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71.心の壁? 費用対効果で簡単に破壊しますよ

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 優雅な音楽が鳴り響く。
 さあて始まりましたダンス審査。なんて言っても緊張感なんて全くない、和気あいあいとした雰囲気だ。

「イヤリングを付けてっと、よし。じゃあ私達も行きましょうか」

 いざ戦場へ!

「あ、その前に一つ忠告が」
「?」

 せっかく意気込んだというのになんだろう。

「踊るのは俺限定でよろしく」

 なんだ、何かと思えばそんなことか。

「分かりました、お任せください!」

 というよりむしろそうじゃないと困る。
 例えアイテム補正があったとしても、見知らぬ誰かと踊るなんてそんな高等テク、私には持ち合わせていない。
 大丈夫。私は出来ないことは極力やらない女だ……ん?

「どうしました? 私何か変でした?」

 そんなニコニコして。

「いやいや、よかったなって思って。相変わらず業務的な対応だったらどうしようかと」
「あ」

 そうだ、すっかり忘れてた。
 別の事件に気を取られ過ぎて、ベルさん対策が完全に抜け落ちていた。警戒しなきゃいけないんだっけ。
 ご忠告いただいたシュタイン先輩、すみません。

「ワタシハ ベツニ」
「ああ、戻さないで! これから一緒に踊るんだし、壁は無い方がいいでしょ? ね?」

 ま、まあ、それは確かに。
 こういうのってチームワークが大切だっていうし。

「そうだな。冗談なしにお前はこいつに従った方がいい」

 レイズ様まで。

「魔法アイテムのおかげで余裕だとか思ってるかもしれないけどな、所詮それはアイテム。過信しない方がいい。使用者がある程度使いこなせることが前提だ」

 つまりいくら踊れるようになるとはいえ、初使用は若干厳しいと、そういう事か。

「その点ベルなら、お前が多少のボロを出しても上手くカバー出来るからな」
「お褒めに預かり光栄だよ」

 なるほど。そこまで言うなら、ここはベルさんに心を開いて完全お任せしよう。そして私は適当に……

「だからって適当に気を抜いてサボろうとか考えるなよ」
「!」

 見抜かれている……!?

「ふふふ、考えてることがお見通しなんて、二人は仲良しなのね」

 いや、全然。

「なんだか嫉妬しちゃうわ。ヒューベルさんもそう思わない?」
「確かにね」

 じゃあこの立場、お二人にお譲りしますよ。
 レイズ様はくだらないと思っているのか、その話には一切口を挟まなかった。

「マリア」
「はい」
「行くぞ」
「あら、怒っちゃったかしら」

 いつもあんなもんですよ。
 そうして二人は一足先に会場へと姿を消した。

「じゃあ今度こそ俺達も行こうか」
「よろしくお願いします」
「うん、こちらこそ」

 色々気になるところはあるけれど、レイズ様に比べたらベルさんは随分マシな部類なのかもしれない。

「ここの審査も通過して、花嫁に選ばれようね」

 うん、それは本当にごめん。
 シュタイン先輩との約束もあるからそれは出来ない。給料が人質なんでね。

 そろそろいい具合に脱落する方法も考えないとな。
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