3 / 48
一章
3.まいねーむいず
しおりを挟む
「だが、お前が向こうの世界で犯罪者だった…なんて事態も困る。得体のしれない奴を自由にさせる訳にはいかない」
「確かに」
自分に犯罪歴などないが、先生としては生徒を守る為の、真っ当な意見だなと思う。
「つまり…」
「オレの監視下におく」
同室でお世話になるという事か。まぁ断る理由も特にない。
「宜しくお願いします」
「はっ、もっと嫌がるかと思ったけどな。むさいおっさんと狭い部屋で共同生活だぞ?」
「………」
自分を卑下した相手を、じ…と観察する。
確かに髪はざんばらで、ぼさぼさしている。これまで気にする余裕はなかったが、何故か少しくたびれ気味の白衣を着ている。
なるほど若い子…それこそさっきの子達から見ると、冴えないおっさんに分類されてしまうのかもしれない。
しかしぼさぼさの髪も…白髪ではあるが、艶がない訳ではない。年をとって白くなったというより、元来の毛色なのではないだろうか。
顔にも目立ったしわなどは見当たらないし、身長差が多少あるとはいえ、男の自分を担ぎあげここまできた体力があるのだ。
そこまで年をとっているとも思えない。
うーーーん。
「俺と年…そう違わなそうですけど?」
「は?お前はあいつらと変わらないだろ」
あいつら…さっき会った子達だろう、確か彼女達は高校生位に見えた。なら…。
「一回りは…違うかと」
「なら同じじゃねぇか」
「ぇえ??」
同じじゃないだろ???
「ああそうだ。あいつらには結界トラブルで巻き込まれた一般人って事で説明しておく」
「はい、あのちなみに異世界とかって」
「あいつらには言うなよ。……オレが特殊なんだ」
「?」
「お前の世界で『異世界からきた』って言っている奴がいたらどう思う?」
「あーーーー…」
納得した。
「ま、今後どうなるか…どうするかはまだオレにもわからねぇよ」
「はーーー」
「緊張感のない奴だな…」
「いえ、正直実感がわかなくて…」
「………そうか」
再び、ぽんと頭に手を置かれる。
そういえば、まだ彼の名前を訊いていなかった。
それどころか、自分も名乗っていない。これはまずいと思い、口を開く。
彼をなんと呼ぶか迷い、少し考えてから先生と呼ぶ。
「あ?」
「あの俺の名前ですけ…っ」
言おうとした所で、バチンっと勢いよく口に手が当てられる。
痛い。
「ふぁにすふんですか?」
「何するんですか?じゃねぇよ!?何しでかす気だ……あーーー」
「?」
「そうか、これもこっちの概念か」
彼は空いていたもう片方の手で、がしがしと頭をかいた。
「…いいかオレの事は、『先生』でも『お前』でも適当に呼べ」
「ふぁ?」
「名を呼ぶな、まして名乗るな」
「???」
「いいか合宿中はな、名を…お前の場合は本名だが、それを…あーーーつってもわかんねぇか」
確かに、さっぱりだ。
しかし名乗っていけないという事は理解した。
こくりと頷く。
こちらの理解を受け、彼の手が離れる。
とりあえず、今後彼をなんと呼ぶのかはいったん保留にし、自分はどうしよう。流石に名無しというのは不便だ。
「……………」
「今度はなんだ」
悩んでいる気配を察して、彼から水を向けてくれる。
「俺はどう呼ばれればいいのかと」
「適当に名乗りゃいいだろ」
「あだ名とかですか?」
「本名にかすってないってんならそれでもいい」
本名に関係ないあだ名か、ぱっとは思いつかない。
ふ、と昔写真で見た犬の名前を思い出した。
「クロ…とか?」
「……………………犬かよ」
「確かに」
自分に犯罪歴などないが、先生としては生徒を守る為の、真っ当な意見だなと思う。
「つまり…」
「オレの監視下におく」
同室でお世話になるという事か。まぁ断る理由も特にない。
「宜しくお願いします」
「はっ、もっと嫌がるかと思ったけどな。むさいおっさんと狭い部屋で共同生活だぞ?」
「………」
自分を卑下した相手を、じ…と観察する。
確かに髪はざんばらで、ぼさぼさしている。これまで気にする余裕はなかったが、何故か少しくたびれ気味の白衣を着ている。
なるほど若い子…それこそさっきの子達から見ると、冴えないおっさんに分類されてしまうのかもしれない。
しかしぼさぼさの髪も…白髪ではあるが、艶がない訳ではない。年をとって白くなったというより、元来の毛色なのではないだろうか。
顔にも目立ったしわなどは見当たらないし、身長差が多少あるとはいえ、男の自分を担ぎあげここまできた体力があるのだ。
そこまで年をとっているとも思えない。
うーーーん。
「俺と年…そう違わなそうですけど?」
「は?お前はあいつらと変わらないだろ」
あいつら…さっき会った子達だろう、確か彼女達は高校生位に見えた。なら…。
「一回りは…違うかと」
「なら同じじゃねぇか」
「ぇえ??」
同じじゃないだろ???
「ああそうだ。あいつらには結界トラブルで巻き込まれた一般人って事で説明しておく」
「はい、あのちなみに異世界とかって」
「あいつらには言うなよ。……オレが特殊なんだ」
「?」
「お前の世界で『異世界からきた』って言っている奴がいたらどう思う?」
「あーーーー…」
納得した。
「ま、今後どうなるか…どうするかはまだオレにもわからねぇよ」
「はーーー」
「緊張感のない奴だな…」
「いえ、正直実感がわかなくて…」
「………そうか」
再び、ぽんと頭に手を置かれる。
そういえば、まだ彼の名前を訊いていなかった。
それどころか、自分も名乗っていない。これはまずいと思い、口を開く。
彼をなんと呼ぶか迷い、少し考えてから先生と呼ぶ。
「あ?」
「あの俺の名前ですけ…っ」
言おうとした所で、バチンっと勢いよく口に手が当てられる。
痛い。
「ふぁにすふんですか?」
「何するんですか?じゃねぇよ!?何しでかす気だ……あーーー」
「?」
「そうか、これもこっちの概念か」
彼は空いていたもう片方の手で、がしがしと頭をかいた。
「…いいかオレの事は、『先生』でも『お前』でも適当に呼べ」
「ふぁ?」
「名を呼ぶな、まして名乗るな」
「???」
「いいか合宿中はな、名を…お前の場合は本名だが、それを…あーーーつってもわかんねぇか」
確かに、さっぱりだ。
しかし名乗っていけないという事は理解した。
こくりと頷く。
こちらの理解を受け、彼の手が離れる。
とりあえず、今後彼をなんと呼ぶのかはいったん保留にし、自分はどうしよう。流石に名無しというのは不便だ。
「……………」
「今度はなんだ」
悩んでいる気配を察して、彼から水を向けてくれる。
「俺はどう呼ばれればいいのかと」
「適当に名乗りゃいいだろ」
「あだ名とかですか?」
「本名にかすってないってんならそれでもいい」
本名に関係ないあだ名か、ぱっとは思いつかない。
ふ、と昔写真で見た犬の名前を思い出した。
「クロ…とか?」
「……………………犬かよ」
1
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
総受けなんか、なりたくない!!
はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。
イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…?
どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが
今ここに!!
召喚先は腕の中〜異世界の花嫁〜【完結】
クリム
BL
僕は毒を飲まされ死の淵にいた。思い出すのは優雅なのに野性味のある獣人の血を引くジーンとの出会い。
「私は君を召喚したことを後悔していない。君はどうだい、アキラ?」
実年齢二十歳、製薬会社勤務している僕は、特殊な体質を持つが故発育不全で、十歳程度の姿形のままだ。
ある日僕は、製薬会社に侵入した男ジーンに異世界へ連れて行かれてしまう。僕はジーンに魅了され、ジーンの為にそばにいることに決めた。
天然主人公視点一人称と、それ以外の神視点三人称が、部分的にあります。スパダリ要素です。全体に甘々ですが、主人公への気の毒な程の残酷シーンあります。
このお話は、拙著
『巨人族の花嫁』
『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』
の続作になります。
主人公の一人ジーンは『巨人族の花嫁』主人公タークの高齢出産の果ての子供になります。
重要な世界観として男女共に平等に子を成すため、宿り木に赤ん坊の実がなります。しかし、一部の王国のみ腹実として、男女平等に出産することも可能です。そんなこんなをご理解いただいた上、お楽しみください。
★なろう完結後、指摘を受けた部分を変更しました。変更に伴い、若干の内容変化が伴います。こちらではpc作品を削除し、新たにこちらで再構成したものをアップしていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる