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124.年下というだけで可愛がられるはずがない。
しおりを挟む「これがフェリクスに繋がってるんだな」
「そういう事です」
先輩がぱちんと指を弾くと、今度はその光が霧のように消えた。いいな、その魔法カッコいい。
「ちょっとそれ貸して下さい」
私は先輩から誓約書を拝借した。先輩の魔法効果が切れた誓約書は、こうして見るとやっぱりただの紙切れだ。
「ところで、どうしてフェリクス様が犯人って事前に分かってたんですか」
誓約書はここにあるのに。
先輩の魔法を使って犯人が判明するなら、そのタイミングは今じゃなきゃおかしい。
先輩は間髪入れずに答えた。
「誓約書は二枚あります」
「二枚?」
なんで二枚も。私がそんな疑問を投げかけるまでも無く、その答えはすぐさま提示された。
「一つはここに。そしてもう一つはハスター様のお屋敷に。誓約を結ぶ際の常識ですよね……って、もしかしてそちらもお忘れですか」
「お忘れですね」
「……」
わー、もう、そんな目で見つめられると困っちゃうなぁ、私のメンタル的に。人間的価値がぐんぐん下がっていくのを感じるぞぉ。
「記憶力以前の問題だろお前」
「さすがにすみません」
レイズ様からも本気のダメ出しをされた。
「とにかく。あの日の夜、貴女に会って『違和感』が間違いなく貴女では無いことを確認した私は、急ぎハスター様の元に戻り誓約書を確認しました」
ああ、だからあの日の夜、フェリクス様がどうとか言ってたのか。
「で、フェリクスの奴は認めたのか? 自分が犯人だって」
「それは……」
そうだ、奴の事だからあっさりとは認めなかったんだろう。こうまたあの手この手汚い手を使って周囲を混乱させたに違いない。
「認めました」
「へ? 認めた?」
あいつが? あのクソガキお坊ちゃま様が? ……そうか、相手はシュタイン先輩だもんね。私とはわけが違うか。だとしても、被害者が一人や二人出たに違いない。
「フェリクス様はあっさりと認めましたよ。自分が犯人だ、と」
「あっさり、認めた……?」
ちょっと何言ってるか分からないな。自らこんな魔法を仕掛けておいて、ばれたらあっさり罪を認める。そんなのらしくないじゃん、フェリクス様よ。
「先輩」
「なんでしょう」
「でも、でも何かあるでしょう? そのタイミングで屋敷に猛獣が解き放たれたとか、フェリクス様が十人に分身して追いかけっこが始まったとか、屋敷の皆さんが一斉に集団幻覚を見始めたとか」
奴の引き起こすトラブルがそんなぬるい終わり方をするわけがない。
「はっ! さてはシュタイン先輩、フェリクス様に洗脳されてますね?」
「されていません」
ばっさりと切り捨てられた。
「じゃあ、じゃあ……」
あとはなんだ、何がある?
「フェリクス様は正直に認めましたよ」
待って止めて、そんなわけな……
「ルセリナさん、貴女が居なくて寂しくて、つい貴女のよく使っていた『偽装魔法』を使ってしまったんだ、とね」
「は?」
「そういう事です」
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