Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第118話

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 互いの戦い方をある程度知っているが故の警戒だったが、ユウヤはそこを逆手に取った。
 拮抗した状態で劣勢に立たされる。 どこまでが演出だったのかは不明だが、映像で見る限り不審な点は見当たらない戦いに見えた。

 追い込まれたユウヤを救うためにアルフレッドが援護に入る。
 それによって不確定な要素であったアルフレッドの存在と大雑把な位置を掴んだベリアルは奇襲への警戒を僅かに解く。 ユウヤにはそれで十分だったのだ。

 後は押し返した上で戦いながら自然な動きでヨシナリが当て易い位置に誘導。
 射線が通りやすい場所に来たところで狙撃。 ご丁寧にヨシナリが撃つのに合わせて攻撃モーションに入っていた。 目の前であれをやられるとベリアルはユウヤに集中せざるを得ない。
 
 結果、ほぼ無防備な状態でライフル弾を受ける事になったのだ。
 ヨシナリの銃弾は見事のコックピット部分を捉え、ベリアルは即死。
 Aランクプレイヤーを仕留めたという大金星を挙げた訳だが、撃つ前まで完璧にお膳立てされた身としては素直に喜べないが結果は結果だ。 

 「質問いいですか?」

 ヨシナリが小さく手を上げるとユウヤは小さく頷く。
 
 「ここ、射線に誘導する動きなんですが俺が撃つまで確認するような素振りを一切見せませんでしたが、位置関係を把握していたんですか?」
 「あぁ、埋めた所を見てたからな」

 ――マジかよ。

 割と位置関係を覚える事に関しては自信がある方だと自負していたが、あれだけの戦闘を繰り広げながら自分の現在地を把握し続けるなんて真似は可能なのか?
 ヨシナリは自分に同じ真似ができるかと考える。 格下が相手であるなら可能だろう。
 
 同格以上であるならとてもではないが真似できない。
 
 「お前がどの程度の腕なのか分からなかったからな。 まぁ、あれで外すようなら使えないゴミで終わりだ」
 「ははは」

 ――あ、危ねぇ……。

 笑って返したが、内心で外してたらヤバかったと内心でほっと胸を撫で下ろす。
 外したとしても勝敗には大きな影響はなかったと思う。 理由としてはユウヤの期待度からヨシナリが外したとしても隙はできるのでそこを突く形で戦い方を組み立てていたとみていい。

 当たったのでラッキー程度ではあるだろうが外していたら確実に評価は落ちていたはずだ。
 今、この瞬間、質問に答えているのもその辺が影響していると考えていた。
 恐らく外していたらまともに会話にすら応じてくれない可能性も高い。 そういった意味でも危ない戦いだった。 

 リアルの体は変な汗をかいているだろうなと思いながら次はラーガストの戦いに意識を向ける。

 ――何なんだよこれ……。
 
 エイコサテトラが凄まじい軌道を描いて敵を切り刻んでいる姿が映し出される。
 スピード特化の機体である事は理解しているがそれを差し引いても推力の持続時間がおかしい。
 飛びっぱなしで空中の敵を凄まじい勢いで駆逐している姿には凄まじさと同じぐらいの違和感があった。 さっきのベリアルを見れば分かるが、エネルギー系の武器を扱う場合はペース配分をしっかりしておかないと即座に息切れを起こす。 それがあったからこそあそこまであっさりと仕留められたのだ。

 ヨシナリの見ている先でエイコサテトラはラーガストの常識を軽々と無視してとんでもないスタミナを発揮して次々と敵を沈めていく。 Bランクのエンジェルタイプが成す術もなく纏めて瞬殺されている姿は何の冗談だと言いたくなる。 少なくとも何かしらの理由があるはずと目を凝らすと徐々にだがその正体が見えて来た。

 ――嘘だろ。

 エイコサテトラには六枚のエネルギーウイングが搭載されており、それを用いる事でトップスピードのまま直角に曲がるなんて意味不明の機動を可能としているのだが普通はまともに制御できるわけがない。
 ついでに推進力を維持する事も同様に不可能だ。 なら不可能を可能にしている手品の種はなんだ?

 答えは非常にシンプルでエイコサテトラの羽根は二枚しか動いておらず、残りの四枚は基本的に止まっている。 要は使っている二枚の推力が限界に来たら他の四枚の内、二枚と交代して使用しているのだ。
 三枚以上使用するのは方向転換の時のみ。 

 ――いや、無理だろ。

 羽が六枚あってもエネルギー源であるジェネレーターは一つなのだから。
 なら何故だと問われると答えは至極単純だ。 この機体、エイコサテトラはジェネレーターを複数詰んでいる。 恐らく羽一枚に付き一つ。 機体のメイン動力の他に最低でも三基以上のジェネレーターを搭載している。

 それがエイコサテトラの無尽蔵のスタミナ、途切れない加速の正体。
 外から見ても分からないのにあれだけの推進力を維持するほどの小型ジェネレーター。
 いったいいくらするんだ? Sランクの資金力ならではの機体構成にヨシナリは眩暈がしそうになった。

 付け加えるなら二枚しか使ってないという事はあれでトップスピードではなく三分の一という事だ。
 残りを使ったらどんな速さになるのか想像もできない。 
 いや、それ以前にそんな速度、人間に扱い切れるのか? ヨシナリには真のトップスピードを発揮したエイコサテトラの姿が上手く思い描けなかった。

 金にものを言わせただけのスペックだけであるならもう少し妬みの気持ちも沸いたが、エイコサテトラを扱ってみろと言われたら自分は使いこなせるか?と自問すれば答えは『No』だ。
 絶対に使いこなせない。 こうしてみると本当にこのゲームはプレイヤースキルがものを言う。

 凄まじい機体があっても扱える技量がなければ宝の持ち腐れ。
 逆もまた然りだ。 機体の馬鹿げた性能を確認したヨシナリは次にラーガストのプレイスタイルに注目した。 基本的に腕についている二本のブレードで一撃。

 大抵の相手はこれで終わる。 映像でも碌に反応できずにⅡ型が両断されて次々と撃墜されていた。
 キマイラタイプは飛行形態で振り切ろうとしていたが、エイコサテトラのスピードはそれすらも上回り情け容赦なく撃墜される。 エンジェルタイプは反応し、際どい所ではあるが回避に成功したプレイヤーも少ないがいた。 

 ――が、それだけだった。

 二度三度と繰り返される攻撃についていけずに早々に撃墜される。
 まともに食い下がれたのはAランクプレイヤーだけだ。 
 特に真っ赤な機体のAランクプレイヤーはあの動きにしっかりとついていけていた。
 
 ラーガストの動きを際どい所であるがしっかりと反応して捌くだけでなく反撃に繋げており、最後の足に付いたブレードによる奇襲は見事といえるほど綺麗な動きだったがラーガストは無慈悲にもあっさりと防いでそのまま返り討ち。 

 ――これ、どうすりゃ勝てるんだ?
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