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第347話
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ふわわの機体が現れる。 機体はヨシナリが組んだ物だが、装備構成自体は大きく変わっていない。
ただ、例の貰った装備を使用しているので、太刀が鞘ごと一本と野太刀が入れ替わっている。
少し遅れて敵機が出現。 ソルジャーⅡ型で装備構成は散弾銃と突撃銃といったオーソドックスな物だが、背に長柄のハンマーがある事が少し特徴的だった。
「……なんか聞かないのか?」
「聞く事あるか? もう、相手が何秒生きていられるかを予想する以外にやる事ねぇだろ」
ヨシナリが尋ねるとマルメルはそう言って肩を竦めた。
「なら私が聞いてもいいですか?」
「ん? 何かな?」
「お義兄さん達から見た姉はどんな感じですか?」
ヨシナリとマルメルは顔を見合わせる。
「まぁ、銃弾を実体剣で叩き落す人外」
「ただただ、化け物としかいえねぇ」
「ず、随分な言われようですね。 姉は随分と暴れまわっているのが分かります」
「俺としては逆に聞きたいんだけど、普段のふわわさんってどんな感じ?」
シニフィエはそう尋ねられてうーんと首を傾げる。
「……基本的にあんな感じですね。 道場では言い寄って来た男相手に派手にやったので人が居る時は出禁を喰らってますが、鍛錬自体はしっかりと行っているのでリアルでも似た動きが出来ますよ」
「まぁ、トルーパーってフィルター越しでもできるんだからリアルでもできるよな」
「後はストレス発散にバッティングセンターに行ってるとか――あ、スリーサイズとか聞きたいですか?」
「後が怖いので遠慮しておく」
「そうですか。 脱いでも凄いし脱がなくでも凄いですよ」
「だからいいって」
そんな会話をしている間にウインドウの向こうでの戦闘はもう終わりそうになっていた。
敵機がふわわを捕捉したが、彼女はそれよりも早く敵を捉えている。
ふわわは腰の太刀の柄をそっと握ると僅かに腰を落として抜刀の姿勢。
フィールドは木々の入り組んだ森なので射線が通り辛い。
敵機は僅かに迷ったようだが、接近して散弾銃を喰らわせるつもりのようで木々を縫うように移動し、ふわわを射程内に収めようとしたと同時にバラバラになった。
ヨシナリはうわと思わず声を上げ、マルメルはあぁと顔を覆う。
「……何ですかアレ? 明らかに太刀で届く間合いではないと思うんですけど……」
手足と頭部を斬り落とされて動けなくなった敵機にふわわはゆっくりと近づき、コックピット部分を太刀で一突き。 それで試合終了となった。
見るべきものがなくなったので、ヨシナリはウインドウを操作して映像を切り替える。
敵機がバラバラになった瞬間だ。
「ふわわさんの新しい太刀――というか鞘の仕業だね」
「鞘ですか?」
「あぁ、よく見てみるといい」
映像を停止させて拡大。 敵機が切断される瞬間だ。
パッと見ただけではよく分からないが、拡大すると切断部分に何かが見える。
シニフィエは目を凝らし、ややあってその正体が明らかになった。
「これ、もしかした刃ですか?」
「あぁ、あの鞘は転移装置で分割した液体金属刃を飛ばして敵機をバラバラにしたんだ」
飛刀転移刃『ナインヘッド・ドラゴン』
名称から詳細を想像し辛いが本質的にはベリアルの『ファントムシフト』と同じだ。
鞘の内部の物体を転移させる事ができるのだが、それだけでは切断は不可能。
ならどうやってあの惨状を生み出したのかというと、仕組みはそこまで難しいものではない。
まずは転移先を指定。 そして転移を実行。 機体側の操作としてはそれだけなのだが、問題は転移するのが0.5秒後なのだ。 要は転移が始まるまでのタイムラグの間に太刀を振り切る。
すると刃が消えて指定の場所へ転移。
運動エネルギーは消滅しないので振った勢いのまま刃は転移先の出現して敵機を切り刻むという訳だ。 そこまで聞けば凄いと評する事もできるかもしれないがこの『ナインヘッド・ドラゴン』はとんでもない問題――いや、ここまで深刻だと欠陥と言い換えてもいい物をいくつも抱えている。
まずは転移について。 名称は『ナインヘッド・ドラゴン』
これの意味する所は刃が九つに分裂――要は九分割して転移させる事にある。
名前の元となったであろう九頭竜は九つの頭を持ったドラゴンであり、その名に因んだ刃は複数の咢に見立てて敵を噛み砕くだろう。
――まともに当てられる事が出来たのなら。
攻撃前に攻撃か所を九つも設定しなければならない。 この時点でハードルが高い。
位置を決める。 攻撃を繰り出すのプロセスが必要な以上、斬撃を繰り出す場所を事前に決めなければならないのだ。 それを九か所。 ヨシナリはこれを作った奴は馬鹿じゃないのかと思った。
一か所、多くても二から三か所で充分だ。
恐らく、ネーミングに引っ張られて九分割したのだろうが、当たらない攻撃に意味はない。
つまり、この武器は敵が来る場所に事前に斬撃を仕掛けなければならないのだ。 それも戦闘中に。
どうしても使いたいなら待ち伏せか何かだろうが、こんな物を使うぐらいならクレイモアでも仕掛けた方が負担も少なく効率的だ。
次の問題は威力だ。 斬撃である以上、運動エネルギーは必須なので、振り切る必要がある。 これが何を意味するのかというとタイミングがシビアなのだ。
刀を抜いて振る。 それだけでは意味がない。
斬撃の威力が最大になるタイミングで転移させて初めて敵機を切断する事が可能となる。
早すぎても遅すぎても駄目だ。 タイミングを逃すと切断できずに敵の装甲に止められる。
「あの、まともに当てられない欠陥品って聞こえるんですけど」
「そう言ったつもりだよ」
「でも、姉の相手、バラバラになってますけど……」
「……何でだろうね?」
ヨシナリにはさっぱり分からなかった。
数え上げればきりがないほどの欠点がある代物なのだが、実戦で通用するレベルで扱っているふわわは一体何なんだろうか? やはり人の形をした何かなのでは?と思ってしまう。
――だが、使いこなしているとも言い切れなかった。
転移する刃は九。 命中したのは四つだ。
映像を確認すると、頭部、腕に各一、両足の合計四。
切断できる程の威力を出せている時点で驚きだが、流石のふわわも九つ全て当てるのは無理だったようだ。
「ふぅ、扱い難しいなぁ。 半分も当たらんかったわー」
そんな事を言いながらふわわが戻って来た。
ただ、例の貰った装備を使用しているので、太刀が鞘ごと一本と野太刀が入れ替わっている。
少し遅れて敵機が出現。 ソルジャーⅡ型で装備構成は散弾銃と突撃銃といったオーソドックスな物だが、背に長柄のハンマーがある事が少し特徴的だった。
「……なんか聞かないのか?」
「聞く事あるか? もう、相手が何秒生きていられるかを予想する以外にやる事ねぇだろ」
ヨシナリが尋ねるとマルメルはそう言って肩を竦めた。
「なら私が聞いてもいいですか?」
「ん? 何かな?」
「お義兄さん達から見た姉はどんな感じですか?」
ヨシナリとマルメルは顔を見合わせる。
「まぁ、銃弾を実体剣で叩き落す人外」
「ただただ、化け物としかいえねぇ」
「ず、随分な言われようですね。 姉は随分と暴れまわっているのが分かります」
「俺としては逆に聞きたいんだけど、普段のふわわさんってどんな感じ?」
シニフィエはそう尋ねられてうーんと首を傾げる。
「……基本的にあんな感じですね。 道場では言い寄って来た男相手に派手にやったので人が居る時は出禁を喰らってますが、鍛錬自体はしっかりと行っているのでリアルでも似た動きが出来ますよ」
「まぁ、トルーパーってフィルター越しでもできるんだからリアルでもできるよな」
「後はストレス発散にバッティングセンターに行ってるとか――あ、スリーサイズとか聞きたいですか?」
「後が怖いので遠慮しておく」
「そうですか。 脱いでも凄いし脱がなくでも凄いですよ」
「だからいいって」
そんな会話をしている間にウインドウの向こうでの戦闘はもう終わりそうになっていた。
敵機がふわわを捕捉したが、彼女はそれよりも早く敵を捉えている。
ふわわは腰の太刀の柄をそっと握ると僅かに腰を落として抜刀の姿勢。
フィールドは木々の入り組んだ森なので射線が通り辛い。
敵機は僅かに迷ったようだが、接近して散弾銃を喰らわせるつもりのようで木々を縫うように移動し、ふわわを射程内に収めようとしたと同時にバラバラになった。
ヨシナリはうわと思わず声を上げ、マルメルはあぁと顔を覆う。
「……何ですかアレ? 明らかに太刀で届く間合いではないと思うんですけど……」
手足と頭部を斬り落とされて動けなくなった敵機にふわわはゆっくりと近づき、コックピット部分を太刀で一突き。 それで試合終了となった。
見るべきものがなくなったので、ヨシナリはウインドウを操作して映像を切り替える。
敵機がバラバラになった瞬間だ。
「ふわわさんの新しい太刀――というか鞘の仕業だね」
「鞘ですか?」
「あぁ、よく見てみるといい」
映像を停止させて拡大。 敵機が切断される瞬間だ。
パッと見ただけではよく分からないが、拡大すると切断部分に何かが見える。
シニフィエは目を凝らし、ややあってその正体が明らかになった。
「これ、もしかした刃ですか?」
「あぁ、あの鞘は転移装置で分割した液体金属刃を飛ばして敵機をバラバラにしたんだ」
飛刀転移刃『ナインヘッド・ドラゴン』
名称から詳細を想像し辛いが本質的にはベリアルの『ファントムシフト』と同じだ。
鞘の内部の物体を転移させる事ができるのだが、それだけでは切断は不可能。
ならどうやってあの惨状を生み出したのかというと、仕組みはそこまで難しいものではない。
まずは転移先を指定。 そして転移を実行。 機体側の操作としてはそれだけなのだが、問題は転移するのが0.5秒後なのだ。 要は転移が始まるまでのタイムラグの間に太刀を振り切る。
すると刃が消えて指定の場所へ転移。
運動エネルギーは消滅しないので振った勢いのまま刃は転移先の出現して敵機を切り刻むという訳だ。 そこまで聞けば凄いと評する事もできるかもしれないがこの『ナインヘッド・ドラゴン』はとんでもない問題――いや、ここまで深刻だと欠陥と言い換えてもいい物をいくつも抱えている。
まずは転移について。 名称は『ナインヘッド・ドラゴン』
これの意味する所は刃が九つに分裂――要は九分割して転移させる事にある。
名前の元となったであろう九頭竜は九つの頭を持ったドラゴンであり、その名に因んだ刃は複数の咢に見立てて敵を噛み砕くだろう。
――まともに当てられる事が出来たのなら。
攻撃前に攻撃か所を九つも設定しなければならない。 この時点でハードルが高い。
位置を決める。 攻撃を繰り出すのプロセスが必要な以上、斬撃を繰り出す場所を事前に決めなければならないのだ。 それを九か所。 ヨシナリはこれを作った奴は馬鹿じゃないのかと思った。
一か所、多くても二から三か所で充分だ。
恐らく、ネーミングに引っ張られて九分割したのだろうが、当たらない攻撃に意味はない。
つまり、この武器は敵が来る場所に事前に斬撃を仕掛けなければならないのだ。 それも戦闘中に。
どうしても使いたいなら待ち伏せか何かだろうが、こんな物を使うぐらいならクレイモアでも仕掛けた方が負担も少なく効率的だ。
次の問題は威力だ。 斬撃である以上、運動エネルギーは必須なので、振り切る必要がある。 これが何を意味するのかというとタイミングがシビアなのだ。
刀を抜いて振る。 それだけでは意味がない。
斬撃の威力が最大になるタイミングで転移させて初めて敵機を切断する事が可能となる。
早すぎても遅すぎても駄目だ。 タイミングを逃すと切断できずに敵の装甲に止められる。
「あの、まともに当てられない欠陥品って聞こえるんですけど」
「そう言ったつもりだよ」
「でも、姉の相手、バラバラになってますけど……」
「……何でだろうね?」
ヨシナリにはさっぱり分からなかった。
数え上げればきりがないほどの欠点がある代物なのだが、実戦で通用するレベルで扱っているふわわは一体何なんだろうか? やはり人の形をした何かなのでは?と思ってしまう。
――だが、使いこなしているとも言い切れなかった。
転移する刃は九。 命中したのは四つだ。
映像を確認すると、頭部、腕に各一、両足の合計四。
切断できる程の威力を出せている時点で驚きだが、流石のふわわも九つ全て当てるのは無理だったようだ。
「ふぅ、扱い難しいなぁ。 半分も当たらんかったわー」
そんな事を言いながらふわわが戻って来た。
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