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一章

■9.同族の風紀委員長

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「セス先生、マフラーこれ、遅くなってしまって…ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ」

週初めの慌ただしさを乗り切り、気がつけば…あっという間に、放課後になってしまった。

「ルトエくんよかったら、またお茶でも…」
「終わったー?かいちょ早く帰ろーよー」

保健室の外で待っているといったフェルドが扉を開け、私を呼んでいる。

「すみません。セス先生。今日はちょっと…」

優しいセス先生の誘いを断るのは気が引けるけれど……。

「それは…残念…」
「あっはっは~、そう残念でした。かいちょはおれと帰る約束をしてるんですー」
「…………アンヴィルくん」
「あ~~~?」
「僕は別に生徒同士の友情・・を邪魔するような狭量な先生じゃないんですよ?」

「友情……。ふふっ友情かぁ…」

セス先生に、友情といわれ、思わず笑ってしまった。

「ぇう!?か、かいちょ?」

そう私とフェルドはいい友人関係を築けている。それが嬉しい。
私にまた仲のよい友人が出来た事が、とても嬉しい。


「………ぐ…ぐぐぐ…」
「おや。どうしたんですか?友情・・に何か不満でも?」
「んぐっ…」
「!」

ま、まさか友人だと思っていたのは、私だけだったのだろうか。
そう考えれば、あのフェルドの表情も納得出来る。
確かにフェルドにはいつも迷惑をかけている…し、…そうか……友人ではな…かっ…。

「ぇう!?か、かかかかいちょ!?ちょっ…なんて目で、こっち見んの…」
「すまない…友人と思われるのは迷惑だったのか…と…」

「はぁあああ!?そんな事ない。うんうん。そんな事あるはずもないよーおれたち親友でしょ!!!」
「親友……!」

「…ぷっ」
「ちょっ!?何笑ってんだ、この魚野郎」
「いえいえ、青春でいいなぁと」
「っもういい!かいちょ帰ろ!」

「あ、ああ。セス先生それではまた」
「はい。またね…。僕の楽器ルトエくん

保健室に背を向け、フェルドに引っ張られつつ廊下を進む。



「は……は…っ…フェ……」
「……ん…うわ!?ごめんかいちょ」
「いや…ははは…相変わらず足が速いなフェルドは」

走っていたわけじゃないのに、…情けない事に、廊下を歩くうち、息があがってしまった。
だが体が温まった分、寒い外へいく準備が出来てよかったかもしれない。


「あーーほんとごめん。休も…かいちょ」
「いや大丈……夫?」

フェルドが誘導しようとする、昇降口付近に置かれたベンチへ目をやれば…すでに誰かが座って…いや横たわっているのが見える。

「…フェルド」
「ん?え…あ、誰か寝てる」
「寝てるというか…」

ひょっとしたら、具合が悪いのではと思い近づけば、相手は見知った相手だった。

「げぇ、鬼風紀じゃん」
「こら、先輩に失礼だろう」
「えーーーじゃあ鬼風紀委員長センパイさんで」
「う、うーーん」

さっきセス先生も気にしてなかったし、フェルドの人懐こいところは長所だから、まぁいいのか。

「かーお、真っ白だね。貧血かな?」
「…おそらくは」

彼…イニアス先輩は、私と同族…つまり吸血鬼だ。
となれば……。私は自分の持っている凝固血液剤を、鞄から出す。


その手を…意識がないと思っていたイニアス先輩がしっかりと掴んだ。

「よせ…不要だ」
「イニアス先輩、よかった」

「…くそ…よりによって、おまえらに見つかるとは…」
「はっ!なーーにいってんだ。この鬼風紀。こんな場所で寝ておきながら勝手な事をー。学び舎はみんなのもんなんすよーーーセンパイ!」

「…やかましい」
「フェルド……その……」
「はいはい。黙りますって」

「イニアス先輩、保健室へは…」
「いい、それも不要だ」
「しかし……」
「いらん!」

そうはいっても、とても動けそうには見えない。
だが…嫌がっている相手を無理やり保健室に抱えていくというのも……うーーーん。

「かいちょ~~~鬼風紀もこういってる事だし、ほっといていんじゃないの」
「……フェルド」
「あん?」

「セス先生をここまで連れてきてくれないか?」
「え~~~~」

「おい!!貴様いい加減にしろっ。不要だと…い……っ…」

そういって起きあがろうとしたイニアス先輩は意識を失った。
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