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第188話

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 次に表示されたのはヨシナリの見覚えのないタイプのエネミーだった。
 チョウチンアンコウ型。 どうも積極的に襲ってくるタイプではないようで、遭遇率はやや低い。
 具体的に何をしてくるのかというとレーダー表示に味方として認識する信号を出してくる。

 あのフィールドは視界が非常に悪いので孤立した味方かと近寄ると何もない。
 何だと首を傾げるとそれで終わりだ。 地中に潜んでいるチョウチンアンコウ型はそのまま表れて獲物をデカい口で捕らえて噛み砕く。 対処法は極めて簡単で怪しい反応を無視すればいい。
 
 引っかかれば確実に一機は持って行かれるので無理に撃破するメリットもない。
 その次に表示されたのもこれまた見覚えのないタイプのエネミーだった。
 特徴的な透明なボディはクリオネにそっくりなのでクリオネ型。 群れで襲ってくるタイプのエネミーでサイズも一メートルもない小型だが、エネルギー兵器は吸収して完全に無効化。
 
 実体弾での撃破は推奨。 
 耐久も低いので撃破自体は楽だが、高速飛行で一気に接近して自爆してくるので近寄らせると詰む。
 こうして見てみると厄介なタイプなエネミーが非常に多い。
 
 クリオネ型の説明が終わると少し間が開いた。 理由は前置きが必要な相手だからだろう。
 説明役のプレイヤーも用意した資料を軽く見直していた。 
 
 ――次はあれだな。 

 次に何が来るのかは容易に想像がつく。 
 ヨシナリの予想通り、ウインドウにでかでかと表示されたのはメガロドン型だ。 
 重装甲、高火力、防御フィールドと強い、硬いを地で行く非常に厄介なエネミーだった。

 一応、思金神が事前に用意した情報フォームに知っている事を送っておいたのだが役に立ったのだろうか?
 そんな事を考えながら話の続きに耳を傾ける。 
 基本的に大暗斑――巨大な嵐を起こし、その中心に居座っているので居場所自体は簡単に把握できる。 
 
 惑星内をランダムに移動して感知した敵に襲い掛かるという行動ルーチンのようだが、イベントがある程度進むと行動に変化が起こる。 具体的に何かというと拠点の制圧だ。
 敵の拠点を陥落、または破壊するとそこを襲撃しに行くようになっていると思われる。 加えて、初期配置は一体だけなのだが、制圧拠点が増えると追加が湧く仕様のようだ。

 ――なるほど。

 あのクソが付くほど広大なフィールドに二匹も現れた理由に納得がいったからだ。
 基本はランダムにフィールド内を泳ぎ回り、基地が陥落すればそこに急行すると。
 
 ――来るのが分かるのであればやりようはある、か。 

 ヨシナリはふーむと脳裏の片隅で戦い方を組み立てながら話を聞く。
 次は例の敵性トルーパーかなと思ったが、別のエネミーだった。
 映像に移し出されたのは全く見た事のないエネミーで見た目はジンベエザメにそっくりだ。

 ジンベエザメ型エネミー。 口から大量のエネミーを吐き出す輸送艦。
 以前の防衛戦で出現した蛾型と同様にどこかから転移してきている様で撃沈するまで無限にエネミーを吐き出し続けるので遭遇次第即時撃破が推奨される。 こちらもメガロドン型と同様に陥落した基地に向かう傾向にあるようなので遭遇したプレイヤー達はメガロドン型と同時に相手どる事となり全滅したらしい。 こちらも重装甲とエネルギーフィールドに守られているので仕留めるのは非常に困難。

 数名のプレイヤーが口の中へ特攻する事でどうにか仕留める事には成功したが、現状では口以外に弱点は見当たらないとの事。 
 次にメガロドン型、ジンベエザメ型に共通するエネルギーフィールドについてだ。

 基本的に実体弾は素通りするがエネルギー系の兵器は無効化する。
 その為、トルーパーでも通るだけなら可能ではあるが、動力にノーマルエンジンではなくジェネレーターを使用している機体は通過の際に出力が大幅に低下するので上位の機種であればある程に破壊してからの突破が求められるようだ。

 「うへ、Ⅱ型以降の機体ってほぼジェネレーター装備じゃねぇか。 えげつないな」

 隣でマルメルが嫌そうな声を上げる。 

 「そうでもない。 キマイラタイプはノーマルエンジンとのハイブリッドもいるみたいだから影響を受けなかった奴は結構いたと思う」 
 
 ノーマルエンジンの場合、継戦能力の維持に機体に大型のプロペラントタンクを乗せる必要があるので採用率はあまり高くはないが最大速度を長く維持したい場合は有用だ。

 「次行くときはノーマルのエンジン積んどくか?」
 「時間はあるしその辺は後で考えればいいだろ」

 エネミーは一段落ついたのか次は敵拠点についてだ。 
 ウインドウにフィールドとなった惑星の映像が映し出される。
 説明役のプレイヤーによれば敵拠点は四種類存在するようだ。

 まず第一にエネミーの生産拠点。 
 エネミーが無限湧きし、ジンベエザメ型が複数駐屯しているというヤバすぎる場所だった。 
 敵を倒しても切りがないので強引に突破して最奥――地下一階部分にある端末にアクセスすれば生産を停止させられるので構造さえ覚えていれば割と何とかなる場所のようだ。 構造は全拠点共通らしいので一つ覚えれば後は同じ手順で制圧できそうだった。

 ここを停止させるとあちこちを巡回しているエネミーが補充されなくなる。
 第二に敵性トルーパーの生産拠点。 ヨシナリ達が落としたのはこれだった。
 敵のトルーパーやその装備が生産される厄介な場所でこちらは地上三階、地下二階とかなり大きい。

 制圧の難易度は高い部類に入る。 地下の生産工場を停止させれば敵トルーパーのリポップは停止。
 最上階を制圧するすれば工場の機能を利用できるので攻略した時のメリットが一番大きい。
 機体の整備用ハンガーもあるので機体の消耗も回復させる事ができる点からも早めに手に入れたい拠点だ。

 三つめは通信拠点。 巨大なアンテナがあるので一目見れば分かる。
 これに関しては良く分かっていない。 はっきりさせるにはもう少し検証が必要だろう。
 思金神の見解としては陥落した拠点の位置などを把握するのに使用している可能性があるので、停止させればメガロドン型の襲来を遅らせる事ができるかもしれないとの事。 

 この三種類が惑星のあちこちに存在しており、計画的に陥落させる事が勝利への鍵だと解説役のプレイヤーはそう締めくくった。
 
 「あれ? 四つ目の拠点の話は?」 
 「これからだろ。 わざわざ話を分ける時点で嫌な予感しかしないな」

 ヨシナリの言葉を証明するかのように映像にでかでかと映し出されたのは巨大すぎる要塞だった。
 周囲を巨大な壁と上空はエネルギーフィールド。 内部には巨大なアンテナが複数。

 「うわ、なんだあれ」

 思わずそう呟いたマルメルにヨシナリは無言で同意した。
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