てを推進に利用。
それにより急加速。 グロウモスの狙撃を次々に回避し、マルメルの銃撃は掠りもしない。
速い。 リングを五つも失って機動性はかなり落ちているが、それでも純粋な技量で回避するのは流石はAランクという所だろう。
だが、比較対象である同格のベリアルやユウヤに比べると総合力では数段劣る。
確かに個々の技術を切り取ればタヂカラオはヨシナリよりは上だろう。
射撃、機動、判断力と隙がなく高いレベルで纏まってはいるが、彼の挙動には欠点が一つあった。
エネルギーリングの射撃傾向を見るとそれが顕著で、ばら撒くように飛ばし、切れ目をあまり作らない――所謂、制圧射撃を行いたがる。 後はやたらと上を取りたがる点も気になった。
恐らくだが、相手を力で捻じ伏せたいという無意識から来るものだろう。 本人は上手く隠してはいるが、言動の端々から感じる傲慢さからも明らかだった。
ヨシナリはアトルムとクルックスを引っ込めてアシンメトリーに切り替え、実弾で連射。
タヂカラオは加速して回避。
――このタイミングで加速?
何故だと重力変動を確認すると片手と片足を中心に変化している点から片手を攻撃ではなく推進に回したのだろう。 だが、片腕はリングを一つ失っているので最初の頃に比べると目に見えて遅い。
エネルギーリングを連射しながら接近。 両腕でも捉えきれなかったのに片腕ではもう当てられないと判断して接近戦での勝負に切り替えたようだ。
性格上、もっと早く諦める物かとも思ったが、随分と喰らいついてくる。
思った以上に必死な印象を感じるが、何かあるのだろうか?
『思金神』の事情に関しては不明だが、そんな事情を汲んでやる必要もない。
ヨシナリは変形して急降下。
この状態でも旋回性能では相手の方が遥かに上だが、直線加速ならホロスコープに分がある。
そう簡単に追いつけない。 そのまま地上まで降下。
タヂカラオは追うか下がるかで迷ったが、逃げ場がないと判断して追撃。
もう狙いは看破しているだろうが、どうにもならないと言う事もまた察していた。
何故なら地上の味方機が全滅している以上、残った『星座盤』のメンバーを全員相手にしなければならないのだ。 距離をとってもグロウモスが居るので一方的に撃たれる。
隙を窺うにしてもヨシナリが炙り出しに来るだろう。
つまり、彼の取れる手として残されているのは速やかな各個撃破。
だからこそ追撃を行ったのだが、僅かに迷ったその一瞬が命取りだった。
グロウモスの狙撃を回避し、マルメルの銃撃をビルを盾にやり過ごす。
――が、そこまでだった。
回避している間にヨシナリがアシンメトリーによる狙撃。
高出力のエネルギー弾がタヂカラオを狙って飛ぶが、彼は蹴りで弾き飛ばす。
何だとセンサーで確認すると重力変動を利用してエネルギー弾の軌道を捻じ曲げたらしい。
こんな使い方があったのかと感心したが、もう詰みが見えた。
背後から襲い掛かったシニフィエをエネルギーランスによる横薙ぎの一撃で仕留めようとしたが、彼女はぬるりとした動きで躱して懐に入る。
――うわ、なんだあの動き。
紙一重で躱し――いや、アレは見切っているのか?
そのまま背のブースターを噴かして懐へ入り、蹴りを繰り出す。
タヂカラオは仰け反って回避するが、通り過ぎた足が即座に戻って頭部に引っかかる。
上手い。 仰け反って回避した後、反撃に移る為に頭部の位置を戻すのを狙ったのか。
引っ掛けた後、体全体でしがみつくように腕をホールド。 ブースターで機体を強引に浮かして組み付いた。
「片腕もーらい」
バキリと音がして腕が圧し折れた。 確か腕挫十字固だったか、ふわわも使っていた関節技だ。
組み付いて即座に捻り上げた結果、タヂカラオの肩が即座に破壊され、腕が引っこ抜かれた。
そして引っこ抜く際にブースターを噴かすのでそのまま離脱にも繋がっている。 何度か見たが恐ろしい技だ。
「Iランクが!」
感情的になったタヂカラオが残った腕でエネルギーリングを撃ち込もうとするが、それが最期だった。 ヨシナリの放ったエネルギー弾が胴体を捉え、その直後にいつの間にか近くに来ていたふわわの一閃により、機体がバラバラになった後、爆発。 試合終了となった。
ヨシナリは撃ち落とされたリングを視界の端に捉えつつも目の前のタヂカラオに意識を向ける。
武装と推進装置を兼ねている上、ジェネレーターまで内蔵しているのだ。
これで自立飛行できない方が不自然だった。 恐らくは最後の最後で使って来るはずだ。
普通にやればまず喰らう。 躱すだけならどうにでもなるが、勝つとなると文字通りの死線を潜る必要があった。 敵の攻撃をそのままスルーして蹴り抜くのは中々に勇気の要る事ではあるが、それ以上にヨシナリは信じていたのだ。 グロウモスの腕を。
ちょうど敵機を仕留めた所だったのも運が良かった。
ヨシナリの状況をいち早く察知して援護に入ってくれたのは感謝しかない。
連携訓練の際、彼女には上を意識するようにそれとなくアドバイスした甲斐があったと内心でほっと胸を撫で下ろす。 リングを失い、両腕を使ったタヂカラオの選択肢は蹴りしかない。
ホロスコープとタヂカラオの足が交差。 接触と同時に足に仕込んだクレイモアを起爆する。
爆発が発生。 僅かに遅れてエラーメッセージがポップアップ。
足の推力偏向ノズルにダメージ。 レガースのお陰で足自体は残ったが、どうやら衝撃を殺しきれなかったようだ。
だが、タヂカラオの方も無傷では済まず、足が完全に破壊されていた。
『クッ、足が――』
爆発の影響で機体が離れ、それに合わせてタヂカラオが両腕を向ける。
四つになったリングにエネルギー充填されるが、下からの狙撃によって回避。
グロウモスだ。 僅かに遅れて、無数の銃弾が飛んでくる。
今度はマルメルだ。 タヂカラオに集中していたお陰で地上をよく見ていなかったのだが、気が付いたら下の敵機が残り一機――だったが、見ている間に最後の一機の反応が消えた。
こちらはホーコート以外は健在。 正直、五分ぐらいの勝負になると思ったが、想像以上にマルメル達が頑張ってくれたようだ。 仲間の頼もしさに嬉しさを感じ、そろそろ勝負を決めに行こうと機体を加速させる。
『ここまで追い込まれるとは思わなかったよ。 だが、そう簡単に勝てるとは思わない事だね!』
タヂカラオはまだ勝負を捨てていないのか片足と両腕のリングの全てを推進に利用。
それにより急加速。 グロウモスの狙撃を次々に回避し、マルメルの銃撃は掠りもしない。
速い。 リングを五つも失って機動性はかなり落ちているが、それでも純粋な技量で回避するのは流石はAランクという所だろう。
だが、比較対象である同格のベリアルやユウヤに比べると総合力では数段劣る。
確かに個々の技術を切り取ればタヂカラオはヨシナリよりは上だろう。
射撃、機動、判断力と隙がなく高いレベルで纏まってはいるが、彼の挙動には欠点が一つあった。
エネルギーリングの射撃傾向を見るとそれが顕著で、ばら撒くように飛ばし、切れ目をあまり作らない――所謂、制圧射撃を行いたがる。 後はやたらと上を取りたがる点も気になった。
恐らくだが、相手を力で捻じ伏せたいという無意識から来るものだろう。 本人は上手く隠してはいるが、言動の端々から感じる傲慢さからも明らかだった。
ヨシナリはアトルムとクルックスを引っ込めてアシンメトリーに切り替え、実弾で連射。
タヂカラオは加速して回避。
――このタイミングで加速?
何故だと重力変動を確認すると片手と片足を中心に変化している点から片手を攻撃ではなく推進に回したのだろう。 だが、片腕はリングを一つ失っているので最初の頃に比べると目に見えて遅い。
エネルギーリングを連射しながら接近。 両腕でも捉えきれなかったのに片腕ではもう当てられないと判断して接近戦での勝負に切り替えたようだ。
性格上、もっと早く諦める物かとも思ったが、随分と喰らいついてくる。
思った以上に必死な印象を感じるが、何かあるのだろうか?
『思金神』の事情に関しては不明だが、そんな事情を汲んでやる必要もない。
ヨシナリは変形して急降下。
この状態でも旋回性能では相手の方が遥かに上だが、直線加速ならホロスコープに分がある。
そう簡単に追いつけない。 そのまま地上まで降下。
タヂカラオは追うか下がるかで迷ったが、逃げ場がないと判断して追撃。
もう狙いは看破しているだろうが、どうにもならないと言う事もまた察していた。
何故なら地上の味方機が全滅している以上、残った『星座盤』のメンバーを全員相手にしなければならないのだ。 距離をとってもグロウモスが居るので一方的に撃たれる。
隙を窺うにしてもヨシナリが炙り出しに来るだろう。
つまり、彼の取れる手として残されているのは速やかな各個撃破。
だからこそ追撃を行ったのだが、僅かに迷ったその一瞬が命取りだった。
グロウモスの狙撃を回避し、マルメルの銃撃をビルを盾にやり過ごす。
――が、そこまでだった。
回避している間にヨシナリがアシンメトリーによる狙撃。
高出力のエネルギー弾がタヂカラオを狙って飛ぶが、彼は蹴りで弾き飛ばす。
何だとセンサーで確認すると重力変動を利用してエネルギー弾の軌道を捻じ曲げたらしい。
こんな使い方があったのかと感心したが、もう詰みが見えた。
背後から襲い掛かったシニフィエをエネルギーランスによる横薙ぎの一撃で仕留めようとしたが、彼女はぬるりとした動きで躱して懐に入る。
――うわ、なんだあの動き。
紙一重で躱し――いや、アレは見切っているのか?
そのまま背のブースターを噴かして懐へ入り、蹴りを繰り出す。
タヂカラオは仰け反って回避するが、通り過ぎた足が即座に戻って頭部に引っかかる。
上手い。 仰け反って回避した後、反撃に移る為に頭部の位置を戻すのを狙ったのか。
引っ掛けた後、体全体でしがみつくように腕をホールド。 ブースターで機体を強引に浮かして組み付いた。
「片腕もーらい」
バキリと音がして腕が圧し折れた。 確か腕挫十字固だったか、ふわわも使っていた関節技だ。
組み付いて即座に捻り上げた結果、タヂカラオの肩が即座に破壊され、腕が引っこ抜かれた。
そして引っこ抜く際にブースターを噴かすのでそのまま離脱にも繋がっている。 何度か見たが恐ろしい技だ。
「Iランクが!」
感情的になったタヂカラオが残った腕でエネルギーリングを撃ち込もうとするが、それが最期だった。 ヨシナリの放ったエネルギー弾が胴体を捉え、その直後にいつの間にか近くに来ていたふわわの一閃により、機体がバラバラになった後、爆発。 試合終了となった。
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