王子様を放送します

竹 美津

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本編

すーぷのみたい

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「すーぷ、のみたいの。らーめん? はむがのってるのがいい。」

悪い子達はお昼ご飯を抜いて、映画鑑賞会をした後、お茶でもして茶菓子で腹を満たそうか、という事になった。
しかし、ニリヤは、ランセ神と同じところにハマったらしく、ラーメンスープを所望してきた。タシタシ竜樹の膝を叩いて。

「いいねいいね。自分の欲しいものを言えるのっていいよね。言わないと分からないしね。」

じゃあスープ作るかぁ。ゆで卵も作っちゃお。醤油はなくても、塩スープにすればいい。
厨房に材料を取りに行く。勿論、竜樹もニリヤも寝間着マントのままである。料理長には目を剥かれたが、「今度は何を作るんだ?」とそっちがより気になっていた。

鳥ガラスープの素がないんだった、と竜樹はがっくりしたが、鳥の手羽が沢山あったので、それを使うことにした。鳥の種類は、竜樹の世界と微妙に違う、とスマホ突き合わせでわかった。鴨に似ている。

料理長に鳥ガラスープの作り方のレシピを見せて、次回もらえるように手配。普段とっているスープのやり方と、似ているとのこと。毎回は、仕事でなければ出汁までとれない。

ピコン。

音が鳴って、1いいねが使われたメッセージ。レシピもいいね支払い対象となるらしい。プロの料理長に教えたからかもしれない。
まあ、元のレシピを書いた人に幸運がいくのはいいことだ。

「よし、部屋で作ると、きっと鳥スープの匂いがいっぱいみんなのところに漂っちゃうかも。でも、悪い子だから美味しい匂いだけ嗅がせちゃう。」
「によいだけ?みんなたべれない?」

俺らだけで食べちゃうんだぞ~。
にははは。
「にはは。」

鳥を鍋に入れて、ガラガラ、ワゴンを押していく。料理長に吟味してもらった、合いそうな菜葉も用意した。悪い子なんだけど、美味しいから!スープに入れると美味しいから仕方ない。

「ニリヤはゆで卵係だぞ。重大な使命だぞ~。」
鍋に、茶ぶちの柄のあるたまごを6個と、ひたひたに水を入れて、スマホでタイマーを準備する。火を着けたら、ここ押してな、とニリヤにスマホを渡し、いくよ~、3、2、1着火!
むぎゅ。
タイマーが模様を減らし、刻々と時を刻むのを、ニリヤは真剣な表情で見守る。

ち、ち、ち、「なった!」
チリリリリリ!
ビクン! 肩を揺らして慌てて竜樹にスマホを差し出す。
「ここ押せば音止まるよ。押してみ。」
むぎゅぎゅ。 ピタリ。
「お湯を捨てますー。」
お水で冷やして、触れるようになったら、コンコンして剥いてな、と指示を出す。

くつくつ煮込んで、さっぱりしたスープができたら、器に盛って、ハムを今度は薄く切って乗せる。菜葉をさっと湯がいたのも。
卵は固茹で、歪に剥かれて、半分に切った。
今回は麺がないが、小麦粉があるなら麺も作れるだろう。それに、探せばこの世界にも、あるのかもしれない。

全粒粉のパンを付けて、手羽とスープをみんなで食べる。ミランとタカラはスツールに、マルサとチリはソファで。
しょっぱい汁に、たまごがほっこりして腹にたまる。ニリヤは卵を匙で持ち上げて、「ぼくがゆでたの。むいたの。」しみじみ見てからパクんと食べた。

「じゃあ食べながら、今後のテレビに関して、悪い子会議するか。」じゅるる。

「ニリヤ様を、はじめてするお使いみたいに映すって事ですよね?悪くないですけど。」
ミランが、すすーっとスープを匙で吸い、カメラをテーブルに置いたまま撮影というスタイルを編み出していた。

「まずは王宮の中にテレビを設置したいなーと思って。今週のニリヤ王子、って感じで毎週。」
毎週、王子の番組やってて、観てたら、成長を見守る感じになるだろ。
でも同じ映像を、繰り返しずっと流すと、王宮だとウザいかもしれない。
だから、人が前を通った時だけ感知して流れるといいよね。

「それは、私が何とかしますよ。」
チリの出番である。

ふむふむ。
それと、それをやるのに必要な人間が、足りてないよね。

「音楽、字幕入れたり編集したり、ナレーションの声を誰にするか。番組として、ある程度見応えのあるものに、作り上げる作業がいるよ。」

「そういえば、編集っての?撮ってから映像を全部見て、選んで、繋げてってするのか。毎週か?」
マルサが、見るだけでも大変だろう、ズズ、モグ。パンとスープを一緒に口に含んだ。

「だから、俺らが映りながら編集するのは、最初の一回か二回やるのが精々だと思う。」
それについては、是非。

「女性の目を入れたいと思う。」
キラン、と竜樹の目が光った。
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