王子様を放送します

竹 美津

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本編

16日夕刻 おぼんの終わり

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お披露目広場は、もう一番星も出る天を上に、ざわざわと人々が集まりきって、しばらく。
ランタンが地上の星、瞬くその中を、ポッと魔道具ライトの光が増える。作った一段高い舞台に、ピアノとバラン王兄が照らされて逆光、シルエットで浮かびあがる。

ハルサ王が、スッと、バラン王兄の前に歩み出て、両腕を上に挙げ。

『初めてのおぼん、あらゆる生きとし生けるもののみ魂よ。
束の間、この世に来て、縁ある者を見守ってくださり、私たちは感謝しています。
どうか、かの地に戻り、心やすく過ごされて、来年もまた、おぼんに来てくださいますよう。
そして、また生まれ変わるその時に、再び良き出会いを致しましょう。』

スーッと息を吐ききり、吸って。

『私たちこの世に生きる者は、それぞれ懸命に生き、再会をお待ちしています。一時のお別れのしるしに、歌を捧げます。』

スッと手を下げて、ハルサ王が舞台を去る。

ポロリン♪
ピアノが一音。
バラン王兄の、低く甘い声が響く。

生まれてきたの 貴方に会いに
育ってゆくの 貴方と共に
春 花咲く 愛されたくて
貴方と出会って 私は変わる

生まれてくるの 2人の絆
愛しているの 小さな貴方
夏 大空に こころ ひらく 
貴方と出会って 私は変わる

秋 実る 私と貴方と貴方達
冬 託す そしてさよなら
私と出会って 貴方は変わる

沢山の手を取り 引いて 引かれて
空の彼方に 放り上げられるまで
楽しく 一緒に 暮らしましょう
一時はかけら そして永遠

巡る輪が交差する
その一時 一時のために
生まれてきたと いつか知る

またここで 会いましょう
私で貴方が 変わるよう
貴方で私が 変わるよう


ポロリン♪

柔らかく、ロマンチックに、堂々と歌うバラン王兄。最後の一音を弾き余韻を残して、天に捧げる歌が終わる。

と。



天上から響いてくる、地面を揺らすように、高く、同時に低い、複雑な響き。

『リンゴーン・リンゴーン・リンゴーン♪』

『私はレナトゥス、再生の神。可愛い魂達よ、縁ある者の今を見届けて、現世の未練を消化して、再び生を受ける気持ちに、少しは、なったかい?』

『まだ時が必要だ、という魂も、また来年おぼんに来る事として、生きる者は現世に、生まれる前の浄化されるべき魂は冥界に、別れてそれぞれの時を回そう。』

『では、今こそ帰れ、冥界の門へ。』

空が再び、切り裂かれる。
つつ、つつうぅ、と、両開きの扉の形に開かれた冥界の門。
開くと共に、地上にあった魂達が、ザワッ と浮き立った。

キラキラ ザザぁ 生きる者達に触れながら流れて、生命の源泉。

竜樹は3王子や3お祖母様、先王様と。
ハルサ王とマルグリット妃には、大量の無縁の、そして人ならざる者達の、魂の奔流が。

目の不自由な、けれど母の枷を逃れた、生き生きした表情のプレイヤードは。妹フィーユ、父アルタイル、祖父サジテール、祖母シームと、皆仲良く寄り添っている。ランタンからふわりと魂が浮いて離れて。

ピティエはルテ爺も一緒に、補助を担うコンコルドも連れて。父に母、そして分離ができる従兄弟のアトモス、その弟マタンとも。
大役のモデルも終えて、ほっと温かい気持ちに。魂達のザザッと頬を撫でる、命のほのあたたかい流れを体感して。

新聞売りの寮、子供達のリーダー、ジェムは。買ってもらったランタンに付いてきた、多分父や母の魂が、くるくるとジェムの周りを纏わりつきながら空へ昇ってゆくのを、目で追って。
周りで寮の子達も、それぞれ自分のランタンから離れて昇る魂に、名残り惜しく手を伸ばしたり、手を振ったりし。

子供達を見守るラフィネ母さんの側を、一つ力強い光の魂が。息子サンの周りを回ってから、ラフィネの髪をふわりと揺らして飛び立った。

体育館にいるエルフ達は、テレビで魂送りの中継を観ながら、落ち着いて夕食後のゆったりした時間を過ごしていた。
エルフの魂達も、傷つき疲れた、今この世にいるエルフ達の周りをキラキラ回って、空に向かう。
エルフの王、リュミエールはグッスリと安堵して眠っていたが、良い夢がみられているであろう、微笑が漏れて、そして魂達が頬を撫でて行く。


ワイルドウルフ国では、ブレイブ王とラーヴ王妃、そしてファング王太子とアルディ王子が、魂達の川の流れに、尻尾をブンブンと振り。

フードゥル国の王太子、カルネと、念の為椅子に座る、妊娠中の妻リアンは、手を取り合ったまま、天上を仰ぐ。

エルフを虐げたジュヴールの国では、誰も儀式はしていなかったけれど、魂達は思い思いに縁ある人の所でチカリと光り。そうして、呆然と見送る人々を置いて、天へと。

各地各国で、それぞれ送られてゆく魂達は。
天で集まって。



ま た ね (^-^)/



などと文字を形づくって、冥界の門をくぐり、消えていった。

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