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第276話
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機動力に差があるので猶更だ。
その為、マルメルには悪いが、ポジション的にやられないに越した事はないがやられても仕方がないとも言える。 そんな中、しっかりと一機撃墜までしているのだ。
褒める所しかない。
反面、同等以上の機動力にシックスセンスまで装備しているヨシナリは簡単にやられていいポジションではなかった。 可視化したウインドウの中ではちょうどベリアルが残りの敵機を撃墜し、試合が終了。 星座盤は三回戦へと駒を進める事となった。
「ふいー、お疲れお疲れー!」
ふわわ達が満足気な様子で戻って来た。
グロウモスはやや疲れた様子ではあったが、残りの二人は特に消耗している様子は見えない。
この様子なら次の試合も問題なくパフォーマンスを発揮できるだろう。
「いやー、ヨシナリ君たちは残念やったね! まぁ、切り替えて次頑張ろ!」
「はは、面目ない」
――クソ、次は絶対に活躍してやる。
ヨシナリは笑ってそう返したが、撃墜された事は悔しかったので次で必ず活躍してやると拳を握った。
「感想戦と行きたい所やけど他がもう終わりそうやから次の準備した方がええかもな」
「……そうみたいですね。 他の試合も軒並み終わってるんで次の相手も決まって――げ」
相手を見て思わず固まった。 何故なら『豹変』だったからだ。
「んー。 あぁ、あの娘らのいる所かぁ。 久しぶりやねぇ」
「俺としては割と一緒に色々やってたので馴染みの相手ですよ」
ポンポン達が相手というのはかなり厳しい。
特に今回はリーダーのツェツィーリエはかなりの強敵なので厳しい戦いになるだろう。
「手の内を知られてるから厳しい相手だな」
「まぁ、やりようはある。 きつい相手ではあるけどな」
ポンポンはヨシナリとタイプが似ているので絶対に今回は勝ちに来るだろう。
同時に油断の類は一切ない。 数の利、スペック差、ありとあらゆる優位を活かして全力で叩き潰しに来る。
――上等だ。 もう一回叩き潰して俺が上だと分からせてやる。
ポンポンには恩もあるしフレンドとしてこのゲームの先輩として尊敬している部分もある。
だが、今回は敵である以上、完膚なきまでに叩き潰すべき相手だ。
気が付けばヨシナリは小さく笑っていた。 面倒と思う反面、楽しみにしているからかもしれない。
「よっしゃ! 今回も勝つぞ! 取り敢えず最後まで生き残る!」
「マルメル君、ちょーっとハードル低すぎひん? ここは全機撃破ぐらい言っといたら?」
「ふ、豹の頭目、か。 相手にとって不足なし。 我が内包する闇の領域の前に奴らは屈するだろう」
マルメルは意識して大声を出し、ふわわとベリアルはマイペース。
グロウモスは小さく頷いて見せる。 何だかんだといいチームだなとヨシナリは少し嬉しくなった。
反面、この大会が終わったら解散かと考えると少しだけ寂しい気持ちになる。
――ダメもとで終わったら誘ってみるか。
「前と同じなら視界ゼロの吹雪ステージだ。 視界が最悪だから気を付けるように。 それと作戦なんだが――」
ヨシナリは次のステージの特徴と作戦を伝え、準備を済ませるとフィールドを移動。
三回戦へと臨む。
最高の舞台だった。 ポンポンは巡り合わせに感謝しつつ深い笑みを浮かべる。
三回戦の相手は星座盤。 ヨシナリ達のチームだ。
新メンバーを加え、どうやったのかベリアルを仲間にしているとはいえここまで上がって来るのは大したものだと素直に思う。 ただ、上がって来れないとは思っていなかった。
ポンポンは個人的にヨシナリの事を気に入っているし、このゲームにおける姿勢も好ましい。
可能であるなら是非とも仲間に欲しいと思っているプレイヤーの一人だ。
だが、それはそれとして負けた事は忘れていない。 いつか必ず借りを返してやろうと思っていたのでこんな機会をずっと待っていたのだ。
「思ったよりも早かったナ。 ヨシナリぃ、絶対にあたしがぶち殺してやるからなぁ」
今回はリーダーのツェツィーリエが居るので自分は指揮を執らなくていいので、思う存分ヨシナリに粘着できる。 相手は五機ではあるが油断はしない。 全力で叩き潰す。
「ポンポン。 気持ちは分からなくもないけど冷静にね?」
「分かってますよおねーたま。 見てくださいよ、ちょー冷静でしょ?」
「……そう、ならいいわ」
ツェツィーリエは味方に簡単な指示を出す。
前回のイベントでステージがどういう物かは分かっているのだ。
大きな湖がある事が特徴の湖畔ステージと言った様子だが、地形は問題ではなかった。
問題は視界を完全に塞ぐ吹雪だ。 例の侵攻イベントと同等以上の視界不良は非常に厄介だった。
そしてヨシナリにはその不自由を完璧に無効化するシックスセンスがある。
あの装備を用いれば視界不良は完全に解消されるといっていい。
同時に味方に効果的な指示を出す事も可能でセンサーリンクを使えばある程度は近くにいる必要はあるが、視界不良も解消できる。
今回の戦いはヨシナリの撃破をどれだけ迅速にできるかが鍵だ。
「ベリアルは私が、ヨシナリはポンポンがメインで対応する。 例のふわわは絶対に得意レンジに入らない事。 残りのマルメルと新入りの狙撃手はセオリー通りに対処。 模擬戦で一回負けてる相手よ。 格下ではなく同格以上と認識して臨みなさい」
各々の力の籠った返事を危機ながら豹変のメンバーはフィールドへと移動した。
戦力構成はツェツィーリエのジェネシスフレームを筆頭にアークエンジェルタイプが三機、プリンシパリティが三機、エンジェルタイプが三機の十機構成。
――勝つ。
場所が切り替わったと同時に視界が一面の白に埋め尽くされる。
猛吹雪だ。 風の音もごうごうとうるさいが、ポンポンは搭載されたセンサーシステムを全開にする。 超高感度複合センサーシステム『シックスセンス』。
安くはなかったが、対抗する為には必要と判断して彼女も手に入れて搭載した。 ある程度扱えるようになるまで苦労はしたが、実戦で運用できるレベルには持って来れたのは彼女の努力の賜物と言える。
試合開始と同時にエネルギーウイングを全開にして飛翔。
目当ての相手を見つける為に彼女は放たれた矢のように敵の下へと向かう。
僅かに遅れてニャーコの機体を含めた二機が付いてくるが予定通りだ。
執着はしているが、周りは見えている。
湖を越えて対岸へと差し掛かったところでエネルギー弾が飛んで来た。
ポンポンは特に驚く事もなく最小の動きで回避。 通常のレーダーやセンサーシステムは感度が大きく落ちて引っかからないがシックスセンスは正確に捉えていた。
こちらに迫って来る一機のキマイラタイプを。
その為、マルメルには悪いが、ポジション的にやられないに越した事はないがやられても仕方がないとも言える。 そんな中、しっかりと一機撃墜までしているのだ。
褒める所しかない。
反面、同等以上の機動力にシックスセンスまで装備しているヨシナリは簡単にやられていいポジションではなかった。 可視化したウインドウの中ではちょうどベリアルが残りの敵機を撃墜し、試合が終了。 星座盤は三回戦へと駒を進める事となった。
「ふいー、お疲れお疲れー!」
ふわわ達が満足気な様子で戻って来た。
グロウモスはやや疲れた様子ではあったが、残りの二人は特に消耗している様子は見えない。
この様子なら次の試合も問題なくパフォーマンスを発揮できるだろう。
「いやー、ヨシナリ君たちは残念やったね! まぁ、切り替えて次頑張ろ!」
「はは、面目ない」
――クソ、次は絶対に活躍してやる。
ヨシナリは笑ってそう返したが、撃墜された事は悔しかったので次で必ず活躍してやると拳を握った。
「感想戦と行きたい所やけど他がもう終わりそうやから次の準備した方がええかもな」
「……そうみたいですね。 他の試合も軒並み終わってるんで次の相手も決まって――げ」
相手を見て思わず固まった。 何故なら『豹変』だったからだ。
「んー。 あぁ、あの娘らのいる所かぁ。 久しぶりやねぇ」
「俺としては割と一緒に色々やってたので馴染みの相手ですよ」
ポンポン達が相手というのはかなり厳しい。
特に今回はリーダーのツェツィーリエはかなりの強敵なので厳しい戦いになるだろう。
「手の内を知られてるから厳しい相手だな」
「まぁ、やりようはある。 きつい相手ではあるけどな」
ポンポンはヨシナリとタイプが似ているので絶対に今回は勝ちに来るだろう。
同時に油断の類は一切ない。 数の利、スペック差、ありとあらゆる優位を活かして全力で叩き潰しに来る。
――上等だ。 もう一回叩き潰して俺が上だと分からせてやる。
ポンポンには恩もあるしフレンドとしてこのゲームの先輩として尊敬している部分もある。
だが、今回は敵である以上、完膚なきまでに叩き潰すべき相手だ。
気が付けばヨシナリは小さく笑っていた。 面倒と思う反面、楽しみにしているからかもしれない。
「よっしゃ! 今回も勝つぞ! 取り敢えず最後まで生き残る!」
「マルメル君、ちょーっとハードル低すぎひん? ここは全機撃破ぐらい言っといたら?」
「ふ、豹の頭目、か。 相手にとって不足なし。 我が内包する闇の領域の前に奴らは屈するだろう」
マルメルは意識して大声を出し、ふわわとベリアルはマイペース。
グロウモスは小さく頷いて見せる。 何だかんだといいチームだなとヨシナリは少し嬉しくなった。
反面、この大会が終わったら解散かと考えると少しだけ寂しい気持ちになる。
――ダメもとで終わったら誘ってみるか。
「前と同じなら視界ゼロの吹雪ステージだ。 視界が最悪だから気を付けるように。 それと作戦なんだが――」
ヨシナリは次のステージの特徴と作戦を伝え、準備を済ませるとフィールドを移動。
三回戦へと臨む。
最高の舞台だった。 ポンポンは巡り合わせに感謝しつつ深い笑みを浮かべる。
三回戦の相手は星座盤。 ヨシナリ達のチームだ。
新メンバーを加え、どうやったのかベリアルを仲間にしているとはいえここまで上がって来るのは大したものだと素直に思う。 ただ、上がって来れないとは思っていなかった。
ポンポンは個人的にヨシナリの事を気に入っているし、このゲームにおける姿勢も好ましい。
可能であるなら是非とも仲間に欲しいと思っているプレイヤーの一人だ。
だが、それはそれとして負けた事は忘れていない。 いつか必ず借りを返してやろうと思っていたのでこんな機会をずっと待っていたのだ。
「思ったよりも早かったナ。 ヨシナリぃ、絶対にあたしがぶち殺してやるからなぁ」
今回はリーダーのツェツィーリエが居るので自分は指揮を執らなくていいので、思う存分ヨシナリに粘着できる。 相手は五機ではあるが油断はしない。 全力で叩き潰す。
「ポンポン。 気持ちは分からなくもないけど冷静にね?」
「分かってますよおねーたま。 見てくださいよ、ちょー冷静でしょ?」
「……そう、ならいいわ」
ツェツィーリエは味方に簡単な指示を出す。
前回のイベントでステージがどういう物かは分かっているのだ。
大きな湖がある事が特徴の湖畔ステージと言った様子だが、地形は問題ではなかった。
問題は視界を完全に塞ぐ吹雪だ。 例の侵攻イベントと同等以上の視界不良は非常に厄介だった。
そしてヨシナリにはその不自由を完璧に無効化するシックスセンスがある。
あの装備を用いれば視界不良は完全に解消されるといっていい。
同時に味方に効果的な指示を出す事も可能でセンサーリンクを使えばある程度は近くにいる必要はあるが、視界不良も解消できる。
今回の戦いはヨシナリの撃破をどれだけ迅速にできるかが鍵だ。
「ベリアルは私が、ヨシナリはポンポンがメインで対応する。 例のふわわは絶対に得意レンジに入らない事。 残りのマルメルと新入りの狙撃手はセオリー通りに対処。 模擬戦で一回負けてる相手よ。 格下ではなく同格以上と認識して臨みなさい」
各々の力の籠った返事を危機ながら豹変のメンバーはフィールドへと移動した。
戦力構成はツェツィーリエのジェネシスフレームを筆頭にアークエンジェルタイプが三機、プリンシパリティが三機、エンジェルタイプが三機の十機構成。
――勝つ。
場所が切り替わったと同時に視界が一面の白に埋め尽くされる。
猛吹雪だ。 風の音もごうごうとうるさいが、ポンポンは搭載されたセンサーシステムを全開にする。 超高感度複合センサーシステム『シックスセンス』。
安くはなかったが、対抗する為には必要と判断して彼女も手に入れて搭載した。 ある程度扱えるようになるまで苦労はしたが、実戦で運用できるレベルには持って来れたのは彼女の努力の賜物と言える。
試合開始と同時にエネルギーウイングを全開にして飛翔。
目当ての相手を見つける為に彼女は放たれた矢のように敵の下へと向かう。
僅かに遅れてニャーコの機体を含めた二機が付いてくるが予定通りだ。
執着はしているが、周りは見えている。
湖を越えて対岸へと差し掛かったところでエネルギー弾が飛んで来た。
ポンポンは特に驚く事もなく最小の動きで回避。 通常のレーダーやセンサーシステムは感度が大きく落ちて引っかからないがシックスセンスは正確に捉えていた。
こちらに迫って来る一機のキマイラタイプを。
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