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第371話
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ホーコートはシニフィエが視界から消えたと同時に最大加速。
矢のように弧を描きながら雲へと入る。
観戦モードだと雲を透過できるので何が起こっているのかは見えていた。
シニフィエは下を見るような姿勢で、ホーコートはその背後に回る。
有効射程ギリギリまで接近し、散弾銃を構えるがホーコートが動きを止めたと同時に機体を捻りながら加速。 ホーコートの機体に組み付く。
『つーかーまーえーたっ!』
頭部を抱えるようにしてコックピット部分に膝を叩きこむ。
ホーコートは咄嗟に散弾銃を投げ捨ててマチェットを抜こうとするが、それよりも早くシニフィエがその腕に全身で絡みつく。 両足で上腕を挟み、捻り上げる。
バキリと嫌な音がしてホーコートの機体の腕が破壊された。
残った腕で拳銃を抜こうとするが、それよりも早くシニフィエはその背にしがみつく。
もう一本の腕を破壊しに行くのかと思ったが狙いはエネルギーウイングだったようだ。
強引に掴んで引き千切った。
「うわ、マジかよ」
思わずマルメルは声を上げる。 ヨシナリもこれには声を漏らした。
推進装置を狙うのは有効だが、組み付いた状態でやるのは想定外だ。
片腕のホーコートは背負う形になったシニフィエに対して何もできず、推進装置を破壊された事により飛行が不可能になった。
――そうなると後の展開はもう読める。
シニフィエは拘束を解くとホーコートの機体は重力に引かれて落下。
僅かな落下時間を経てぐしゃりと音がして爆発。 試合終了となった。
「あー、やられちまったぁ。 マジで初心者? 自信なくすなぁ……」
ホーコートはやられたーと言いながら悔しそうにしていた。
シニフィエは何故か首を傾げ、ややあって口を開く。
「ホーコートさんは何を意識して戦い方を組み立てていますか?」
「意識? あー、何だろう。 何となくかなぁ。 雰囲気でやってる感じ?」
「……なるほど、参考になりました」
ホーコートははぁと小さく首を捻る。
「その機体だったら俺ともやれそうだな! 今度は俺と戦ろうぜ!」
「お、いいっすね。 やりましょうか!」
「じゃあヨシナリ! ちょっとこいつ借りてくぜ!」
マルメルはホーコートと肩を組んで引っ張っていく。
ウインドウを操作してそのままトレーニングルームへと移動した。
完全に居なくなった事を確認し、ヨシナリはちらりとシニフィエへ振り返る。
「――で? どう思う?」
「ぶっちゃけるとあの人、なんかズルしてません?」
即答。 正直、ヨシナリも疑っている部分だったので否定はしない。
「何でそう思った?」
「動きが機械的すぎです。 NPCと戦ってるのかと思いましたよ。 あ、という事はお義兄さんも疑ってたんですね」
ヨシナリはまぁなと言って小さく息を吐く。
シニフィエの認識は正しい。 ホーコートの動きは一つ一つの動きは優れていたが、決められたパターンをなぞっているだけにしか見えなかった。
「実際、動きに違和感しかなかったからな」
「でもこのゲームってチート厳禁じゃないんですかね?」
「そのはずだけど、何にも言ってこないって事はチートじゃないか、お目こぼしして貰ってるかのどっちかだな」
このゲームに置いてチートは即座にアカウント削除+賠償の対象となる。
その辺を理解できていない訳がないので、知っていてやっている?
まさかとは思うが使っている自覚がない? もしかして運営がモニターとして雇っているプレイヤーとか? 様々な疑問が浮かぶが、どれも確証にまでは至らない。
――つまり、今の所は考えても無駄なのだ。
「どうします? 戦力としては居ないよりはマシだと思うので、お義兄さんが上手に手綱を握れば動きの固さはある程度取れるんじゃないですか? 彼、お義兄さんには従順っぽいし、私は歓迎しますよ? ――仲良くは出来なさそうですけど」
「どういう事?」
「私、自分がない人って見ててもつまんないんであんまり好きじゃないんですよ」
それはどういう意味だと聞きかけた所で二人が戻ってきたので話は中断となった。
「――そういやイベント戦ってどんな感じだったんだ? 観戦不可だったから教えてくれよ!」
感想戦を済ませ、一段落付いた所でマルメルがそんな事を言い出した。
ヨシナリはあぁと小さく頷く。
「最初の三戦はお前も知っての通り三対三のチーム戦。 武器はランダム支給だから自分と味方の装備を上手く組み合わせて戦い方を組み立てないといけないからその辺が腕の見せ所だな」
「だな! 俺もセンドウさんと組んで色々あれこれやって楽しかったぜ! ――負けたけどな。 その後は何があったんだ?」
言われてヨシナリは記憶を探る。
確か、三回戦が終わって――最終戦は随分と毛色が違うなと思った事が印象に残っていた。
「えーっと、確か普段やっているチュートリアルの延長みたいな内容だったな」
的のようなエネミーが大量に現れて四チームでそれを潰してスコアを競い、最終的に一番多いチームの勝ちとなる。 ヨシナリのチームが最高得点を取って勝利となった。
確かホーコートも頑張ってくれたので、終わった後にユニオンホームに誘ったのだ。
――何か違う気がするんだよなぁ……。
違和感が凄まじいが、いくら記憶を探ってもその正体を発見できなかった。
「いやぁ、先輩の射撃精度とか凄かったっすよ! 元々、星座盤の活躍は知ってたんでマジリスペクトっす!」
ホーコートはやや興奮気味にそんな事を言っているのだが、ヨシナリは苦笑して曖昧に頷く事しかできなかった。
「うーん? ――お、ヨシナリ君達も終わったみたいやね。 お疲れー!」
不意にふわわが戻って来た。 どうやら彼女も終わったようだ。
僅かに遅れてグロウモスのアバターも出現する。 これで全員がイベントを終了したようだ。
「お疲れです。 何だか浮かない感じですが何かありました?」
「――最終戦って的当てやったよね?」
「そうでしたが何か?」
ふわわは何か釈然としない様子だったので、ヨシナリはグロウモスに視線を向ける。
「うん。 的当てだった」
――だよなぁ……。
頷くグロウモスにヨシナリもはっきりしない気持ち悪さを抱えながらも間違いないと確信を深める。
考えても仕方がないとやや強引に割り切り、ホーコートの紹介をするべく話を切り出した。
矢のように弧を描きながら雲へと入る。
観戦モードだと雲を透過できるので何が起こっているのかは見えていた。
シニフィエは下を見るような姿勢で、ホーコートはその背後に回る。
有効射程ギリギリまで接近し、散弾銃を構えるがホーコートが動きを止めたと同時に機体を捻りながら加速。 ホーコートの機体に組み付く。
『つーかーまーえーたっ!』
頭部を抱えるようにしてコックピット部分に膝を叩きこむ。
ホーコートは咄嗟に散弾銃を投げ捨ててマチェットを抜こうとするが、それよりも早くシニフィエがその腕に全身で絡みつく。 両足で上腕を挟み、捻り上げる。
バキリと嫌な音がしてホーコートの機体の腕が破壊された。
残った腕で拳銃を抜こうとするが、それよりも早くシニフィエはその背にしがみつく。
もう一本の腕を破壊しに行くのかと思ったが狙いはエネルギーウイングだったようだ。
強引に掴んで引き千切った。
「うわ、マジかよ」
思わずマルメルは声を上げる。 ヨシナリもこれには声を漏らした。
推進装置を狙うのは有効だが、組み付いた状態でやるのは想定外だ。
片腕のホーコートは背負う形になったシニフィエに対して何もできず、推進装置を破壊された事により飛行が不可能になった。
――そうなると後の展開はもう読める。
シニフィエは拘束を解くとホーコートの機体は重力に引かれて落下。
僅かな落下時間を経てぐしゃりと音がして爆発。 試合終了となった。
「あー、やられちまったぁ。 マジで初心者? 自信なくすなぁ……」
ホーコートはやられたーと言いながら悔しそうにしていた。
シニフィエは何故か首を傾げ、ややあって口を開く。
「ホーコートさんは何を意識して戦い方を組み立てていますか?」
「意識? あー、何だろう。 何となくかなぁ。 雰囲気でやってる感じ?」
「……なるほど、参考になりました」
ホーコートははぁと小さく首を捻る。
「その機体だったら俺ともやれそうだな! 今度は俺と戦ろうぜ!」
「お、いいっすね。 やりましょうか!」
「じゃあヨシナリ! ちょっとこいつ借りてくぜ!」
マルメルはホーコートと肩を組んで引っ張っていく。
ウインドウを操作してそのままトレーニングルームへと移動した。
完全に居なくなった事を確認し、ヨシナリはちらりとシニフィエへ振り返る。
「――で? どう思う?」
「ぶっちゃけるとあの人、なんかズルしてません?」
即答。 正直、ヨシナリも疑っている部分だったので否定はしない。
「何でそう思った?」
「動きが機械的すぎです。 NPCと戦ってるのかと思いましたよ。 あ、という事はお義兄さんも疑ってたんですね」
ヨシナリはまぁなと言って小さく息を吐く。
シニフィエの認識は正しい。 ホーコートの動きは一つ一つの動きは優れていたが、決められたパターンをなぞっているだけにしか見えなかった。
「実際、動きに違和感しかなかったからな」
「でもこのゲームってチート厳禁じゃないんですかね?」
「そのはずだけど、何にも言ってこないって事はチートじゃないか、お目こぼしして貰ってるかのどっちかだな」
このゲームに置いてチートは即座にアカウント削除+賠償の対象となる。
その辺を理解できていない訳がないので、知っていてやっている?
まさかとは思うが使っている自覚がない? もしかして運営がモニターとして雇っているプレイヤーとか? 様々な疑問が浮かぶが、どれも確証にまでは至らない。
――つまり、今の所は考えても無駄なのだ。
「どうします? 戦力としては居ないよりはマシだと思うので、お義兄さんが上手に手綱を握れば動きの固さはある程度取れるんじゃないですか? 彼、お義兄さんには従順っぽいし、私は歓迎しますよ? ――仲良くは出来なさそうですけど」
「どういう事?」
「私、自分がない人って見ててもつまんないんであんまり好きじゃないんですよ」
それはどういう意味だと聞きかけた所で二人が戻ってきたので話は中断となった。
「――そういやイベント戦ってどんな感じだったんだ? 観戦不可だったから教えてくれよ!」
感想戦を済ませ、一段落付いた所でマルメルがそんな事を言い出した。
ヨシナリはあぁと小さく頷く。
「最初の三戦はお前も知っての通り三対三のチーム戦。 武器はランダム支給だから自分と味方の装備を上手く組み合わせて戦い方を組み立てないといけないからその辺が腕の見せ所だな」
「だな! 俺もセンドウさんと組んで色々あれこれやって楽しかったぜ! ――負けたけどな。 その後は何があったんだ?」
言われてヨシナリは記憶を探る。
確か、三回戦が終わって――最終戦は随分と毛色が違うなと思った事が印象に残っていた。
「えーっと、確か普段やっているチュートリアルの延長みたいな内容だったな」
的のようなエネミーが大量に現れて四チームでそれを潰してスコアを競い、最終的に一番多いチームの勝ちとなる。 ヨシナリのチームが最高得点を取って勝利となった。
確かホーコートも頑張ってくれたので、終わった後にユニオンホームに誘ったのだ。
――何か違う気がするんだよなぁ……。
違和感が凄まじいが、いくら記憶を探ってもその正体を発見できなかった。
「いやぁ、先輩の射撃精度とか凄かったっすよ! 元々、星座盤の活躍は知ってたんでマジリスペクトっす!」
ホーコートはやや興奮気味にそんな事を言っているのだが、ヨシナリは苦笑して曖昧に頷く事しかできなかった。
「うーん? ――お、ヨシナリ君達も終わったみたいやね。 お疲れー!」
不意にふわわが戻って来た。 どうやら彼女も終わったようだ。
僅かに遅れてグロウモスのアバターも出現する。 これで全員がイベントを終了したようだ。
「お疲れです。 何だか浮かない感じですが何かありました?」
「――最終戦って的当てやったよね?」
「そうでしたが何か?」
ふわわは何か釈然としない様子だったので、ヨシナリはグロウモスに視線を向ける。
「うん。 的当てだった」
――だよなぁ……。
頷くグロウモスにヨシナリもはっきりしない気持ち悪さを抱えながらも間違いないと確信を深める。
考えても仕方がないとやや強引に割り切り、ホーコートの紹介をするべく話を切り出した。
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