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第269話
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――何故だろうか?
ヨシナリは自分は大抵の相手とそこそこ以上に上手く話せると自負していたが目の前のグロウモスだけはどうしてか上手く行かない。
いや、話せはするのだが抵抗感が強いのだ。 ヨシナリは何故か目の前の女性が気持ち悪いと感じてしまっていた。
さっぱり分からない。
本当にどうして自分は目の前の女性に対して抵抗感を抱いているのかが分からないのだ。
原因が分かれば取り除く、または改善を促す事が可能だろう。
促せないとしても理由が分かれば許容できる、できないラインを探る事もできるはずだ。
――うーん? 生理的に無理? 俺ってそんな奴だったか?
意識して冷静に、理性的に考える。
こういった場合は一つずつ可能性を排除する事が解明の近道だ。
テストでやる選択問題みたいな物で違う可能性を排除していけば残った物が正解になる。
まずはプレイヤーとしてはどうか?
特に問題はない。 基本的にヨシナリは仲間にモチベーションの高さを求める。
これは単純にやる気のない奴と組んでも面白いと思わないからだ。
例外はラーガストやユウヤと言った格上だが、あれはヨシナリの中では組ませて貰っていたと言った認識なので該当しない。
グロウモスのモチベーション――要はやる気はどうか?
問題はない。 模擬戦であれだけやられて立ち上がれるのだ。
少なくともガッツだけは本物だとヨシナリは思っていた。
戦力的にも問題はない。 センドウ仕留めた動きは見事といえる。
プレイヤーとしての彼女には何の問題もない。
――そうなると人間性か?
確かにコミュニケーションにはやや難があるが、意思疎通が不可能なレベルではない。
指示にもある程度従ってくれるので、不満を抱く余地がなかった。
同性のふわわに相談するか? 彼女は普通の女性の括りからは少し外れるような気はするが、性別は同じなのだ。 ヨシナリとは違った切り口の意見をくれるかもしれない。
先延ばしにする形にはなったが、一応は解決の目途が立ったので内心で満足げに頷く。
問題が解決した訳ではないが、解消は出来たので目の前にいる彼女自身に思考を切り替える。
ぶっちゃけると解散の流れだったのに話をしようと言い出したので抜けるタイミングを逃してしまった。
ついでに話をしようと言い出したのに話題を振ってこないのもヨシナリとしては何だこいつはと思ってしまう一因であったのだが、少なくともイベントが終わるまではモチベーションを維持して欲しいので表には出さずに共有できそうな話題として彼女の戦闘スタイルについて触れたのだが――
――うーん。 何と言ったものか……。
ヨシナリは不快にさせない程度に言葉を選んで色々と提案をしてみたのだが、返答は「ヨシナリはそっちの方がいいの?」だ。
ちょっと主体性がなさすぎではないだろうか? いや、気にし過ぎなのだろうか?
グロウモスへの苦手意識がそんな思考を誘発しているのかもしれない。
偏見だけで人を判断しようとしている自分の思考に若干の嫌気が差したが、罪滅ぼしも兼ねて意識して親切にするべきだ。
――自分が楽しくないのはあまり良くないが、今はイベントで納得できる結果を残したい。
今はそれだけに集中し、グロウモスの成長を助けよう。
「はい、取り敢えず色々と試してみましょう」
場所は変わって練習用フィールド。
ヨシナリとグロウモスは既に機体に乗っており、目の前には大小様々な狙撃銃が並んでいる。
小口径は彼女の得意分野なので一応用意はしたが、本命は大口径だ。
「まずは実体弾の大口径狙撃銃。 行ってみましょうか」
グロウモスは小さく頷くと慣れた様子で狙撃銃を持ち上げる。
伏せるかと思いきや座って膝を立てると腕を乗せてその上に銃を乗せた。
所謂、座射の姿勢だ。 口径は大きいが銃自体の長さはそこまでではないので一応は成立する。
発砲。 グロウモスの発射した弾は吸い込まれるように的を射抜く。
上手い。 しっかりと真ん中を撃ち抜いている。
グロウモスは慣れた手付きでボルトを操作して排莢。 次弾を発射、命中。
速い。 撃った後、次に照準を合わせるまでの時間が短い。
発射。 発射。 発射。 命中。 命中。 命中。
文句のつけようがない腕だった。 座射なのはすぐに離脱できる事を意識しているのだろう。
ソルジャータイプはメインのブースター、スラスターの付き方から頭の方向に移動するのが最も初速が出る。 その為、伏せた状態だと逃げる時に遅れるのだ。
特に個人戦の場合、敵は基本的に前から来る。 そんな状況で伏せた状態では立ち上がるというプロセスが必要になるのは場合によっては致命的だ。
だが、座った状態であるなら速やかに上に移動できるので逃げる際にタイムラグが少ない。
失敗して距離を詰められる事まで含めるのなら理に適っていると言える。
彼女の場合、問題はそこにあるのだ。 常に失敗を意識しているので、土壇場で逃げ出す。
それが悪いとは言わないが、彼女が勝てない一因でもあった。
ヨシナリ自身が戦った時もそうだが、特にふわわとの模擬戦の時が顕著だ。
彼女の危機感知能力は同ランク帯では群を抜いている。 それ故に逃げる判断が非常に早いがその反面、回避技能に関してはお世辞にも高くない。
安全な場所から一方的に狙い、発見されたと感じれば一目散。
それがグロウモスの狙撃スタイルだ。
逃げ切れるのならそれでも問題はないが、発見された狙撃手ほど脆い存在はそう多くなく、逃げる事に成功してもそれで終わりだ。
撒く事が出来ずにそのまま刈り取られている。 ヨシナリの場合はシックスセンスがあるので判断前に撃ち抜いて仕留めた。 早い段階で居場所を割れる上、回避スキルがそこまで高くない相手などヨシナリからすればカモでしかなかったので、この結果はある意味当然ともいえる。
非常に勿体ないプレイヤーだった。
技能面ではふわわと同様にある種の完成を見せているので、彼女に必要なのは練習よりも度胸だ。
発見されたとしても先に仕留めてやる。 そんな気概があればもっと勝率は上がっていたのではないか? そう思えてしまう。
大口径を使うように勧めているのは逃げ場を失う事で立ち向かうしかないと思わせる目的もあったが、このやり方で果たして上手く行くのだろうか?
ヨシナリはこれで合っているのだろうかと自問する事しかできなかった。
ヨシナリは自分は大抵の相手とそこそこ以上に上手く話せると自負していたが目の前のグロウモスだけはどうしてか上手く行かない。
いや、話せはするのだが抵抗感が強いのだ。 ヨシナリは何故か目の前の女性が気持ち悪いと感じてしまっていた。
さっぱり分からない。
本当にどうして自分は目の前の女性に対して抵抗感を抱いているのかが分からないのだ。
原因が分かれば取り除く、または改善を促す事が可能だろう。
促せないとしても理由が分かれば許容できる、できないラインを探る事もできるはずだ。
――うーん? 生理的に無理? 俺ってそんな奴だったか?
意識して冷静に、理性的に考える。
こういった場合は一つずつ可能性を排除する事が解明の近道だ。
テストでやる選択問題みたいな物で違う可能性を排除していけば残った物が正解になる。
まずはプレイヤーとしてはどうか?
特に問題はない。 基本的にヨシナリは仲間にモチベーションの高さを求める。
これは単純にやる気のない奴と組んでも面白いと思わないからだ。
例外はラーガストやユウヤと言った格上だが、あれはヨシナリの中では組ませて貰っていたと言った認識なので該当しない。
グロウモスのモチベーション――要はやる気はどうか?
問題はない。 模擬戦であれだけやられて立ち上がれるのだ。
少なくともガッツだけは本物だとヨシナリは思っていた。
戦力的にも問題はない。 センドウ仕留めた動きは見事といえる。
プレイヤーとしての彼女には何の問題もない。
――そうなると人間性か?
確かにコミュニケーションにはやや難があるが、意思疎通が不可能なレベルではない。
指示にもある程度従ってくれるので、不満を抱く余地がなかった。
同性のふわわに相談するか? 彼女は普通の女性の括りからは少し外れるような気はするが、性別は同じなのだ。 ヨシナリとは違った切り口の意見をくれるかもしれない。
先延ばしにする形にはなったが、一応は解決の目途が立ったので内心で満足げに頷く。
問題が解決した訳ではないが、解消は出来たので目の前にいる彼女自身に思考を切り替える。
ぶっちゃけると解散の流れだったのに話をしようと言い出したので抜けるタイミングを逃してしまった。
ついでに話をしようと言い出したのに話題を振ってこないのもヨシナリとしては何だこいつはと思ってしまう一因であったのだが、少なくともイベントが終わるまではモチベーションを維持して欲しいので表には出さずに共有できそうな話題として彼女の戦闘スタイルについて触れたのだが――
――うーん。 何と言ったものか……。
ヨシナリは不快にさせない程度に言葉を選んで色々と提案をしてみたのだが、返答は「ヨシナリはそっちの方がいいの?」だ。
ちょっと主体性がなさすぎではないだろうか? いや、気にし過ぎなのだろうか?
グロウモスへの苦手意識がそんな思考を誘発しているのかもしれない。
偏見だけで人を判断しようとしている自分の思考に若干の嫌気が差したが、罪滅ぼしも兼ねて意識して親切にするべきだ。
――自分が楽しくないのはあまり良くないが、今はイベントで納得できる結果を残したい。
今はそれだけに集中し、グロウモスの成長を助けよう。
「はい、取り敢えず色々と試してみましょう」
場所は変わって練習用フィールド。
ヨシナリとグロウモスは既に機体に乗っており、目の前には大小様々な狙撃銃が並んでいる。
小口径は彼女の得意分野なので一応用意はしたが、本命は大口径だ。
「まずは実体弾の大口径狙撃銃。 行ってみましょうか」
グロウモスは小さく頷くと慣れた様子で狙撃銃を持ち上げる。
伏せるかと思いきや座って膝を立てると腕を乗せてその上に銃を乗せた。
所謂、座射の姿勢だ。 口径は大きいが銃自体の長さはそこまでではないので一応は成立する。
発砲。 グロウモスの発射した弾は吸い込まれるように的を射抜く。
上手い。 しっかりと真ん中を撃ち抜いている。
グロウモスは慣れた手付きでボルトを操作して排莢。 次弾を発射、命中。
速い。 撃った後、次に照準を合わせるまでの時間が短い。
発射。 発射。 発射。 命中。 命中。 命中。
文句のつけようがない腕だった。 座射なのはすぐに離脱できる事を意識しているのだろう。
ソルジャータイプはメインのブースター、スラスターの付き方から頭の方向に移動するのが最も初速が出る。 その為、伏せた状態だと逃げる時に遅れるのだ。
特に個人戦の場合、敵は基本的に前から来る。 そんな状況で伏せた状態では立ち上がるというプロセスが必要になるのは場合によっては致命的だ。
だが、座った状態であるなら速やかに上に移動できるので逃げる際にタイムラグが少ない。
失敗して距離を詰められる事まで含めるのなら理に適っていると言える。
彼女の場合、問題はそこにあるのだ。 常に失敗を意識しているので、土壇場で逃げ出す。
それが悪いとは言わないが、彼女が勝てない一因でもあった。
ヨシナリ自身が戦った時もそうだが、特にふわわとの模擬戦の時が顕著だ。
彼女の危機感知能力は同ランク帯では群を抜いている。 それ故に逃げる判断が非常に早いがその反面、回避技能に関してはお世辞にも高くない。
安全な場所から一方的に狙い、発見されたと感じれば一目散。
それがグロウモスの狙撃スタイルだ。
逃げ切れるのならそれでも問題はないが、発見された狙撃手ほど脆い存在はそう多くなく、逃げる事に成功してもそれで終わりだ。
撒く事が出来ずにそのまま刈り取られている。 ヨシナリの場合はシックスセンスがあるので判断前に撃ち抜いて仕留めた。 早い段階で居場所を割れる上、回避スキルがそこまで高くない相手などヨシナリからすればカモでしかなかったので、この結果はある意味当然ともいえる。
非常に勿体ないプレイヤーだった。
技能面ではふわわと同様にある種の完成を見せているので、彼女に必要なのは練習よりも度胸だ。
発見されたとしても先に仕留めてやる。 そんな気概があればもっと勝率は上がっていたのではないか? そう思えてしまう。
大口径を使うように勧めているのは逃げ場を失う事で立ち向かうしかないと思わせる目的もあったが、このやり方で果たして上手く行くのだろうか?
ヨシナリはこれで合っているのだろうかと自問する事しかできなかった。
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