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一章
◎14.犬を演じるリン・オルム
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生徒会長、吸血鬼、トワ・ルトエ。
赤い文字以外に書いてあった事を思い出す。
情報では知ってた。生徒会長が吸血鬼だって。
でもそれが……トワだと思ってなかった。
あの日…ノアが血をあげた相手。
かなりよかった?ノアはなんでそう思った?……トワに何をした?
「ゥウウウウッ」
喉の奥から唸り声が出る。
普段の俺は人狼の種族特性をわざと鈍くしてる。
…それがなければ、あの時…いやもっと早くトワに気づけた!
そこまで考えて、失速する。
「ゥウ……」
気づいてどうする…………会って…どうする。
「……ワゥ…ン」
目的の為に、他は捨てるとあの日に決めた。
俺はもうあの人を選んだんだよ。
……そうだろ?リン・オルム。
「クゥン………」
でも……近くなったにおいに…扉ごしのにおいに…。
未練たらしく…カリカリと前足で扉をひっかいた。
「?」
「!?」
中でにおいが動く…。
俺の開けられなかった扉は、あっさりと開いて………そして……。
「え……?」
「ワゥッ!」
その姿を見た途端、しっぽがぶんぶんと揺れる。
「わっ!?」
全力で飛びあがって、トワに抱き着く。
その勢いで、トワが尻もちをついて、床に座ってしまったけど…好都合だ。
「え?えぇ?え?…ちょ…待っ……あはっ…くすぐった…」
届く位置にきた顔を特に念いりに舐める。涙の痕を消すように…しっかりと。
「ま、さか……んっ…待っ……こら…」
「ワゥ…ワッ…ハッハッ」
「花?」
「ワン!!!」
オスの犬に花……その名前には、文句いいたいけど。
トワの前で俺はただの犬だから…文句はいえない。
「どうして?花がここに」
「ワゥ!ワゥー!!」
「それに………」
「クゥ?」
「…いや……花、また会えて嬉しいよ」
「ワン!」
おずおずと俺の体をなで始めた手は、あっという間に俺を溶かした。
「フゥ~~~クフ…」
「ふふっ」
最高、もっとお願………ぅおおおおおおーーー!違ーう!?まずいまずい!違ーーーう!?
「ギャウ!!」
「あっ……」
我を取り戻した俺は、トワの上から退いた。
「…その……花…元気だった?」
「ワゥ!」
俺の姿を見て、トワが何か…何度もいおうとしては、口を閉じる。
「ゥウウ?」
「えっと…花…さん」
「ワン?」
「その…犬のふりをさせてしまって……申しわけありませんでした」
「ワ……ワン?」
え?ええええええええ?なななんの事なんの事!?
「キ…キュゥン?」
ほらわんちゃんだよーートワくん!?
こんなにわんちゃん!犬犬!!
俺はほわほわに自信がある腹毛を見せて可愛いアピールする。
可愛さで乗り切れ俺!ほら見て!触っていいよーーー?
「ワンッワンッ!」
欠陥品……あの赤い文字の理由を俺は知ってる。
トワはまるで人間みたいに種族特性に鈍い。
人狼の俺が、人狼ってわからないのもそう……。
初めて会った時、トワにとって俺は怪我したただの犬だった。
だから今も…トワにとって、俺は犬…じゃ…?
「キュゥウウ?」
ま、さか…ノアの血を吸ったっていうし…。
いやでも欠陥品の可能性ありって…えええぇえええええ?
どっち、どっちだ!?俺が人狼だってわかるようになったー!?いやいやそんなはず!?
「ワゥン!ワワン!!」
ほらほらワンワンワワン!ワンワンワワン!
「……何か理由があるのですね?」
「ワゥンン?」
理由………もちろん今…トワと関わるつもりはないからで……人狼ってばれるのが厄介だから…で…。
それなら通りすがりの犬の方が都合がいいし…。
いや決して、トワの前で犬として散々甘えてた過去が恥ずかしいからとかじゃな…く…て…。
ぅおおおーん!?……ばれてない状態ならともかく、人狼とばれてた上でやってたら、そんなの!!
赤ちゃん言葉でバブバブ甘えてたようなもんじゃん!?ねぇ!?そんなのねぇ!?
嘘だ!?ばれてないといって!?
「…わかりました。無理には訊きません。花…さん、どんな事情であれ、また会えて嬉しいです」
「ワン!ワワワアン!」
とりあえずセーフ!セーフ?セーフか!?
いやいや犬!犬だから!俺!
「…花さん」
「ワンッ!」
それからまた遠慮がちになでて貰って、俺とトワは別れた。
セーフ!!
「フゥ~~……」
あーーー…服…あと書類……まだ廊下に落ちてるかな。探さなきゃ。
赤い文字以外に書いてあった事を思い出す。
情報では知ってた。生徒会長が吸血鬼だって。
でもそれが……トワだと思ってなかった。
あの日…ノアが血をあげた相手。
かなりよかった?ノアはなんでそう思った?……トワに何をした?
「ゥウウウウッ」
喉の奥から唸り声が出る。
普段の俺は人狼の種族特性をわざと鈍くしてる。
…それがなければ、あの時…いやもっと早くトワに気づけた!
そこまで考えて、失速する。
「ゥウ……」
気づいてどうする…………会って…どうする。
「……ワゥ…ン」
目的の為に、他は捨てるとあの日に決めた。
俺はもうあの人を選んだんだよ。
……そうだろ?リン・オルム。
「クゥン………」
でも……近くなったにおいに…扉ごしのにおいに…。
未練たらしく…カリカリと前足で扉をひっかいた。
「?」
「!?」
中でにおいが動く…。
俺の開けられなかった扉は、あっさりと開いて………そして……。
「え……?」
「ワゥッ!」
その姿を見た途端、しっぽがぶんぶんと揺れる。
「わっ!?」
全力で飛びあがって、トワに抱き着く。
その勢いで、トワが尻もちをついて、床に座ってしまったけど…好都合だ。
「え?えぇ?え?…ちょ…待っ……あはっ…くすぐった…」
届く位置にきた顔を特に念いりに舐める。涙の痕を消すように…しっかりと。
「ま、さか……んっ…待っ……こら…」
「ワゥ…ワッ…ハッハッ」
「花?」
「ワン!!!」
オスの犬に花……その名前には、文句いいたいけど。
トワの前で俺はただの犬だから…文句はいえない。
「どうして?花がここに」
「ワゥ!ワゥー!!」
「それに………」
「クゥ?」
「…いや……花、また会えて嬉しいよ」
「ワン!」
おずおずと俺の体をなで始めた手は、あっという間に俺を溶かした。
「フゥ~~~クフ…」
「ふふっ」
最高、もっとお願………ぅおおおおおおーーー!違ーう!?まずいまずい!違ーーーう!?
「ギャウ!!」
「あっ……」
我を取り戻した俺は、トワの上から退いた。
「…その……花…元気だった?」
「ワゥ!」
俺の姿を見て、トワが何か…何度もいおうとしては、口を閉じる。
「ゥウウ?」
「えっと…花…さん」
「ワン?」
「その…犬のふりをさせてしまって……申しわけありませんでした」
「ワ……ワン?」
え?ええええええええ?なななんの事なんの事!?
「キ…キュゥン?」
ほらわんちゃんだよーートワくん!?
こんなにわんちゃん!犬犬!!
俺はほわほわに自信がある腹毛を見せて可愛いアピールする。
可愛さで乗り切れ俺!ほら見て!触っていいよーーー?
「ワンッワンッ!」
欠陥品……あの赤い文字の理由を俺は知ってる。
トワはまるで人間みたいに種族特性に鈍い。
人狼の俺が、人狼ってわからないのもそう……。
初めて会った時、トワにとって俺は怪我したただの犬だった。
だから今も…トワにとって、俺は犬…じゃ…?
「キュゥウウ?」
ま、さか…ノアの血を吸ったっていうし…。
いやでも欠陥品の可能性ありって…えええぇえええええ?
どっち、どっちだ!?俺が人狼だってわかるようになったー!?いやいやそんなはず!?
「ワゥン!ワワン!!」
ほらほらワンワンワワン!ワンワンワワン!
「……何か理由があるのですね?」
「ワゥンン?」
理由………もちろん今…トワと関わるつもりはないからで……人狼ってばれるのが厄介だから…で…。
それなら通りすがりの犬の方が都合がいいし…。
いや決して、トワの前で犬として散々甘えてた過去が恥ずかしいからとかじゃな…く…て…。
ぅおおおーん!?……ばれてない状態ならともかく、人狼とばれてた上でやってたら、そんなの!!
赤ちゃん言葉でバブバブ甘えてたようなもんじゃん!?ねぇ!?そんなのねぇ!?
嘘だ!?ばれてないといって!?
「…わかりました。無理には訊きません。花…さん、どんな事情であれ、また会えて嬉しいです」
「ワン!ワワワアン!」
とりあえずセーフ!セーフ?セーフか!?
いやいや犬!犬だから!俺!
「…花さん」
「ワンッ!」
それからまた遠慮がちになでて貰って、俺とトワは別れた。
セーフ!!
「フゥ~~……」
あーーー…服…あと書類……まだ廊下に落ちてるかな。探さなきゃ。
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