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16.人に言えないかくしごと

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 いよいよ私も本当にパーティの仲間入り。
 私を含む聖女ご一行は、新たな目的地に向かうべく地道に徒歩で移動していた。
 道中モンスターが出たりもしたが、そこはフリードの魔法で一掃。さすが聖女の従者を自称するだけのことはある。

 当然、特殊能力皆無の一般人が退屈するのは時間の問題だった。

「そういえば、気になっていたんですけど」

 移動を始めて一時間くらい経った頃だろうか。
 私は前を歩くクロム様に退屈しのぎに声をかけた。
 先頭の男が一度だけ嫌そうにこちらを見たが、そこは気付かなかったことにする。

「なあに?」
「他にも仲間がいるって言ってましたよね」
「ええ」
「全然姿が見えないんですが、一体どこにいるんですか?」
「それは……」

 私の問いかけにクロム様は口ごもった。
 
「こうして正式に仲間になったんですし。ご挨拶くらいはしておきたいじゃないですか」
「そ、そうね。紹介しなくちゃね、フリード……」
「そうですね。紹介……しないといけませんね、クロム様」
「?」

 どうにも歯切れの悪い答えだ。
 そういえばこんな反応、前にも一度見た気がする。
 相手側に何か問題があるのかもしれない。

「もしかして、コミュニケーションが苦手な方だったりしますか?」

 それなら私も苦手なので気持ちは分かる。

「そうじゃない。そうじゃないの」

 クロム様は俯いて首を左右に振った。

「じゃあ表舞台に出れないタイプの人とか? 元犯罪者みたいな」

 訳ありの人間が縁あって仲間になるなんて、漫画ではよくある話だ。

「ば、馬鹿言うな。クロム様の仲間に、そんな問題のある奴がいるわけが……ない……だろ。です、よね?」
「えっ……ええ……問題…………ないわ」

 二人の口調は見ていて気の毒になるくらい弱々しかった。これ、絶対に何かあるな。

「それなら紹介をしてくだ……」
「あいにく!」

 私の言葉をかき消すようにフリードは声を張りあげた。

「……今、他の仲間は全員、前の街で休息を取っている」
「えっ」

 休息している仲間がいるのに次の目的地まで移動? この距離じゃ後から追いつくにしたって一苦労だぞ。

「いや、それって置き去りって言うんじゃ……」
「休息だ」
「置き去り」
「休息」
「……そうですか」

 有無を言わせない様子に、私は諦めて従うことにした。

『ふむふむ、仲間に会いたい。そんなご要望にお応えして小生がやってまいりましたよ』
「え、誰? 小生?」
「げ」

 げ? 今、げって言った?

『んふふ。置いてきぼりとか酷いですなぁ』
「シズクさん危ない!」

 クロム様の声が響く。手を引かれるのと同時に私は暗闇に飲み込まれた。

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