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三章

1.チュンチュンチュンpart2

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朝だ…。
あれから結局また意識を戻されて、また突かれて…。そのあと、風呂に三人で入るという、さらなる試練があって、もう許してと浴室で何度も泣い……いや…うん。長い夜だった。

しかしあれだけの事をされて、目覚めた体に異常がないのが逆に怖い。むしろ爽快ですらある。いや怖い。自分の体が怖い。どうなっているんだ。
唯一痛みがあるのは両方からそれぞれ刻まれた…鬱血痕と歯形。………襟のしっかりした服あったかな。あってくれ。

扉を確認すると簡単に開く。どうやら外の鍵は外されているようだ。ちなみに俺が目覚めた時、二人ともここにはいなかった。
もそもそと支度を終わらせ、食堂に向かう。

…襟のある服があってよかった。


食堂付近までいけば、みんなすでに集まっているようで、にぎやかな話し声が聞こえ始める。
「え?マジで兄貴告白したの?」
「うんワンコロもね」
「へ~~」
「意外ですね。もっと焦らすかと思っていました」
「…うるせぇ。こっちの事は放っておけ」
「またまた~私達も応援しますから~」
「だな。キューピッドやればいいじゃん!」
「いい娯楽…」
「そっすね。こういう明るい話題っていいっすよね」
「…………クロ、二人と、付き合うの?」
「うーーん。おれとしては付き合う所か、結婚まで一気にいきたいー」
「おぉお!?マッハだな」
「でも、まだ返事貰えてないんだよねえ」
「出会ってそんなにたってないのに、一気にこられるとか引きますよ」
「お、三津みつナイスな視点!いいよーもっと意見ちょうだいよ」

………え?
…は?
「っ!???なあっ!!?」
食堂から聞こえる内容に耳を疑う。みんな何を?ナニを言っているんだ!!?!???

「あ、クロ…おはよう」
「大変ね~もてもてで~」
待て、待て待て!?待って!!こっちの世界ではこれが普通なのか…。訊けない。周りが自然過ぎてとても訊ける雰囲気じゃない。同性とか、複数とかそういうのがどうなっているかとか。
…………とりあえず、そのお幸せにみたいな視線はやめて欲しい。

「クロ」
ここのつ!」
よかった。ここのつからは生暖かい眼差しを向けられてない。
「クロ、二人と結婚、しないよね?」
「しなっ!」
い…と返そうとしたら、首のあたりにぞわりとした殺気があたって、それ以上言えなかった。
しかも兄先生の殺気に加えて、何故かもう一方向からも殺気を感じる。嘘だろう。だってそんな…。ぇえ…断れないシステムなのかな…。ぇえええ。

「え…と」
「するの?」
「えぇええ…と」
答えに詰まった俺に焦れたのか、もういい!と、彼にしては珍しく、大きく荒げた声と共に食堂から走っていってしまった。
「…あら~~~」
「うぅ」
なんかごめんここのつ。でもこの場合、どういうのが正解だと…。勇気を出してちらりと殺気の元を見てみれば、二人共殺気をひっこめ、俺に微笑みを向ける。
「ぇう…」
兄先生はわかるけど、先生まで笑顔だ。ぇえ…?

「青春ねぇ~」
一花いちかがのんびり言う。いや、そんな青春真っ盛りの子に言われても…。

……とりあえず先生達が出掛けたあとで、ここのつの部屋に行ってみよう。


そして、先生達は出掛け、俺はここのつの部屋に向かう。扉をノックしてみたけど反応はなく、午後…何度目かの訪れで、やっと扉は開かれた。
ここのつその…」
他のみんなは何故か歓迎するような感じだったけど、やっぱり先生の恋愛事情とか、そういうのが聞きたくないって子もいるだろうし。
多分、ここのつはそういうタイプなんだと思う。
ただ、それでもなんて言っていいかわからなくて、もごもごしている俺を見てここのつがぽつりと言った。
「もう、いい」
「ぇ…あ」
「さっきの事ならもう、いい」
「そ、そっか」
それならいいんだけど。

「その代わり、今夜オレに、付き合って」
「え…」
「夜、消灯時間後」
「……と」
どうしよう。不快にした分、付き合ってあげたいけど、夜は…外から鍵がかかり部屋からは出られない。
「夜は…」
「鍵は…オレが、なんとかする、から」
「え、鍵の事知ってっ」
「知ってる」
「そ、そう」
消灯後に出歩くのは先生に怒られそうだけど、でも…ここのつの我儘も叶えてあげたい。
「今日なら先生達もいない。大丈夫、だよ」
そうなんだよね。先生達は今日、消灯後にまた出掛けるって言っていたから。
「うーーーん」
体も昨日あれのお陰で暫くは心配ないだろうし。いいかなぁ。
「わかった。いいよ」
「本当!!」
「うん」
「じゃあ、消灯後、迎えに行く」
「うん。あ、眠かったりしたら中止にしても大丈」
「しない。絶対」
「そ、そう」

ここのつが夜、俺と何をしたいのかは教えてくれなかったけど、まぁ先生に内緒で夜に集まるといったら、お菓子食べたり、肝試ししたり、布団の中で話しをするとか…そんな所だろう。

悪事に加担してしまう後ろめたさもあるけど、こっそり抜け出す背徳感に、心が少し躍ってしまっているのも事実だ。いい年して、本当なんだかなぁ。

そうして消灯後、先生は俺の部屋の鍵を閉め、外へと出かけた。
寝る訳にも行かず、ベッドで座っていた俺の耳に、潜めたここのつの声が届く。程なくして、メキと重い金属音がする。
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