308 / 533
本編
16日夕刻 おぼんの終わり
しおりを挟む
お披露目広場は、もう一番星も出る天を上に、ざわざわと人々が集まりきって、しばらく。
ランタンが地上の星、瞬くその中を、ポッと魔道具ライトの光が増える。作った一段高い舞台に、ピアノとバラン王兄が照らされて逆光、シルエットで浮かびあがる。
ハルサ王が、スッと、バラン王兄の前に歩み出て、両腕を上に挙げ。
『初めてのおぼん、あらゆる生きとし生けるもののみ魂よ。
束の間、この世に来て、縁ある者を見守ってくださり、私たちは感謝しています。
どうか、かの地に戻り、心やすく過ごされて、来年もまた、おぼんに来てくださいますよう。
そして、また生まれ変わるその時に、再び良き出会いを致しましょう。』
スーッと息を吐ききり、吸って。
『私たちこの世に生きる者は、それぞれ懸命に生き、再会をお待ちしています。一時のお別れのしるしに、歌を捧げます。』
スッと手を下げて、ハルサ王が舞台を去る。
ポロリン♪
ピアノが一音。
バラン王兄の、低く甘い声が響く。
生まれてきたの 貴方に会いに
育ってゆくの 貴方と共に
春 花咲く 愛されたくて
貴方と出会って 私は変わる
生まれてくるの 2人の絆
愛しているの 小さな貴方
夏 大空に こころ ひらく
貴方と出会って 私は変わる
秋 実る 私と貴方と貴方達
冬 託す そしてさよなら
私と出会って 貴方は変わる
沢山の手を取り 引いて 引かれて
空の彼方に 放り上げられるまで
楽しく 一緒に 暮らしましょう
一時はかけら そして永遠
巡る輪が交差する
その一時 一時のために
生まれてきたと いつか知る
またここで 会いましょう
私で貴方が 変わるよう
貴方で私が 変わるよう
ポロリン♪
柔らかく、ロマンチックに、堂々と歌うバラン王兄。最後の一音を弾き余韻を残して、天に捧げる歌が終わる。
と。
天上から響いてくる、地面を揺らすように、高く、同時に低い、複雑な響き。
『リンゴーン・リンゴーン・リンゴーン♪』
『私はレナトゥス、再生の神。可愛い魂達よ、縁ある者の今を見届けて、現世の未練を消化して、再び生を受ける気持ちに、少しは、なったかい?』
『まだ時が必要だ、という魂も、また来年おぼんに来る事として、生きる者は現世に、生まれる前の浄化されるべき魂は冥界に、別れてそれぞれの時を回そう。』
『では、今こそ帰れ、冥界の門へ。』
空が再び、切り裂かれる。
つつ、つつうぅ、と、両開きの扉の形に開かれた冥界の門。
開くと共に、地上にあった魂達が、ザワッ と浮き立った。
キラキラ ザザぁ 生きる者達に触れながら流れて、生命の源泉。
竜樹は3王子や3お祖母様、先王様と。
ハルサ王とマルグリット妃には、大量の無縁の、そして人ならざる者達の、魂の奔流が。
目の不自由な、けれど母の枷を逃れた、生き生きした表情のプレイヤードは。妹フィーユ、父アルタイル、祖父サジテール、祖母シームと、皆仲良く寄り添っている。ランタンからふわりと魂が浮いて離れて。
ピティエはルテ爺も一緒に、補助を担うコンコルドも連れて。父に母、そして分離ができる従兄弟のアトモス、その弟マタンとも。
大役のモデルも終えて、ほっと温かい気持ちに。魂達のザザッと頬を撫でる、命のほのあたたかい流れを体感して。
新聞売りの寮、子供達のリーダー、ジェムは。買ってもらったランタンに付いてきた、多分父や母の魂が、くるくるとジェムの周りを纏わりつきながら空へ昇ってゆくのを、目で追って。
周りで寮の子達も、それぞれ自分のランタンから離れて昇る魂に、名残り惜しく手を伸ばしたり、手を振ったりし。
子供達を見守るラフィネ母さんの側を、一つ力強い光の魂が。息子サンの周りを回ってから、ラフィネの髪をふわりと揺らして飛び立った。
体育館にいるエルフ達は、テレビで魂送りの中継を観ながら、落ち着いて夕食後のゆったりした時間を過ごしていた。
エルフの魂達も、傷つき疲れた、今この世にいるエルフ達の周りをキラキラ回って、空に向かう。
エルフの王、リュミエールはグッスリと安堵して眠っていたが、良い夢がみられているであろう、微笑が漏れて、そして魂達が頬を撫でて行く。
ワイルドウルフ国では、ブレイブ王とラーヴ王妃、そしてファング王太子とアルディ王子が、魂達の川の流れに、尻尾をブンブンと振り。
フードゥル国の王太子、カルネと、念の為椅子に座る、妊娠中の妻リアンは、手を取り合ったまま、天上を仰ぐ。
エルフを虐げたジュヴールの国では、誰も儀式はしていなかったけれど、魂達は思い思いに縁ある人の所でチカリと光り。そうして、呆然と見送る人々を置いて、天へと。
各地各国で、それぞれ送られてゆく魂達は。
天で集まって。
ま た ね (^-^)/
などと文字を形づくって、冥界の門をくぐり、消えていった。
ランタンが地上の星、瞬くその中を、ポッと魔道具ライトの光が増える。作った一段高い舞台に、ピアノとバラン王兄が照らされて逆光、シルエットで浮かびあがる。
ハルサ王が、スッと、バラン王兄の前に歩み出て、両腕を上に挙げ。
『初めてのおぼん、あらゆる生きとし生けるもののみ魂よ。
束の間、この世に来て、縁ある者を見守ってくださり、私たちは感謝しています。
どうか、かの地に戻り、心やすく過ごされて、来年もまた、おぼんに来てくださいますよう。
そして、また生まれ変わるその時に、再び良き出会いを致しましょう。』
スーッと息を吐ききり、吸って。
『私たちこの世に生きる者は、それぞれ懸命に生き、再会をお待ちしています。一時のお別れのしるしに、歌を捧げます。』
スッと手を下げて、ハルサ王が舞台を去る。
ポロリン♪
ピアノが一音。
バラン王兄の、低く甘い声が響く。
生まれてきたの 貴方に会いに
育ってゆくの 貴方と共に
春 花咲く 愛されたくて
貴方と出会って 私は変わる
生まれてくるの 2人の絆
愛しているの 小さな貴方
夏 大空に こころ ひらく
貴方と出会って 私は変わる
秋 実る 私と貴方と貴方達
冬 託す そしてさよなら
私と出会って 貴方は変わる
沢山の手を取り 引いて 引かれて
空の彼方に 放り上げられるまで
楽しく 一緒に 暮らしましょう
一時はかけら そして永遠
巡る輪が交差する
その一時 一時のために
生まれてきたと いつか知る
またここで 会いましょう
私で貴方が 変わるよう
貴方で私が 変わるよう
ポロリン♪
柔らかく、ロマンチックに、堂々と歌うバラン王兄。最後の一音を弾き余韻を残して、天に捧げる歌が終わる。
と。
天上から響いてくる、地面を揺らすように、高く、同時に低い、複雑な響き。
『リンゴーン・リンゴーン・リンゴーン♪』
『私はレナトゥス、再生の神。可愛い魂達よ、縁ある者の今を見届けて、現世の未練を消化して、再び生を受ける気持ちに、少しは、なったかい?』
『まだ時が必要だ、という魂も、また来年おぼんに来る事として、生きる者は現世に、生まれる前の浄化されるべき魂は冥界に、別れてそれぞれの時を回そう。』
『では、今こそ帰れ、冥界の門へ。』
空が再び、切り裂かれる。
つつ、つつうぅ、と、両開きの扉の形に開かれた冥界の門。
開くと共に、地上にあった魂達が、ザワッ と浮き立った。
キラキラ ザザぁ 生きる者達に触れながら流れて、生命の源泉。
竜樹は3王子や3お祖母様、先王様と。
ハルサ王とマルグリット妃には、大量の無縁の、そして人ならざる者達の、魂の奔流が。
目の不自由な、けれど母の枷を逃れた、生き生きした表情のプレイヤードは。妹フィーユ、父アルタイル、祖父サジテール、祖母シームと、皆仲良く寄り添っている。ランタンからふわりと魂が浮いて離れて。
ピティエはルテ爺も一緒に、補助を担うコンコルドも連れて。父に母、そして分離ができる従兄弟のアトモス、その弟マタンとも。
大役のモデルも終えて、ほっと温かい気持ちに。魂達のザザッと頬を撫でる、命のほのあたたかい流れを体感して。
新聞売りの寮、子供達のリーダー、ジェムは。買ってもらったランタンに付いてきた、多分父や母の魂が、くるくるとジェムの周りを纏わりつきながら空へ昇ってゆくのを、目で追って。
周りで寮の子達も、それぞれ自分のランタンから離れて昇る魂に、名残り惜しく手を伸ばしたり、手を振ったりし。
子供達を見守るラフィネ母さんの側を、一つ力強い光の魂が。息子サンの周りを回ってから、ラフィネの髪をふわりと揺らして飛び立った。
体育館にいるエルフ達は、テレビで魂送りの中継を観ながら、落ち着いて夕食後のゆったりした時間を過ごしていた。
エルフの魂達も、傷つき疲れた、今この世にいるエルフ達の周りをキラキラ回って、空に向かう。
エルフの王、リュミエールはグッスリと安堵して眠っていたが、良い夢がみられているであろう、微笑が漏れて、そして魂達が頬を撫でて行く。
ワイルドウルフ国では、ブレイブ王とラーヴ王妃、そしてファング王太子とアルディ王子が、魂達の川の流れに、尻尾をブンブンと振り。
フードゥル国の王太子、カルネと、念の為椅子に座る、妊娠中の妻リアンは、手を取り合ったまま、天上を仰ぐ。
エルフを虐げたジュヴールの国では、誰も儀式はしていなかったけれど、魂達は思い思いに縁ある人の所でチカリと光り。そうして、呆然と見送る人々を置いて、天へと。
各地各国で、それぞれ送られてゆく魂達は。
天で集まって。
ま た ね (^-^)/
などと文字を形づくって、冥界の門をくぐり、消えていった。
33
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
男装の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。
領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。
しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。
だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。
そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。
なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
「7人目の勇者」
晴樹
ファンタジー
別の世界にある国があった。
そこにはある仕来たりが存在した。それは年に1度勇者を召喚するという仕来たり。そして今年で7人目の勇者が召喚されることになった。
7人目の勇者として召喚されたのは、日本に住んでいた。
何が何だか分からないままに勇者として勤めを全うすることになる。その最中でこの国はここ5年の勇者全員が、召喚された年に死んでしまうという出来事が起きていることを知る。
今年召喚された主人公は勇者として、生きるためにその勇者達に謎の死因を探り始める…
サフォネリアの咲く頃
水星直己
ファンタジー
物語の舞台は、大陸ができたばかりの古の時代。
人と人ではないものたちが存在する世界。
若い旅の剣士が出逢ったのは、赤い髪と瞳を持つ『天使』。
それは天使にあるまじき災いの色だった…。
※ 一般的なファンタジーの世界に独自要素を追加した世界観です。PG-12推奨。若干R-15も?
※pixivにも同時掲載中。作品に関するイラストもそちらで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/50469933
草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!
アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。
思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!?
生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない!
なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!!
◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる