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第149話
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動きを止めて撃ち抜く事に意識を傾けるか、無理に飛んで視界の不利を解消するか。
それとも突っ込んで接近戦に持ち込む? 動きを止めてくれれば一番いいが、相手の思い切りの良さを考えると――
――突っ込んできそうだな。
正解だった。 拳銃を連射して牽制を入れつつ、弾が切れたと同時にヨシナリへと投げつけ、ブレードを抜いて斬りかかってきた。 ヨシナリも拳銃を撃ち尽くした後、投げ捨てる。
片腕ではリロードが難しいので持っていても無駄だ。 近接戦に関してはふわわといういいお手本が居るので動きはイメージしやすいが、完全にあの動きをトレースする事は難しい。
だが、部分的には可能だ。 相手の攻撃動作から一、二撃ならそこそこの精度で読める。
突っ込んで来るまでの判断に迷いはなかったが、あまり近接には慣れていない動きで素直にホロスコープを袈裟に両断しようとしている。 ただ、防がれない死角――要は腕がない方へと斬りかかっている点から冷静さが伝わってくる。 大抵の相手は躱すか受けるかを選択するが、ここは意表を突く。
腰にマウントしたエネルギーブレードの柄を掴む。
抜くのはまだ早い。 袈裟に両断したいなら必ず振り上げる。
狙いはそこだ。 敵機が接近、ブレードを振り上げる。 ほらきた。
一瞬、ふわわの時のように隠した内蔵武器による奇襲があるのではないかと警戒はしたが、あのドロー試合の後、分かりにくい隠し武装の類は散々、勉強してきた。 絶対とは言わないがまずない。
だから、これは通るはずだ。 狙うのは斬撃を繰り出す為に腕が伸びきる瞬間。
ブレードを抜いて一閃。 接触の直前までブレードを展開せず柄だけで振る。
そして刃が接触するタイミングで起動。 狙うのは関節だ。
今のヨシナリの技量で綺麗に両断する事は難しいので、綺麗に斬れる部位を狙うのが合理的だ。
具体的には敵機の関節。 特に斬撃を繰り出す為に伸びきった腕なら張った糸を切るようなものだ。
ふわわは何処をどう切れば効率よく敵機を無力化させる事を感覚で掴む天才と言っていい。
あの思考は真似できないが、散々見てきた事もあって分かり易い動きだけなら多少は真似できる。
ヨシナリのブレードは敵機の関節を捉えて切断。
武器を失った事に敵機は動揺したのか動きが僅かに止まる。 最高の展開だ。
返す刀で脇腹から入れてコックピット部分を切り裂く。 綺麗に両断は難しいがこの距離なら充分に仕留められる。 上手く切れずに抵抗のようなものを感じるが無視して力任せに振り抜いて両断。
巻き込まれないように素早く敵機から距離を取り背後で爆発する音を聞きながら勝利となった。
「ふぅ、危なかったなぁ……」
場所は変わってユニオンホーム。 ヨシナリは一人でさっきの試合の感想戦を行っていた。
割と運も味方した戦いだったので、次やればどうなるか分からない。
その為、こうして改善点の洗い出しは必須だ。 今回に関しては上手くやって来た事に胡坐をかいて敵を甘く見ていた点。 特に前の試合までほぼ一方的に相手を発見し、先手を取り続けていた事も大きかった。 戦闘に関しては太陽を背負うなど環境を最大限、利用できていたのは無駄なく戦えていたのではないだろうかと自己評価。
被弾しているのでまだまだではあるが。 後は片腕を失った後のリカバリーが甘かった。
やはり攻撃の大半をアノマリーだけに頼るのは問題だろうか?
「うーん、どうしよう」
あまり無駄な荷物を持って行くと重たくて動きに支障が出るし、センドウのように持ち込むだけ持ち込んで隠すというのも手だが、アレは待ちのスタイルでないとあまり機能しない。
その為、積極的に敵を探しに行くヨシナリの戦い方とは噛み合わなかった。 取り敢えず持ち込むのもありだが、奪われる可能性もあるので個人的には微妙と思っている。
「もうちょっと今のままで行って――ん?」
方針を決めて次の試合をと思っていたが、不意にメールが入る。
誰だろうと思っていたら『栄光』のツガルだった。 それを見て少しだけヨシナリは気まずいと感じる。 前のイベントで色々あったのでどう接したものかと思っていたからだ。
内容は先日のイベントは見事だったといった賞賛に始まり、良かったら一緒に遊びませんかといったお誘いだった。 身内だらけの戦いで部外者であるヨシナリが混ざるのはなんだか居心地が悪そうだなと思っていたが、フカヤと三人で共同ミッションやらないかという事だったのでまぁいいかと了承。
正直、ランクがそろそろ上がりそうだったのでマルメル達が帰ってくるのを待つつもりという事もあってもう少ししたら切り上げようと考えていたからだ。
了解したといった旨を送ると即座に『栄光』のユニオンホームに招待されたので移動。
移動先は以前に行った巨大なロビーではなく、『星座盤』のホームのような小さな部屋だった。
そこではツガルとフカヤの二人が待っていた。
「おっす、この間はお疲れー」
ツガルは小さく手を上げ、フカヤは小さく会釈。
ヨシナリはどうもと返して周囲を見るとツガルが苦笑する。
「ここはユニオンホーム内にある俺達専用のルームだ。 ウチほどデカいとこういった小部屋も用意できるんだよ」
ヨシナリはなるほどと頷きつつ無言で先を促す。
「ま、落ち着かねぇわな。 さっさと本題に入るか。 実はな、もう少ししたらまた何かしらのイベント戦があるらしいって噂が出回っててな」
「初耳ですね。 どこから仕入れたんですか?」
「それは秘密だ。 日程はクリスマスか年末辺りが怪しいんだと。 年末年始は運営も休みたいだろうし、クリスマス辺りが怪しいと睨んでる」
クリスマスとなると今が十一月なので一か月後か。
「それに備えておきたいんだよ。 ランク戦でも腕は磨けるがあくまで個人戦だし、連携訓練や集団での立ち回りは誰かと組まねぇと身に付かない」
「それは分かりましたが、何で俺なんです? 同じユニオンの面子では不味かったんですか?」
「いや、実はだな。 今は主力が新人を大勢連れて大規模ミッションを周回していて組む奴があんまりいないんだよ」
「――お二人は行かなかったんですか?」
そう尋ねるとツガルはそっと目を逸らす。
ヨシナリはあぁ、新人教育が面倒だったんだなと事情を察した。
「普段から大人数で回している感じですか?」
深くは聞かずに話の矛先を少しだけ変えた。
「共同ミッションって推奨人数が多い奴ほど報酬が美味しいからな。 ユニオンランクが上がればアンロックされるミッションで百人規模の奴を選択できるようになる」
「……なるほど。 巨大ユニオンが儲かる訳だ」
それとも突っ込んで接近戦に持ち込む? 動きを止めてくれれば一番いいが、相手の思い切りの良さを考えると――
――突っ込んできそうだな。
正解だった。 拳銃を連射して牽制を入れつつ、弾が切れたと同時にヨシナリへと投げつけ、ブレードを抜いて斬りかかってきた。 ヨシナリも拳銃を撃ち尽くした後、投げ捨てる。
片腕ではリロードが難しいので持っていても無駄だ。 近接戦に関してはふわわといういいお手本が居るので動きはイメージしやすいが、完全にあの動きをトレースする事は難しい。
だが、部分的には可能だ。 相手の攻撃動作から一、二撃ならそこそこの精度で読める。
突っ込んで来るまでの判断に迷いはなかったが、あまり近接には慣れていない動きで素直にホロスコープを袈裟に両断しようとしている。 ただ、防がれない死角――要は腕がない方へと斬りかかっている点から冷静さが伝わってくる。 大抵の相手は躱すか受けるかを選択するが、ここは意表を突く。
腰にマウントしたエネルギーブレードの柄を掴む。
抜くのはまだ早い。 袈裟に両断したいなら必ず振り上げる。
狙いはそこだ。 敵機が接近、ブレードを振り上げる。 ほらきた。
一瞬、ふわわの時のように隠した内蔵武器による奇襲があるのではないかと警戒はしたが、あのドロー試合の後、分かりにくい隠し武装の類は散々、勉強してきた。 絶対とは言わないがまずない。
だから、これは通るはずだ。 狙うのは斬撃を繰り出す為に腕が伸びきる瞬間。
ブレードを抜いて一閃。 接触の直前までブレードを展開せず柄だけで振る。
そして刃が接触するタイミングで起動。 狙うのは関節だ。
今のヨシナリの技量で綺麗に両断する事は難しいので、綺麗に斬れる部位を狙うのが合理的だ。
具体的には敵機の関節。 特に斬撃を繰り出す為に伸びきった腕なら張った糸を切るようなものだ。
ふわわは何処をどう切れば効率よく敵機を無力化させる事を感覚で掴む天才と言っていい。
あの思考は真似できないが、散々見てきた事もあって分かり易い動きだけなら多少は真似できる。
ヨシナリのブレードは敵機の関節を捉えて切断。
武器を失った事に敵機は動揺したのか動きが僅かに止まる。 最高の展開だ。
返す刀で脇腹から入れてコックピット部分を切り裂く。 綺麗に両断は難しいがこの距離なら充分に仕留められる。 上手く切れずに抵抗のようなものを感じるが無視して力任せに振り抜いて両断。
巻き込まれないように素早く敵機から距離を取り背後で爆発する音を聞きながら勝利となった。
「ふぅ、危なかったなぁ……」
場所は変わってユニオンホーム。 ヨシナリは一人でさっきの試合の感想戦を行っていた。
割と運も味方した戦いだったので、次やればどうなるか分からない。
その為、こうして改善点の洗い出しは必須だ。 今回に関しては上手くやって来た事に胡坐をかいて敵を甘く見ていた点。 特に前の試合までほぼ一方的に相手を発見し、先手を取り続けていた事も大きかった。 戦闘に関しては太陽を背負うなど環境を最大限、利用できていたのは無駄なく戦えていたのではないだろうかと自己評価。
被弾しているのでまだまだではあるが。 後は片腕を失った後のリカバリーが甘かった。
やはり攻撃の大半をアノマリーだけに頼るのは問題だろうか?
「うーん、どうしよう」
あまり無駄な荷物を持って行くと重たくて動きに支障が出るし、センドウのように持ち込むだけ持ち込んで隠すというのも手だが、アレは待ちのスタイルでないとあまり機能しない。
その為、積極的に敵を探しに行くヨシナリの戦い方とは噛み合わなかった。 取り敢えず持ち込むのもありだが、奪われる可能性もあるので個人的には微妙と思っている。
「もうちょっと今のままで行って――ん?」
方針を決めて次の試合をと思っていたが、不意にメールが入る。
誰だろうと思っていたら『栄光』のツガルだった。 それを見て少しだけヨシナリは気まずいと感じる。 前のイベントで色々あったのでどう接したものかと思っていたからだ。
内容は先日のイベントは見事だったといった賞賛に始まり、良かったら一緒に遊びませんかといったお誘いだった。 身内だらけの戦いで部外者であるヨシナリが混ざるのはなんだか居心地が悪そうだなと思っていたが、フカヤと三人で共同ミッションやらないかという事だったのでまぁいいかと了承。
正直、ランクがそろそろ上がりそうだったのでマルメル達が帰ってくるのを待つつもりという事もあってもう少ししたら切り上げようと考えていたからだ。
了解したといった旨を送ると即座に『栄光』のユニオンホームに招待されたので移動。
移動先は以前に行った巨大なロビーではなく、『星座盤』のホームのような小さな部屋だった。
そこではツガルとフカヤの二人が待っていた。
「おっす、この間はお疲れー」
ツガルは小さく手を上げ、フカヤは小さく会釈。
ヨシナリはどうもと返して周囲を見るとツガルが苦笑する。
「ここはユニオンホーム内にある俺達専用のルームだ。 ウチほどデカいとこういった小部屋も用意できるんだよ」
ヨシナリはなるほどと頷きつつ無言で先を促す。
「ま、落ち着かねぇわな。 さっさと本題に入るか。 実はな、もう少ししたらまた何かしらのイベント戦があるらしいって噂が出回っててな」
「初耳ですね。 どこから仕入れたんですか?」
「それは秘密だ。 日程はクリスマスか年末辺りが怪しいんだと。 年末年始は運営も休みたいだろうし、クリスマス辺りが怪しいと睨んでる」
クリスマスとなると今が十一月なので一か月後か。
「それに備えておきたいんだよ。 ランク戦でも腕は磨けるがあくまで個人戦だし、連携訓練や集団での立ち回りは誰かと組まねぇと身に付かない」
「それは分かりましたが、何で俺なんです? 同じユニオンの面子では不味かったんですか?」
「いや、実はだな。 今は主力が新人を大勢連れて大規模ミッションを周回していて組む奴があんまりいないんだよ」
「――お二人は行かなかったんですか?」
そう尋ねるとツガルはそっと目を逸らす。
ヨシナリはあぁ、新人教育が面倒だったんだなと事情を察した。
「普段から大人数で回している感じですか?」
深くは聞かずに話の矛先を少しだけ変えた。
「共同ミッションって推奨人数が多い奴ほど報酬が美味しいからな。 ユニオンランクが上がればアンロックされるミッションで百人規模の奴を選択できるようになる」
「……なるほど。 巨大ユニオンが儲かる訳だ」
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