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本編
ジャンドルは満たされる
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ちょっと後半トイレの話題が。すみません。
ーーーーーー⭐︎
「ね•••素敵なドレス!後ろに少し長くトレーンを引いているのね、優雅!」
「薄いベールを、長く纏っているみたいにひだを描いて広がっている所が、流れるようで美しいですわ!ねえ、センプリチェ様、楽しいわね、ドレスのデザインを皆で見るの!」
「え、ええ•••私は少し、その、ふくよかだったので、こんなスリムなドレスは着れませんでしたが、見れば憧れます•••!」
「私、こんな素敵なドレス、着るのかしら•••夢みたい。」
「「「着るのよ!!夢じゃないわ!!」」」
圧がすごい。
女性陣、マルグリット妃に、コリエの養母となるプリムヴェール夫人、嫁ぎ先の義母となるセンプリチェ、そしてコリエで、大画面の、『竜樹様の世界の結婚式あれこれ』資料に見入っている。男達は、少し距離を置いて眺める。いや、凄く参考になるのだけども、熱意、熱意の差。
3王子達も、ふぅわぁ~!と、繊細で豪華、それでいて清楚なドレス、と綺麗なモデルのお姉さんに、お口を開けて見入っている。
「すてきな、はなよめさん•••!」
「白いドレス、素敵だね!」
「竜樹の所でも、ベールするんだね。」
「魔除けの意味があるんだってー。こちらでも、似たような事なのかな。あと、結婚する2人の障壁だって。」
竜樹が、調べてあった意味を王子達に。ヘェ~、とウンウンするが、首も捻って。
「なんで結婚するのにしょうへき?」
「あー、なんでだろ。でもね、式の最中に、誓いの口付け、って言って、ベールを掻き分け、持ち上げて、チュ!ってキスするんだよ。だから、障壁を乗り越えて、って事かな?」
キャ~!
ニリヤがお目目に両手を当てて、嬉しそうに照れる。ムフ、とネクターは口に手をやり、オランネージュは、ふんふん、とニンマリした。
竜樹は、その様子に、ワハハと笑う。
キャ~!
と女性陣も黄色い声である。
ポポ!とコリエは頬を赤らめ、既婚者の夫人達は頬に手を当てて少女のように、瞳キラキラ。
少し歳のいった少女達にも、誓いの口付けは、ロマンチック!なのである•••!センプリチェは、少し、はしたないかな、って気もしたけれど、この、女友達と学生時代にキャアキャア憧れの殿方について話をしているような、そんな穏やかで賑やかな空気感に、彼女もかつては乙女、乙女心に抵抗する術はなかった。
資料は動画になり、儀式の一通りと、ライスシャワーや、ブーケトス、それから結婚プランナーのお仕事動画まで流れた。お仕事動画は、結婚式を裏側から支える、その様子がよく分かって、とても参考になる。男性陣も、ふむふむ、と色々な業務に納得しながら視聴し、動画は披露宴に移る。
あれだ、お仕事ドラマとかもウケるのかもな。そういうジャンルこちらにあるのかな。竜樹は意識を逸らせつつも、披露宴についての説明を、所々で差し挟む。
「ぼくも、すてきなおよめさんが、ほしいな•••。ドレス、しろいのきてもらう。エスコート、する。」
ニリヤは指をもじもじ組み合わせ、頬をポッポ、ウフフとしている。
「大人になったらね、ニリヤ。」
収まりの良い頭、細い茶色の髪を撫で撫でしてやる竜樹である。大分、艶々になったよなあ。と、かつてのニリヤと比べて嬉しい竜樹だ。髪の毛、栄養がかなり顕に現れるのである。
「きっと素敵なお嬢さんが、お嫁さんにいらっしゃいますわ、ニリヤ殿下。大人になるのが、楽しみですわね!」
プリムヴェール夫人が、慈しみの笑顔でニリヤに。将来の、まだ幼き夢を大事にしてくれる。
「大人でも、マルサ叔父様は結婚してないけど、どうして?」
サラリと銀髪、首を傾げるのは可愛いけれども。
ネクター!それは言ってはいけないデリケートな問題なんだよ!
「王子達、私はまだ職務に邁進しておりますゆえに。ね、ご夫人たち。」
パチン⭐︎とウインクをして、ネクターに嫌な顔をしない、素敵なマルサ叔父様なのである。
「あらあら、でもそろそろマルサも、ねえ。」
「ほど良き、心を向けるお嬢さんが、いらっしゃったりはしないの?マルサ王弟殿下。もしなら私たち夫人の集まりで、候補を出しましてよ?」
プリムヴェール夫人は優雅にほほほと笑う。
ニコニコしたマルサは、ふふふ、と笑い返して。
「私はもう少し、自分が大人になるまで待ちたいですかね。竜樹とかを見てると、俺って、大分子供だなぁと思ったりするので。」
「あらまあ、そんな事はないと思うけれど。自分ではそんな感じなの?」
マルグリット妃の問いに、ええ、とマルサは頷き。
「仕事以外あまり責任はないし、やりたい身体を動かす仕事をしているし。何となく、大人の男って、もっと人の為に動いている気がします。妻になる人にも、俺の未熟さで、迷惑をかけたくないなあ。竜樹みたいにオムツ変えられないし、夜は一度寝たら、仕事で緊張してる任務の時以外は、起きられなくて、夜泣きも付き合ってあげられなそうだし。」
もっと歳をとってからで、良いかな。
あらあら、と意外なマルサの考えを聞いて、夫人方は気を入れて話し始める。
「子供の事を考えてらっしゃるのね。竜樹様ほど面倒を見て下さる方は、男性ではなかなかないから、心配されなくても大丈夫ですよ?乳母などもいるし。」
「ねえ。手伝ってもらえば、意外と何とかなるものよ?」
「子供、可愛いから、生まれてしまえば構いたくなりますわ。」
「いや、竜樹が子供達と仲良くて羨ましいから、面倒を見てあげたい気持ちが、あるんです。出来なかったら子供が可哀想だし。でも、俺も子供可愛いなって思うし。」
もうちょっと大人の男として落ち着いたら、歳をとったら、出来るようにならないかなぁ、って。
マルサは、イクメンになりたいのだ•••!
マルサの花嫁問題で話題がズレそうになったが、披露宴と2次会の動画で話が戻って、ブライダル事業について、マルグリット妃が。
「さて、資料を軽く見て貰ったけれど、こんな感じで、竜樹様の世界のやり方を取り入れた、本当に2人が挙げたい結婚式、のブライダル事業を、セードゥル侯爵家アルグ、プリムヴェール夫人と、ベルジェ伯爵家フィアーバ、センプリチェ夫人に新しくやっていただきたいの。仲の良い夫婦が増えれば、この国も益々良くなると思うわ。概要は、分かってくれたかしら?コリエは、結婚した後、その経験を活かして、結婚プランナーとして活躍したいのですって。市井の事にも精通しているから、貴族の結婚式だけでなく、商家などのちょっと余裕がある者達の式も手掛けられるわ。部門を分けても良いわね。でもまず、その為には!」
カッ!と目をかっぴらいてのマルグリット妃が、とん!とテーブルを叩く。
「コリエとジャンドルの、素敵な結婚式を!誰もが憧れるような、祝福された素敵な式を挙げる事が、重要なのです!」
観念。
その一言に尽きる。
ジャンドルよ。こうまでして念を押さなくても、コリエとの結婚、ちゃんとお祝いしてあげたんだよ。私たち、確かに貴族的な面倒ごとは嫌いだけれど、息子の幸せを祈らない訳はない。まあ、その、ちょっとごねたかもしれないけど。
フィアーバとセンプリチェは、粛々と頷き。
「勿論、そのように努力致します。そして、おめでとう、ジャンドル。」
「おめでとう、ジャンドル、コリエさん。良いお嫁さんが来てくれて、私も嬉しいわ。本当なら、もっと早くに来てくれるのだったんだものね。」
と、真面目な、思慮深い顔で告げた。
勝った•••!
ジャンドルは、既にやり切った感でいっぱいだったが、両親から素直なお祝いの言葉を貰えた事が、思ったよりもずっと、ずっと、嬉しかった。言わせたのだけど、それだけじゃない。2人の息子への、純粋なお祝いの意思を感じたからである。
事後承諾が多くてやり通すジャンドルだけれど、やっぱり普通に、認めてもらえるのは、とても嬉しい事だ。
コリエも、ジャンドルの顔を一度見て、そして義両親に、ありがとうございます、と嬉しそうにしている。ジャンドルが両親と、縁を切るような形でなくて、本当に良かったと、胸を撫で下ろし。
ニッコリ!と笑顔のマルグリット妃は、一件落着、そしてこれからが大変!ほほほと笑った。
セードゥル侯爵家アルグも、歳はとっても精悍な顔つきで笑って。バヴァールにこれで恩が返せる、お弁当を食べながら書類を待って貰ったあの後も、何かと書類の相談にのってくれて、代替わりしたばかりの婿の私はどんなに助かった事か。それに我が家にとっても、とても喜ばしい、事業も、娘が出来る事も。妻は本当に娘が欲しかったのだから、と。
それを、ニコニコして聞いて、ウンウンと頷くプリムヴェール夫人も、少しだけ皺はあるけれど、まだまだ瑞々しい肌を上気させて、本当に嬉しそうにしている。
3王子も、ごけっこん!とか、ウフフ、なんて笑って、皆が嬉しそうなのが、子供ってとっても嬉しいものなのだ。
竜樹だって、策略めいたけれど、満点に認められて、こんなに嬉しい事はなかった。
お茶のお代わりを所望し、マルグリット妃が侍女を呼ぶと、侍女は、王妃様、少しよろしいですか?とひそそ、と耳打ちした。
マルグリット妃は竜樹を、ハッと見て。
「竜樹様。寮のエルフが、テレビ電話を繋ぎたいみたい。エルフ達も遠慮して、ここが王宮だから、近くの侍女にまずは繋いで、確認してくれたのね。こちらに繋ぐようにしてもらって、良いかしら。緊急なんですもの、寮で何か、あったのかしらね?」
何だろ?と竜樹も。
「はい、繋げてもらって下さい。何でしょうね?」
侍女さんが、ささっと退出すれば、間も無くブインと音がして、寮からのテレビ電話が繋がった。
「竜樹様ぁ!大変です!」
エルフのお世話人お兄さん、ベルジュが焦っている。
子供達がわらわらとそれにまとわりつき、わあわあと、プランが、プランが、と言っている。
「どうした皆、プランが怪我でも!?」
真剣な竜樹に、エッと3王子も驚いて。
「プランが、真っ赤なうんちをしたんです!血便です!大きなうんちが出たから、ちょっと切れた、くらいじゃないんです!何か病気では•••!?本人は、見た感じも聞いても、どこも具合が悪そうではないんですけど、衝撃だったみたいで、項垂れてます!」
エルフのお世話人、マレお姉さんが、お膝にプランを縋り付かせて、背中を心配そうに撫でてやっている。ラフィネも側にしゃがんで、心配気に肩を撫でる。
プランはしおしおにしおたれて、何だかぐったりした様子だ。
竜樹はバッと立ち上がって、マルグリット妃に慌てて。
「マルグリット妃様、俺は寮に帰っても構いませんか!大体のお話はできたと思います!後は皆さんで!」
「ええ!急いで帰ってあげて!くれぐれも、お大事にね!!」
「プラン!ぼくもりょういく!」
「私も!」
「私も行く!」
3王子が、ガタガタん!と慌てて立って、竜樹の側に来る。
「では転移で送ります!竜樹様、王子様達、一旦私がそちらに転移しますから、そうしたら皆で手を繋いで、なるべく近くに寄って下さい!」
「頼む、ベルジュ!」
シュワワ!と転移で帰ってきた寮で。
「プラン!!」
「竜樹とーさ•••。」
プランは涙目で、竜樹を見上げる。抱きついていたマレお姉さんから、竜樹の胸に飛び込んできた。
「俺びょうき?死ぬの?•••しにたくない、びょうきいやだよ•••!!!」
「大丈夫だプラン、今お医者に連れて行ってやるからな。大丈夫だよ。」
ギュッと抱きしめて、くたりとした身体を労ってやる。こんな小さな身体で、まさか、病気だなんて。
何はともあれお医者だ、と、うんちを見たベルジュお兄さんと、流さないであるというトイレを竜樹も見ようと。
「おかしいですわね。何か、特別なものを食べた訳でもないのに。こちらの子供達は、皆同じものを、食べてますもの。•••うんちを見たところ、ルージュの実でも食べたような赤なんですけれどもねえ。」
キャキャ、と雰囲気がまだ読めないツバメをヨイヨイした侍女、シャンテさんが、子育て経験者の頼り甲斐のあるシャンテさんが、思わしげに、ポツリと。
「あ。」
プランが、思い出した、というように。
ラフィネも、ベルジュお兄さんも、マレお姉さんも、あ!あ!あ!という顔で、プランを見た。
ぽりぽり、と頭を掻くプランは、何だか言い出しにくそうにモジモジしている。
え、えええー!?
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「ね•••素敵なドレス!後ろに少し長くトレーンを引いているのね、優雅!」
「薄いベールを、長く纏っているみたいにひだを描いて広がっている所が、流れるようで美しいですわ!ねえ、センプリチェ様、楽しいわね、ドレスのデザインを皆で見るの!」
「え、ええ•••私は少し、その、ふくよかだったので、こんなスリムなドレスは着れませんでしたが、見れば憧れます•••!」
「私、こんな素敵なドレス、着るのかしら•••夢みたい。」
「「「着るのよ!!夢じゃないわ!!」」」
圧がすごい。
女性陣、マルグリット妃に、コリエの養母となるプリムヴェール夫人、嫁ぎ先の義母となるセンプリチェ、そしてコリエで、大画面の、『竜樹様の世界の結婚式あれこれ』資料に見入っている。男達は、少し距離を置いて眺める。いや、凄く参考になるのだけども、熱意、熱意の差。
3王子達も、ふぅわぁ~!と、繊細で豪華、それでいて清楚なドレス、と綺麗なモデルのお姉さんに、お口を開けて見入っている。
「すてきな、はなよめさん•••!」
「白いドレス、素敵だね!」
「竜樹の所でも、ベールするんだね。」
「魔除けの意味があるんだってー。こちらでも、似たような事なのかな。あと、結婚する2人の障壁だって。」
竜樹が、調べてあった意味を王子達に。ヘェ~、とウンウンするが、首も捻って。
「なんで結婚するのにしょうへき?」
「あー、なんでだろ。でもね、式の最中に、誓いの口付け、って言って、ベールを掻き分け、持ち上げて、チュ!ってキスするんだよ。だから、障壁を乗り越えて、って事かな?」
キャ~!
ニリヤがお目目に両手を当てて、嬉しそうに照れる。ムフ、とネクターは口に手をやり、オランネージュは、ふんふん、とニンマリした。
竜樹は、その様子に、ワハハと笑う。
キャ~!
と女性陣も黄色い声である。
ポポ!とコリエは頬を赤らめ、既婚者の夫人達は頬に手を当てて少女のように、瞳キラキラ。
少し歳のいった少女達にも、誓いの口付けは、ロマンチック!なのである•••!センプリチェは、少し、はしたないかな、って気もしたけれど、この、女友達と学生時代にキャアキャア憧れの殿方について話をしているような、そんな穏やかで賑やかな空気感に、彼女もかつては乙女、乙女心に抵抗する術はなかった。
資料は動画になり、儀式の一通りと、ライスシャワーや、ブーケトス、それから結婚プランナーのお仕事動画まで流れた。お仕事動画は、結婚式を裏側から支える、その様子がよく分かって、とても参考になる。男性陣も、ふむふむ、と色々な業務に納得しながら視聴し、動画は披露宴に移る。
あれだ、お仕事ドラマとかもウケるのかもな。そういうジャンルこちらにあるのかな。竜樹は意識を逸らせつつも、披露宴についての説明を、所々で差し挟む。
「ぼくも、すてきなおよめさんが、ほしいな•••。ドレス、しろいのきてもらう。エスコート、する。」
ニリヤは指をもじもじ組み合わせ、頬をポッポ、ウフフとしている。
「大人になったらね、ニリヤ。」
収まりの良い頭、細い茶色の髪を撫で撫でしてやる竜樹である。大分、艶々になったよなあ。と、かつてのニリヤと比べて嬉しい竜樹だ。髪の毛、栄養がかなり顕に現れるのである。
「きっと素敵なお嬢さんが、お嫁さんにいらっしゃいますわ、ニリヤ殿下。大人になるのが、楽しみですわね!」
プリムヴェール夫人が、慈しみの笑顔でニリヤに。将来の、まだ幼き夢を大事にしてくれる。
「大人でも、マルサ叔父様は結婚してないけど、どうして?」
サラリと銀髪、首を傾げるのは可愛いけれども。
ネクター!それは言ってはいけないデリケートな問題なんだよ!
「王子達、私はまだ職務に邁進しておりますゆえに。ね、ご夫人たち。」
パチン⭐︎とウインクをして、ネクターに嫌な顔をしない、素敵なマルサ叔父様なのである。
「あらあら、でもそろそろマルサも、ねえ。」
「ほど良き、心を向けるお嬢さんが、いらっしゃったりはしないの?マルサ王弟殿下。もしなら私たち夫人の集まりで、候補を出しましてよ?」
プリムヴェール夫人は優雅にほほほと笑う。
ニコニコしたマルサは、ふふふ、と笑い返して。
「私はもう少し、自分が大人になるまで待ちたいですかね。竜樹とかを見てると、俺って、大分子供だなぁと思ったりするので。」
「あらまあ、そんな事はないと思うけれど。自分ではそんな感じなの?」
マルグリット妃の問いに、ええ、とマルサは頷き。
「仕事以外あまり責任はないし、やりたい身体を動かす仕事をしているし。何となく、大人の男って、もっと人の為に動いている気がします。妻になる人にも、俺の未熟さで、迷惑をかけたくないなあ。竜樹みたいにオムツ変えられないし、夜は一度寝たら、仕事で緊張してる任務の時以外は、起きられなくて、夜泣きも付き合ってあげられなそうだし。」
もっと歳をとってからで、良いかな。
あらあら、と意外なマルサの考えを聞いて、夫人方は気を入れて話し始める。
「子供の事を考えてらっしゃるのね。竜樹様ほど面倒を見て下さる方は、男性ではなかなかないから、心配されなくても大丈夫ですよ?乳母などもいるし。」
「ねえ。手伝ってもらえば、意外と何とかなるものよ?」
「子供、可愛いから、生まれてしまえば構いたくなりますわ。」
「いや、竜樹が子供達と仲良くて羨ましいから、面倒を見てあげたい気持ちが、あるんです。出来なかったら子供が可哀想だし。でも、俺も子供可愛いなって思うし。」
もうちょっと大人の男として落ち着いたら、歳をとったら、出来るようにならないかなぁ、って。
マルサは、イクメンになりたいのだ•••!
マルサの花嫁問題で話題がズレそうになったが、披露宴と2次会の動画で話が戻って、ブライダル事業について、マルグリット妃が。
「さて、資料を軽く見て貰ったけれど、こんな感じで、竜樹様の世界のやり方を取り入れた、本当に2人が挙げたい結婚式、のブライダル事業を、セードゥル侯爵家アルグ、プリムヴェール夫人と、ベルジェ伯爵家フィアーバ、センプリチェ夫人に新しくやっていただきたいの。仲の良い夫婦が増えれば、この国も益々良くなると思うわ。概要は、分かってくれたかしら?コリエは、結婚した後、その経験を活かして、結婚プランナーとして活躍したいのですって。市井の事にも精通しているから、貴族の結婚式だけでなく、商家などのちょっと余裕がある者達の式も手掛けられるわ。部門を分けても良いわね。でもまず、その為には!」
カッ!と目をかっぴらいてのマルグリット妃が、とん!とテーブルを叩く。
「コリエとジャンドルの、素敵な結婚式を!誰もが憧れるような、祝福された素敵な式を挙げる事が、重要なのです!」
観念。
その一言に尽きる。
ジャンドルよ。こうまでして念を押さなくても、コリエとの結婚、ちゃんとお祝いしてあげたんだよ。私たち、確かに貴族的な面倒ごとは嫌いだけれど、息子の幸せを祈らない訳はない。まあ、その、ちょっとごねたかもしれないけど。
フィアーバとセンプリチェは、粛々と頷き。
「勿論、そのように努力致します。そして、おめでとう、ジャンドル。」
「おめでとう、ジャンドル、コリエさん。良いお嫁さんが来てくれて、私も嬉しいわ。本当なら、もっと早くに来てくれるのだったんだものね。」
と、真面目な、思慮深い顔で告げた。
勝った•••!
ジャンドルは、既にやり切った感でいっぱいだったが、両親から素直なお祝いの言葉を貰えた事が、思ったよりもずっと、ずっと、嬉しかった。言わせたのだけど、それだけじゃない。2人の息子への、純粋なお祝いの意思を感じたからである。
事後承諾が多くてやり通すジャンドルだけれど、やっぱり普通に、認めてもらえるのは、とても嬉しい事だ。
コリエも、ジャンドルの顔を一度見て、そして義両親に、ありがとうございます、と嬉しそうにしている。ジャンドルが両親と、縁を切るような形でなくて、本当に良かったと、胸を撫で下ろし。
ニッコリ!と笑顔のマルグリット妃は、一件落着、そしてこれからが大変!ほほほと笑った。
セードゥル侯爵家アルグも、歳はとっても精悍な顔つきで笑って。バヴァールにこれで恩が返せる、お弁当を食べながら書類を待って貰ったあの後も、何かと書類の相談にのってくれて、代替わりしたばかりの婿の私はどんなに助かった事か。それに我が家にとっても、とても喜ばしい、事業も、娘が出来る事も。妻は本当に娘が欲しかったのだから、と。
それを、ニコニコして聞いて、ウンウンと頷くプリムヴェール夫人も、少しだけ皺はあるけれど、まだまだ瑞々しい肌を上気させて、本当に嬉しそうにしている。
3王子も、ごけっこん!とか、ウフフ、なんて笑って、皆が嬉しそうなのが、子供ってとっても嬉しいものなのだ。
竜樹だって、策略めいたけれど、満点に認められて、こんなに嬉しい事はなかった。
お茶のお代わりを所望し、マルグリット妃が侍女を呼ぶと、侍女は、王妃様、少しよろしいですか?とひそそ、と耳打ちした。
マルグリット妃は竜樹を、ハッと見て。
「竜樹様。寮のエルフが、テレビ電話を繋ぎたいみたい。エルフ達も遠慮して、ここが王宮だから、近くの侍女にまずは繋いで、確認してくれたのね。こちらに繋ぐようにしてもらって、良いかしら。緊急なんですもの、寮で何か、あったのかしらね?」
何だろ?と竜樹も。
「はい、繋げてもらって下さい。何でしょうね?」
侍女さんが、ささっと退出すれば、間も無くブインと音がして、寮からのテレビ電話が繋がった。
「竜樹様ぁ!大変です!」
エルフのお世話人お兄さん、ベルジュが焦っている。
子供達がわらわらとそれにまとわりつき、わあわあと、プランが、プランが、と言っている。
「どうした皆、プランが怪我でも!?」
真剣な竜樹に、エッと3王子も驚いて。
「プランが、真っ赤なうんちをしたんです!血便です!大きなうんちが出たから、ちょっと切れた、くらいじゃないんです!何か病気では•••!?本人は、見た感じも聞いても、どこも具合が悪そうではないんですけど、衝撃だったみたいで、項垂れてます!」
エルフのお世話人、マレお姉さんが、お膝にプランを縋り付かせて、背中を心配そうに撫でてやっている。ラフィネも側にしゃがんで、心配気に肩を撫でる。
プランはしおしおにしおたれて、何だかぐったりした様子だ。
竜樹はバッと立ち上がって、マルグリット妃に慌てて。
「マルグリット妃様、俺は寮に帰っても構いませんか!大体のお話はできたと思います!後は皆さんで!」
「ええ!急いで帰ってあげて!くれぐれも、お大事にね!!」
「プラン!ぼくもりょういく!」
「私も!」
「私も行く!」
3王子が、ガタガタん!と慌てて立って、竜樹の側に来る。
「では転移で送ります!竜樹様、王子様達、一旦私がそちらに転移しますから、そうしたら皆で手を繋いで、なるべく近くに寄って下さい!」
「頼む、ベルジュ!」
シュワワ!と転移で帰ってきた寮で。
「プラン!!」
「竜樹とーさ•••。」
プランは涙目で、竜樹を見上げる。抱きついていたマレお姉さんから、竜樹の胸に飛び込んできた。
「俺びょうき?死ぬの?•••しにたくない、びょうきいやだよ•••!!!」
「大丈夫だプラン、今お医者に連れて行ってやるからな。大丈夫だよ。」
ギュッと抱きしめて、くたりとした身体を労ってやる。こんな小さな身体で、まさか、病気だなんて。
何はともあれお医者だ、と、うんちを見たベルジュお兄さんと、流さないであるというトイレを竜樹も見ようと。
「おかしいですわね。何か、特別なものを食べた訳でもないのに。こちらの子供達は、皆同じものを、食べてますもの。•••うんちを見たところ、ルージュの実でも食べたような赤なんですけれどもねえ。」
キャキャ、と雰囲気がまだ読めないツバメをヨイヨイした侍女、シャンテさんが、子育て経験者の頼り甲斐のあるシャンテさんが、思わしげに、ポツリと。
「あ。」
プランが、思い出した、というように。
ラフィネも、ベルジュお兄さんも、マレお姉さんも、あ!あ!あ!という顔で、プランを見た。
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え、えええー!?
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