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第338話
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無数の顔がヨシナリを狙うが、一機のキマイラがその射線上に飛び込む。
ツガルの機体だ。 彼の機体も限界が近いのか、推力偏向ノズルが不自然に明滅し僅かに膨張と収縮を繰り返している。 恐らく爆発が近い。
ツガルは肉塊の表面を這うように飛行してヨシナリを狙う顔に機銃を斉射して一部だけでも黙らせる。
「これは貸しだからな! 覚えとけよ!」
最後に肉塊の表面に突っ込んで爆散。
ヨシナリは内心で感謝しながらツガルの開けた射線の穴を突いて攻撃を回避。
もう穴は目の前だ。 だが、ラーガストのコピー機が割り込み、背後からも一機来ている。
――邪魔!
飛行形態で使用できる武器がないので機動だけで躱さなければならない。
瞬時に行動を組み立てるが、その前に背後の機体に可変したキマイラループスが攻撃を仕掛ける為に減速した瞬間を見計らって喰らいついた。 アルフレッドだ。
そのまま敵機と絡みつくように墜落。
正面の一機は攻撃に入る直前に散弾砲によるエネルギー式の散弾が飛んでくるが躱す。
飛んできたユウヤの機体が回避した敵機を追う、すれ違い際に背の大剣を投げて寄越した。
「行け!」
ヨシナリは変形しながら大剣を受け取り、露出した反応炉の前へ。
大剣を握るとステータスが表示され、ウインドウがポップアップ。
内容は限定的に使用制限が緩和されているとの事。 どうやら大剣のギミックの一つを扱えるようだ。 即座に起動。 大剣が縦に割れて回転刃が唸りを上げながら露出。
シックスセンスで急所らしき位置を確認して全力で最奥に突き入れる。
大剣が再生途中の肉を貫通して反応炉に突き刺さる。 血液らしき液体と共に反応炉内部の反応が変化。 不安定であるかのように明滅する。 効いていると判断して更に深く突き刺す。
その間に周囲が再生を始めて圧し潰そうとしてくるがヨシナリは無視して足の推力偏向ノズルの出力を最大にして前へと進む。 もうこうなってしまえば圧し潰されるのが先か貫くのが先かの違いでしかない。
もう何も考える必要がないので頭に浮かぶのはラーガストの言葉だ。
他の連中を出し抜きたいか? そう聞かれてヨシナリはやんわりと肯定したが、いざその場面に直面すると様々な気持ちが胸中に渦を巻く。 何故ならヨシナリがここに辿り着いたのは仲間達が居たからだ。
ベリアルが助けに来てくれなければ自分達は地下で終わっていただろう。
マルメルとグロウモスが道を切り開き、ツガルとユウヤが突入を援護してくれなければこの状況には至れなかった。 彼等は文字通り死力を尽くしてヨシナリの進む道を作ってくれたのだ。
感謝もあった。 期待に応えたいという気持ちもある。
だが、それとは別にこの数十万、数百万のプレイヤーが戦っている戦場で自分一人が反応炉に刃を突き立てたという達成感に震えていた。 仕留めてないのに気が早いというかもしれないが、この状況に辿り着けた時点で少しだけ報われた気持ちになったのだ。
後は勝利して自分がこの戦いに終止符を打ったヒーローの座を手に入れるというエゴだけが、ヨシナリを突き動かす原動力だ。 ガリガリと硬い物を抉る手応えと沈んでいく大剣がもう少しだと囁く。
行ける。 そんな確信があるが、同時に今の自分を少しだけ俯瞰。 ふっと疑問が浮かんだ。
――果たして今の俺は目前の勝利に浮かれているのだろうか?、と。
昔からそうだった。 自分は調子に乗ると碌な目に遭わない。
このゲームを始めてからは特に顕著で、勝ちを確信して思考を停止すると大抵は何かを見落とす。
だから、思ってしまうのだ。 何かを見落としてはいないか?、と。
いくら考えても何もなかった。
あるのはそろそろ機能停止してくれないと圧し潰されそうだなと言った懸念ぐらいだ。
ホロスコープのステータスはあちこちでエラーを吐いているがどうにもならないので無視。
――こんな場合、絶対何かを見落としてるんだよなぁ……。
自身にないなら現在進行形で突き刺しているコレか?
反応炉、撃破目標。 太陽のごとき莫大なエネルギーを放出してこの惑星のエネルギーを賄っていた化け物装置。 この生々しいビジュアルについては考えても無駄なので、それ以上でもそれ以下でもない。
そう考えていやと思考に過ぎった物があった。 これは反応炉なのだ。
巨大なエネルギーの塊。 そんな物を破壊したらどうなるのか?
答えは考えるまでもないが、ヨシナリは見落としていたのはこれだったのかと少し笑う。
「あぁ、良かった。 じゃあ何の問題もないな」
瞬間、大剣が反応炉にとっての致命的な部分に触れ――内包されているエネルギーの全てを解放した。 接触していたホロスコープは一秒も保たずに蒸発。
最期に見たのは全てを包み込む白い光だった。
この時、この瞬間、このイベントをプレイしていた全てのプレイヤーはそれを見た。
敵の巨体、その中央に灯る光を。 この太陽の光の届かない暗黒の惑星に明確な光が宿った瞬間を。
そして次の瞬間、全てが白に包まれ。 惑星内に存在した全てを等しく蒸発させた。
大半のプレイヤーは何が起こったのか分からずにその時を迎え、気が付けばユニオンホーム。
首を傾げている所にウインドウがポップアップ。 内容はイベントがクリアされた事を知らせるアナウンス。 内容に理解が追い付くまで若干の時間を要したが、ややあってじわじわと喜びが沸き上がりあちこちで歓声が上がった。
何故なら、あの地獄のような極寒惑星とおさらばできたのだから。
気が付けばヨシナリはユニオンホームに居た。
「おっす、やったなヨシナリ! 大金星だぞ!」
先に待っていたマルメルがバシバシと肩を叩き、グロウモスがうんうんと頷いて見せる。
少し遅れてふわわとユウヤがホームに現れた。
「いやぁ、ヨシナリ君、お見事やね!」
マルメルと同様にふわわもヨシナリの肩をバシバシと叩く。
勝ちを喜んでいる皆とポップアップしたウインドウに表示されているクリアのアナウンス。
そして他のプレイヤーにはないメッセージ。 「あなたが反応炉を破壊し、イベントをクリアしました。 おめでとうございます」の文字。 それを見てじわじわと達成感と喜びが沸き上がる。
ヨシナリは何と言っていいか分からず。 無言で拳を突き上げて喜びを表現した。
――そうか、勝った。 勝ったのか。
最後は無心で剣を突き出しただけだったので、仕留めたといった実感は薄かったが、とにかく勝ったのだ。 今はそれを素直に喜ぼう。
ツガルの機体だ。 彼の機体も限界が近いのか、推力偏向ノズルが不自然に明滅し僅かに膨張と収縮を繰り返している。 恐らく爆発が近い。
ツガルは肉塊の表面を這うように飛行してヨシナリを狙う顔に機銃を斉射して一部だけでも黙らせる。
「これは貸しだからな! 覚えとけよ!」
最後に肉塊の表面に突っ込んで爆散。
ヨシナリは内心で感謝しながらツガルの開けた射線の穴を突いて攻撃を回避。
もう穴は目の前だ。 だが、ラーガストのコピー機が割り込み、背後からも一機来ている。
――邪魔!
飛行形態で使用できる武器がないので機動だけで躱さなければならない。
瞬時に行動を組み立てるが、その前に背後の機体に可変したキマイラループスが攻撃を仕掛ける為に減速した瞬間を見計らって喰らいついた。 アルフレッドだ。
そのまま敵機と絡みつくように墜落。
正面の一機は攻撃に入る直前に散弾砲によるエネルギー式の散弾が飛んでくるが躱す。
飛んできたユウヤの機体が回避した敵機を追う、すれ違い際に背の大剣を投げて寄越した。
「行け!」
ヨシナリは変形しながら大剣を受け取り、露出した反応炉の前へ。
大剣を握るとステータスが表示され、ウインドウがポップアップ。
内容は限定的に使用制限が緩和されているとの事。 どうやら大剣のギミックの一つを扱えるようだ。 即座に起動。 大剣が縦に割れて回転刃が唸りを上げながら露出。
シックスセンスで急所らしき位置を確認して全力で最奥に突き入れる。
大剣が再生途中の肉を貫通して反応炉に突き刺さる。 血液らしき液体と共に反応炉内部の反応が変化。 不安定であるかのように明滅する。 効いていると判断して更に深く突き刺す。
その間に周囲が再生を始めて圧し潰そうとしてくるがヨシナリは無視して足の推力偏向ノズルの出力を最大にして前へと進む。 もうこうなってしまえば圧し潰されるのが先か貫くのが先かの違いでしかない。
もう何も考える必要がないので頭に浮かぶのはラーガストの言葉だ。
他の連中を出し抜きたいか? そう聞かれてヨシナリはやんわりと肯定したが、いざその場面に直面すると様々な気持ちが胸中に渦を巻く。 何故ならヨシナリがここに辿り着いたのは仲間達が居たからだ。
ベリアルが助けに来てくれなければ自分達は地下で終わっていただろう。
マルメルとグロウモスが道を切り開き、ツガルとユウヤが突入を援護してくれなければこの状況には至れなかった。 彼等は文字通り死力を尽くしてヨシナリの進む道を作ってくれたのだ。
感謝もあった。 期待に応えたいという気持ちもある。
だが、それとは別にこの数十万、数百万のプレイヤーが戦っている戦場で自分一人が反応炉に刃を突き立てたという達成感に震えていた。 仕留めてないのに気が早いというかもしれないが、この状況に辿り着けた時点で少しだけ報われた気持ちになったのだ。
後は勝利して自分がこの戦いに終止符を打ったヒーローの座を手に入れるというエゴだけが、ヨシナリを突き動かす原動力だ。 ガリガリと硬い物を抉る手応えと沈んでいく大剣がもう少しだと囁く。
行ける。 そんな確信があるが、同時に今の自分を少しだけ俯瞰。 ふっと疑問が浮かんだ。
――果たして今の俺は目前の勝利に浮かれているのだろうか?、と。
昔からそうだった。 自分は調子に乗ると碌な目に遭わない。
このゲームを始めてからは特に顕著で、勝ちを確信して思考を停止すると大抵は何かを見落とす。
だから、思ってしまうのだ。 何かを見落としてはいないか?、と。
いくら考えても何もなかった。
あるのはそろそろ機能停止してくれないと圧し潰されそうだなと言った懸念ぐらいだ。
ホロスコープのステータスはあちこちでエラーを吐いているがどうにもならないので無視。
――こんな場合、絶対何かを見落としてるんだよなぁ……。
自身にないなら現在進行形で突き刺しているコレか?
反応炉、撃破目標。 太陽のごとき莫大なエネルギーを放出してこの惑星のエネルギーを賄っていた化け物装置。 この生々しいビジュアルについては考えても無駄なので、それ以上でもそれ以下でもない。
そう考えていやと思考に過ぎった物があった。 これは反応炉なのだ。
巨大なエネルギーの塊。 そんな物を破壊したらどうなるのか?
答えは考えるまでもないが、ヨシナリは見落としていたのはこれだったのかと少し笑う。
「あぁ、良かった。 じゃあ何の問題もないな」
瞬間、大剣が反応炉にとっての致命的な部分に触れ――内包されているエネルギーの全てを解放した。 接触していたホロスコープは一秒も保たずに蒸発。
最期に見たのは全てを包み込む白い光だった。
この時、この瞬間、このイベントをプレイしていた全てのプレイヤーはそれを見た。
敵の巨体、その中央に灯る光を。 この太陽の光の届かない暗黒の惑星に明確な光が宿った瞬間を。
そして次の瞬間、全てが白に包まれ。 惑星内に存在した全てを等しく蒸発させた。
大半のプレイヤーは何が起こったのか分からずにその時を迎え、気が付けばユニオンホーム。
首を傾げている所にウインドウがポップアップ。 内容はイベントがクリアされた事を知らせるアナウンス。 内容に理解が追い付くまで若干の時間を要したが、ややあってじわじわと喜びが沸き上がりあちこちで歓声が上がった。
何故なら、あの地獄のような極寒惑星とおさらばできたのだから。
気が付けばヨシナリはユニオンホームに居た。
「おっす、やったなヨシナリ! 大金星だぞ!」
先に待っていたマルメルがバシバシと肩を叩き、グロウモスがうんうんと頷いて見せる。
少し遅れてふわわとユウヤがホームに現れた。
「いやぁ、ヨシナリ君、お見事やね!」
マルメルと同様にふわわもヨシナリの肩をバシバシと叩く。
勝ちを喜んでいる皆とポップアップしたウインドウに表示されているクリアのアナウンス。
そして他のプレイヤーにはないメッセージ。 「あなたが反応炉を破壊し、イベントをクリアしました。 おめでとうございます」の文字。 それを見てじわじわと達成感と喜びが沸き上がる。
ヨシナリは何と言っていいか分からず。 無言で拳を突き上げて喜びを表現した。
――そうか、勝った。 勝ったのか。
最後は無心で剣を突き出しただけだったので、仕留めたといった実感は薄かったが、とにかく勝ったのだ。 今はそれを素直に喜ぼう。
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