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第262話
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「ベリアル? アンタ『星座盤』に入ったの?」
カナタは予想外の乱入者に対する動揺を隠しつつ大剣を向ける。
「否、俺は召喚されただけだ。 魔弾の射手は闇の力を求め、闇の王である俺はそれに応じた。 それだけの話だ」
「相変わらず言っている事の意味が分かんないわ。 まぁ、敵って事は分かったからそれで充分」
「光の存在には闇の深さは見えぬもの、何故なら闇は光の対極。 そして影はその足元に存在する物。 観測する事は能わない」
ベリアルは奇妙なポーズを取ってそんな事を口にするが彼が何を言っているのかカナタとふわわには理解できなかった。
「剣の乙女よ。 ここは闇の領域、貴様のような存在が入り込める世界ではない」
「……まぁ、ヨシナリ君と約束してるからここは譲るわ。 後はよろしくね」
前に出た後、ふわわを振り返ってそう言ったので自分に言われてるんだろうなと察した彼女は小さく頷く。
「契約は必ず履行する。 行け」
ふわわは勝負の中断にやや不満ではあったが、ベリアルが来る前に決着を着けられなかったら交代と言われていたので素直に後退。 下がるふわわをカナタは追わない。
そんな事をすれば目の前のふざけた男が何をしでかすか分からないからだ。
ベリアルは言動や行動こそおかしな面が目立つが、プレイヤーとしては上位に位置する。
何度も対戦をしているが勝率が安定しないので、ランク戦ならともかくこういったイベント戦では遭遇したくない相手だった。
――味方が全滅した以上、自分がやられれば敗北してしまう。
流石に予選落ちはしたくないと思っていたカナタは適当に相手をして撒こうと考えていたが――
「ふ、光の騎士よ。 貴様の恐怖が伝わって来るぞ。 闇を忌避する事は人の本能。 無理のない話だ」
カナタの心を読んだかのようにそんな事を言って来るがカナタは無視。
自分の敗北はチームの敗北。 多少煽られた程度でムキになる事はない。
尚も逃げ腰のカナタにベリアルは狙ったのかそうでないのかは不明だが、彼女にとって無視できない言葉を口にした。
「闇を理解できる者は闇だけ。 所詮は光に属し、闇を恐れる貴様と煉獄の化身は永遠に相容れる事はない」
カナタが動きを止める。 煉獄の化身が誰の事を指すか知っていたからだ。
「……は? 何? ユウヤの事を言ってるの?」
「例え話だ。 奴も俺も闇に属している。 それ故に俺達は互いの事を理解しているのだ。 そして貴様は奴の事を理解した気になっているようだが属す世界が違う以上、相互理解はあり得ない」
相変わらず言っている意味は良く分からないが、一つだけ理解できた事がある。
ベリアルは恐らくこう言っているのだ。 自分から逃げるような腰抜けだからユウヤに避けられるのだと。 ユウヤの存在は彼女にとって聖域に近い。
そこへ土足で踏み込む存在を彼女は許容できなかった。
「ふ、貴様らは太陽と月。 光と影、陰と陽、互いに近いが永遠に相容れない存在。 影を捉える行為程、愚かな事はないだろう。 俺からすれば貴様は自らの影を追い求める滑稽な道化よ」
ベリアルはカナタの怒りを知ってか知らずか更に燃料を投下する。
その瞬間、カナタの中から撤退の二文字が消え失せた。
「上等じゃない。 ぶっ潰してやるわ!」
「それでいい。 光の騎士よ。 感じるぞ、貴様の戦意を! さぁ、我が闇に抱かれ深き奈落へと堕ちるがいい!」
ベリアルは迎え入れるように両腕を広げ、カナタはそれを開始の合図と認識したのか大剣のエネルギーブレードを最大展開して一閃。 光の剣がベリアルへと襲い掛かった。
上段からの振り下ろし。 軌道も単純だが、込められた力、速さは並のプレイヤーに見切れるものではない。 しかし、ベリアルは並ではなく、最小の動きで躱すと即座に肉薄。
カナタは展開したエネルギーの刃を解除し、コンパクトに振って迎撃。
横薙ぎの一撃はベリアルの機体を両断したが、手応えがない。
デコイ。 カナタは機体のジェネレーターを最大稼働させ、エネルギーフィールドを展開。
ヘレボルス・ニゲルを中心に光がドーム状に広がる。
「やるな!」
いつの間にか背後にいたベリアルの機体が光に触れ、全身を纏う闇が揺らぐ。
接近戦は不利と判断したベリアルは僅かに後退し腕を突き出すと手の平を中心に巨大な闇色のエネルギーが凝縮され巨大な球を形成。 正確にはエネルギーを特殊なジェネレーターで変換し、半物質化された『エーテル』と呼ばれる物の結晶だ。 そのまま射出。
闇色の球体をカナタは大剣で両断。
分かたれたエネルギー弾は明後日の方向へと飛んでいき、着弾して爆発する。
その頃にはベリアルは反対の腕をエーテルのブレードに変化させ、刺突の態勢に移行していた。
カナタは体を傾けて回避しながら蹴りを放つ。 下から斜め上に向かう軌跡を描いた蹴りをベリアルは倒れ込むように身を捻って躱し、回避行動と並行して手の平をカナタに向ける。
「ウザい!」
カナタは大剣を盾にするように横向きに立てる。
ベリアルの手から無数のエーテル弾が放たれるが大半はカナタの大剣に阻まれて通らない。
撃ち切ったタイミングで追い払うように蹴りを放ち、ベリアルは軽やかな動きで背後に跳躍。
「はっはぁ! 流石だな光の騎士よ! だが、我が闇の深さに貴様は耐えられるか!?」
ベリアルは柏手を打ち、合わさった手の平を離すと間からバチバチと放電のような現象が発生し、紫電を纏った闇色のエーテル弾が形成される。
「受けよ、暗黒の波動を!」
カナタはさっきと同様に叩き切ろうと考えたが、嫌な予感がしたので回避を選択。
彼女の予感は正しく、エネルギー弾が纏う紫電に僅かに触れた時、機体の各所にエラーが発生。
内容は一時的な機能停止。 掠めただけなので一秒にも満たない硬直だったが、まともに貰えばどうなるのかは想像に難くない。 それなりの回数戦ってきたが、この攻撃は初めて見た。
恐らくはアップグレードしたのだろう。 ジェネシスフレームは大量のPを消費して新たな武装、機能を追加する事ができるのでいつまでも同じと思っていると痛い目を見る。
常に自己を更新し続けなければ生き残れない。 そんな修羅の巷がAランクという位置なのだ。
――だが、それはカナタとて同じ事。
彼女のヘレボルス・ニゲルもまた進化を続けているのだ。
カナタは新たに追加された武装を解放。 大剣『レンテンローズ』が縦に分離し二本の剣となった。
ベリアルは動かない。 カナタの様子を見る事にしたようだ。
「一刀で届かないなら二刀を重ねると?」
カナタは無視して二本になった剣を柄で連結。 両剣へと形を変えた得物をベリアルへと向けた。
カナタは予想外の乱入者に対する動揺を隠しつつ大剣を向ける。
「否、俺は召喚されただけだ。 魔弾の射手は闇の力を求め、闇の王である俺はそれに応じた。 それだけの話だ」
「相変わらず言っている事の意味が分かんないわ。 まぁ、敵って事は分かったからそれで充分」
「光の存在には闇の深さは見えぬもの、何故なら闇は光の対極。 そして影はその足元に存在する物。 観測する事は能わない」
ベリアルは奇妙なポーズを取ってそんな事を口にするが彼が何を言っているのかカナタとふわわには理解できなかった。
「剣の乙女よ。 ここは闇の領域、貴様のような存在が入り込める世界ではない」
「……まぁ、ヨシナリ君と約束してるからここは譲るわ。 後はよろしくね」
前に出た後、ふわわを振り返ってそう言ったので自分に言われてるんだろうなと察した彼女は小さく頷く。
「契約は必ず履行する。 行け」
ふわわは勝負の中断にやや不満ではあったが、ベリアルが来る前に決着を着けられなかったら交代と言われていたので素直に後退。 下がるふわわをカナタは追わない。
そんな事をすれば目の前のふざけた男が何をしでかすか分からないからだ。
ベリアルは言動や行動こそおかしな面が目立つが、プレイヤーとしては上位に位置する。
何度も対戦をしているが勝率が安定しないので、ランク戦ならともかくこういったイベント戦では遭遇したくない相手だった。
――味方が全滅した以上、自分がやられれば敗北してしまう。
流石に予選落ちはしたくないと思っていたカナタは適当に相手をして撒こうと考えていたが――
「ふ、光の騎士よ。 貴様の恐怖が伝わって来るぞ。 闇を忌避する事は人の本能。 無理のない話だ」
カナタの心を読んだかのようにそんな事を言って来るがカナタは無視。
自分の敗北はチームの敗北。 多少煽られた程度でムキになる事はない。
尚も逃げ腰のカナタにベリアルは狙ったのかそうでないのかは不明だが、彼女にとって無視できない言葉を口にした。
「闇を理解できる者は闇だけ。 所詮は光に属し、闇を恐れる貴様と煉獄の化身は永遠に相容れる事はない」
カナタが動きを止める。 煉獄の化身が誰の事を指すか知っていたからだ。
「……は? 何? ユウヤの事を言ってるの?」
「例え話だ。 奴も俺も闇に属している。 それ故に俺達は互いの事を理解しているのだ。 そして貴様は奴の事を理解した気になっているようだが属す世界が違う以上、相互理解はあり得ない」
相変わらず言っている意味は良く分からないが、一つだけ理解できた事がある。
ベリアルは恐らくこう言っているのだ。 自分から逃げるような腰抜けだからユウヤに避けられるのだと。 ユウヤの存在は彼女にとって聖域に近い。
そこへ土足で踏み込む存在を彼女は許容できなかった。
「ふ、貴様らは太陽と月。 光と影、陰と陽、互いに近いが永遠に相容れない存在。 影を捉える行為程、愚かな事はないだろう。 俺からすれば貴様は自らの影を追い求める滑稽な道化よ」
ベリアルはカナタの怒りを知ってか知らずか更に燃料を投下する。
その瞬間、カナタの中から撤退の二文字が消え失せた。
「上等じゃない。 ぶっ潰してやるわ!」
「それでいい。 光の騎士よ。 感じるぞ、貴様の戦意を! さぁ、我が闇に抱かれ深き奈落へと堕ちるがいい!」
ベリアルは迎え入れるように両腕を広げ、カナタはそれを開始の合図と認識したのか大剣のエネルギーブレードを最大展開して一閃。 光の剣がベリアルへと襲い掛かった。
上段からの振り下ろし。 軌道も単純だが、込められた力、速さは並のプレイヤーに見切れるものではない。 しかし、ベリアルは並ではなく、最小の動きで躱すと即座に肉薄。
カナタは展開したエネルギーの刃を解除し、コンパクトに振って迎撃。
横薙ぎの一撃はベリアルの機体を両断したが、手応えがない。
デコイ。 カナタは機体のジェネレーターを最大稼働させ、エネルギーフィールドを展開。
ヘレボルス・ニゲルを中心に光がドーム状に広がる。
「やるな!」
いつの間にか背後にいたベリアルの機体が光に触れ、全身を纏う闇が揺らぐ。
接近戦は不利と判断したベリアルは僅かに後退し腕を突き出すと手の平を中心に巨大な闇色のエネルギーが凝縮され巨大な球を形成。 正確にはエネルギーを特殊なジェネレーターで変換し、半物質化された『エーテル』と呼ばれる物の結晶だ。 そのまま射出。
闇色の球体をカナタは大剣で両断。
分かたれたエネルギー弾は明後日の方向へと飛んでいき、着弾して爆発する。
その頃にはベリアルは反対の腕をエーテルのブレードに変化させ、刺突の態勢に移行していた。
カナタは体を傾けて回避しながら蹴りを放つ。 下から斜め上に向かう軌跡を描いた蹴りをベリアルは倒れ込むように身を捻って躱し、回避行動と並行して手の平をカナタに向ける。
「ウザい!」
カナタは大剣を盾にするように横向きに立てる。
ベリアルの手から無数のエーテル弾が放たれるが大半はカナタの大剣に阻まれて通らない。
撃ち切ったタイミングで追い払うように蹴りを放ち、ベリアルは軽やかな動きで背後に跳躍。
「はっはぁ! 流石だな光の騎士よ! だが、我が闇の深さに貴様は耐えられるか!?」
ベリアルは柏手を打ち、合わさった手の平を離すと間からバチバチと放電のような現象が発生し、紫電を纏った闇色のエーテル弾が形成される。
「受けよ、暗黒の波動を!」
カナタはさっきと同様に叩き切ろうと考えたが、嫌な予感がしたので回避を選択。
彼女の予感は正しく、エネルギー弾が纏う紫電に僅かに触れた時、機体の各所にエラーが発生。
内容は一時的な機能停止。 掠めただけなので一秒にも満たない硬直だったが、まともに貰えばどうなるのかは想像に難くない。 それなりの回数戦ってきたが、この攻撃は初めて見た。
恐らくはアップグレードしたのだろう。 ジェネシスフレームは大量のPを消費して新たな武装、機能を追加する事ができるのでいつまでも同じと思っていると痛い目を見る。
常に自己を更新し続けなければ生き残れない。 そんな修羅の巷がAランクという位置なのだ。
――だが、それはカナタとて同じ事。
彼女のヘレボルス・ニゲルもまた進化を続けているのだ。
カナタは新たに追加された武装を解放。 大剣『レンテンローズ』が縦に分離し二本の剣となった。
ベリアルは動かない。 カナタの様子を見る事にしたようだ。
「一刀で届かないなら二刀を重ねると?」
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