Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
上 下
330 / 480

第330話

しおりを挟む
 ベリアルの参戦で形成は一気に傾いた。 膠着から優勢へ。
 データリンクは既に済ませているのでベリアルは敵の意識を向けさせる必要があると判断し、更に攻撃の回転を上げる。 

 ――そして同時にプセウドテイのジェネレーターの不安定さが増していた。

 恐らくベリアルは長くは保たない。 
 彼はそれを自覚しているからこそ捨て身の猛攻を繰り出しているのだ。
 腕を変形させたエーテルブレードが敵機の防御フィールドを大きく傷つける。
 
 範囲の広い攻撃を行っているのは広範囲に防御を集中させる為だ。 
 狙い通り、敵のフィールドはベリアルの攻撃を防ぐ為に前面に集中している。
 ベリアルの短距離転移に合わせてユウヤが大剣による斬撃。 

 ――そろそろ受けきれなくなる。

 ベリアルの猛攻で防御リソースをかなり使っているのだ。
 そんな状態でユウヤの攻撃と隙を窺うヨシナリの攻撃には対応しきれない。
 この状況に対する最適解は? 取れる手はそう多くない。

 最も分かり易いのは――

 「やっぱりか」

 ――壁際に移動する事。

 壁を背にすれば防御フィールドの密度を前面に集中できるので対処しやすい。
 ただ、そうするのが分かっているのなら話は別だ。 既にヨシナリはホロスコープを変形させ、敵機の背後へと先回りしていた。 さっきまでならアノマリーでの狙撃を狙っていただろう。

 敵もそう思っているからこそ、この動きの変調には対応が遅れる。
 事実、敵機のフィールド密度は前面が濃いままだ。 
 ホロスコープを変形。 武器を抜いていては遅い。 ならとっておきをくれてやる。

 変形しながらバレルロール。 横回転の勢いを利用し、推力偏向ノズルを噴かして脚部を加速。
 そのまま蹴り抜く。 敵機は防御フィールドをヨシナリの居る背面に集中しようとするが遅い。
 ホロスコープの蹴りは敵機の胴体を捉えたが、腕を差し込んでガードされた。

 「ガードした所で!」

 起爆。 レガースに仕込んだ指向性爆弾を起動。
 爆発音と共に熱と衝撃、そして無数のベアリング弾が至近距離で炸裂した。
 敵機の腕が砕け散り、胴体に少なくない損傷を与えて吹き飛ばす。

 「っしゃぁ! 手応えあったぜ!」
 
 思わず叫びながらアノマリーを構えて追撃。 
 ユウヤとベリアルも散弾砲とエーテルを収束させた弾を放つ。
 敵機は被弾しながらも三人の攻撃を掻い潜る。 ヨシナリは敵機の状態を確認。

 左腕は肘から下が完全に破壊。 胴体も一部損傷。
 左胸部の頭部も半分潰れていた。 その所為かフィールドの密度も低下している。
 戦闘能力が大きく低下しているのは明らかだ。 行ける。 仕留められる。

 このまま畳みかければ――

 「――そう簡単には行かないか」

 敵機の周囲、何もない所に他の敵性トルーパーが使用していた防御リングが出現。 
 仕留めに行ったユウヤとベリアルを押し返す。 だが、ベリアルは短距離転移でリングをすり抜けて肉薄。 

 「惑星を支配する海神の走狗。 この儀式の黒幕が差し向けた精鋭なのだろうが、我が闇の前には無力! さぁ、闇に呑まれ――なに?」

 ベリアル渾身の刺突は虚空から出現した腕に止められていた。
 その間に敵機は体制を整えたようだ。 千切れた腕はそのままだったが、周囲には浮遊する腕と無数の武器。 三鈷杵ではあるが左右に刃を展開し、高速で回転している。

 「第二ラウンドって事か」

 舐めていた所を本気になったのか、損傷が一定値を超えると機能が解放されるのかは不明だが、簡単に勝たせてはくれない事だけははっきりしていた。
 ヨシナリは敵機の状態を確認。 損傷が回復した訳ではない。
 
 防御フィールドの密度は薄くなったままだが、攻撃の密度が大きく増した。
 浮遊する腕は十機。 回転する三鈷杵は何と二十。
 動きに固さがない点からも別個の敵と認識した方がいいかもしれない。

 ――来る。

 三鈷杵が高速回転しながら飛んでくる。 
 ヨシナリ達は散開――せずにユウヤとベリアルはそのまま突っ込んでいった。
 マジかよと思いながら回避をせずに援護に切り替てアノマリーを連射。 狙いは浮遊する腕。
 
 フィールドは展開されていないので攻撃は通るはずだ。
 三鈷杵は左右からユウヤ達を包囲する軌跡を描き、腕は正面。 
 恐らくは同士討ちを避ける為の動きだろう。 その為、攻撃が交差しないように微妙にタイミングがずれている。 二人はそれを読んで正面から行ったのだ。

 三鈷杵は二人の背後で交差し、腕だけが彼等に迫る形になったがベリアルはギリギリまで引き付けて短距離転移。 ユウヤは推進装置を切って自由落下する事で回避。
 ベリアルを狙った腕は目標を見失って沈黙。 ユウヤを狙っていた腕はそのまま追いかけようとしたが、方向転換の為に減速した隙を突く形でヨシナリが撃ち抜く。

 三機をエネルギー弾で撃ち抜き、残りに実弾を喰らわせたが、硬く撃破には至っていない。
 同時にガチリと音がして実体弾の弾が切れた。 それを察知したのか三鈷杵がホロスコープ目掛けて飛んでくるが、ヨシナリは内心で小さく舌打ちしてアノマリーから手を放し、アトルムとクルックスを抜いて連射。 こちらは腕程頑丈ではなかったようで、いくつが撃墜できたが的が小さいので当てづらい。

 撃ち落としは早々に諦め、変形させて急上昇。
 下に逃げなかったのはユウヤと逆方向に行く事で狙いを散らす意味もあったが、効果としては微妙だった。 ヨシナリはアノマリーで腕を狙うが、エネルギー弾しか撃てなくなった以上、三発撃てばチャージが必要なので少し待たなければならなくなる。 撃ち切った後、変形してアトルムとクルックスで三鈷杵を狙う。 腕には実体弾は効果が薄いので三鈷杵しか狙えない。
 
 その間にヨシナリは敵機の新しい動きを視る。
 
 ――観察しろ。 
 
 敵機は損傷を負っているが戦い方自体を変える気はなく、防御能力が落ちているので畳みかければ撃破可能と判断したのかベリアルはやや強引に突っ込んでいた。
 プセウドテイも限界が近かったので、時間をかけている余裕がないのだろう。

 ユウヤはベリアルを援護する為にエネルギー式の散弾を撒き散らすように撃ち込み、浮遊する腕には電磁鞭を喰らわせて動きを止めていた。 ヨシナリも援護しながら敵の攻撃手段を分析。 
 まずは三鈷杵。 回転しながら機体の周囲を回り、敵機を追尾して切り刻む。
 
 軌道自体は単純ではあるが、ノーマルのカメラでは刃が見えないのでシックスセンスを用いてのデータリンクがなければ脅威度が数割は上がっているだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。 どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。 ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね? ※すでになろうで完結済みの小説です。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅

シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。 探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。 その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。 エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。 この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。 -- プロモーション用の動画を作成しました。 オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。 https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

処理中です...