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第117話

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 なんだこのバカげた金額は?
 一瞬、バグったのかとも思ったが、報酬額は撃破数プラス撃破した機体のランクで決まる。
 つまりヨシナリ以外の二人がそれだけの機体を撃破しているという事だ。

 これだけあったら色々買えると思うが報酬は頭割りの約束なので後で送金しておこう。
 報酬の確認が終わった所で次だ。 予戦突破の条件は生き残る事なので残っている時点で本戦への出場は決定した。 ヨシナリとしてはここまで来れただけで上等だが、ユウヤとの約束がある。

 本戦はチーム単位でのトーナメント。
 カナタのいる『栄光』と当たるかは運だが、ヨシナリとしてもツガルやセンドウには借りを返したいと思っているので当たるのは望むところだった。 ただ、この面子ではこれ以上、やれる事はない。

 本来であったのなら本戦に向けて連携強化や戦い方の方向性を話し合いたいところなのだが……。

 「あのー、一応なんですがウチの方針としては終わったら感想戦をやる事になっているんですがどうでしょう?」

 二人は顔を見合わせる。 

 「まぁ、いいんじゃないか?」
 「そうだな」

 意外な事にあっさりと同意したユウヤに問題ないと頷くラーガスト。
 やる事は決まったが、個々人で好き勝手に動いたので個別にどう動いていたかの確認以上の意味はないが、やらないよりはマシだと信じたいとヨシナリはリプレイ映像を再生した。
 
 基本的に個々で動いているのでチーム戦としての見どころはない。
 急造のチームという事と実力差がありすぎるので動きを見るという点ではあまり得る物はないが、ハイランカーの動きをじっくりと見るいい機会ではあった。 まずはユウヤ。

 アルフレッドとの連携を活かしての立ち回りかと思ったが、蓋を開けてみるとほぼ独力で戦い抜いていた。 ステルス機能を搭載しているアルフレッドは身を隠しつつ索敵に専念していたようだ。 それにより早い段階で近くに居る敵の数と装備構成を把握、戦い方を組み立ててから奇襲。 

 アルフレッドはそれなり以上に武装していたので積極的に戦うのかと思ったが、情報収集がメインで火力的な支援はベリアル戦で少し行った程度だった。

 改めてプルガトリオという機体の戦い方を観察する。 メインは大剣と変形させたハンマーでの接近戦。 振り回しやすい大剣で動きの悪い――地形に足を取られている機体を仕留め、ハンマーでは装甲を固めた防御に優れた機体を仕留める。 半端に離れた敵は腕に仕込んだ散弾砲で撃ち抜く。

 一粒弾スラッグで仕留められた敵は胴体を撃ち抜く事で即死。 射程は短いがとんでもない威力だ。 腕が妙に太いなと思っていたらどうも内部で弾丸を精製する機構を備えているらしく、何発もストックできないが、弾切れの心配がないのは羨ましい。
 撃ち出す前に弾を選んで散弾かそれ以外かを選んで発射している。 攻撃手段に幅ができるのもいい。 

 改めて俯瞰で見るとユウヤの動きは非常に秀逸だ。 敵の位置を把握した後の動き出しからポジショニングの流れは素晴らしい。 敵を狙いやすく、敵から狙われ難い位置は樹木を上手に障害物として利用している事で、延いては地形を正確に把握している事の証左でもある。

 標的を見る眼も素晴らしい。 仕留める流れに無駄がないのは襲撃から撃破までの絵が脳内で出来上がっており、それに沿って行動しているからだろう。
 その証拠にターゲットの選び方に迷いが一切ない。 射程の長い武器を持った者を優先的に狙い、自分の得意レンジで勝負できる相手は向かってきた場合に対処。 敵の行動もある程度、幅を持たせた上で想定しているのは見ていれば分かる。

 ――これを瞬時にやるのか……。

 自分がやる場合を想定するが、どうしても思考と組み立てに時間が必要になる。

 「基本的に遠距離で削ってくる相手は苦手ですか?」
 「あぁ、俺は近~中距離戦仕様だからな。 どうにもならなくはないが数が多い場合は散られると面倒だから見失う危険のある相手を優先するようにしてる」

 ヨシナリは分析の答え合わせをしながら更にユウヤの動きを観察する。
 改めて見るとこのプルガトリオと言う機体は不思議な構成だった。
 機体の総重量を考えるなら充分軽量に入る。 その割には携行武器は鉄の塊のような大剣。

 当初は格闘に寄ったふわわに近いタイプかとも思ったが、実際に見てみると似て非なるものと分かる。
 ふわわが手数で攻めるならユウヤは重たい一撃で敵を仕留める事を念頭に置いた動きだ。
 だからと言って大雑把かと聞かれるとそうでもない。 右手の散弾砲、そして左手には電磁鞭を仕込んでいる。 使用する際は空けなければならない関係で大剣を持ち代えなければならないのだが、どちらの腕で振るにしても動作のクオリティは落ちていない。 両利きという訳ではないのだろうが、器用に扱っているので見た目以上に繊細なプレイをしているというのがヨシナリの印象だ。

 凄すぎてあまり参考にならない動きだが、感覚的なものではなく考えた上での挙動なのは見て取れる。
 つまり部分的にではあるが真似はできるはずだ。 特に攻撃、行動の優先順位を決める為の判断は場数を踏んでこその物だろうが、自分なりに取り込む事は出来るはずだ。

 折角、最上位のプレイヤーが二人も一緒に戦ってくれているのだ。
 ほんの少しでもテクニックを盗んで俺の武器にしてやる。 そんな気持ちでユウヤの動きを観察し、気になる事があれば質問するといった事を繰り返す。 ユウヤはヨシナリの質問に対して特に不快感などを示さず素直に答えていた。 

 「ここ、反応できたのは何でですか?」
 「最初に来られたら嫌な場所を意識しておいたからだ」
 「あぁ、だからこっち側からの攻撃を受けないポジションを――」

 ユウヤの戦い方は地形を利用する事を念頭に置いている。 恐らく、単騎で大勢を相手にする事を前提としているからだろう。
 遮蔽物はあるか? あったとしてそれはどれぐらいの攻撃に耐えるのか?
 視界を遮るのに役に立つのか? 敵に利用された場合、どの程度邪魔になるのか?

 それらの情報と敵の位置をアルフレッドに集めさせ、脳内で組み合わせて戦いに利用している。
 アルフレッドは戦闘ではなく情報収集で援護などは緊急時などの必要に迫られた時か、安全に仕留められると確信したときのみと完全に割り切っている印象を受けた。 二対一で戦いを優勢に運ぶタイプだと思っていたが、まるで見当違いだ。 戦闘を効率よく進める為に使っているだけで、ユウヤをAランクプレイヤーの座まで押し上げたのは紛れもなく彼自身の実力である事が分かる。
 
 ただ、同格以上となるとそうも言っていられず積極的に攪乱に使用していたが、厄介な点は仮にいなくてもいると思わせる事で相手の意識を削げる点にあった。
 事実、最後に戦ったベリアルというプレイヤーは戦闘中、明らかに周囲を警戒している。
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