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第94話
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誰もが目の前の事に精一杯の戦いの中、ある変化が起こっていた。
最後のカウンターがゼロになったのだ。 それはこのイベントが始まってから十時間が経過した事を意味する。
――最初に起こったのは閃光だった。
一筋の光がウツボ型エネミーを射抜いたのだ。
頬の辺りから口腔内を何かが通り過ぎ、巨大な爆発が発生。
口から吐き出していたレーザー攻撃が停止する。 光はドローンを破壊しながらウツボ型エネミーの正面へと移動し――その動きを止めた。
薄緑のボディに背にはエンジェルタイプに使用されている物に似た小型のエネルギー式ウイングが六基。 四つは何故か停止しているが残りの二つは黄金の光を放っている。。
全体的にはすっきりとしたデザインだが、両腕に付いている盾のような物が目を引く。
「ラーガスト。 ラーガストが来た」
彼こそがこのサーバーで唯一のSランクプレイヤー。
プレイヤーネームは「ラーガスト」。 機体名は「エイコサテトラ」。
紛れもなくこのゲームの頂へと昇った一人。 このサーバーにおける最強のプレイヤーだ。
ウツボ型エネミーは損傷から立て直したのか全身から追加のドローンを吐き出しながら口を大きく開けるが、ラーガストはまるで意に介さない。
次の瞬間には機体が消失し、残されたのは移動の痕跡と思われる帯状の光のみ。
光はウツボ型エネミーの腹を突き抜けて破壊。 それが何度も繰り返される。
傍から見ればウツボ型エネミーは無数の光に射抜かれているようにしか見えないだろう。
「は、スゲ……」
見ていたプレイヤーの一人が呆然とそう呟く。
他のプレイヤー、Aランクの者でさえその凄まじい戦いぶりに呆然とするしかなかった。
それでも一部の者は我に返り攻撃に参加はしていたが、ラーガストというプレイヤーはたった一人で戦況を変えてしまったのだ。
――嘘だろ?
ヨシナリもその光を見て呆然と呟いた一人だった。
Sランクプレイヤー。 圧倒的な性能の機体にそれを十全に活かす事の出来るプレイヤースキル。
Aランク以上は当人に合わせたオーダーメイドの機体なのだ。 機体が強い事とプレイヤーの技量がイコールの世界。 つまりあの力は機体性能に頼り切ったものではない
スペシャルな機体を与えられたから強いのではなく強いからスペシャル機体を与えられる。
どんな反射神経をしていたらあの高速移動を制御できるのか。
ヨシナリにはさっぱり分からなかった。 Aランクも大概だったが、Sランクは更に次元が違う。
本当に自分と同じプレイヤーなのだろうか? とてもではないが信じられなかった。
圧倒的な火力を誇ったウツボ型エネミーがほぼ一方的にやられている。
これだけ強いのに何で前回、前々回は負けたんだよ言いたくなるほどの圧倒的な戦闘能力だ。
――これで終わりなのか?
タイマーは全てのプレイヤーが参戦した事で消えているが、残り時間の表示はそのままだ。
後二時間。 あのウツボ型エネミーを仕留めれば終わるのだろうか?
それとも時間いっぱいまで追加の化け物エネミーを送り込んで来るのだろうか?
どちらにせよウツボ型エネミーは撃破が見えているので、それが成れば結果は見えてくるだろう。
「いや、マジですげえな。 もうあいつ一人でいいんじゃないか?」
「……そうだな」
マルメルが碌に動かない機体を引きずるように動かして近くに寄ってきた。
「ふわわさんは?」
「反応はあるから脱落はしていないと思う」
「……どうするよ?」
「この状態で俺達にできる事ってあるか?」
マルメルは違いないなと小さく溜息を吐いた。
――損傷率八十パーセント突破。 戦闘継続は困難。
「Behemoth」はもう限界で撃破は時間の問題だった。
本来ならここで終わっても構わないが、時間があるのでもう少し楽しんでもいいだろう。
そう考えた「Behemoth」を操る存在はある申請を行った。
――コア・ユニットの使用申請。
返答は即座。 内容は一部機能を制限した上でなら許可するといったものだった。
ウツボ型エネミーがパーツを脱落させながら炎に包まれる。
終わったと誰もが思ったが、ただ一人ラーガストだけはその存在を捉えていた。
小さな何かがエネミーの内部から飛び出したからだ。
現れたのは一機のエネミー。 だが形状はトルーパーに近い。
バイザー型の頭部に下半身はフロートユニットのような形状。 両腕は接続されておらず肘の辺りから分離して浮遊している。
ラーガストの機体の腕に装着された盾から刃が飛び出す。
刃を出したと同時に攻撃に移るスムーズな動きはその速さと合わせて相手に気付かせずに貫くだろう。
――が、エネミーは最初から分かっていたかのよう急下降で回避。 お返しとばかりに浮遊している両腕が変形して拡散されたレーザー攻撃が飛び出す。
ラーガストは即座に攻撃範囲を見切ると離れるどころか肉薄。
貫こうと刃を振るうがエネミーはあっさりと回避。 完全に見えている動きだった。
戦闘は気が付けばラーガストが接近を試み、エネミーがそれをいなすといった図式が出来上がる。
他のプレイヤー達は一部は黙ってい見ていたが、そうはいかないと思った一部が援護に入った。
一機のキマイラタイプが戦闘機形態で機銃を連射しながら突っ込んで来る。
「いい加減にしぶといんだよ! さっさとくたばりやがれ!」
そう叫んだのはツガルだ。 すれ違い、背後を取ったと同時に変形。
そのまま一撃をと考えていたツガルの機体は真下から放たれたレーザー攻撃に貫かれていた。
何だと下を見るといつの間にかエネミーの腕が浮遊している。 恐らくツガルが制止する位置を予測して腕を配置しておいたのだ。
「そんなのアリかよ……」
爆散。 僅かに遅れて地上から狙撃が飛んでくるがエネミーはラーガストの攻撃を躱しながら腕の一本を本体と接続。 砲口に強い輝きが灯る。 間を置かずに発射。
高出力のレーザー攻撃はツガルの動きに同期して狙撃を行ったセンドウの機体を一撃で撃ち抜いた。
センドウは反応すらできずに機体諸共爆散。 撃破された。
「この!」
ツガルとセンドウをやられて頭に血が上ったカナタが大剣を真っすぐに突き出し突撃。
大振りでは躱されると判断しての突きだったが腕の一本がその軌道に割って入る。
砲身が花のように開き、エネルギー式のシールドを形成。
「そんなものフルパワーで!」
纏めて貫いてやると推力を最大。 彼女の機体は展開されたシールドを突破し本体を貫いたが、手ごたえがなかった。 エネミーの姿がブレる。
「立体映像!?」
何故といった疑問は振り返った先で明らかになった。
どうやら腕が発生させた映像のようだ。 シールドは防ぐ目的ではなく気付かれない為の目くらまし。
それに気づいたカナタだったが、反応が致命的に遅れた。 何故なら腕は砲に変形しており、既にエネルギーの充填も完了していたからだ。
最後のカウンターがゼロになったのだ。 それはこのイベントが始まってから十時間が経過した事を意味する。
――最初に起こったのは閃光だった。
一筋の光がウツボ型エネミーを射抜いたのだ。
頬の辺りから口腔内を何かが通り過ぎ、巨大な爆発が発生。
口から吐き出していたレーザー攻撃が停止する。 光はドローンを破壊しながらウツボ型エネミーの正面へと移動し――その動きを止めた。
薄緑のボディに背にはエンジェルタイプに使用されている物に似た小型のエネルギー式ウイングが六基。 四つは何故か停止しているが残りの二つは黄金の光を放っている。。
全体的にはすっきりとしたデザインだが、両腕に付いている盾のような物が目を引く。
「ラーガスト。 ラーガストが来た」
彼こそがこのサーバーで唯一のSランクプレイヤー。
プレイヤーネームは「ラーガスト」。 機体名は「エイコサテトラ」。
紛れもなくこのゲームの頂へと昇った一人。 このサーバーにおける最強のプレイヤーだ。
ウツボ型エネミーは損傷から立て直したのか全身から追加のドローンを吐き出しながら口を大きく開けるが、ラーガストはまるで意に介さない。
次の瞬間には機体が消失し、残されたのは移動の痕跡と思われる帯状の光のみ。
光はウツボ型エネミーの腹を突き抜けて破壊。 それが何度も繰り返される。
傍から見ればウツボ型エネミーは無数の光に射抜かれているようにしか見えないだろう。
「は、スゲ……」
見ていたプレイヤーの一人が呆然とそう呟く。
他のプレイヤー、Aランクの者でさえその凄まじい戦いぶりに呆然とするしかなかった。
それでも一部の者は我に返り攻撃に参加はしていたが、ラーガストというプレイヤーはたった一人で戦況を変えてしまったのだ。
――嘘だろ?
ヨシナリもその光を見て呆然と呟いた一人だった。
Sランクプレイヤー。 圧倒的な性能の機体にそれを十全に活かす事の出来るプレイヤースキル。
Aランク以上は当人に合わせたオーダーメイドの機体なのだ。 機体が強い事とプレイヤーの技量がイコールの世界。 つまりあの力は機体性能に頼り切ったものではない
スペシャルな機体を与えられたから強いのではなく強いからスペシャル機体を与えられる。
どんな反射神経をしていたらあの高速移動を制御できるのか。
ヨシナリにはさっぱり分からなかった。 Aランクも大概だったが、Sランクは更に次元が違う。
本当に自分と同じプレイヤーなのだろうか? とてもではないが信じられなかった。
圧倒的な火力を誇ったウツボ型エネミーがほぼ一方的にやられている。
これだけ強いのに何で前回、前々回は負けたんだよ言いたくなるほどの圧倒的な戦闘能力だ。
――これで終わりなのか?
タイマーは全てのプレイヤーが参戦した事で消えているが、残り時間の表示はそのままだ。
後二時間。 あのウツボ型エネミーを仕留めれば終わるのだろうか?
それとも時間いっぱいまで追加の化け物エネミーを送り込んで来るのだろうか?
どちらにせよウツボ型エネミーは撃破が見えているので、それが成れば結果は見えてくるだろう。
「いや、マジですげえな。 もうあいつ一人でいいんじゃないか?」
「……そうだな」
マルメルが碌に動かない機体を引きずるように動かして近くに寄ってきた。
「ふわわさんは?」
「反応はあるから脱落はしていないと思う」
「……どうするよ?」
「この状態で俺達にできる事ってあるか?」
マルメルは違いないなと小さく溜息を吐いた。
――損傷率八十パーセント突破。 戦闘継続は困難。
「Behemoth」はもう限界で撃破は時間の問題だった。
本来ならここで終わっても構わないが、時間があるのでもう少し楽しんでもいいだろう。
そう考えた「Behemoth」を操る存在はある申請を行った。
――コア・ユニットの使用申請。
返答は即座。 内容は一部機能を制限した上でなら許可するといったものだった。
ウツボ型エネミーがパーツを脱落させながら炎に包まれる。
終わったと誰もが思ったが、ただ一人ラーガストだけはその存在を捉えていた。
小さな何かがエネミーの内部から飛び出したからだ。
現れたのは一機のエネミー。 だが形状はトルーパーに近い。
バイザー型の頭部に下半身はフロートユニットのような形状。 両腕は接続されておらず肘の辺りから分離して浮遊している。
ラーガストの機体の腕に装着された盾から刃が飛び出す。
刃を出したと同時に攻撃に移るスムーズな動きはその速さと合わせて相手に気付かせずに貫くだろう。
――が、エネミーは最初から分かっていたかのよう急下降で回避。 お返しとばかりに浮遊している両腕が変形して拡散されたレーザー攻撃が飛び出す。
ラーガストは即座に攻撃範囲を見切ると離れるどころか肉薄。
貫こうと刃を振るうがエネミーはあっさりと回避。 完全に見えている動きだった。
戦闘は気が付けばラーガストが接近を試み、エネミーがそれをいなすといった図式が出来上がる。
他のプレイヤー達は一部は黙ってい見ていたが、そうはいかないと思った一部が援護に入った。
一機のキマイラタイプが戦闘機形態で機銃を連射しながら突っ込んで来る。
「いい加減にしぶといんだよ! さっさとくたばりやがれ!」
そう叫んだのはツガルだ。 すれ違い、背後を取ったと同時に変形。
そのまま一撃をと考えていたツガルの機体は真下から放たれたレーザー攻撃に貫かれていた。
何だと下を見るといつの間にかエネミーの腕が浮遊している。 恐らくツガルが制止する位置を予測して腕を配置しておいたのだ。
「そんなのアリかよ……」
爆散。 僅かに遅れて地上から狙撃が飛んでくるがエネミーはラーガストの攻撃を躱しながら腕の一本を本体と接続。 砲口に強い輝きが灯る。 間を置かずに発射。
高出力のレーザー攻撃はツガルの動きに同期して狙撃を行ったセンドウの機体を一撃で撃ち抜いた。
センドウは反応すらできずに機体諸共爆散。 撃破された。
「この!」
ツガルとセンドウをやられて頭に血が上ったカナタが大剣を真っすぐに突き出し突撃。
大振りでは躱されると判断しての突きだったが腕の一本がその軌道に割って入る。
砲身が花のように開き、エネルギー式のシールドを形成。
「そんなものフルパワーで!」
纏めて貫いてやると推力を最大。 彼女の機体は展開されたシールドを突破し本体を貫いたが、手ごたえがなかった。 エネミーの姿がブレる。
「立体映像!?」
何故といった疑問は振り返った先で明らかになった。
どうやら腕が発生させた映像のようだ。 シールドは防ぐ目的ではなく気付かれない為の目くらまし。
それに気づいたカナタだったが、反応が致命的に遅れた。 何故なら腕は砲に変形しており、既にエネルギーの充填も完了していたからだ。
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