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第231話

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 突撃銃を連射しているソルジャーⅡ型が両断される。
 それを行ったのは一機のⅡ型。 ふわわだ。 
 場所は戦場の最前線。 銃弾、砲弾、エネルギー弾と様々なものが飛び交う激戦地。

 その中を彼女は正面から突っ込んで敵陣に切り込み、次々に敵を斬殺し続ける。
 敵Ⅱ型の胴を太刀で薙いで両断。 頭頂部から両断。 敵の連射を掻い潜ってコックピット部分を一突き。 

 「あんまり歯応えのあるのおらへんなぁ。 誰かウチと楽しく遊んでー」

 そう言いながらふわわは手当たり次第に敵を仕留めていく。
  ソルジャータイプは歯応えがなさすぎる。 だからと言ってキマイラタイプとエンジェルタイプは空から中々降りてこない。 追いかけてもいいが、空中戦では分が悪いのでこのイベントをまだまだ楽しみたいふわわとしてはあまり執りたくない選択肢だ。

 その為、あまり歯応えのないソルジャータイプを潰して回る形になっていた。
 元々、最前線で戦う事は想定していたので、この展開はある意味予定通りではあったが、気が付けば少し味方から離れてしまっている。 少し戻ろうかなと考えていると空から一機のトルーパーが降りて来た。

 識別は敵軍。 見た目は――

 「お、おぉ、なんか凄いのが来たなぁ……」

 ――凄かった。

 黄金の鎧。 形容するならそれだ。
 頭から爪先までが黄金の騎士甲冑のようなデザインで、腰には二本の長剣。
 この場合はロングソードと読んだ方が適切かもしれない。 そして背には真っ赤なマント。

 『素晴らしい剣の腕だ。 ジャパンのサムライよ!』
 「は、はぁ、どうも?」
 『我が名はランドルフ。 そしてこれこそが我が不滅の鎧「レザネフォル」である』
 「ご丁寧にどうも。 ふわわです」
 『ふわわ。 おぉ、随分と不思議な響きだ。 そして女性とは驚いた。 戦場に咲く可憐な一凛よ。 私は貴女と剣を交える為にこうしてはせ参じた。 どうかこのランドルフと尋常なる決闘を!』

 それを聞いてふわわはなるほどとアバターの下で笑みを浮かべる。
 最初に見た時はきついのが来たなと思っていたが、特注機なのでAランク以上。 
 楽しめそうな相手は大歓迎だ。

 「えぇよ。 じゃあ早速、始めよか?」

 太刀と小太刀を抜く。 

 『おぉ、何と気持ちの良い剣士よ。 我が誇りにかけて全力で挑ませて頂こう』

 ランドルフも二本のロングソードを抜く。 刃も当然のように黄金だった。
 真っ先に動いたのはランドルフ。 一息に離れた間合いを埋めると右のロングソードで叩きつけるように上からの大振り。 雑に見えるが、Aランクだけあってかなり速い。

 いなしても良かったが完全に初見の相手だけあって、下手に受けるのは良くないと判断したふわわは余裕をもって回避。 地面に真っすぐに切断された痕が刻まれたのを見て、思ったより間合いが広いので下がるのは良くないかと思いながら太刀で反撃――する前に残ったロングソードによる横薙ぎの一閃。 下がるのではなく飛んで躱す。

 ――いい感じの相手やけど今の所はそこまでの怖さはないなぁ……。

 ロングソードは思った以上に振れているので見た目以上に伸びており、加えて何らかの機能が搭載されているのか斬撃の範囲が広い。 目測だが、一割から二割は盛っている感じがする。

 「何その剣? 見たより長いんと違う?」
 『はっはっは、お目が高い。 我が愛剣「アール・デコ」と「アール・ヌーヴォ」の力の一端とだけ伝えておこう』
 「へぇ? なら柄部分で伸ばす以外の事もできるんや?」
 
 ふわわの言葉にランドルフは小さくほぅと呟く。 
 よく見れば分かる事でロングソードの柄部分がせり上がって長さを盛っているのだ。
 ランドルフは見せびらかすようにロングソードを操作すると刃の一部が柄へと引っ込んで長さがもとに戻る。 地味だが面白い機能だった。

 間合いに正確な相手には特に効果的だ。 本来なら数合ほど打ち合ってから使用するのだろうが、ふわわなら初見で見切ってくると判断して早々に使用したのだろう。
 
 「なぁ、もうええんと違う?」
 『何がかね?』

 唐突にそんな事を言い出したふわわにランドルフは小さく首を傾げる。

 「小手調べは要らんから本気出せって言ってんねん。 それともチマチマ武器の性能を小出しにするのがあんたの騎士道ってやつなん?」

 見透かしたようなふわわの言葉にランドルフは少しの沈黙。

 『……失礼した。 私と貴女の機体では性能差があったのでなるべくフェアに行こうと思っていたのだが、結果的に侮辱してしまったようだ』
 「ウチらがやってるのはICpwやろ? 機体の性能差? 持ってる得物が長いか短いかの違いでしかないやろ」
 
 ランドルフは小さく息を吐くと肩の力を抜いたかのように機体が僅かに脱力。

 『その通りだ。 では、我が愛機「レザネフォル」の真の力をご覧に入れよう』

 機体の胴体各所、甲冑の隙間から光が噴き出した。 
 同時に全身に赤いパターンが浮かび上がり、ロングソードにもそれが伝播する。 
 何をしてくるのか分からないが、噴き出しているのはエンジェルタイプの羽根から出ている光に似ているので機体の基本性能を引き上げる仕掛けなのは間違いない。 

 ――来る。

 『行くぞ』

 動いた。 さっきとまったく同じ挙動、まったく同じ攻撃モーション。
 だが、速度が段違いだった。 上段からの振り下ろしからの横薙ぎ。
 動きの起点自体は見えていたが、その先が想定を超えていた。

 『これを躱すか。 素晴らしい』

 少し見ておきたいので距離を取ろうとしたが、スペックが違いすぎる事もあって即座に間合いを詰められる。 刺突を上体を斜めに逸らして回避。
 腕が伸びきったと同時に光の噴出が増し、センサー類にエラー。 僅かな時間視界が不良となる。

 ――視界まで奪ってくるんか、厄介やな。

 横薙ぎを飛んで回避、推進を切って落下からのバックステップで距離を取るが、即座に間合いを詰められて刺突。 背中のブースターを全力で噴かし、旋回して躱す。
 背後に回って太刀での斬撃。 背面装甲の隙間からさっきと同じ光が噴出して斬撃が押し留められる。 サンドバッグか何かに打ち込んだような手応えだ。 

 ――刃が通らん。

 諦めて下がる。 僅かに遅れて横薙ぎに一閃が通り過ぎるが、ふわわはお返しとばかりに胸部装甲に仕込んだニードルガンを射出。 無数のニードルはランドルフの機体を覆う光に阻まれて通らない。
 
 「うーん。 厄介やなぁ……」
 『ソルジャータイプ使いにここまで躱されたのは初めてだ。 素晴らしい剣の冴え、素晴らしい身のこなし。 このような強敵に出会えた運命に感謝する!』

 ――どうしよっかなぁ……。
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