125 / 154
125.味方はいても、やっぱり物理的に勝利したいよね
しおりを挟む――寂しくて、つい貴女のよく使っていた『偽装魔法』を使ってしまった。
「は??」
はああああああ?
待て待て待て待て、全っ然あっさりじゃないな!? めちゃくちゃ私に罪をなすりつけようとしてるな!? 大体、フェリクスお前、私がいなくなって寂しいなんて嘘つくんじゃねえよ!! 違うだろ! 寂しいんじゃなくて、主従関係を盾に使って私に対する非人道的実験の数々が出来なくて退屈だなとか、表現するならこっちだろ!!!
そもそも時系列だっておかしいでしょうに。その偽装魔法を使ったのって、誓約書を書く前だよね。私、出て行く前だよね!? 寂しさ関係なくない!?
「……そ」
「?」
「それ、は違う、と思い、ますよ?」
全ての怒りを乗り越えて、やっとのことで私はそう返した。一応腐ってもシュタイン先輩はあの家の執事だから暴言は控えた。私、頑張った、偉い。誰か優しく抱きしめてくれてもいいんですよ? そんなの無いって知ってるけど。そろそろさすがに泣くぞ。
「……おいシュタイン」
なあに、レイズ様。そんなの私に問題があるって、フェリクス様のこと擁護するの? 腐っても弟だもんね。
「さすがにその話はおかしいだろ」
「レイズ様……」
まさか味方になってくれるんですか。
「ええ、彼女の言い分は最もだと思いますよ」
シュタイン先輩まで。
二人ともどうしたの。えっもしかして遂に来た? この物語のざまぁな展開が。お赤飯炊いちゃう?
そんな私の熱い期待に、先輩は首を振って答えてくれた。
「しかし例の如くフェリクス様はああいう方なので、深い追求はなされず、今回は軽い警告で話が済まされました」
済まされたんかい! いやいや、済まされないでしょ。二人分の命がかかってるんだよ。それを軽い警告で、って。なんなのそのソフトな対応。やっぱりあれだろ、屋敷の人間、全員あのガキに洗脳されてるだろ。
「むしろお屋敷内では、『偽装魔法』を最初に使ったルセリナさんが悪という方向に」
ははは、やっぱりそうなったかー。よし、奴を消そう。
「レイズ様、頭の手、離してくださいよ」
勢いよく一歩踏み出した私の体は、見事に妨害された。
「どこ行くつもりだ」
「ちょっと昔の職場に忘れ物が」
「やめとけ」
「い、嫌ですー」
有給か? 有給を使えばいいのか?
レイズ様との無意味な攻防は続いた。
「ちなみに、アリスさんは必死に貴女を擁護していましたよ」
「えっアリスちゃんが!」
邪魔な片手を払いのけ、先輩の方に身を乗り出す。
アリスちゃんが私の擁護だって? 先輩たまには良い情報くれるじゃないか。
「さっすが私の見込んだ子ですね。よっヒロイン素質! お料理美味しい! 家事も万能! 可愛い!」
「言ってて悲しくならないのか」
「全然!」
しいて悲しいとすれば、私が女でアリスちゃんとは結婚出来ないことくらいかな。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。
克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる