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第146話

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 最初のニュースを見る。 
 エネルギー資源の宝庫である惑星ユーピテルはとにかく開発が盛んな場所だ。
 次々と開拓者が送られ、採掘、採取施設が次々と作られており、今回取り上げられているのは特に規模の大きなもので色々と期待できるといった話だった。

 ――ふーん。

 嘉成は薄いリアクションで記事に目を通す。 宇宙自体は好きだが、こういった利権などが絡む話はあまり好きではなかったので面白いとは思えなかった。
 二つ目はゲーム依存による問題。 VRゲームだけでなくそれ以前から割とついて回った問題だが、意識自体をゲームに飛ばす関係で文字通り死ぬまでやる奴が後を絶たない。

 一応、システム側で一定以上の連続ログインを禁止する事で対処しているがごまかす方法が多く、あまり効果があるとは思えなかった。 ICpwは特にその手の条件に合致しそうなのだが、不思議な事に死亡者が出たといったネガティブなニュースは一切聞こえてこない。
 
 問題がないのだろうと素直に思えれば気楽だったのだが、あの運営のやり方を見ればもみ消しているのではないのかと思ってしまう。 いや、嘉成だけでなくそこそこプレイしている人間の大半は思っているはずだ。
 あのゲームはPという特殊通貨が出回っており、それはゲーム外で高値で取引される。

 それ目当てであのゲームをプレイしている者は非常に多い。 統計を取っている訳ではないのでどれぐらいの割合を占めているのかは不明だが、少なくとも数割を占めているとは思っていた。
 加えて、ログイン時間超過によって死亡とまでは行かないが体調を崩す者も間違いなくいるだろう。
 
 理由は緊急ミッションだ。 嘉成もたったの二回しか参加した事がないが、一時間から二時間の作業で結構な量のPを貰えるので受注する為に一日中張り付く者が居るという話をよく聞く。
 換金のレートを見れば嘘と流せない金額なので嘉成は絶対に居ると思っていた。

 最後のニュースは最初のものと関連のある内容ではある。
 近年、宇宙開発につぎ込んでいる予算が尋常ではないといった話だった。
 ユーピテルの開発成功のニュースを見れば上手く行っているようにも見えるが、数字に詳しい人間からすれば明らかに多すぎるとの事。 国民の血税を宇宙開発の名目で良く分からない事に使っているのではないかと声を大にして言っている。 怪しい点があるのは何となくわかったが現状、憶測の域を出ないので嘉成はからすれば何とも言えない話だった。

 だが、確かに近年、頻繁にロケットなどの打ち上げが行われており、開拓者の募集が増えた事は知っていたのでとんでもない予算をつぎ込んでいる事だけは事実だろうなと思っている。
 一般市民である嘉成は俺にはあまり関係がないとウインドウを閉じて食事を摂ると部屋へと引っ込んでいった。 やる事は自らに課したノルマ――要は勉強を消化し、メールをチェック。

 ふわわ、マルメルからの連絡はない。 まだ一週間も経過していないので仕方がない話ではあるが誰も来ないというのは少し寂しさを感じる。 ゲームを起動し、ログインまでの待ち時間中に予定などをチェック。 イベントの類は現在、予定されていない。

 そうかからずに告知があると思うので今の内に自身の強化を図るべきだ。
 取り合えずトレーニングルームで機体を動かして今の自分に何が必要なのかを確かめよう。
 そう考えた嘉成はログインしヨシナリへ。 早々にトレーニングルームへ移動し、武器を持たずに広大なフィールドをひたすらに走り回り、飛び回る。

 途中、足を止めて戻り、特定のモーションを繰り返す。 具体的には障害物を突破する時の挙動だ。
 飛び越える、迂回する。 破壊して突破する。 選択肢はいくつもあるが、その時々でベストが違う。
 その時になってみないと何とも言えないがどれにでもスムーズに対応できてこそだろう。
 
 「改めてみると少し重いか?」

 フィールドを何周も回ってヨシナリはぽつりと呟く。
 今のホロスコープは汎用性を維持しつつ元々のポジションであった後衛としてのパフォーマンスを落とさない構成だ。 その為、よく言えばバランスが良く、悪く言えば少し半端だった。
 
 手っ取り早く足を速くしたいのであれば装甲を減らす、装備を減らすと単純に身を軽くする事だが、それが嫌であるならジェネレーターなどの出力を司る内部機構を強化する必要がある。
 幸いにもラーガスト達のお陰で懐はかなり温かいので少々無茶な買い物もできそうだ。

 本音を言えばキマイラフレームが欲しかったが、流石にほぼ寄生していただけの身で優勝は高望みだろう。 軽量化は防御力――対弾性能の低下を招くが、ヨシナリはそれはあまり問題ではないのではないかと思い始めていた。 イベントで散々ハイランカーの戦いを見てきたが、彼等は正面から受けるような戦い方はしていない。 理由は単純で火力が突き抜けているので防御があまり意味をなさないのだ。

 要は躱さなければどうにもならない。 今はそこまで問題にならないが、このゲームで最終的に求められるのは攻撃を防ぐディフェンスよりも躱すディフェンスだ。
 そう思えたからこそ、余計な装甲は捨てて機動力に振った方が良いのではないかと考える。

 流石にダイエットした程度で上位機種の機動性を上回れるとは思っていないが、動きの自由は利くと判断したので方針を決めたヨシナリは早々にショップへと移動して買い物を始めた。
 
 ――一から組みなおすのってちょっとわくわくするな。

 何だかんだと機体の組み上げ作業は好きなのでヨシナリは少し新鮮な気持ちで目録を眺める。
 メインの武装はアノマリーをそのまま使用する。 距離を詰める際、銃身の長さでやや取り回しに難があるが性能的に手放すのはもったいない。 それに愛着が湧いているのでもう少し使っていたかった。

 装甲は全て剥がして徹底的に見直す。 重量と強度、特に前者に比重を置いたものを採用。
 ジェネレーター、メインのブースター、予備のスラスターは機動力の肝なので今まで使っていた物よりもアップグレードして出力を始め、徹底的に足の速さと身軽さを強化。 予備の武器として短機関銃と拳銃を一丁ずつ採用。

 エネルギー系のライフルや拳銃にしようかとも思ったが、どちらもは嵩張るので採用は見送った。
 普段使っている拳銃や短機関銃と同サイズの物もあるにはあるがエネルギー兵器は小型になればなるほど値段が跳ね上がるので少し背伸びしても構わないが、最終的には乗り換える予定なのでフレーム購入の為に金は取っておきたい。 彼等のお陰でユニオンに入ったGも結構な金額になったので分けようと提案したのだが、二人は揃って「要らん。 お前が自身の強化に使え」と言われ受け取らなかったのだ。

 その上、自分の撃破報酬まで後でメールで送りつけて来た。
 本当に参加する事以外に興味がなかったようで、得た全てを放棄していったのだ。
 ラーガストは好きに使えと言っていたが、ユウヤはこれは自分の為に使えと一文が添えられていた。

 ヨシナリはありがたいと思い、ついでに二人をフレンドリストに登録できた幸運に感謝した。
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