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第155話
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アノマリーを連射モードに切り替えて次々とターゲットを撃ち抜いていく。
あれから数日、暦は変わって十二月だ。 ふわわは相変わらず忙しいとログインできないらしい。
ただ、中旬には片付くとの事なのでイベントには間に合わせると言っていた。
マルメルは次の期末考査に向けて必死に勉強ししているとの事。
意地でも両親の設定したノルマをクリアして再開してやると気合を入れていたが、文面からあまり自信があるようには見えなかったのでイベントに間に合うかは何とも言えない。
マガジン交換をしながらビルの間を縫うように走る。
あれ以来、ツガル達はミッションに誘ってくるので定期的に一緒に組んで遊んでいた。
たまに他のユニオンメンバーを連れてくるのでいい刺激になっていい。
ヨシナリは期末考査の勉強をしつつ、こうして次のイベント戦に備えて訓練を行っていた。
何が出てくるかは不明だが、例の防衛イベントと似た形式なら多数の敵と戦う事になるだろう。
それに合わせて複数の目標に対して正確に銃弾を叩きこむトレーニングを行っていた。
異なる色のターゲットを用意して撃っていい物と撃ってはいけない物をランダムで出現させて瞬間の反応を鍛えているのだが、これが中々に難しい。
ターゲットが出現してから撃っていいのか否かの判断までにどうしても間が出来てしまう。
ただの的でこれだと実戦でやると味方を撃ち抜いてしまいかねない。
それに関してはまだまだ要練習だが、射撃の精度自体は上がっている。
実際、総合的な命中率は八割を超え始めた。 突撃銃でこの命中率は中々ではないかと少し思っている。
ヨシナリはその数値に気分を良くして更に練習にのめり込む。
銃を撃ち続ける姿は傍から見るとあまり面白そうには見えなかったが、ヨシナリはこういった黙々と作業する事を苦とは感じない。 特にこうして数値に成果として現れている事もあってモチベーションを高く維持できる。
――それにこういった黙々と何かをすると気持ちが落ち着くのだ。
考え事などを行うのにも適した時間なので時折、こうして一人でターゲット相手に銃を撃ちまくっていた。 考える事は戦力についてだ。
大規模イベント戦との事で総てのプレイヤーが友軍扱いだろうが、互いを守り合える仲間がいると生存率が大きく上がるので可能であれば集団行動ができるユニオンメンバーは居てくれるとありがたい。
いい加減に新しいメンバーを募集するべきなのだろうか?
慣れ合う関係が嫌ならイベント戦の時だけでも力を貸してくれるような傭兵のような立ち位置の仲間を作るべきなのかもしれない。 真っ先に浮かんだのはラーガストとユウヤだったが、あの二人だと強すぎるので完全に寄生になってしまう。
楽でいいじゃないかといった考えがふっと浮かぶが、楽なだけで楽しくないゲームは飽きてしまうのでそれはなしだ。 飽きたと認識したゲームでモチベーションを維持するのは非常に困難なので、そういった萎える行動は可能な限り選択肢から排除している。
ヨシナリはホロスコープでビルからビルへと飛び移り、着地と同時にアノマリーを狙撃モードに切り替えて即座に構え、ノータイムで発射。 エネルギーの弾丸は過たずに標的を射抜く。
こんな事を考えるのには理由があった。 事情があったとは言え、イベントを土壇場でキャンセルされるのは非常に困るからだ。 他人の予定を縛る権利はないのでそれ自体は好きにしたらいいとは思うが、何人かいなくなっても問題ないような頭数は欲しいと思ってしまった事もまた事実だった。
問題はそんな都合のいい人材がその辺に転がっているかだが――
「――まぁ、そう都合よくは行かないか」
アノマリーを投げ捨て、素早く拳銃を抜いて連射。 ギリギリ射程内に存在する四つのターゲットの内、色の違う一つを除いて二連射で全て撃ち抜く。 ダブルタップは基本。
それと銃の射程を体に覚え込ませる事は他のゲームでも散々練習した挙動だったので応用はそう難しくなかった。 マガジン交換を行いながらどうしたものかと頭を捻る。
「やっぱり最悪、何処かに混ぜて貰うのが無難か」
真っ先に選択肢に上がるのは「栄光」の面々だが、ツガルやフカヤは問題ないがカナタとはあまり顔を合わせ辛い。 彼女はユウヤの事になると正気を失うとの事でその片鱗を見たヨシナリとしては地雷を踏み抜いた自覚があるのであまり近寄りたくないのだ。
考えながら拳銃を連射。 思考の一部で残弾を確認しつつ撃ち続ける。
残弾三、二、一――
「ありゃ」
最後の一発が外れる。 ヨシナリはしまったなと小さく溜息を吐く。
どうやら集中力が切れたようだ。 気分を変えてランク戦に行くか、そろそろログアウトするか。
どちらにしようかと悩んだが、時計を見るともう少しだけ時間があったので一回だけランク戦をするかとウインドウを操作してランク戦に参加。 対戦相手は――初見ではなかった。
プレイヤーネーム「ヴルトム」誰かと思ったら始めた頃に一緒に共同ミッションをやった相手だ。
ステータスを確認すると機体はⅡ型。 装備は追加装甲を盛って別の機体のように膨れ上がった重装機体となっていた。 武器は重機関銃と大型ライフル、ミサイルポッドもついている。
取り敢えず積める武器は積んできましたといった感じだった。
記憶にある彼の機体は狙撃特化でもっとスマートな感じだったが、しばらく見ない内に随分と変わったなと思いつつ、他の項目に目を通すとおやと小さく目を見開く。
所属ユニオンが「大渦」となっていたからだ。 あそこはリーダーのレラナイトが永遠に消えたのでとっくに空中分解したと思っていたのに未だに生き残っているとは意外だった。
色々と聞きたい事はあるがまずは勝負に集中しよう。 敵の装備が把握できたのは中々に大きい。
勝てるとまでは行かないが、あまり躱すタイプではないので相性は割と良さそうだ。
後は戦場次第だが――ランダムで選択された戦場は廃棄都市。 廃墟になった市街地だ。
傷みが酷いので崩れたりなどの事故に注意する必要がある。 落ちてきた瓦礫で想定外のダメージを受けるなんて話もざらにあるので気を付けないとと思いながらフィールドへと降りたつ。
今のヴルトムがどんなものなのか、興味があるヨシナリは少しワクワクした気持ちで移動を開始した。
あれから数日、暦は変わって十二月だ。 ふわわは相変わらず忙しいとログインできないらしい。
ただ、中旬には片付くとの事なのでイベントには間に合わせると言っていた。
マルメルは次の期末考査に向けて必死に勉強ししているとの事。
意地でも両親の設定したノルマをクリアして再開してやると気合を入れていたが、文面からあまり自信があるようには見えなかったのでイベントに間に合うかは何とも言えない。
マガジン交換をしながらビルの間を縫うように走る。
あれ以来、ツガル達はミッションに誘ってくるので定期的に一緒に組んで遊んでいた。
たまに他のユニオンメンバーを連れてくるのでいい刺激になっていい。
ヨシナリは期末考査の勉強をしつつ、こうして次のイベント戦に備えて訓練を行っていた。
何が出てくるかは不明だが、例の防衛イベントと似た形式なら多数の敵と戦う事になるだろう。
それに合わせて複数の目標に対して正確に銃弾を叩きこむトレーニングを行っていた。
異なる色のターゲットを用意して撃っていい物と撃ってはいけない物をランダムで出現させて瞬間の反応を鍛えているのだが、これが中々に難しい。
ターゲットが出現してから撃っていいのか否かの判断までにどうしても間が出来てしまう。
ただの的でこれだと実戦でやると味方を撃ち抜いてしまいかねない。
それに関してはまだまだ要練習だが、射撃の精度自体は上がっている。
実際、総合的な命中率は八割を超え始めた。 突撃銃でこの命中率は中々ではないかと少し思っている。
ヨシナリはその数値に気分を良くして更に練習にのめり込む。
銃を撃ち続ける姿は傍から見るとあまり面白そうには見えなかったが、ヨシナリはこういった黙々と作業する事を苦とは感じない。 特にこうして数値に成果として現れている事もあってモチベーションを高く維持できる。
――それにこういった黙々と何かをすると気持ちが落ち着くのだ。
考え事などを行うのにも適した時間なので時折、こうして一人でターゲット相手に銃を撃ちまくっていた。 考える事は戦力についてだ。
大規模イベント戦との事で総てのプレイヤーが友軍扱いだろうが、互いを守り合える仲間がいると生存率が大きく上がるので可能であれば集団行動ができるユニオンメンバーは居てくれるとありがたい。
いい加減に新しいメンバーを募集するべきなのだろうか?
慣れ合う関係が嫌ならイベント戦の時だけでも力を貸してくれるような傭兵のような立ち位置の仲間を作るべきなのかもしれない。 真っ先に浮かんだのはラーガストとユウヤだったが、あの二人だと強すぎるので完全に寄生になってしまう。
楽でいいじゃないかといった考えがふっと浮かぶが、楽なだけで楽しくないゲームは飽きてしまうのでそれはなしだ。 飽きたと認識したゲームでモチベーションを維持するのは非常に困難なので、そういった萎える行動は可能な限り選択肢から排除している。
ヨシナリはホロスコープでビルからビルへと飛び移り、着地と同時にアノマリーを狙撃モードに切り替えて即座に構え、ノータイムで発射。 エネルギーの弾丸は過たずに標的を射抜く。
こんな事を考えるのには理由があった。 事情があったとは言え、イベントを土壇場でキャンセルされるのは非常に困るからだ。 他人の予定を縛る権利はないのでそれ自体は好きにしたらいいとは思うが、何人かいなくなっても問題ないような頭数は欲しいと思ってしまった事もまた事実だった。
問題はそんな都合のいい人材がその辺に転がっているかだが――
「――まぁ、そう都合よくは行かないか」
アノマリーを投げ捨て、素早く拳銃を抜いて連射。 ギリギリ射程内に存在する四つのターゲットの内、色の違う一つを除いて二連射で全て撃ち抜く。 ダブルタップは基本。
それと銃の射程を体に覚え込ませる事は他のゲームでも散々練習した挙動だったので応用はそう難しくなかった。 マガジン交換を行いながらどうしたものかと頭を捻る。
「やっぱり最悪、何処かに混ぜて貰うのが無難か」
真っ先に選択肢に上がるのは「栄光」の面々だが、ツガルやフカヤは問題ないがカナタとはあまり顔を合わせ辛い。 彼女はユウヤの事になると正気を失うとの事でその片鱗を見たヨシナリとしては地雷を踏み抜いた自覚があるのであまり近寄りたくないのだ。
考えながら拳銃を連射。 思考の一部で残弾を確認しつつ撃ち続ける。
残弾三、二、一――
「ありゃ」
最後の一発が外れる。 ヨシナリはしまったなと小さく溜息を吐く。
どうやら集中力が切れたようだ。 気分を変えてランク戦に行くか、そろそろログアウトするか。
どちらにしようかと悩んだが、時計を見るともう少しだけ時間があったので一回だけランク戦をするかとウインドウを操作してランク戦に参加。 対戦相手は――初見ではなかった。
プレイヤーネーム「ヴルトム」誰かと思ったら始めた頃に一緒に共同ミッションをやった相手だ。
ステータスを確認すると機体はⅡ型。 装備は追加装甲を盛って別の機体のように膨れ上がった重装機体となっていた。 武器は重機関銃と大型ライフル、ミサイルポッドもついている。
取り敢えず積める武器は積んできましたといった感じだった。
記憶にある彼の機体は狙撃特化でもっとスマートな感じだったが、しばらく見ない内に随分と変わったなと思いつつ、他の項目に目を通すとおやと小さく目を見開く。
所属ユニオンが「大渦」となっていたからだ。 あそこはリーダーのレラナイトが永遠に消えたのでとっくに空中分解したと思っていたのに未だに生き残っているとは意外だった。
色々と聞きたい事はあるがまずは勝負に集中しよう。 敵の装備が把握できたのは中々に大きい。
勝てるとまでは行かないが、あまり躱すタイプではないので相性は割と良さそうだ。
後は戦場次第だが――ランダムで選択された戦場は廃棄都市。 廃墟になった市街地だ。
傷みが酷いので崩れたりなどの事故に注意する必要がある。 落ちてきた瓦礫で想定外のダメージを受けるなんて話もざらにあるので気を付けないとと思いながらフィールドへと降りたつ。
今のヴルトムがどんなものなのか、興味があるヨシナリは少しワクワクした気持ちで移動を開始した。
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