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番外
神様と三人の恋人
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淹れたての熱いお茶に息を吹きかけて、冷ましている顔を、じぃいいいっと見つめる。
「………えっと、何?」
ぼくの視線が気になったのか、目の前の…元ぼくの体がこっちを見返す。
「別にーーー」
「うぜぇ…見るな、消えろ」
「うっさいワンコーー」
「あはは」
「もーーー。ぼくにもお茶ー!」
「さっきいらないって言ったでしょ。飲みたいなら自分で淹れなさい。弟よ」
「さっきは飲みたくなくて、今飲みたくなったのー…」
「あ、じゃあ俺が」
「引きこもりを甘やかすな」
「なんだよ。ワンコでもいいし、淹れてきてよ」
「淹れるか、馬鹿」
一人だけ手持無沙汰なぼくは、また…じぃいいいっと目の前の顔を見る事にした。
ぼくがもう持っていない…じいちゃんの面影を宿す顔を見てぽつりと呟く。
「いいなあ…」
そんでもって、これがお嫁さんかあ。いいなあ、兄ちゃんもワンコも…。
「むーーーー」
「さっきからなんだ、気味が悪い」
「別にいいいーーーー」
疎外感。
それをこのぼくが感じるだなんて…思わなかった。
結構好き勝手に生きてる自信があるし、引きこもってるだけあって一人だって嫌いじゃない。
それなのに…。
「あーーーーーー」
別にこの三人が、ぼくを仲間外れにしている訳じゃないけどさーー。
ちゃんと同居人として、それなりに良好に暮らしている。でも…でもさ…こう温度とか距離感がどうしたって違う。
「うーーーー」
「うぜぇ」
この子ってもう完全に二人のメスなんだよねえ。
以前ならまだしも…今はもう他のオスを受け入れるのは難しいだろうなあ。
いや、ぼくならいけるかな…。ちらちらとまた様子を窺う。
「そんなにワンコロと二人で出掛けたのが嫌だったの?」
「別にいいいいーーー」
はーつまんないの。ぼくの体だったくせに。どうしてこっちに…直接ぼくの元へ現れなかったんだろうね、きみ。
もしぼくの元に現れてたら、……そうしたら…ぼくがきみを手に入れてたのかもしれないのに。
そうなってたら、ぼくは…どう…きみを愛していたのかなあ。きみはどう…ぼくを愛してくれてたのかなあ。
“かもしれない”…を想像するのは、楽しい。けど…、目の前の関係が変わる訳じゃない。
三人は…どう見ても、いちゃいちゃしてる。その様子に、呆れてぼくは席を立つ。
「お茶、淹れてくる」
「お、素直だね」
「とっとと行け。そして帰って来るな」
「酷い言いよう。…ぼくの家だってのに」
「オレ達の家でもある」
「はーーー生意気ワンコ」
ドスドスと足音を盛大に立てて、台所へ向かう。
ワンコの言いなりになる気なんか、さらさらないから、お茶を淹れたぼくは同じように足音を立てて、元の部屋に戻った。
三人の距離が滅茶苦茶近づいてる……。
「眷属…とられたあーー」
思わず口から恨み言が出た。別にこの子が意地悪で奪った訳じゃないけどさ。それでもぼく達…兄ちゃんとワンコは世界を越えて数百年の付き合いだ!三人組のうちの一人は、ぼくだったのに…。
一方でさっきも思ったように、兄ちゃんとワンコにも嫉妬してる。お嫁さんずるい。その子いいなああああ。
「元々オレは、お前のものになったつもりは毛頭ない」
「ワンコのくせに生意気だーーー」
「弟よ。お兄ちゃん離れも大切だよ?」
「兄ちゃんも意地悪だーー」
ぼくが二人の…眷属の所有権を主張したと思った兄ちゃんとワンコが、それぞれしっかりと距離を主張してきた。
むーーーーーー!
「あの、ごめん」
「んーーー?どうしてきみが謝るの」
「二人を…その…俺が色々と独占しちゃって」
「…………ぷ」
「え」
「あははは。きみの方が、二人よりよっぽどいい子。はーー流石ぼくの元体~。いいね。じゃ、浮気しよっか?」
「なんでそうなるの!?」
「兄ちゃんとワンコが、幸せな顔し過ぎてて、カップル滅べって気持ちが沸き上がってきてるから」
「えぇええええ」
「ああ。ちゃんときみに興味もあるから大丈夫だよ。よし浮気しよ。んで浮気から本気の恋に燃え上がろ?」
「ぇええええ……」
「いやいや、許しませんよ。お弟さんや」
「兄ちゃんや、いいではありませんか」
「いい訳あるか、糞野郎」
「ケーーチ!ケーチ。あ、じゃあさ二人も混ざればいいじゃん。そうだよね3Pも4Pも似たようなもんだし」
「ぇえええええ!全然違う!?」
「もう、我儘だなあ☆」
「ええええええええ!?」
あわあわと動揺するこの子は可愛いね。
あーそういえば。
「きみってさ、本名をここで呼ばれる気はないんだよね」
「…え、あ。うん」
「じゃあさ、ぼくを呼ぶのに、それ使ってよ」
「…」
「やっぱり自分の本名でぼくを呼ぶのはしたくない?」
「…あ…うぅん。変な感じではあるけど、嫌じゃないかなぁ」
「じゃあ呼んでよ!」
「お前、何考えて?」
「うっさいワンコー!」
「ねえ。呼んでって」
じいちゃんと似てるその顔で…さ。もう会えないぼくの大好きなじいちゃんのように…千って…呼んで。
「千さん?」
「さんはいらなーーい」
「千」
「うん。いいね」
-千-
…不思議とじいちゃんの声まで、聞こえた気がする。
ぼくと同じ事を思ったのか、兄ちゃんとワンコもそれぞれ、複雑そうな顔をしていた。
「せめてさ。家族として愛させてよ…そんでぼくもちょっとはそっちに混ぜて」
「千……」
「弟よおおお」
「………」
ぼくの内情を…寂しさを吐露すれば、三人はそれぞれ同情したそぶりを見せた。
うんうん。いい感じ。
「さて」
ぼくは空気を入れ替えるように、パンッと手を叩く。
「じゃあ、いい感じに絆されて、距離が近づいた所で…」
「ん、絆され?」
「4P、いつしよっか?」
「いや、しないよ!?」
「………えっと、何?」
ぼくの視線が気になったのか、目の前の…元ぼくの体がこっちを見返す。
「別にーーー」
「うぜぇ…見るな、消えろ」
「うっさいワンコーー」
「あはは」
「もーーー。ぼくにもお茶ー!」
「さっきいらないって言ったでしょ。飲みたいなら自分で淹れなさい。弟よ」
「さっきは飲みたくなくて、今飲みたくなったのー…」
「あ、じゃあ俺が」
「引きこもりを甘やかすな」
「なんだよ。ワンコでもいいし、淹れてきてよ」
「淹れるか、馬鹿」
一人だけ手持無沙汰なぼくは、また…じぃいいいっと目の前の顔を見る事にした。
ぼくがもう持っていない…じいちゃんの面影を宿す顔を見てぽつりと呟く。
「いいなあ…」
そんでもって、これがお嫁さんかあ。いいなあ、兄ちゃんもワンコも…。
「むーーーー」
「さっきからなんだ、気味が悪い」
「別にいいいーーーー」
疎外感。
それをこのぼくが感じるだなんて…思わなかった。
結構好き勝手に生きてる自信があるし、引きこもってるだけあって一人だって嫌いじゃない。
それなのに…。
「あーーーーーー」
別にこの三人が、ぼくを仲間外れにしている訳じゃないけどさーー。
ちゃんと同居人として、それなりに良好に暮らしている。でも…でもさ…こう温度とか距離感がどうしたって違う。
「うーーーー」
「うぜぇ」
この子ってもう完全に二人のメスなんだよねえ。
以前ならまだしも…今はもう他のオスを受け入れるのは難しいだろうなあ。
いや、ぼくならいけるかな…。ちらちらとまた様子を窺う。
「そんなにワンコロと二人で出掛けたのが嫌だったの?」
「別にいいいいーーー」
はーつまんないの。ぼくの体だったくせに。どうしてこっちに…直接ぼくの元へ現れなかったんだろうね、きみ。
もしぼくの元に現れてたら、……そうしたら…ぼくがきみを手に入れてたのかもしれないのに。
そうなってたら、ぼくは…どう…きみを愛していたのかなあ。きみはどう…ぼくを愛してくれてたのかなあ。
“かもしれない”…を想像するのは、楽しい。けど…、目の前の関係が変わる訳じゃない。
三人は…どう見ても、いちゃいちゃしてる。その様子に、呆れてぼくは席を立つ。
「お茶、淹れてくる」
「お、素直だね」
「とっとと行け。そして帰って来るな」
「酷い言いよう。…ぼくの家だってのに」
「オレ達の家でもある」
「はーーー生意気ワンコ」
ドスドスと足音を盛大に立てて、台所へ向かう。
ワンコの言いなりになる気なんか、さらさらないから、お茶を淹れたぼくは同じように足音を立てて、元の部屋に戻った。
三人の距離が滅茶苦茶近づいてる……。
「眷属…とられたあーー」
思わず口から恨み言が出た。別にこの子が意地悪で奪った訳じゃないけどさ。それでもぼく達…兄ちゃんとワンコは世界を越えて数百年の付き合いだ!三人組のうちの一人は、ぼくだったのに…。
一方でさっきも思ったように、兄ちゃんとワンコにも嫉妬してる。お嫁さんずるい。その子いいなああああ。
「元々オレは、お前のものになったつもりは毛頭ない」
「ワンコのくせに生意気だーーー」
「弟よ。お兄ちゃん離れも大切だよ?」
「兄ちゃんも意地悪だーー」
ぼくが二人の…眷属の所有権を主張したと思った兄ちゃんとワンコが、それぞれしっかりと距離を主張してきた。
むーーーーーー!
「あの、ごめん」
「んーーー?どうしてきみが謝るの」
「二人を…その…俺が色々と独占しちゃって」
「…………ぷ」
「え」
「あははは。きみの方が、二人よりよっぽどいい子。はーー流石ぼくの元体~。いいね。じゃ、浮気しよっか?」
「なんでそうなるの!?」
「兄ちゃんとワンコが、幸せな顔し過ぎてて、カップル滅べって気持ちが沸き上がってきてるから」
「えぇええええ」
「ああ。ちゃんときみに興味もあるから大丈夫だよ。よし浮気しよ。んで浮気から本気の恋に燃え上がろ?」
「ぇええええ……」
「いやいや、許しませんよ。お弟さんや」
「兄ちゃんや、いいではありませんか」
「いい訳あるか、糞野郎」
「ケーーチ!ケーチ。あ、じゃあさ二人も混ざればいいじゃん。そうだよね3Pも4Pも似たようなもんだし」
「ぇえええええ!全然違う!?」
「もう、我儘だなあ☆」
「ええええええええ!?」
あわあわと動揺するこの子は可愛いね。
あーそういえば。
「きみってさ、本名をここで呼ばれる気はないんだよね」
「…え、あ。うん」
「じゃあさ、ぼくを呼ぶのに、それ使ってよ」
「…」
「やっぱり自分の本名でぼくを呼ぶのはしたくない?」
「…あ…うぅん。変な感じではあるけど、嫌じゃないかなぁ」
「じゃあ呼んでよ!」
「お前、何考えて?」
「うっさいワンコー!」
「ねえ。呼んでって」
じいちゃんと似てるその顔で…さ。もう会えないぼくの大好きなじいちゃんのように…千って…呼んで。
「千さん?」
「さんはいらなーーい」
「千」
「うん。いいね」
-千-
…不思議とじいちゃんの声まで、聞こえた気がする。
ぼくと同じ事を思ったのか、兄ちゃんとワンコもそれぞれ、複雑そうな顔をしていた。
「せめてさ。家族として愛させてよ…そんでぼくもちょっとはそっちに混ぜて」
「千……」
「弟よおおお」
「………」
ぼくの内情を…寂しさを吐露すれば、三人はそれぞれ同情したそぶりを見せた。
うんうん。いい感じ。
「さて」
ぼくは空気を入れ替えるように、パンッと手を叩く。
「じゃあ、いい感じに絆されて、距離が近づいた所で…」
「ん、絆され?」
「4P、いつしよっか?」
「いや、しないよ!?」
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