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第125話
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キマイラタイプは自機を狙うと見せかけて味方を狙われた事に若干の動揺をしていたが、真っすぐにヨシナリへと迫り、瞬く間に射程に捉えた。 速度差があるので逃げ切れる訳はないと思っていたので想定内の展開ではあった。
ヨシナリは意識を集中する。 キマイラタイプ――高機動の戦闘機形態はとにかく速いが、動きが直線的である事と携行火器が扱えない事もあって何が飛んでくるのかを見極める事が出来ればソルジャータイプでも攻撃は充分に躱せる。
内蔵火器は機銃かミサイル、金をかけているプレイヤーはレーザーを積んでいる可能性もあった。
裏を返せばそのどれかと考えれば動きは比較的、読み易い。
旋回性能に優れたエンジェルタイプだと純粋な性能差で圧倒されるので向かってきたのがキマイラタイプで本当に良かったと内心でほっと胸をなで下ろす。 スペックの差がある以上、それ以外の何かで戦力差を埋めなければならない。
射程に入った。 俺が逆の立場ならどうする?
敵は一機、敵味方の横槍はまだ気にしなくていい。
格下の獲物相手に真っ先に何をする?
――まずはミサイルで相手の出鼻を挫いて機銃かレーザーだろう。
ミサイルは飛んでこない。 このタイミングで使用しないなら恐らく積んでいないだろう。
ラーガストとユウヤには効果が期待できない以上、使うならヨシナリに対してだ。
加えて重量があるのでさっさと使い切ってしまえば機体を軽くできるので早々に切ってしまう方がいい手札のはず。 ここで使わないならまず積んでいないので、機銃かレーザーだ。
用途は牽制でない場合、レーザーなら回避方向の制限、機銃ならそのまま連射で追いかけまわしてくる。
敵機が攻撃の体勢に入った。 レーザーは格納式なので機銃で決まりだ。
移動の感じから射線もある程度読める。 敵の想定はヨシナリが後退しての引き撃ちを継続して行うと考えていると見ていい。
――なら、俺はその逆を突く。
これはヨシナリ自身の経験談だが、想定外の行動を取られると動揺で僅かに動きが乱れる。
格上相手ではこれは大きいと考えていた。 下がらずに前に出る。
機銃の攻撃軌道は直線。 ほぼ固定されている上、可動域も広くないので正面に立たない限りそう当たらない。 機銃による連射が来た。
小口径ではあるがエネルギー弾なのでホロスコープの装甲ではすぐに貫通してしまう。
キマイラタイプが真上を通り過ぎる。 同時に振り返って銃身を切り離したアノマリーを連射。
敵機が回避行動に移った。 どうする? 想定は急上昇か旋回。 反応が早ければ変形して防ぐ?
可能性が高いのは急上昇。 ヨシナリは銃身を切り離しているので狙撃はないと判断するはずだ。
キマイラタイプは機首を上に向けての急上昇。 読み通り。
ヨシナリは極限まで集中してアノマリーを構える。 銃身を切り離しはしたがエネルギー弾なので命中精度は落ちているが射程にそこまで影響は出ない。 ゆっくり狙っている暇はないので当たりそうな場所へこれまでに得た感覚、練習と実戦の日々を信じて銃口を向けて発射。
狙いは機体の中心。 当たる――そんな手応えはあったが気のせいだったようだ。
それでも狙い自体は悪くなく。 キマイラタイプの羽根を射抜いた。
バランスを崩して錐揉みしながら墜落しかけるが変形して姿勢を安定させる。
相手もCランクプレイヤーだけあって上手い。 変形と同時に腕に内蔵されている機銃を連射。
変形から攻撃動作に入るまで無駄がほとんどない。 だが、あの無理な体勢ではまともに当たらないと判断し、無視して狙い撃つ。
足と肩に数発被弾したがヨシナリの放った一撃はキマイラタイプの胴体を捉え、綺麗に撃ち抜いた。
爆発。 レーダー表示から敵機の表示が完全に消失したのを確認してからヨシナリは全身の力を抜いた。
「よし」
予戦で掴んだ物は形になりつつあった。 ラーガスト、ユウヤ。
この二人の戦い方は固有のもので参考にするのは難しい。 そう思っていたが、彼等も最初はソルジャータイプからの蓄積の果てに今のスタイルを確立したのだ。 参考にできる部分が必ずあるはず。
そう判断してヨシナリは必死に見続けた。 そんな中、二人の挙動にある共通点を見つけたのだ。
攻撃への反応だ。 ふわわもそうだったが、敵の攻撃の対処、敵への攻撃へ入る際の動きが異様に早い。 反射でやっているのは何となく理解していたので真似は出来ないと少し思っていたが、そうでもなさそうだった。
実際、少し前に戦ったふわわ相手に似たような事が出来たからだ。
彼女の装備、機体、攻撃の傾向、挙動。 その全てを高い精度で理解していたからこそ最後の展開まで持ち込む事が出来た。 つまり感覚ではなく自身の持つ情報を用いて敵の行動を先読みするのだ。
初見の相手でも装備、挙動、攻撃の傾向は機体と戦闘を行えばある程度見えてくる。
恐らくだが、上位のプレイヤーは下位の機体を知り尽くしているからこそ機体の装備を見ただけである程度の攻撃を読んで回避や反応が可能なのだ。 それをあの次元で実行可能なのは紛れもなく化け物と言っていい。 それがハイランカー、このゲームの頂にいる者達。
分かってはいてもヨシナリに真似は難しいが、不可能ではない。
特にソルジャータイプとキマイラタイプに関してはどうにかなりそうだと思っていた。
ソルジャータイプは散々見て来たので装備や挙動に関してはよほどの色物でもない限り、知り尽くしているといっても過言ではない。 キマイラタイプは今回の話でカナタとその仲間がメインの想定敵だったので、かなり力を入れて研究したからだ。
付け加えるならもしも優勝したらフレームが手に入るので自分が使う時の事を考えての皮算用も含まれていた。 キマイラタイプは見れば見るほどいい機体だ。
可変による高機動、派生形のパンテラ、ループスなどの四つ足形態のフレームを選択すれば高い走破性を得られるので地形による移動の不便を大きく解消できる。 加えてジェネレーターもランクの高い物を搭載できるのでソルジャータイプとは出力も違う。 しかも値段は張るがサブのジェネレーターを搭載すれば継戦能力の強化と高速戦闘時のスタミナ切れも起こり辛い。
そもそものスペックが違うので変形せずに人型のままでもソルジャータイプ以上の動きができるだろう。 当然ながら欠点もある。
変形時には隙もできやすいし、戦闘機形態の時は速いが人型の時より小回りが利かなく、どうしても動きが直線的になってしまうので今回のように狙われやすくなる。
四つ足形態でも携行武器が持てないので攻撃の幅が狭い上、可変時に干渉しない装備が必要になる為、武器使用の幅が狭まる等々……。
ソルジャータイプと同じ感覚で使っていると思わぬ落とし穴があるだろう。
「まぁ、その辺は手に入ったらだな」
振り返ると同時に残りの敵機が全て撃破された事により試合終了がアナウンスされた。
「苦労して一機撃墜したのにその間に全滅かよ」
先はまだまだ長そうだ。
ヨシナリは意識を集中する。 キマイラタイプ――高機動の戦闘機形態はとにかく速いが、動きが直線的である事と携行火器が扱えない事もあって何が飛んでくるのかを見極める事が出来ればソルジャータイプでも攻撃は充分に躱せる。
内蔵火器は機銃かミサイル、金をかけているプレイヤーはレーザーを積んでいる可能性もあった。
裏を返せばそのどれかと考えれば動きは比較的、読み易い。
旋回性能に優れたエンジェルタイプだと純粋な性能差で圧倒されるので向かってきたのがキマイラタイプで本当に良かったと内心でほっと胸をなで下ろす。 スペックの差がある以上、それ以外の何かで戦力差を埋めなければならない。
射程に入った。 俺が逆の立場ならどうする?
敵は一機、敵味方の横槍はまだ気にしなくていい。
格下の獲物相手に真っ先に何をする?
――まずはミサイルで相手の出鼻を挫いて機銃かレーザーだろう。
ミサイルは飛んでこない。 このタイミングで使用しないなら恐らく積んでいないだろう。
ラーガストとユウヤには効果が期待できない以上、使うならヨシナリに対してだ。
加えて重量があるのでさっさと使い切ってしまえば機体を軽くできるので早々に切ってしまう方がいい手札のはず。 ここで使わないならまず積んでいないので、機銃かレーザーだ。
用途は牽制でない場合、レーザーなら回避方向の制限、機銃ならそのまま連射で追いかけまわしてくる。
敵機が攻撃の体勢に入った。 レーザーは格納式なので機銃で決まりだ。
移動の感じから射線もある程度読める。 敵の想定はヨシナリが後退しての引き撃ちを継続して行うと考えていると見ていい。
――なら、俺はその逆を突く。
これはヨシナリ自身の経験談だが、想定外の行動を取られると動揺で僅かに動きが乱れる。
格上相手ではこれは大きいと考えていた。 下がらずに前に出る。
機銃の攻撃軌道は直線。 ほぼ固定されている上、可動域も広くないので正面に立たない限りそう当たらない。 機銃による連射が来た。
小口径ではあるがエネルギー弾なのでホロスコープの装甲ではすぐに貫通してしまう。
キマイラタイプが真上を通り過ぎる。 同時に振り返って銃身を切り離したアノマリーを連射。
敵機が回避行動に移った。 どうする? 想定は急上昇か旋回。 反応が早ければ変形して防ぐ?
可能性が高いのは急上昇。 ヨシナリは銃身を切り離しているので狙撃はないと判断するはずだ。
キマイラタイプは機首を上に向けての急上昇。 読み通り。
ヨシナリは極限まで集中してアノマリーを構える。 銃身を切り離しはしたがエネルギー弾なので命中精度は落ちているが射程にそこまで影響は出ない。 ゆっくり狙っている暇はないので当たりそうな場所へこれまでに得た感覚、練習と実戦の日々を信じて銃口を向けて発射。
狙いは機体の中心。 当たる――そんな手応えはあったが気のせいだったようだ。
それでも狙い自体は悪くなく。 キマイラタイプの羽根を射抜いた。
バランスを崩して錐揉みしながら墜落しかけるが変形して姿勢を安定させる。
相手もCランクプレイヤーだけあって上手い。 変形と同時に腕に内蔵されている機銃を連射。
変形から攻撃動作に入るまで無駄がほとんどない。 だが、あの無理な体勢ではまともに当たらないと判断し、無視して狙い撃つ。
足と肩に数発被弾したがヨシナリの放った一撃はキマイラタイプの胴体を捉え、綺麗に撃ち抜いた。
爆発。 レーダー表示から敵機の表示が完全に消失したのを確認してからヨシナリは全身の力を抜いた。
「よし」
予戦で掴んだ物は形になりつつあった。 ラーガスト、ユウヤ。
この二人の戦い方は固有のもので参考にするのは難しい。 そう思っていたが、彼等も最初はソルジャータイプからの蓄積の果てに今のスタイルを確立したのだ。 参考にできる部分が必ずあるはず。
そう判断してヨシナリは必死に見続けた。 そんな中、二人の挙動にある共通点を見つけたのだ。
攻撃への反応だ。 ふわわもそうだったが、敵の攻撃の対処、敵への攻撃へ入る際の動きが異様に早い。 反射でやっているのは何となく理解していたので真似は出来ないと少し思っていたが、そうでもなさそうだった。
実際、少し前に戦ったふわわ相手に似たような事が出来たからだ。
彼女の装備、機体、攻撃の傾向、挙動。 その全てを高い精度で理解していたからこそ最後の展開まで持ち込む事が出来た。 つまり感覚ではなく自身の持つ情報を用いて敵の行動を先読みするのだ。
初見の相手でも装備、挙動、攻撃の傾向は機体と戦闘を行えばある程度見えてくる。
恐らくだが、上位のプレイヤーは下位の機体を知り尽くしているからこそ機体の装備を見ただけである程度の攻撃を読んで回避や反応が可能なのだ。 それをあの次元で実行可能なのは紛れもなく化け物と言っていい。 それがハイランカー、このゲームの頂にいる者達。
分かってはいてもヨシナリに真似は難しいが、不可能ではない。
特にソルジャータイプとキマイラタイプに関してはどうにかなりそうだと思っていた。
ソルジャータイプは散々見て来たので装備や挙動に関してはよほどの色物でもない限り、知り尽くしているといっても過言ではない。 キマイラタイプは今回の話でカナタとその仲間がメインの想定敵だったので、かなり力を入れて研究したからだ。
付け加えるならもしも優勝したらフレームが手に入るので自分が使う時の事を考えての皮算用も含まれていた。 キマイラタイプは見れば見るほどいい機体だ。
可変による高機動、派生形のパンテラ、ループスなどの四つ足形態のフレームを選択すれば高い走破性を得られるので地形による移動の不便を大きく解消できる。 加えてジェネレーターもランクの高い物を搭載できるのでソルジャータイプとは出力も違う。 しかも値段は張るがサブのジェネレーターを搭載すれば継戦能力の強化と高速戦闘時のスタミナ切れも起こり辛い。
そもそものスペックが違うので変形せずに人型のままでもソルジャータイプ以上の動きができるだろう。 当然ながら欠点もある。
変形時には隙もできやすいし、戦闘機形態の時は速いが人型の時より小回りが利かなく、どうしても動きが直線的になってしまうので今回のように狙われやすくなる。
四つ足形態でも携行武器が持てないので攻撃の幅が狭い上、可変時に干渉しない装備が必要になる為、武器使用の幅が狭まる等々……。
ソルジャータイプと同じ感覚で使っていると思わぬ落とし穴があるだろう。
「まぁ、その辺は手に入ったらだな」
振り返ると同時に残りの敵機が全て撃破された事により試合終了がアナウンスされた。
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