Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第363話

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 ヨシナリは大きく息を吐く。
 相手がこちらを舐めていなければ勝つ事は難しかっただろう。
 もう一度やれば確実に負けるであろう相手だったが、次の機会はお互いに本当に愛機を駆っての物になるだろう。 その時はまた別の手で潰せばいい。

 エラーを大量に吐いて見え辛いが一応は視界は生きている。
 まんまるはどうなったのかと確認するとちょうど一機撃破した所だった。
 
 「や、やりましたぁ。 一機仕留めましたよぉ!」
 「お疲れ様です。 残り一機、油断せずに仕留めましょう」

 どうやら最後の一機はタヂカラオの支援に専念していたお陰でまんまるの方へはあまり意識を割いていなかったようだ。 まさか返り討ちに遭うとは思わなかったようで、動きにはかなりの動揺が見えた。
 そんな相手は敵ではなく、まんまるが追い込んでヨシナリが狙撃して決着。 勝利となった。

 
 「さ、流石ですぅ、タヂカラオさんに勝つなんて凄いですぅ! 」

 控室に戻ったと同時にまんまるがわっしょいわっしょいと持ち上げ始めた。
 それを苦笑して流し、今回も碌に活躍できなかったホーコートは変わらずに不貞腐れた態度だ。
 ヨシナリは内心で小さく溜息を吐く。 そろそろきつくなってきたからだ。
 
 今回の勝ちは実際、運の割合が大きい。 
 ヨシナリの機体は足回りに不安を抱えており、タヂカラオはヨシナリを手下に欲しがっていた。
 恐らくは実力差を見せつけて心を折り、後でまたスカウトをかけようとでも考えていたのだろう。
 
 本気で仕留めたいのならもっと早く勝負をかける事が出来たはずだ。
 それをやらなかったのは勝ち方にこだわったから。 結局、そこに隙が生まれた結果、勝ちを拾えたのだが、最後のマウントを取った後に関してもギャンブルだった。

 相手はヨシナリよりも遥かに高い近接スキルを持っており、タックルが成功するか怪しい上、マウントを取れたとしても頭突きで頭部をどの程度破壊で出来るのかもギャンブルだ。
 場合によってはヨシナリの視界も死んでいた可能性がある。 拳銃を奪う所までは組み立ててはいたが、視界を奪う事に失敗、または自分の視界が死んだ場合、取れなかった可能性が高い。
 
 考えれば考えるほどに再現性が薄い運任せの戦い方だった。
 勝てたのだから良かったと気楽に考えたい所ではあるが、次以降もこの調子で勝てると思い込むのは危険だ。 そうこうしている内にウインドウがポップアップ。

 どうやら次の試合はルール変更があるようだ。 
 次回は四チーム十二人の参戦でとある都市を移動し、目標地点に到達すれば終了との事。

 ――?

 違和感のある内容だ。 他のチームに対する言及がない。
 一応、他のイベントと同様に撃破した場合、スコアとして計上されて最終的な報酬に上乗せされるのだろうが、この書き方だと撃破は必須ではないように見える。 

 「こ、今回は四チーム参加なんですねぇ。 ど、どうしましょうかぁ?」
 「いえ、ルールを見る限り、他のチームを仕留める事は勝利条件に含まれてません。 下手に仕掛けて敵対するのも馬鹿らしいので出くわしたら協力を呼び掛けてみましょう。 ――要はこっちから仕掛けるのは厳禁です。 いいですね?」
 「はぃぃ、分かりましたぁ」
 
 ホーコートには何も言わない。 
 言っても反発されるのが目に見えているのでやらかしたらこちらで処理する事も視野に入れなければならないというのは面倒だなと小さく溜息を吐く。 読み終わり、一番下を見ると確認ボタンがあったので何だこれとタップすると別のウインドウが開いた。

 「交換所?」
 「武器の交換ができるみたいですねぇ」

 どうやら武器を同グレードの物と交換できるようだ。 
 加えて、次回の支給分はここで済ませるようで、好きな武器を一つ受け取れるらしい。
 何でいきなりと思ったが、意図があるんだろうなと何となく察してはいたので今は考えるだけ無駄だ。 折角なので入れ替えるとしよう。 

 ヨシナリはボルトアクションの狙撃銃と自動拳銃、突撃銃、後はブレード。
 まんまるはヨシナリとほぼ同じ構成だが、ブレードではなく散弾銃にしたようだ。
 一応、項目を隅々まで見たのだが、武器のみでセンサー系のパーツなどは対象外だった。

 武器に関しては好きにしていいが、スペックに関してはナチュラルなⅠ型でやれと言う事だろう。

 ――最初は武装にランダム性を持たせる事での対応力を見るといった所か? 

 後はリーダーを決めさせることで個々の挙動――要は集団での行動を観察?
 試されているというよりは観察されている様であまり面白くはないが、気にしていても仕方がないので目の前の事に集中する事でこのゲームを楽しむとしよう。
 
 待機時間が終了し、フィールドへの移動が始まった。



 開始地点はどこかの地下通路。 
 目標の位置はマーキングされているのか大雑把な方角と距離が示されていた。

 「あ、ちょっと待ってくれ」

 開始と同時にホーコートがさっさと消えようとしていたので呼び留める。

 「あぁ? なんスかねぇ?」

 口調からもう駄目だと見切りは付けたが最低限、言っておかなければならない事がいくつかあった。

 「どうせ合わせる気がなさそうだし、好きにしたらいいと思うけど他のチームに仕掛けるのだけは止めて貰っていいかな?」
 「黙って撃たれろってのかよ?」
 「いいや、応戦はしてもいいけど、先に仕掛けるのだけは止めてくれって話」 
 「なんでだよ?」

 一応、聞こえるように言ったつもりだったのだが、聞いてなかったのかよ。
 ホーコートの態度に少しだけ不快になったが、我慢しろと自分に言い聞かせて自制。

 「味方になってくれるかもしれないから、可能な限り心証を悪くしたくないんだよ」
 「は、コバンザメ野郎は媚びを売るのに必死って訳かよ」
 「……好きに取れば? 一応、警告はしたから後はお好きにどうぞ」
 
 ホーコートは大きく舌打ちしてさっさと進んでいった。
 まんまるが黙っているのは何でかと思ったが、無言で散弾銃を持ち上げようとしていたのでヨシナリは慌てて銃口を下ろさせる。

 「そこまでしなくていいです」
 「あいつ、余計な事しかしませんよぉ?」
 「俺もそうだと思いますけど、やるんならやらかした後にしましょう」

 一応、ヨシナリとしては歩み寄ったつもりだったのだが、相手にその気がないなら時間の無駄だ。
 警告もしたのでチームメイトとしての最低限の義理は果たした。
 
 「これからどうしますぅ?」
 「あぁ、まずは他のチームを探しましょう。 四チームを同時に投入してる所を見ると、一チームではまず攻略できない難易度でしょうし、味方を増やしたいです」
 「分かりましたぁ。 では、前に出るので後ろはお願いしますぅ……」

 方針が決まったのでまんまるとヨシナリは移動を開始した。
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