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5.過保護な男VS私

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「そういう事はしないでっていつも言ってるでしょ」

 キツく注意をする少女の声が辺りに響く。

「ちっ」

 どうやら少女には逆らえないらしい。 
 黒いローブの不審者は、やや不満げな面持ちで少女の叱責を受けていた。
 言いたいことはあるらしく、さっきからチラチラと不快感を感じているであろう彼と目が合う。

「何か言いたそうですよ?」
「なあに、言って?」
「僕は悪いことなんてしていません。僕はクロム様に変な虫が付かないようにしただけです」
「フリード!」

 結局、再び怒られる結果になった。

「あっ、こいつ」
「ん?」
「お前今、僕を馬鹿にしてただろ」
「し、してませんよ」

 よりにもよって、こっちに火の粉が降りかかるか。

「気のせいですって」

  私はニ、三歩後退した。
 この手の人種からはさっさと逃げるに限る。

「大体さ」
「な、なんですか」
 
 うわーこっちに来なくていいのに。
 彼はつかつかと威圧するようにこちらに歩いてくる。

「『生きてて良かったあ』なんて安心してるみたいだけど、お前馬鹿なのか?」
「……は?」

 馬鹿? 今こいつ、私のこと馬鹿呼ばわりした? どこが。

「だって、当たり前の話だろ、クロム様が生きているなんて。この僕が従者としている限り、クロム様が死ぬなど、万が一にもあり得ないんだよ」
「凄い自信ですね」

 自信満々。彼にとっては、彼女が生きてるのは当然の話らしい。
 でも私と一緒にいた時の彼女は間違いなく瓦礫の下敷きで超絶ピンチだったんですけどね。

「でも、死にそうになってましたよ」

 悔しかったので、私はぼそりと言ってやった。

「万が一にもあり得ないっていうなら、瓦礫の下敷きにさらすことだってあり得なかったんじゃないですかね」
「この女……」

 おうおう、やる気か。
 その構え、たぶんまた魔法を発動させようとしてるな。
 やれるものならやってみろ。一般市民だって、グーパンチくらいは出来るんだからな。
 いつでも準備は万全だ。

「はいはいはい、終了終了、そーこーまーでー」
「「!」」

 ぶんぶんと私達の目の前に細腕が割りこんでくる。
 声の主はもちろんクロム様だった。

「二人とも、どうしてすぐ争っちゃうのかしら?」
「……」
「……」

 それはこの男が悪いんですよ、たぶん。

「争いは悪い事ですよ?」

 間に入った少女は交互に私達の顔を見つめ、それからくるりとフリードと呼ばれる男の方へと体を向けた。

「まずフリード」
「はい」
「分かっているとは思うけど、彼女は私が助けたの。だからいい? 失礼な発言は無し。手出しも無用」
「……分かりました」

 あ、分かってないなこいつ。どうして自分が怒られるんだって顔してるよ。

「それとあなた」
「うわ。あ。は、はい」

 ずいっと彼女の青い瞳が私をとらえた。
 さっきから薄々分かってはいたものの、顔が整いすぎて、凡人の私には刺激が強い。こんなに近づいちゃ猶更。

「ちゃんと紹介してなかった私が悪かったわ。彼の名前はフリード。口は悪いけど、私が信頼を置く魔法使いよ」
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