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第310話

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 「これから生産拠点を落としに行きます!」

 場所は変わって陥落させた通信施設。 カナタが全員の前でこの後の方針を話していた。
 元々はここを制圧した後、残してきた面子とシャトルを持ってきて補給と整備を行う予定だったのだが、メガロドン型に残らず焼き払われてしまったのでこのまま次の戦場へと向かわざるを得なくなった。

 機体のダメージはともかく武器類の消耗が割と深刻だ。

 「皆の装備はどうだ? 俺は基本的にアノマリーのエネルギー弾をメインに使ってたからそこまで消耗はない」

 カナタの話を聞きながらヨシナリは『星座盤』のメンバーに装備の確認。
 基本的にホロスコープの武装はアノマリー、アトルム・クルックス、内蔵機銃の三種類。 
 話したように拠点が壊滅したと聞いて意識して温存していたので、まだまだ戦える。

 「俺はそろそろヤバいな。 腰の短機関銃は残弾四割、突撃銃はマガジン五つ。 ハンドレールキャノンは後二発」

 マルメルは派手に使ったようで少し心許ない状況だ。
 
 「ウチはまだ大丈夫。 野太刀も後、三回ずつぐらいは使える」

 ふわわはそう言って液体金属の充填用カートリッジを柄に差し込んで補充していた。
 
 「わ、私もまだ、大丈夫。 大口径が二十発、小口径四十発。 拠点一つ分ぐらいは保つはず」
 「俺は問題ない」

 ユウヤは聞かれる前に発言。 
 明らかにハンマーと散弾砲しか使っていなかったので消耗している様には見えなかった。 
 
 「アルフレッドは?」
 「連れてきてる」

 ちらりと振り返ると光学迷彩を解除したアルフレッドが現れた。
 
 「おー! この子が噂のアルフレッド君かー。 よしよしよーし」

 ふわわがアルフレッドの背を撫でたりし始めた。
 マルメルは即座に触りに行ったふわわに若干、引きながらも様子を眺め、グロウモスは興味深いといった感じでじっと見つめている。 

 正直、連れてきていないと思っていたので嬉しい誤算だった。
 アルフレッドが居るならシックスセンス装備が二機になる。 センサーシステムのリンク先も二機になるのでヨシナリの負担が大きく減のでかなりありがたい。

 ヨシナリは小さく屈み、アルフレッドに視線を合わせる。

 「今回もよろしく。 頼りにしてる」

 ユウヤはアルフレッドを親友と言った。 なら軽視せずにメンバーとして扱おう。
 そう考えての事だ。 アルフレッドは小さく吠える事で応じる。 
 
 「――で? 全体の方針はあのクソ女の言う通り、生産拠点を落として補給を確保するのは分かった。 俺達はどう動くんだ?」

 ユウヤは話をさっさと進めろと促してきたのでヨシナリは頷きで応える。

 「はい、では俺達の動きを簡単に説明します。 さっきの拠点でもう敵のトルーパーが湧いてきているので次の拠点には絶対いるとみていいでしょう。 その為、消耗戦を強いられたらまず負けます」
 「って事はさっさと突入しての制圧か?」
 「あぁ、あの様子だとカナタとツェツィーリエの二人は上から落とすつもりらしいし、こっちは前と同じで下に行こう。 前回と同じ配置ならボスクラスは上にしかいないので、高機動で空中戦をこなせる二人に任せてしまえばいい。 俺達はさっさと下を落としてハンガーと武器の生産工場を押さえてしまおう」

 明らかに敵も学習しているので油断は禁物だが、今回はユウヤが居るのでかなり楽に降りられるはずだ。 特に今回は前回と違い、情報がある以上は退路の確保が必要ない。
 つまりは全員で突入して施設の制圧に全てを傾けられるのだ。 楽勝とまでは行かないだろうが問題はないはず。

 「今回こそはクリア目指して頑張ろうぜ!」

 最後に締めくくり、カナタの話も終わったので移動開始となった。


 作戦に関しては非常にシンプルだ。 いや、これを作戦と呼べるのだろうか?
 通信施設に仕掛ける際、先制された事を考えると敵はかなり高精度な索敵装備を揃えているとみていい。 そんな相手に奇襲はあまり効果がないので、開き直って高機動の機体が突っ込んで相手が反応する前に強襲をかける。 その後に足が遅い機体が突っ込む。
  
 そのまま敵の防衛線を突破して施設内部に突入。 上下に分かれて施設の主要部分を抑えて完了だ。
 設備の機能を掌握してしまえば敵のリポップが止まる事は前回で実証済みなので速攻をかける作戦は充分に勝算があった。

 高機動のジェネシスフレーム、エンジェル、キマイラが何の小細工もなく上空から敵基地の頭上から襲い掛かる。 先陣を切ったのはカナタとツェツィーリエだ。
 防備を固めていた敵トルーパーを次々と切り刻み、意識が彼女達に向かったと同時に僅かに遅れてきた他の機体が一斉射撃。 

 「はっはぁ! 残念だったナ! どうせ待ち構えてるんだったら正面から行ってやるよ!」

 ポンポンがそう言って次々と空から敵機を撃ち抜いていく。 
 ヨシナリもツガル達と一緒に上空から仕掛けたのだが、充分に効果が出ている事に少しだけ安心する。 ただのエネミーではなく有人操作の機体が敵である以上、何らかの要因で破綻する可能性を孕んでいたからだ。 Aランクとそれに続いたヨシナリ達の攻撃によって敵の意識は僅かに散漫になる。

 そして畳みかけるようにミサイル、レーザーなどの高火力の攻撃が施設の上部に次々と命中し破壊。 
 上は管制施設か何かなので破壊しても問題はない。 重要なのは破壊できる事にある。
 内部が露出した事を確認したカナタとツェツィーリエはそのまま内部へと突入。

 それを確認したヨシナリは高度を一気に下げて施設の入口付近に着地。 
 手近な敵機をアノマリーで撃ち抜きながら敵を引き付ける。 
 僅かに遅れてヨシナリに仕掛けようとしていた数機が狙撃によって撃ち抜かれた。

 ――来た。

 重たい銃声。 敵性トルーパーの胴体に風穴が開く。
 スパルトイを装備してもこの威力だ。 とんでもないなと思っているとそれを放ったユウヤのプルガトリオがヨシナリの脇を抜ける形で敵機をハンマーで叩き潰し、銃撃しようとした機体を電磁鞭で打ち据え、動きが止まったと同時に散弾砲――恐らくは威力に特化した一粒弾を喰らわせる。

 ベリアルもそうだったが、豊富な攻撃手段とそれを適切に使用する判断力。
 自分の機体特性を完璧に理解し、まるで手足のように操る技量はAランクの凄まじさを物語っている。
 敵機がエネルギーブレードを展開して刺突。 ユウヤは攻撃が届く直前に跳躍し、空中で一回転。

 勢いのままにハンマーを頭頂部から叩きつける。 
 敵機は頭部から胴体にかけて大きく陥没して大破した。 

 ――うわ、えぐい……。
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